オランダの新首相に就任する見込みのロブ・イェッテン党首は「国防費増額のため所得税と法人税の引き上げ、医療や福祉を含む広範な予算削減、自由税導入で最終的に年190億ユーロを捻出する」と明かし、現世代が負担する仕組みで国防支出3.5%を持続可能なものにするらしい。
参考:New Dutch government plans ‘freedom tax’ to fund defence spending
参考:Healthcare hit as incoming Dutch coalition promises defence spending spree
財政規律を守りながら3.5%支出を持続可能なものにする=現世代が負担を受け入れるというアプローチはちょっと見たことがない
NATOの加盟国32ヶ国は昨年6月の首脳会談で国防支出の新基準=総額5.0%方式を支持、この数字は「従来の国防支出に相当するGDP比3.5%」と「軍事インフラとしても活用できる重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤などへの投資1.5%」で構成され、これはNATOが各加盟国に課した能力要件(具体的な内容や数値は機密事項なので非公開)達成に基づいた額で、各加盟国は2035年に総額5.0%を達成しなければならない。

出典:NATO
軍事インフラとしても活用できる分野への投資1.5%は会計処理の変更、例えば重要な港湾施設への投資を防衛・安全保障関連への投資としてカウントできるため「各同盟国が柔軟性をもって支出できる」と表現されており、実際のところは「トランプ大統領(2期目)が要求する5%に数字を合わせるためのもの」に過ぎず、実際の国防費増額に向けた取り組みの中で重要視されているのは「5.0%」ではなく「3.5%」で、ポーランドは達成済み、エストニア、ラトビア、リトアニア、ギリシャは達成目前、ドイツは巨額の資金動員を背景に2035年ではなく2029年までに達成することを公言している。
オランダでも昨年10月の選挙結果を受けて民主66が主導する連立政権樹立が確定、新首相に就任する民主66のロブ・イェッテン党首は連立政権樹立に向けた3党合意を発表した際「国防費増額のため所得税と法人税を引き上げて年50億ユーロ=約9,100億円を捻出する計画だ」「さらに医療や福祉を含む広範な予算削減と自由税導入による増税で国防費増額は最終的に年190億ユーロ=約3.4兆円に達する」と説明し、オランダは2030年までに2.8%、2035年までに3.5%を達成することを目指しているらしい。

出典:Koninklijke Marine
政府は昨年9月「2026年の国防支出を34億ユーロ増額して268億ユーロ=約4.9兆円にする」と発表しているため、仮に年190億ユーロの増額が達成されれば国防支出は458億ユーロ=8.4兆円レベルになり、大雑把に見ても3.5%達成が現実味を帯びてくる。さらに言えばオランダは借入額拡大による資金調達能力(GDPに占める債務割合は40%台)が優れているため、EUが加盟国の再軍備を加速させるため融資条件が有利な資金供給=Security Action for Europeに手を出していない。
要するにオランダは借入額拡大という安易な国防費増額=将来世代に負担を押し付けるのではなく、これを現世代が負担する仕組み(医療や社会福祉の予算削減、所得税と法人税の引き上げ、自由税導入)で3.5%支出を持続可能なものにしようとしており、輸入依存の装備調達(特に米国製)方針も改めて「全兵器の約半分をオランダもしくは欧州域内から調達する」という野心的な目標を設定している。

出典:Ministerie van Defensie
オランダの試みが上手く行くかは結果を見てみないと分からないが、財政規律を守りながら3.5%支出を持続可能なものにする=現世代が負担を受け入れるというアプローチはちょっと見たことがない。
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※アイキャッチ画像の出典:Naval Group





















財政拡張しないで軍事費増は直接的な国民利益が減って国が細るから、結局は将来の負担になるのでは。
軍民両用の空港や港湾などインフラの整備を全部軍事費括りにしちゃうのはやってる感出すにはなかなか良いですね。日本だとローカル線、過疎地域の道路の維持なども、実際無関係ではないですし。
全然良くないです
軍事基地として価値が高い土地って、結局、商用としても住宅地としても価値が高い土地ばっかりなんですよ
自衛隊基地がある場所って、近くに空港があったり幹線道路があったり港があったりして、めちゃくちゃ重要な要衝ばっかりじゃないですか
民需と軍需で価値のある土地を奪い合ってるんです
富国強兵は侵略戦争で勝つ為にたくさん借金をするから成り立つのであって、普通は両立できません
軍を強くしたいなら、日本がどんどん貧乏になるのを覚悟しなきゃいけない
そもそもトランプ大統領がこんなことを言い出したのは、「いい加減、軍需に割いているリソースを削減して、アメリカ経済を立て直したい」というのが本音でしょう
正しい富国強兵は「(経済的に)富んだ国は強い軍隊を作れる(持てる)」でなきゃ
いかんのですがね、借金してまで軍拡するのは貧国強兵です
自衛隊基地の数なんて限られてますからここを強化したり増やしたぐらいで国の経済基盤は揺らぎません。
軍事力=経済力です。軍を強くしたいなら国の経済を強くしないとダメですよ。
現代軍ヲタに分かり易い事例だと「90式が通れる橋」かな。歴ヲタだと「アイオワ級がパナマックス」。
今だと低軌道通信衛星群やら低軌道観測衛星群になると思う。みちびきも入れちゃって良いのでは?
日本の宇宙関連予算って2020年の3000億から去年度9000億で三倍くらい膨らんでるんですよね
正直ここまで予算ぶち込まれて本当に国内で消化できるのか不安なレベル…
(物価高とかハイエンド機材がもろ円安の影響受けてるとはいえ真水分の増加量がすごい)
これを仮に6000億分が1.5%枠に算入できるなら0.1%に相当しますし、
馬毛島のように衛星そのもの以外にも地上施設の拡充に充てられるなら
かなりのインパクトと将来性の確保に繋がると思いますね!
とはいえ種子島宇宙センターの拡張には限界があるので、どのように地上側を拡張するのかはいろいろ検討が必要ではありますが…
あとJAXAも大事なんですがJAMSTECの予算拡張を何卒この機会にお願いしたく………( ;∀;)
オランダの施策や方針は極めて公平な物に見える
自由税の内容がどんな物か判らないけども、数字的には予算のコントロールが非常に上手いので、無理なく国防能力は増強出来そう
一方、米欧日中が軍拡競争や兵器開発をどんどん進めている中で取り残され戦力差が開くばかりのロシア
今後はどうやって国防に金を出すんだろうか
あなたの言う通りロシアの軍事力は核を除けば大した事ないし、差は開き続けてるのにそのロシアの脅威を喧伝して軍備拡張を推し進めるのは有権者やより多くの負担を求められる層に対する虚偽の説明で欺いている思う。
ロシア以外の真の敵がおり、その為の軍備拡張ならちゃんと有権者に説明すべき。
仰る通りですね。
(数字の子細は不明ですが)世代間、公平に負担していこうとしていく意志を感じています。
一応日本もGDP2%は達成見込みとして、情報収集衛星+思いやり予算+デジタル庁計上分+海上保安庁予算+他省庁のデュアルユース研究で+0.5%くらいはなるんだよね
残り1%はどうしたもんか
国防費として強化してもデュアルユースも見込めてして戦場医療に代表される医療関係の人材や装備の開発導入(手術ユニットや救急車両や患者輸送UAV/UGV、医薬品、チェストシールや止血帯等々)。土木にしても建材とかの改良、重機の自動化や補助機能強化の実用化。輸送にしても旧態依然とした弾薬箱の刷新や無人配送や管理の効率化、重量級トランスポーター開発配備増加。防弾素材や小型ディーゼルエンジン開発や高効率発電機とかの開発購入とか。自衛隊業務の民間へのアウトソース比率向上、より実戦的な訓練時間の増加とか色々とやれそうではある。
以後数十年に渡って外国を威嚇して戦争を抑止する訳だし、現役世代が単独で負担を担い続ける必要あるのかな?
寧ろ数世代に渡って、一定の強力な戦力とそれを支えうるだけの工業技術を維持するんだから、財政規律に囚われずに国債でも良いと思うんだが。むしろ社会保障あたりをどうにか租税で収まるようにしてもろて…
軍事費の賦課方式かあ…。
とりあえず。
欧州出羽守のご意見を伺いたいところです。