トルコへのタイフーン輸出は「エーゲ海上空におけるギリシャの優勢性」と「英国のTranche1更新や国内産業の維持」に影響を及ぼすため注目を集めているが、メルツ新首相はNATO本部で「トルコに戦闘機を供給すべきかどうか決定しなければならない」と述べ、タイフーン売却の可能性を否定しなかった。
参考:New German Chancellor keeps open possibility of Eurofighter jet deal with Turkey
メルツ新首相のアンカラ訪問で紆余曲折を経験したトルコへのタイフーン輸出に結論が出るかもしれない
BAE主導によるトルコへのタイフーン売り込みはドイツの反対=シリア内戦関与に起因した武器販売の制限を翻意させられるかどうかにかかっており、当時のショルツ首相は英国、イタリア、スペインの説得を受けて輸出にGOサインを出したが、エルドアン大統領の政敵=野党指導者のイスタンブール市長が逮捕されたため「民主主義の弾圧(大統領側は野党の陰謀と主張)」と批判し、トルコへのタイフーン輸出を阻止する方向に方針を転換。

出典:Mellonsapka/CC BY 4.0
Handelsblattは先月17日「英国はトルコにタイフーンを売りたがっているが、ドイツ政府内部の協議に詳しい複数の人物から『連立政権がトルコへのタイフーン輸出を阻止している』という確証を得た。エルドアン大統領陣営による政敵への弾圧は民主主義への攻撃であり、連立政権は『トルコへの武器輸出を止めることが正しい選択だ』と言っている」と報じ、これが事実なら「ラファールとミーティアの組み合わせによる優位性」を維持したいギリシャにとっては朗報、逆に「Tranche1更新やタイフーン最終組立てラインの維持問題」を抱える英国にとっては悲報だ。
この報道についてショルツ暫定首相時代のドイツ政府は「何の決定も下されていない」と、トルコ政府も「タイフーン導入交渉においてドイツは障害ではない」と述べていたが、メルツ新首相は近々訪問する予定のトルコについて「戦略的に極めて重要なNATOのパートナーだ」と述べて関係維持を強調、NATO本部でルッテ事務総長と会談した際も「トルコに戦闘機=タイフーンを供給すべきかどうか決定しなければならない」と発言し、ギリシャメディアは「トルコへのタイフーン売却を否定しなかった」「ドイツが方針転換した可能性がある」「ショルツ前政権の態度とは対照的だ」と落胆している。

出典:NATO
メルツ新首相はアンカラ訪問で「ドイツ政府としての何らかの決定」を伝える可能性が高く、紆余曲折を経験したトルコへのタイフーン輸出に結論が出るかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Royal Air Force
SPDが簡単に折れるとは思えないな
この間の野党指導者の逮捕は欧州のメディアでも結構大きく報道されたしね
嘗て、偉大な賢者や英雄を何人も輩出した国は今や他国に命運を握られ、その一挙手一投足にビクビクしなければならないとはな。これもまた、時代なのか…、
いざとなれば300人の兵士で食い止めるからへーきへーき
某肉体教育系ポリスかな?
nato加盟国の中で、トルコか、ギリシャどちらか選べと言われたら、
トルコ選ばざる得ないだろ、2つの海峡はそれだけの価値が有るのだから。
まさしく仰る通りと思います。
ウクライナ戦争・中東・コーカサス・資源パイプラインなど、外交面の存在感を見ても比較対象が厳しすぎますよね…
まあ分かるけど思想信条の違いを無視して優遇すると後々厄介なことになると思うけどね
ギリシャは、EUだけで見ても特に貢献がないので、特別扱いを期待するのは非現実的と思うんですよね。
ギリシャ=エーゲ海の地形、陸上の隘路・バラバラの島々を見ると分かりやすいですが、ギリシャが制空権確保に必死になるのは理解できるのですが…
(トルコが槍玉に上がった後に)ヨーロッパ=NATO圏内、独・仏・ルーマニアでも最大野党弾圧の似たような事をやっているわけですから、なかなか皮肉な話しだなと感じてしまいます。
(2025年4月14日 ギリシャ、欧州債務危機の第1次支援を10年前倒し返済へ ロイター)
この欧州界隈に中華戦闘機を投げ入れたら楽しい事になりそうやな・・・
ルーマニアとか旧WTO系が採用してもおかしくないしね。
キプロスの件もありますし不倶戴天ですから西欧が優先度を選ぶしかないんですよね。
ギリシャはトルコが買えないF-35買えるんだからさ
ドイツが輸出許可出したら英国もドイツからレオパルド2A8を買うしかないですね(1両約45億円だとか)
そしたらサウジアラビア向けの許可も取れるのかも
バージョンが分からんが、ユーロファイターくらい売ってやれよ。
そんな事を言ったらスクラップなトランシェ1でも良いと言う事に
ギリシャが毎回のように振り回されているのが笑えないですね
ドイツはメルツ新首相になってから方針転換を明確に打ち出すのか、それとも連立内での協調のために妥協するのかが観物です
あれだけトランプとF-35批判を繰り返して、批判内容と全く同じ事をやったら流石に喜劇すぎるし、タイフーン禁輸はやらないんじゃないかな?
…まぁそれでエルドアンさんが調子付くのはまた別の問題だと思うが
ショルツもメルツもF-35導入を批判したことないけど?
認識が適当すぎん?