欧州関連

ノルウェーがF-16移転計画の詳細を発表、ウクライナへの提供数は6機

ノルウェーのストーレ首相は2023年8月「F-16をウクライナに提供する」と発表、幾つかのメディアは「ノルウェーの提供数は22機だ」と報じていたが、ストーレ首相は10日「ウクライナに6機のF-16を提供する」「最初の1機は2024年に引き渡す」と発表した。

参考:Norway to donate 6 F-16 fighter jets to Ukraine, first to arrive in 2024

ノルウェーのF-16提供数はメディアが報じた22機ではなく6機

ノルウェーのストーレ首相は2023年8月「ウクライナ人パイロットの訓練に取り組むことを決定し、保有するF-16のウクライナ移転も計画している。F-16の引き渡し時期や数量に関する情報は追って提供する」と発表、ノルウェー国営放送=NRKは「ウクライナへの提供数は5機~10機になる」と報じていたものの、南米のディフェンスメディア=Zona Militarは4月「デンマーク、オランダ、ノルウェーによるウクライナへのF-16AM(65機)移転を米下院外交委員会が承認した」「ノルウェーは22機のF-16AMをウクライナに提供する」と報じた。

提供数納入開始時期備考
デンマーク19機2024年夏頃
オランダ42機2024年後半提供に向けて24機分の機体を準備中
ノルウェー22機→6機2024年後半最初の1機が2024年に到着
ベルギー30機2024年の年末頃引き渡し完了は2028年
合計113機→91機

ノルウェーメディアのNettavisenもZona Militarの記事内容を引用して「ノルウェーは22機のF-16AMをウクライナに移転する許可を得た」「これが事実だと我々は確認した」「22機の全てが運用可能な状態にあるわけではない」「それでもスペアパーツの供給用として役に立つだろう」と、ウクライナメディアもZona MilitarとNettavisenの報道を引用して「ノルウェーの提供数は22機(内10機は飛行可能な状態ではない)だ」と報じていたが、ストーレ首相は「ウクライナに6機のF-16を提供する」「最初の1機は2024年に引き渡す」と発表。

ウクライナ空軍のイグナト報道官も2023年7月「潜在的な脅威から国を守るには150機程度の戦闘機が必要」と、NATO首脳会議に参加するためワシントン入りしたゼレンスキー大統領も「F-16の問題は規模と時間だ。ロシア軍は毎日300機の戦闘機を使用しているためF-16が50機あっても大した効果はない。我々が自国を守るには最低でも128機のF-16が必要だ。この数が揃うまでウクライナがロシアに空で対抗することはできない」と述べているため、4ヶ国が約束したF-16が揃っても「128機」という数字には37機足りない。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Karla Parra

因みに米空軍のケルツォウ大佐は戦略国際問題研究所に寄稿した中で「ロシアが無視できないような航空戦力を作り出すには、敵防空の制圧、航空阻止、防御的な対空戦というニーズを満たすには216機のF-16が必要だ。F-16で影響を与える標的の数は『機体の数』『受け取る搭載品の種類と量』『兵器システムの使用制限』『標的に関する情報提供量』『パイロットと地上要員の熟練度』『ウクライナ空軍のゲームプラン』に左右される」と述べたことがある。

夏に到着するF-16の期待値を上げすぎると失望に変わるので、まとまった数のF-16、パイロット、地上要員が揃い、ウクライナ空軍が戦場での運用に慣れるまで「相当時間がかかる」と思っておいた方が健全だ。さらにF-16が活躍出来るかどうかは戦場環境にも左右されるため、実戦を経験してみないと答えは分からない。

参考:Joint Statement on F-16s for Ukraine from U.S. President Joseph R. Biden, Dutch Prime Minister Dick Schoof, and Danish Prime Minister Mette Frederiksen

追記:ホワイトハウスは10日に発表したプレスリリースの中で「デンマークとオランダによるF-16のウクライナ移転が進行中で、今年の夏に運用可能なF-16を飛行させる予定だ」と言及、遂にF-16のウクライナ移転が始まった。

関連記事:ゼレンスキー大統領、ロシア空軍に対抗するには128機のF-16が必要と言及
関連記事:F-16は魔法の杖ではない、2025年まで大きな期待は抱かない方がいい
関連記事:ウクライナのF-16導入、パイロット養成が機体の提供数に追いついていない
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関連記事:ベルギーがウクライナへのF-16提供を表明、2028年までに30機提供
関連記事:ルーマニアがノルウェーから中古F-16取得を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Luke Milano

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コメント

    • 事実
    • 2024年 7月 11日

    複座のキャノピー、ダルマ型なんだ、、、
    人間工学的には確かに正しい

    2
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 7月 11日

    とは言っても各国の報道は「ゲームチェンジャー」「防空を一変させる」「ウクライナはこれで反攻の準備が整いクリミア半島を奪還する」とかめちゃくちゃ期待を上げるものばっかりだったので、今更(ミリオタ・ウクライナウォッチャー以外に対して)期待するなと言うのは無理があるような

    この報道による煽りはいい加減になんとかならんものか

    25
      • nachteule
      • 2024年 7月 11日

       嘘は言ってないでしょう、ただその期待値はどんな状況下で発揮されるのかってのが大事なんだけどね。

       Fー16なら練度の低い数機だけでそれが出来ますなのかAN/ASQ-213 HTSを渡すのか、運用可能な兵器を制限無しに渡すのかはある。ロシアにとって破壊するのは空中である必要もないし、本当にウクライナがどんな運用をする/出来るかで結果は変わる訳で。

      2
    • たむごん
    • 2024年 7月 11日

    ロシア航空宇宙軍の規模は、あらためて数字を見ると数が多いですね。

    管理人様の仰る通り、期待値を上げすぎない事は重要と思います。

    >ロシア軍は毎日300機の戦闘機を使用しているためF-16が50機あっても大した効果はない。

    7
      • たむごん
      • 2024年 7月 11日

      追記です。
      ロシアの凍結資産没収の裏側について、ご興味があれば。

      G7各国・グローバルサウス各国の力関係が、変わってきているのが現れていますね。

      >サウジ財務省がG7の一部の国に対し、ウクライナ支援を意図したロシア凍結資産の押収案に反対を伝えてきたという。関係者の1人は、サウジのメッセージを遠回しな脅迫だと表現した。サウジは具体的にフランス国債に言及したと、関係者の2人は語った。

      >G7が資産押収を回避する案を決定すると、サウジの姿勢は変わったと、関係者の1人は語った。

      (2024.7.09 サウジがG7に反対、ロシア資産押収なら欧州債売却と脅し-関係者 bloomberg)

      20
        • 事実
        • 2024年 7月 11日

        仰る通りですね。

        原油価格の下落、欧州における左派政権の誕生、原発推進、直接投資の減少、ファミリービジネスのガバナンス問題、UAEの台頭、非石油部門の不振、、、
        サウジアラビアの焦りがよくわかります

        11
        • マダコ
        • 2024年 7月 11日

        ゼレンスキー氐が言うことが事実であれば、毎日実戦で飛んでいる300機のパイロットの錬度です。ウクライナは、訓練終えたてで、仮に数が128機あっても厳しいと思います。単なる数の差以上に厳しい気がしますね。もちろん、ロシア側の作戦に、多少の変化は見られるかもしれませんが。

        8
          • たむごん
          • 2024年 7月 11日

          仰る通りです。

          色々と課題が多いですよね。

          3
        •  
        • 2024年 7月 11日

        事実関係はともかくとして、押収は明らかに権威を傘にきた蛮行ですからね
        利子ならいいだろとかそんなおためごかしで許される話ではない
        日本がこんなふざけた話に賛成してしまった事実が恥ずかしくてなりません

        19
          • たむごん
          • 2024年 7月 11日

          日本も、日本円が有力な通貨として見られて一種の特権があったのに、放棄する気でやっているのでしょうか。

          最近の、円安を見ていると、もう自然に失われてくのかもしれないなと感じています。

          10
            • nachteule
            • 2024年 7月 11日

             円安円高でそれぞれメリットあるんだから一面だけ見てもの判断はどうかと思うけどな。
             必須な物が輸入の日本だと家計は苦しくなるが政府は円安のおかげで何兆円もの利益を受けているし輸出が主な企業も同じ。むしろ政府が円安で得たお金を苦しい国民にもっと還元すべきなのに国民から搾り取ろうとしている訳のわからない状態。

            11
              • たむごん
              • 2024年 7月 11日

              仰る通りです。
              政府に関しては、期待できないですからね。

              個人が、株式市場・為替市場を活用して、円安ヘッジしていく必要性を感じています。

              >円安円高でそれぞれメリットあるんだから一面だけ見てもの判断はどうかと思うけどな。

              2
            • 事実
            • 2024年 7月 11日

            仰る通りです。

            製造業の国内回帰に弾みがつきますね

            5
              • 現実
              • 2024年 7月 11日

              今更国内回帰はしませんよ

              日本は市場が小さいし
              輸出の拠点としてもASEANの方が都合が良い
              日本じゃ若くて安い労働力も無い。

              もう日本は20年前から
              利益は海外子会社で稼いで
              配当を日本に戻すスタイルなので。
              日本で物作りしなくても
              円安で本社決算は良くなります。

              6
                • 事実
                • 2024年 7月 11日

                ごめん、「構文」使った皮肉なんだわ

                7
          • 樺太
          • 2024年 7月 11日

          国連安保理拒否権を傘にきた全面侵略戦争という蛮行への対抗措置なので妥当であろう

          ロシアは自身が賛成した北朝鮮のミサイル技術輸出入停止を義務付けた安保理決議に完全反しており、二重三重に安保理から排除されるべき存在である

          1
            •  
            • 2024年 7月 11日

            なんでこの差し押さえの話がこれほどまでに内部からの反対意見が多く、第三国からの反発を受けているかよく考えよう
            ロシアによるウクライナ侵攻はただの戦争にすぎない、それはどこまで行っても当事国の問題だ
            しかし差し押さえは資本の信頼を失墜させ経済システムを破壊する行為だ、この点で第三国だって当事者になる
            G7はウクライナがロシアを見る目で全世界から見られることになるんだよ

            19
              • 事実
              • 2024年 7月 11日

              米国の二次制裁も第三国が当事者になる

              2
              • たむごん
              • 2024年 7月 11日

              仰る通りです。

              『国際社会』という言葉を、ウクライナ戦争で以前ほど使われなくなったように感じています。

              G7よりも、全世界で見れば他国の方が数は多いですからね。

              >G7はウクライナがロシアを見る目で全世界から見られることになるんだよ

              5
              • どねつくぼうし
              • 2024年 7月 11日

              途上国からしたら隣国から理不尽な武力侵攻を受けるなど珍しいことでも何でもないのに欧州で起こった時だけ目の色変えて金融の仕組みさえも屁理屈こねて勝手に書き換える
              これでは欧米は拠るに値しないと見られても仕方がないことでしょう
              目先の利益のために失うものが大きすぎますよね

              9
    • hejima
    • 2024年 7月 11日

    整備ができないでしょう。

    2
    • jimama
    • 2024年 7月 11日

    数が減っても提供が現実のものになったのはまあ良しとして
    ただ、航空戦なんて数が物言うんだしドモホルンなんちゃらみたく一機々々というのはなんだかなあ
    戦力の逐次投入になって結局無駄になりそうな予感が
    6機一度に引き渡せるぐらい待ってもいいんでは

    7
      • あるまじろ
      • 2024年 7月 11日

      新しい機材を導入すると必ず問題が起こるから(一般社会全体含めて)
      初期不良の洗い出しとして、少数から導入開始ってアリなんじゃないでしょうか?

      4
    • Easy
    • 2024年 7月 11日

    いわゆるニコイチ整備をやると、大体1/3になるので妥当な数字かなと。
    誰も嘘は言っていないんですね。
    F-16は確かに22機あったんです。
    ただ、それぞれ故障だらけなので,部品を共食い整備する。
    そうした結果、22機のオンボロ機体からなんとか
    作戦に使えるレベルの6機が準備出来ました、ということですね。
    おそらくもう2-3機はいくつかの部品があれば食べるくらいの状態なはずです。それ以外の残りは骨組みだけの事実上ただの残骸です。

    9
      • 匿名希望係
      • 2024年 7月 11日

      そこまでいけばアップグレードが楽にすむとかメリットありそう

      3
    • そもそも
    • 2024年 7月 11日

    ヨーロッパの小国が余らせてるF16って
    30年前の改修型でしょう

    そんなもんでロシア空軍が押さえ切れるなら
    F35なんか要らんよね

    6
    • パチパチ艦隊
    • 2024年 7月 11日

    なんとなくF-16はちょこちょこウクライナに届きそうで、少兵力の分散投入になりかねないかと懸念してる
    周辺国に貯めておいて、全数揃ってから一気に投入したほうが効果的なんじゃないか
    早く戦線に出せば、その分適応されてしまいそうだし

    3
      • 匿名さん
      • 2024年 7月 11日

      トランプになってちゃぶ台返しされる前に、バイデンおじいちゃんが頑張ってる内に、既成事実化しておきたいんじゃないかな。

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