ノルウェー国防装備庁は先月30日「Hanwha Aerospaceと長距離精密射撃プログラムに関する契約を締結した」「Chunmooは性能、コスト、納入の最適な組み合わせを提供する」と発表し、韓国製の多連装ロケットシステムは米国製のHIMARSとドイツ製のEuroPULSを破って採用を勝ち取った。
参考:New contract with Hanwha Aerospace to procure long-range precision fires
参考:한화에어로스페이스, 정부-기업 ‘원팀’으로 노르웨이 ‘천무’ 수출
韓国政府の防衛産業外交は欧米のNATO加盟国を相手にした熾烈な受注競争の中で、今年初となる輸出成果を成し遂げた
ノルウェーが進めていた多連装ロケットシステムの取得=長距離精密射撃プログラムには米国製のHIMARS、ドイツ製のEuroPULS、韓国製のChunmooが競合し、KNDS Deutschland提案のEuroPULSは様々な理由で早々に脱落、米国もHIMARSで使用する弾薬購入を制限したため「500km先の目標を攻撃する要件」を満たせなくなり、政府は議会に長距離精密射撃プログラムの購入機種としてChunmoo購入を提案、これを議会が86対14で承認。

出典:Photo by Lance Cpl. Nicholas Guevara
野党は多連装ロケットシステムを欧州から調達すべきだと主張し「EuroPULSを含めて長距離精密射撃プログラムの選定やり直し」を提案したが、Chunmoo購入を支持する保守党と緑の党から「希望する納期に間に合うのはChunmooだけ」「ドイツ軍が発注してないEuroPULSは量産体制が整っていない」「EuroPULSは500km先の目標を攻撃する要件を満たしていない」「ChunmooはNSM統合が予定されているためノルウェーに経済的な利益をもたらす」「韓国側は契約額の120%に相当するオフセットを提示している」と批判されて13対84で否決。
ドイツのディフェンスメディア=hartpunktは「ドイツ軍の多連装ロケットシステムに関する決定の遅れが欧州の防衛産業統合の取り組みに影響を及ぼしている」「Chunmooが使用する弾薬供給=韓国への依存も重大なリスクとは見なされなかった」「HanwhaはポーランドでChunmooと使用する弾薬の現地生産を構築中だからだ」「逆にEuroPULSで使用する弾薬供給は欧州域内での生産体制が整うまでイスラエルに依存することになる」「緑の党はガザ地区での作戦をジェノサイドと見なしているため同党にとってこれは容認できないものだった」と報じ、EuroPULSは軍事的理由と政治的理由の両方から不採用を言い渡されてしまう。

出典:Ministerie van Defensie/CC BY-SA 4.0
ノルウェー国防装備庁は先月30日「Hanwha Aerospaceと長距離精密射撃プログラムに関する契約を締結した」「Chunmooはノルウェー軍にとって性能、コスト、納入能力の最適な組み合わせを提供すると評価した」「Chunmooの納入は2028年に開始され、陸軍に新設されるロケット砲大隊に配備される予定だ」と、Hanwha Aerospaceも2日「ノルウェーとChunmoo×16基、弾薬、軍需支援などを含む約1.3兆ウォン=9.2億ドルの契約を締結した」と発表。
Hanwha Aerospaceは今回の入札勝利について「HIMARSとEuroPULSとの競争に晒され、ノルウェーからの受注は不透明な状況だった。しかし、政府が防衛産業外交を積極的に展開してくれたお陰で、企業単独では提案が難しい長期的な軍事支援や産業協力まで包括的に提示することができ、ノルウェー政府の信頼を勝ち取ることに成功した。現地の韓国大使館も我々とノルウェー企業のネットワーク構築に協力してくれた。政府の防衛産業外交は欧米のNATO加盟国を相手にした熾烈な受注競争の中で、今年初となる輸出成果を成し遂げた」と述べ、ノルウェー軍向けのChunmooは寒冷地仕様のカスタムバージョンになるらしい。

出典:Hanwha Aerospace
因みにノルウェー軍は主力戦車の選定で「Leopard2A7はK2よりも約10トン重かったが(両者の性能に)大きな違いはない」と評価、最終交渉の内容、実施テストの結果、提示された納期や価格、これら要素を加味したコストパーフォーマンスを検討して「次期主力戦車の供給者に現代ロテムを推奨する」と勧告、さらに調達数削減を両者に通知後「KMWはLeopard2A7の単価を値上げしたが、現代ロテムはK2の単価を維持したため以前の奨励を強化する」と勧告を改定したが、ノルウェー政府は政治的要因を優先してLeopard2A7(現在はLeopard2A8に変更)を選択した。
この件についてMilitary Equipment Denmark(ノルウェーにおける現代ロテムの代理企業)のモーゲンセン代表は「現代ロテムはノルウェー軍の買収プロセスにとても満足している。他国での経験と比較してもノルウェーの買収プロセスは非常に熟成されていると思う。我々は政治的な要因でLeopard2A7購入が最も望ましいと考える政治家が現れるまで、この買収プロセスにとても満足していた」と述べ、客観的な評価ではなく政治的要因を優先したノルウェーの政治体制に苦言を呈し、以下のように述べたことがある。
“今回の件を通じてノルウェーの政治体制は調達部門の客観的な評価を無視する用意があることを示した。次の大規模調達では戦略的パートナー(ドイツ、英国、米国など)からの購入が買収プロセスの評価より優先されるのかどうかを事前に明かしておいて欲しい”
ドイツのピストリウス国防相も防衛協力の拡大(Leopard2A8共同調達、212CDの共同調達、新型対艦ミサイル=3SMティルフィングの共同開発など)を背景に「両国の協力関係は戦車に限定されるべきではない」「我々は近代的で持続可能な長距離火力ネットワークの重要性を認識している」「そのためノルウェーのようなパートナーとの新たなプロジェクトを検討すべきだ」とEuroPULS採用を後押し、これで恩恵を受けるノルウェー産業界の一部も政府に長距離精密射撃プログラムの再考を要請。

出典:Norsk hær
最後の望みだった「長距離精密射撃プログラムの選定をEuroPULSを含めてやり直す」と提案も軍事的理由と政治的理由の両方から拒絶されてしまい、この結果は韓国にとって主力戦車の選定結果をひっくり返された雪辱を果たすものと言えるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Hanwha Aerospace





















K2に関してはひっくり返されて良かったんじゃあないかなー>ノルウェー
ポーランドの評判見るに(エンジントラブルで普通に酷評されている投稿がある)
今回の件は他に選択肢がなかったのが大きそう。
>エンジントラブルで普通に酷評されている投稿がある
出展を明記して欲しい。Defence24やPOLSKAZBROJAにはそのような事は書かれていない
XでのJarosław Wolski@wolski_jarosという人のでの書き込みですねー
まあ、そういう話があるかもーっていう一応気にかけておく段階ぐらい?
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エンジンやトランスミッションの不具合はK2初期型の時にはあって苦労したという昔話のことでは?
今はパッチごとに改善されて酷評なんて聞かないし普通に評判良いし。というかそんなに酷評されて不具合連発なら1000両なんて買わないよ。10式戦車だって整備点検or運転技量不足なのかしらんけど走行中に履帯が外れてポンコツだの何だの言われるぐらいだしw最初から不具合なしの完全体で製品作るのは無理やで。
同じ人か覚えていないけど、前も見かけたような気がするので、老婆心ですが
patchとbatchを間違えて覚えていません?
>走行中に履帯が外れて
あれは急制動かけた直後の車体姿勢のまま右急旋回しようとした結果で、ある意味10式の高機動性が災いした事故です。
恐らくは操縦手の10式への不慣れが原因かと。転地訓練の映像で74式から転換して間もないらしい操縦手がカクカク旋回やってましたし。
韓国防衛産業が、EU加盟国~NATO加盟国に武器選定競争に勝っているというのは、改めて高い競争力を感じます。
ノルウェーの安全保障環境は、ロシアとは陸上国境があり、北海~ノルウェー海~バレンツ海に至る広い海域の防衛も考えなければなりません。
韓国(多湿・高温~寒冷)~UAE(乾燥・高温・砂漠)~ポーランド(地域による気候差?)~ノルウェー(多湿・極寒)、Chunmoo採用国ざっくり気候を見ると天候への耐性も裏付けられたのかなと感じますね。
ウクライナ戦争以降のトレンドになりつつありますね供給能力と生産能力。
いくら性能が良くても欲しい時に物が無くては意味がないわけで、この辺を韓国メーカーは上手く商機に繋げてる感じがします。
日本も衰えたとはいえまだまだ重工業、製造業を維持してます。現状日本の存在感の薄い兵器市場にあって、必要な時に、必要な数、必要な性能の物を供給出来る能力が日本製武器輸出の一つの鍵になるのではないでしょうか。
安定の日本は蚊帳の外定期
韓国を羨ましい目で見つめる事しか出来ない模様
どこにリソース投じてリターンを効率よく出しているか?の違いでしょう
韓国は日本と違い、武器輸出以外何もうまく行ってませんので。
じゃあその負の部分込みで韓国みたいになりたいか?と言われたら絶対にNoでしょう。
今半導体絶好調ですよ
私は、国内の調達がまともにならないと、輸出なんてのは夢また夢だと思いますね。
今回の決定は韓国の軍事産業にとって大きな飛躍になる。
韓国の軍事産業とそれ対応する民間企業が遠くない将来アジアの安全保障にとって
重要な役割を果たすだろう。
韓国の軍事技術の革新の速度が予想以上に速い。
これを政治家ができる筈はないが、いずれにしても向こう5年以内に韓国の軍事技術は
世界を席巻して韓国の安全保障に大きく寄与するだろう。
朴正煕は偉かったね。
120%のオフセットでHIMARS蹴落としたってそのうち反ダンピングでアメリカに制裁されるだろうな
韓国が成し遂げたことは「東アジアの兵器システムがEUで選定された」以上の意味がありますね。
彼らの今後の対応は「防衛装備の輸出に必要な要素」を理解するためにも必要ですし注目すべき内容かと思います。
今回はミサイル技術管理レジームの対象になる兵器システムなので、ここをどうクリアしたかも気になるところです。
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日本も島嶼防衛用高速滑空弾など弾道ミサイル開発を進めていますが、日本の状況に合わせた兵器システムのため、そのものの輸出は難しそうですが、今後の完成度によっては要素部品の輸出などは見込めるかもしれません。
「ミサイル技術管理レジーム」の解説を良く読めば解ります。
当該レジームの目的は大量破壊兵器の運搬手段になり得る装備品の輸出を規制するものですが、ミサイルの場合、射程300km以上かつペイロード500kg以上のミサイルシステム及びその関連資機材・技術に該当しなければ適用外です。(PrSMは射程500km以上、弾頭重量約91kg)
さらに、輸出国政府への申請目的外に使用したり同意なしに改造・模造・再輸出しないことが輸入国政府から輸出国政府へ適切に保証されれば、該当品であっても輸出に問題はありません。
ご指摘ありがとうございます。
ミサイル管理レジームの「カテゴリーII (射程300km以上・ペイロード300kg未満)」に該当するミサイルは輸入出国間で正しく規制されている分には問題がない、ということですね。
うっかり読み飛ばして理解不十分で失礼しました。
結局は制限のなさが韓国製の選択になった。
現地生産に寛容な韓国がそういう意味では有利ではある。
でも羨ましいとは思えませんね
南北朝鮮戦争はまだ停戦中であって、未だに韓国は戦争当事国で兵役義務もあります
『兵器を制限なく作れる』のは、まだ『戦争が終わっていない』からでしょう
ミリオタ的には兵役義務も「タダでリアルな戦争体験ができるなんて羨ましい!」って感じですか?
兵役は羨ましくないのは同意するし兵器を金儲けの道具にするのは日本の取るべき道ではないと思っているが、良い製品を作って海外に売って儲け次の開発に投資するというサイクルなしに、今の高騰した兵器開発続けていくのは縛りプレイだって自覚を持ったほうがよいよ。海外に売れないならばどこから資金を調達するかと言うと、結局税金が使われているのだからね
今後長射程化や大威力が求められるなら、より大きなロケット弾使えるほうが選ばれるだろそりゃ
HIMARSも荷台を大きくして太いロケット積めるような処置で対応できそうだけど、使用する太いロケットの生産ライン整えるのは時間かかるし