独ディフェンスメディアは28日「ノルウェー議会が政府提案の韓国製ロケットシステム購入を86対14で承認した」「EuroPULSを含めて長距離精密射撃プログラムをやり直す案も採決されたが、軍事的理由と政治的理由の両方から拒絶され否決(13対84)された」と嘆いた。
参考:Raketenartillerie – norwegisches Parlament stimmt gegen die Berücksichtigung von MARS 3
ドイツと韓国は陸上装備全般、水上艦艇、潜水艦分野で競合し、特に欧州の入札で韓国に負けるというのは相当ショックなのだろう
ノルウェーは多連装ロケットシステムの新規取得(長距離精密射撃プログラム)を予定しており、米国務省は2024年8月「HIMARSをノルウェーに売却(16基/推定費用5.8億ドル)する可能性を承認して議会に通知した」と発表、ノルウェーはDefense Newsの取材に「HIMARSの調達は決定事項ではない」「長距離精密射撃プログラムの検討候補として情報提供を要求しただけ」「まだプログラムは検討段階から調達段階に進むよう正式な指示を受けていない」と回答し、ノルウェーの受注を争う潜在的な競合はPULS/EuroPULSとChunmooだ。

出典:Photo by Lance Cpl. Nicholas Guevara
最終的にPULS/EuroPULSは入札候補から排除されたため「HIMARSとChunmooの一騎打ち」となり、米国は「GMLRSの射程延長弾=ER-GMLRS」と「HIMARSで使用する新型戦術弾道ミサイル=PrSM」の購入要請を拒否したため「Chunmoo勝利」が有望視され、ドイツのディフェンスメディア=hartpunktは昨年11月「なぜノルウェーはドイツではなく韓国から多連装ロケットシステムを購入しようとしているのか?」と報じたことがある。
“ドイツとノルウェーは防衛協力を拡大中でLeopard2A8と212CDの共同調達を計画している。Leopard2A8の引き渡し式典に出席したピストリウス国防相も「両国の協力関係は戦車に限定されるべきではない」「我々は近代的で持続可能な長距離火力ネットワークの重要性を認識している」「そのためノルウェーのようなパートナーとの新たなプロジェクトを検討すべきだ」「EuroPULSやMARS3といった将来システムでより緊密な協力ができる」と述べたが、これはノルウェーの多連装ロケットシステム購入に関する痛ましい問題に言及したものだ”

出典:KNDS EuroPULS
“ノルウェーはKNDSが提案したEuroPULSを入札から除外し、米国はER-GMLRSとPrSMの購入要請を拒否したため、業界筋はK9導入実績があるハンファを最も有望視している。KNDSが提案したEuroPULSは欧州で生産され、ノルウェー企業が開発したNSMの試射にも成功し、ドイツとノルウェーが共同開発している新型対艦ミサイル=3SMティルフィングを統合するための技術的パラメータも整っている。もしノルウェーがEuroPULSを調達しなければ3SMの魅力は損なわれてしまうかもしれない”
“ノルウェー国内でも本件は議論の的になっておりコングスベルグやアーケルが首相を含む政府高官に書簡を送った。ノルウェーメディアは自国の防衛産業を支援する観点からEuroPULS調達を推奨しており、コングスベルグが弾薬製造と射撃管制システムの供給、アーケルがランチャー製造とメンテナンスを担当する調達モデルを提案しており、これはノルウェー産業界にとっても大きなメリットだ。本当にノルウェーの多連装ロケットシステム調達からKNDSが除外されるのかどうかは不明なものの、ピストリウス国防相が言及したようにドイツは本調達に強い関心を持っている”

出典:Bundeswehr/Jana Neumann
ノルウェー政府は政治的な理由で軍の勧告を無視した決定(K2ではなくLeopard2A8の採用)を下したことがあり、再びドイツが政治力を発揮して状況を覆してくることも予想されたが、ノルウェー国営放送=NRKは16日「新しいミサイルシステム(多連装ロケットシステムのこと)の購入計画は緑の党の支持により議会の過半数を獲得した」「190億クローネ相当の新しいミサイルシステムは韓国から購入する予定だ」「中央党、社会主義左翼党、キリスト教民主党はノルウェーと欧州の産業協力を訴えて欧州製システムを再検討するよう求めたが、保守党と緑の党が政府案=Chunmoo購入を支持している」と報じた。
hartpunktも28日「ノルウェー議会が27日に政府提案の長距離精密射撃プログラムを86対14で承認した」「午前に行われた議会の公開討論でも政府提案の調達機種がChunmooだと判明している」「約190億クローネ(16.5億ユーロ相当)の資金を投じてChunmooを16セット、弾薬パッケージ、関連サービスを含む契約がまもなく締結される見込みだ」と報じ、ドイツの提案はあらゆる側面からノルウェーに拒否されたと嘆いているのが興味深い。

出典:Hanwha Aerospace
ノルウェー議会は政府が提出した「Chunmooを購入する長距離精密射撃プログラム」だけでなく、野党が提出した「KNDSのEuroPULSを含めて長距離精密射撃プログラムをやり直す案」も「希望する納期に間に合うのはChunmooだけ」「EuroPULSはドイツ軍も発注していないため量産体制が整っていない」「EuroPULSは500km先の目標を攻撃する要件を満たしていない」「ChunmooはNSM統合が予定されているためノルウェーに経済的な利益をもたらす」「韓国側は契約額の120%に相当するオフセットを提示している」という理由で否決(13対84)されてしまう。
hartpunktは「ドイツ軍の多連装ロケットシステムに関する決定の遅れが欧州の防衛産業統合の取り組みに影響を及ぼしている」「Chunmooが使用する弾薬供給=韓国への依存も重大なリスクとは見なされなかった」「HanwhaはポーランドでChunmooと使用する弾薬の現地生産を構築中だからだ」「逆にEuroPULSで使用する弾薬供給は欧州域内での生産体制が整うまでイスラエルに依存することになる」「緑の党はガザ地区での作戦をジェノサイドと見なしているため同党にとってこれは容認できないものだった」と報じ、EuroPULSは軍事的理由と政治的理由の両方から不採用を言い渡された格好だ。

出典:Cpl Jamie Peters RLC/OGL v1.0
因みにドイツ軍はウクライナに提供したM270のギャップを埋めるためPULSを調達し、KNDSとElbitは「イスラエル製のロケット弾に加えてKongsberg製のNSM、MBDA製のJFSMなどを統合できるPULSの技術を流用したEuroPULSの欧州生産」を提案している。ドイツ議会は2025年1月に「EuroPULSの初期調達」を承認したものの、PULS/EuroPULSにM270で使用していたGMLRSが統合できるかどうかで問題になり、国防省の報道官は「米国側と緊密に協力している」と説明したが、Lockheed Martinは「もしPULS/EuroPULSを選択すれば米国製弾薬にはアクセスできなくなる」と主張している。
ドイツ軍は豊富な装備調達資金を手にしているものの、EuroPULSに関する決定は先送りされているため量産体制が整っておらず、さらに韓国側が契約額の120%に相当するオフセットを提示しているものの「プラットフォームの導入契約さえ勝ち取ってChunmooのエコシステムにノルウェーを取り込めば、使用するロケット弾や戦術弾道ミサイルの購入で利益を上げられる」と考えているためだろう。

出典:Ministerstwo Obrony Narodowej
政治的にも「イスラエルの技術」ではなく「イスラエルからの弾薬供給に依存する」という部分が嫌われてしまったため、ドイツの提案は「最初から勝ち目がなかった」となり、Hanwhaとの契約締結は30日に行われるらしい。
ドイツと韓国は陸上装備から艦艇に至るまで競合関係にあり、特に欧州の入札で韓国に負けるというのは相当ショックなのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Ministerie van Defensie/CC BY-SA 4.0





















ショックと言うけど、ドイツが早めにPULS/EuroPULSを導入してたら、この決定にはならなかったのでは?
NSMってChunmoo、PULS/EuroPULSどっちでも使えるんですね、便利なミサイルだ売れるわけです
ミサイルがコンテナ化されてて、リフトアップするジャッキがミサイルコンテナの重さに耐えられるなら
ハードルはメーカーがミサイルにプログラムを書き込む端末にNSM用のシステムを統合してくれるかだからな
キャニスタ込で700kgだから統合する方が売れそうだと思ったのかも?
ドイツは価格面で競争力を失ってますわな
現地生産出来ないものは納期ありきですもんね。性能が未知数なのはみな同じな訳だし。国策で動いてる企業に受注ありきの民間企業は分が悪いですね。政治で何とかするにも限界がありますし、今後も採用国増えそうですね。
戦車の取引実績で他の商品も売れるなんていい流れですね
日本も積極的に艦艇など売り込んでいきたい
いけたらいいな
韓国と同じやり方では食い込むのは難しいでしょうねえ。
安全保障協力から信頼関係を醸成・深化、共同研究・開発を進めていくのはどうでしょう。10年ぐらい続ければ欧州に根付いた軍事産業基盤を構築できるかも。
総合的判断となるのが、武器取引の興味深い所ですね。
アジアでは、アジア勢が有利となりそうなものが、英独仏が武器受注していたり。
ノルウェーのように、EU=NATO圏内の国が、韓国製武器を受注=売込みに成功しているなと。
日本の防衛産業にとっても、従来は販売先として厳しいと思っていた地域でも、少しずつ前進していけばチャンスがあるかもしれないと感じる点でもあります。
兎と亀のように、亀が10m進む間に兎は100mも進んでしまうため差は広がるばかりで追いつくことは不可能です。兎がさぼって寝てしまえば亀にもチャンスがありますが、兎も必死に前に進むのでいったん開いた差は縮まることは無い。
兵器産業において日本の出遅れは致命的で、今から差を突縮めることは不可能だと思う。
仰る点、一面では正論ですね。
今後どうなっていくのか、引き続き見守っていきたいと思います。
それは思考停止にもほどがあるだろう
韓国だって同じ立場から欧州の古豪と競合できるほどに成長した
なぜ我が国ができないと思うのか?その根拠を聞きたいね!
必要なものを必要な期間に納入できて、調達後に政治的な横やりを入れてこないって理由だけでも十分なアドバンテージですよね。
北欧は人道意識の強い地域だからイスラエルが噛んでいると政治的にダメなのか。やっぱり武器の導入となるとそう言った要因があるわけですね。それにしても韓国の兵器はよく売れていますね。世の中混沌として来て、政治的な要因やら供給上の問題が兵器の売買に引っかかって来ることが増えてきた一方、韓国はそういった要因が少ないせいでしょうか。