欧州関連

UAVとチーミング可能なAH-64E、ポーランドが96機導入を発表

ポーランドはブラスザック国防相は9日「旧ソ連製Mi-24を更新するためAH-64Eの売却を米国に打診した」と発表、ボーイングによればポーランド向けのAH-64Eは「UAVとのチーミング対応モデル」になるらしい。

参考:Poland buying 96 AH-64E Apaches, as modernization spending spree continues

ポーランドもMUM-T対応のAH-64Eを導入して陸軍に「センサーとシューターの分離」を取り入れるつもりなのだろう

ボーイングの関係者によればポーランドが導入を打診したのはAH-64E V6で「MUM-T=有人・無人チーミングに対応したモデルになる」と述べているのが興味深い。

出典:Photo by Capt. Jesse Paulsboe

米陸軍は今年5月、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、英国と共同で史上最大のドローンスウォーム演習(先月25日~12日)を実施、約30機の異なるUAVのチーミングによる戦場認識力の拡張をテスト、ヘリ部隊、地上部隊、司令部がネットワークで結ばれUAVが収集した情報を元に作戦を実行する内容(ネットワークのボルトネックを特定、複雑な意思決定のプロセスを検証するため同盟国が参加しているらしい)で注目を集めたことがある。

シンプルに言えば有人ヘリがリスクの高い空域外で複数のUAVを発射、このUAVはリスクの高い空域に侵入して視覚的な戦場情報を収集、これをヘリ部隊、地上部隊、司令部がリアルタイムに共有して最適な行動を選択=目標に最も効果的なシューターを選択することで「戦闘効率を向上させる」という内容だ。

米陸軍戦闘能力開発コマンド(DEVCOM)のコンセプトPVでは目標に対してHIMARSを使用しているが、米陸軍はAH-64Eの交戦範囲を拡張するためSPIKE NLOS(射程30km/最新モデルなら40km~50km)の採用を検討中で、ロシアも開発中のKa-52Mに巡航ミサイル「item305(射程100km)」の統合を予定しており、韓国もイスラエルと共同で徘徊型弾薬を使用したヘリ向けMUM-Tの開発を進めている。

韓国軍は韓国航空宇宙産業(KAI)が開発した国産軽武装ヘリコプター「LAH」にMUM-Tを付与する予定で、KAIが公開したコンセプトPVではミニハーピーを使用しているが、やろうとしていることはDEVCOMと同じセンサーとシューターの分離だ。

つまりウクライナ軍がロシア軍相手にやっていることを「最もシムレースな情報供給と多彩な攻撃手段で効果を高める」という意味で、既に中国軍は演習でWZ-10とUAVのチーミングで視界外の目標にミサイルを叩き込む訓練を行っている。

ポーランドもMUM-T対応のAH-64Eを導入して陸軍に「センサーとシューターの分離」を取り入れるつもりなのだろう。

因みにオーストラリアはAH-64E V6を29機調達するのに38億ドル(関連費用込み)の投資が必要なので、同型機を96機調達するのは推定120億ドル=約1.7兆円の投資が必要になるかもしれない。

関連記事:中国軍、昨年実証に成功したセンサーとシューターの分離を実戦部隊に導入開始か
関連記事:イスラエルと韓国が徘徊型UAVシステムを共同開発、韓国軍に有人無人チーミングを提供
関連記事:防空システムの天敵? 露攻撃ヘリ「Ka-52M」に長射程巡航ミサイルを搭載
関連記事:ポーランド、砲兵部隊を強化するためグラディウスUAVに580億円を投資

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Andrew McNeil/3rd Combat Aviation Brigade, 3rd Infantry Division

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コメント

    • δ
    • 2022年 9月 11日

    AH-64系は陸自のデータリンクに連接できないのがなぁ…
    陸自の次期AHはどうなることやら

    17
      • 匿名希望
      • 2022年 9月 11日

      日本の場合本土以外だと遠距離な離島だろうって推測できるあたり搭載するんならF-15かF-35で管制機は別にした方がよさげなのが

      2
      • あばばばば
      • 2022年 9月 11日

      UH以外は戦う前から壊滅状態となっている気がしますが、しばらくはUH-2の調達が続きそうですし、OH-1もエンジン改修がまだ何年も続くので、しばらくはAHの調達はなさそうですね
      現状のままでは、AH-1SとAH-64Dの耐用年数経過で、AH部隊自然消滅もありえなくはないでしょうが……

      10
        • δ
        • 2022年 9月 11日

        水陸機動団への支援とCHのエスコートのためにAHは必要だからどこかで調達するはずと思ってる
        空自戦闘機部隊はPLANの艦載機とPLAAFを相手にしながら近接航空支援もやるみたいな贅沢な運用はできないから陸自が自前で航空支援の手段を確保する必要はあるはず

        3
      • 月虹
      • 2022年 9月 11日

      水陸機動団との連携を考慮すれば艦上運用を想定し潮風など塩害対策も施されている「AH-1Zヴァイパー」が最適だと思いますが陸自のAH-Xの見直し作業は進展していません。退役が迫るAH-1の後継が現在も決まらないのは問題ですね。

      5
        • 匿名希望
        • 2022年 9月 11日

        ついでにいうとAH-1Zの製造ラインいつまである問題も・・・

        1
        • δ
        • 2022年 9月 11日

        AH-1Zはコータムの搭載くらいならさせてくれそうだけどFCCS・10NWへの連接をやらせてくれるかというと怪しい気がする

        2
    • ななし
    • 2022年 9月 11日

    MANPADS相手だとヘリは脆弱だと今回のウクライナで再認識させられたから
    危険なエリアに入らず離れた場所からUAV等で攻撃するのであれば別に攻撃ヘリでなくても
    普通のヘリを改造した多用途型の方が使い勝手がいいのではと思う

    23
      • s1mple
      • 2022年 9月 11日

      遠くからUAVで情報取って長射程ミサイル撃ち込むのならもはやヘリである必要すらなくない?

      8
    • アクアス
    • 2022年 9月 11日

    欧州でタイガー戦車がT-34を狩ってるというニュースを聞いたチハの製造担当者は今の俺のような気分だったかもしれない。

    2
    • パセリ
    • 2022年 9月 11日

    戦闘ヘリ不は要論もあるけど実際どうなんだろ
    ウクライナでもヘリが活躍してるていう報道はあんまり無いし代用出来るなら軽攻撃機かそれこそドローンでも良い気がするし

    15
    • 58式素人
    • 2022年 9月 11日

    素直な(と、素人は思っていますが)疑問をいくつか。
    ①AHから放出したUAVは回収できないので自爆するのかな。
    ②センサーとシューターを分けるならばAHである必要はないのでは。
    攻撃的に用いる(敵圏内に踏み込む)のだと思えるので、
    砂漠で使うのかなと思います。

    8
      • きっど
      • 2022年 9月 11日

      何ならば、わざわざヘリからUVAとミサイルを発射する必要性すら薄いのではと思いますね
      全ての戦力を空挺やヘリボーン作戦として完結させるつもりでなければ、地上からの発射でも間に合うのではと

      11
    • 名無し
    • 2022年 9月 11日

    相変わらずどこからカネが湧いてくるのか不思議

    8
      • イチゴ農家
      • 2022年 9月 11日

      ホントですよね。

      最近ポーランドは陸空共に爆買してますよね。

      それだけ危機意識が高いってことなのかな?

      3
    • 無印
    • 2022年 9月 11日

    ハインドの後継がアパッチ・ガーディアン96機とは大盤振る舞いですなぁ
    ポーランドはアメリカに次ぐアパッチ・ガーディアン保有国になるわけですか
    アメリカとポーランドがアパッチ・ガーディアンを運用し続ける限り、他のアパッチ・ガーディアンユーザーも、しばらくサポートの心配はしなくてよくなったのかな

    3
    • ブルーピーコック
    • 2022年 9月 11日

    数年前にあったガンシップ型のオスプレイの話はどうなったんだろう。UAVをばら撒く、撃って逃げるならそっちも有望だと思うんだが

    8
    • もり
    • 2022年 9月 11日

    ヘリほど機動性が高く投射力のある戦力陸軍には無いからなぁ
    固定翼機に比べても簡易的な飛行場で運用出来て攻撃待機時間も長いのは大きな利点
    固定翼機は今!今攻撃が欲しいの!!って陸軍が思っても射点に旋回して着くまで時間掛るし

    11
      • 名無し
      • 2022年 9月 11日

      同感ですね。無人機や地対地ミサイル、ヘリにはそれぞれ長所短所、得意不得意があるのでバランスよく調達してほしいです

      5
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