欧州関連

F-35出資見送りで後悔したポーランド、ロッキードとの無人機開発に動く?

ロッキード・マーティンはMSPO国際防衛産業展示会で、F-35と連携して作動する無人航空機をポーランドに供給する準備を進めていると明らかにした。

参考:Lockheed offers drones to complement Poland’s future F-35 jets

ロッキード・マーティンの誘い「共同でF-35と連携して作動する無人航空機を開発しよう」

ポーランドは旧式化した旧ソ連製戦闘機SU-22M4/UM3K(SU-17の輸出型)やMiG-29A/UBを更新するため今年1月にF-35導入に関する契約に署名、F-35A引渡しは2024年から開始される予定でポーランド空軍は32機のF-35Aを手に入れることになる。

ただポーランドにとってF-35Aの購入はステルス戦闘機導入以上の教訓を残す結果になった。

出典:public domain F-35A

ポーランドは当初F-35A導入にオフセットにポーランド企業のF-35サプライチェーンへの参加を要求したのだが、ポーランドは日本と同じようにF-35への出資を見送っていたため潜在的需要が3,000機を越えるF-35サプライチェーンへの参加は叶わず、ロッキード・マーティンが代替案として提示したオフセット内容(ポーランドが導入しているF-16C/DやC-130の整備拠点設置)も費用対効果が優れていなかったため、最終的にポーランドはオフセットの要求を取り下げて約10億ドルの値引きを受けることを選択した。

補足:米メディアは昨年、防衛省の鈴木整備計画局長が米国の国防総省にF-35プログラムの正式な開発パートナーに参加できる可能性や条件(責任と権利、コストの共有、承認プロセス等)について情報提供を求めて来たと報じており、このような日本の要請についてF-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)の担当者はF-35の開発パートナーになれるのは「F-35のシステム開発実証段階で開発に参加をした国に限られる」とF-35プログラムへの日本参加を否定した。

要するに成功が確定してからでは、どれだけF-35を購入しても出資国にはなれない=F-35を通じたビジネスチャンスに参加できないということを思い知ったという意味で、この教訓を生かしてポーランドは米国が進めている「Loyal Wingman(忠実な僚機)」プログラムへの参加を打診、これに応えたのがロッキード・マーティンという訳だ。

ロッキード・マーティンのスカンクワークス担当副社長は「ポーランド国防省が提示した無人航空機の要求性能は米国が要求するものに類似しておりロッキード・マーティンは注視している」と語り、F-35と連携して作動する無人航空機の開発や製造を進めるためポーランド企業とのパートナーシップ構築に強い関心を抱いていると話した。

出典:ボーイング

これは既存の無人航空機開発にポーランドを招待するという意味ではなく、恐らくポーランドの出資でロッキード・マーティンとポーランド企業が共同でF-35と連携して作動する無人航空機を開発して売り込もうという話(オーストラリアとボーイングのロイヤルウィングマンに近い形)だろう。

この話が具体的に成立するのかは謎だが、少なくともロッキード・マーティンと共同で無人航空機を開発すればF-35との連携部分だけは確保できるのでF-35プログラム出資国ではないポーランドにとっては悪い話ではないだろう。

さらに付け加えれば米空軍が開発を進めているロイヤルウィングマン開発プログラム「スカイボーグ」は同盟国への輸出を確約していないため、現状で米国企業が関わった=F-35と連携可能で輸出を前提にしたロイヤルウィングマン開発プログラムはオーストラリアとボーイングが開発している無人航空機だけだ。

補足:因みにロッキード・マーティンは米空軍のスカイボーグにスカンクワークス設計の無人航空機で挑んだが選ばれずに敗退している。

果たしてポーランドはロッキード・マーティンの誘いに乗るのか注目される。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain XQ-58ヴァルキリー

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 9月 09日

    んで、本邦は?

      • 匿名
      • 2020年 9月 09日

      オフ

      2
      • 匿名
      • 2020年 9月 09日

      我が国の回答は「F-2戦闘機の後継機は我が国主導で国際共同開発する(事実上は国内開発)」ですよ
      F-35の時は武器輸出三原則が邪魔をしたのが一番の理由だけど、そもそも我が国が米国から戦闘機を導入する場合、実用段階に入った機体でないと導入出来ないと言う立場なので(これはF-86F以降ずっとそう)、F-35の様な開発手法を取られると絶対に出資国にはなれない
      だから我が国は「それでは困るので、次の戦闘機は国産(建前上は国際共同開発)にするよ」と米国に告げたのでしょう
      本記事にもありますが、米メディアが昨年、防衛省の整備計画局長が断られるのを知った上で米国防総省にF-35プログラムの正式な開発パートナーに参加出来る可能性や条件を打診したと報じたのは、以上の理由によるものでF-2の共同開発相手だった米国に対して仁義を切ったのだと思います

      11
        • 匿名
        • 2020年 9月 09日

        日本の場合、F-22が導入できると思ってたからF-35プロジェクトに参加するつもりは元々無かったのでは。
        米政府はF-22の空自導入を許可する予定だったが議会が拒否を決議した。
        その代替として浮上したのがF-35導入という経緯だったかと。
        勿論、武器輸出三原則に抵触する恐れがあったため参加できなかったのも理由ですね。

        8
          • 匿名
          • 2020年 9月 09日

          勿論、その通りで日本がF-22の導入を検討した当時、既にF-22は実用段階にあった事も大きいです
          それが軍事機密保持を優先する米議会の反対に遭い潰されただけで無く、米空軍自身のF-15の後継機もF-35と言う事にされて(F-22の追加発注の議論が米議会であった時にその様な判断をされています)、日本もF-35を採用せざるを得なくなった事と武器輸出三原則の件についてはご指摘の通りです

          4
            • 匿名
            • 2020年 9月 10日

            F-22は結局ランニングコストの問題でアメリカ内でも潰されちゃいましたからねえ。

            2
        • 匿名
        • 2020年 9月 09日

        …無人機の話では?

        1
          • 匿名
          • 2020年 9月 09日

          「我が国の回答は…」の書き込み主です
          今回の記事自体は無人機の話ですが、記事をよく読めば分かる様にその内容は「ポーランドがF-35の出資見送りで同機のサプライチェーンへ参加出来なかった教訓から、今度はF-35と連携して作動する無人航空機を開発するLM社の計画に共同開発のパートナーとして参加する」と言う話であり、そのシチュエーションが同じ様にF-35の出資をする事が出来なかった我が国と同じである事を指摘した方の「んで、本邦は?」と言う書き込みに答えたのが、私の書き込みと言う関係になります。

          8
    • 匿名
    • 2020年 9月 09日

    本当に武器輸出三原則とかどれだけ日本に損をさせたか
    今は憲法9条がそれだが
    日本も早く自動車や工作機械のように航空機や軍需品を輸出しよう
    邪魔する国は潰せば良いし、実戦経験なら韓国あたり攻撃すれば良い
    竹島占領してるんだから口実なんてどうにでもなる
    強引に仕掛けた方が勝ち

    12
      • 匿名
      • 2020年 9月 09日

      戦争を仕掛けるのではありません。祖国防衛です。
      とりま日本の優れた兵器で世界平和に貢献しよう。

      AKー47やTOYOTAみたいな長く使えて壊れない兵器を作ろう。

      5
      • 匿名
      • 2020年 9月 11日

      目先の利益に気を取られて道義的正義を失うのは愚者の選択でしょうに
      日本は平和国家を目指すべきで「死の商人」なんかに落ちぶれる必要は無い

      1
        • 匿名
        • 2020年 9月 12日

        アヒャヒャヘ(゚∀゚*)ノヽ(*゚∀゚)ノアヒャヒャ

        2
    • 匿名
    • 2020年 9月 09日

    ポーランドは、防衛を非常に頑張っているね。我が国も見習おう。もしかして今のポーランド軍はドイツ連邦軍よりも強いんじゃないか?

    19
      • 匿名
      • 2020年 9月 09日

      それは、そう。

      6
      • 匿名
      • 2020年 9月 10日

      一応ロシアや今話題のベラルーシと国境を接している国ですからねぇ

      8
      • 匿名
      • 2020年 9月 10日

      実際の話、自分がドイツ人だったとしてあの立地で防衛がんばろうってなると思います?
      軍事マニアはともかく普通ならどう考えても使わない走行車両削って福祉回せってなると思いますよ。

      6
      • 匿名
      • 2020年 9月 10日

      むしろ、いまのドイツ軍に劣るほうが難しい

      3
    • 匿名
    • 2020年 9月 09日

    防衛装備移転三原則では、共同開発相手国に第三国移転に際しては日本の同意を義務づけています。
    つまり、これに同意する信頼できる相手か、主導権が日本側にあり、相手国にこの義務を強要できないと成立しません。
    オーストラリアの新潜水艦は、同国に輸出の意図が無かったんで好都合だったんですがね。
    てなわけで、本邦では無人機に関しても次期戦闘機と同様の開発形態になるか、完成品輸入ないしライセンス生産にならざるを得ないのかと。

    3
    • 匿名
    • 2020年 9月 10日

    無人航空機っていっても語られてる内容が幅広くて阿呆な僕には理解しかねるところがあるのですが。
    単なる誘導爆弾のキャリア(今もっとも実現しそうなライン)なら日本的にはいらないでしょう。憲法的にも。
    ステルス性能を持った外部ウェポンベイとして使えるなら欲しい。みたいなライン?

    2
      • 匿名
      • 2020年 9月 10日

      僚機型戦闘支援UAVに割り当てられる機能は、
      1)外部センサー、2)外部ウェポンベイ、3)デコイ、等があります。
      1)は特に有用で、バイ・マルチスタティックなセンサー情報を統合処理することで、敵ステルス機の先制探知・航跡追尾・先制攻撃が可能になります。
      その際、味方有人ステルス戦闘機は位置を暴露するアクティブレーダーを使用しなくて済み、生残性が向上します。
      将来的に、僚機型戦闘支援UAV群と連携したクラウド・シューティングは、数的劣勢を補う非常に有効な戦術になると考えられています。
      相手も同様のシステムを持っていれば、総合的な性能差が勝敗を決めることになるかもしれませんね。

      8
    • 匿名
    • 2020年 9月 10日

    個人的に、とても興味を引く記事だった。

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 10日

    F-35が成功したという部分には疑問も多い。
    F-35の情報統合が米国やロッキードの思惑次第でどうとでも出来る仕組みは将来の無人機やミサイル導入において言いなりにされてしまう仕組みで、ロッキードが現在のようなスタンスある限り将来性で疑問しか感じない。
    日本が国産でいくのは当然、日本需要とロッキードの思想が違ってる限りロッキード依存は悪手。
    記事に有るようにポーランドは需要が似ているからこその話。
    ロッキードはもっと各国のニーズを考慮した柔軟な情報統合を許可しない限り、F-35ですら中継ぎ機にしかならない。

    1
      • 匿名
      • 2020年 9月 10日

      いやあ、F-35の登場は一種のパラダイムシフトでしょ。
      チートすぎるるよ、ほんと

      2
    • 匿名
    • 2020年 9月 10日

    ロッキード社の思惑以前にアメリカの様な武器輸出国は自国の防衛体制に接続・関与可能な技術・製品を輸出したりはしない。これは安全保障分野で際立っており戦闘機だけでなく艦船や軍用車両でも見られる(spy6も同じ理由で潰された)。
    アメリカ製やロシア製兵器を買う場合は完全に売り手市場であり買い手は売り手に対し注文できない。今回のポーランドの件も見せていい技術を売ろうとしているに過ぎず、共同で開発する意思なんて初めから無い。言わば口先三寸の口八丁。

    6
      • 匿名
      • 2020年 9月 10日

      ちょっと質問ですが、「(spy6も同じ理由で潰された)」と言うのは、配備中止決定で宙ぶらりんになっている我が国のイージス・アショアの件を差していると言う事で宜しいでしょうか?

        • 匿名
        • 2020年 9月 12日

        そう。防衛相は海軍での運用を前提としたSPY6を導入するつもりだったがアメリカ議会に阻止(おそらく安全保障上の理由から)されてSPY7に変更された。
        アショアに搭載される警戒レーダはspy6とspy7で運用法が異なるので単純な性能差は関係ない。SPY6の現状は不明だがspy7は今だ開発途上で完成するかどうかも不明。正直、L&M社が提示した要求性能を満たすのには10年近い時間が必要だと思う。
        だから防衛相は時間がかかりすぎるアショア導入を諦めた。決してブースターの落下が問題なのではなく、単に防衛相側の当事者意識と情報収集能力が欠如していたのが理由。

          • 匿名
          • 2020年 9月 12日

          追伸。海軍と言うのは米海軍。
          こちらが集めた情報によるとspy6は自機だけでなく早期警戒機等や衛星からの情報提供によって機能する警戒監視装置なので従来の早期警戒レーダーとは少し違う。
          同じくこちらの情報によるとspy7はイージスシステムの様な多数の監視機器を統合した警戒システムで、コンセプトは普通なら大掛かりな設備が複数必要な関連装置を一つに纏める物らしい。
          記憶違いがあるかもしれないが大よそはこんなところ。

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