ポーランドはF-35A導入に伴い「どれだけ購入しても『商業的成功』が確定した後では出資国の地位は得られない」と思い知るキッカケとなり、F-35で作動するウイングマン=自律的飛行が可能な無人戦闘機への早期関与を模索中で、米空軍主導のCCAと豪主導のMQ-28Aに関心を寄せている。
参考:Airbus Gearing Up For Eurofighter Crewed-Uncrewed Teaming Testbed
参考:IFC 2024: Polish Air Force pushing for CCA funding
これだけ条件が整ってくるとTyphoonを選択して「英独の取り組み」に合流するのが最適解かもしれない
ポーランドは旧ソ連製戦闘機を更新するため2020年にF-35A導入契約を締結したが、この契約交渉の中でポーランド企業のF-35製造参加を要求したものの、日本と同じように出資を見送っていたため潜在的需要が3,000機を越えるF-35サプライチェーンへの参加は叶わず、Lockheed Martinが提示した代替案=F-16C/DやC-130の整備拠点設置も費用対効果が優れていなかったため、最終的にオフセット要求を取り下げて約10億ドルの値引きを選択した。
この経験は「どれだけF-35を購入しても『商業的成功』が確定した後では出資国の地位は得られない」と思い知るキッカケとなり、F-35で作動するウイングマン=自律的飛行が可能な無人戦闘機への早期関与を模索し、ポーランド軍のヴィシニフスキー副司令官は昨年のInternational Fighter Conferenceで「米空軍が主導しているCCAとオーストラリアが主導しているMQ-28Aに注目している」と述べたが、今年のIFCでも「(ウイングマンの)能力を前倒しで手に入れるため資金の確保に努力している」と発言。
特に米空軍主導のCCAについて「インド太平洋地域での作戦運用に最適化されるのか、欧州地域での作戦運用に最適化されるのか見極めている」と言及し、運用環境が異なるインド太平洋地域向けのCCAなら検討から除外する可能性を示唆したのが興味深い。
米空軍のNGAD、米海軍のF/A-XX、仏独西のFCAS、英伊日のGCAPには有人戦闘機に随伴可能なウイングマン(自律的飛行が可能な無人戦闘機)が設定され、リスクの高い一部任務を肩代わりしたり、有人戦闘機の認識力や戦場に運搬するペイロードを拡張したり、価格高騰で減少傾向が続く航空戦力の量を補完できると期待されているが、ウイングマンの運用は次世代戦闘機のみが利用できる固有要件ではなく、第5世代機や第4世代機向けに実用化が相当前台しされている。
第6世代機の実用化は最速でも10年後の話で「次の戦争に間に合わない」という懸念から「コネクティビティとデータ処理能力を強化した第4世代機」の需要が高まり、欧米諸国や防衛産業企業は「2020年代にウイングマンが必要」「次世代戦闘機の実用化前にウイングマンが必要」という認識で一致し、米空軍は2020年代後半にCCAを実用化させて運用を開始する予定、フランスも10月「Rafale F5とF5規格で作動するステルス無人戦闘機を2030年までに開発する」と、英国とドイツも10月「戦闘機に随伴するプラットホーム分野で協力する」と発表。
英国とドイツF-35とTyphoonの運用国なので「両機に対応したウイングマンを共同で開発する」と示唆した格好で、ポーランド空軍は遠くない将来「F-35Aの追加導入」「F-15EXの新規導入」「Typhoonの新規導入」の何れかを選択しなければならず、トゥスク首相も疎遠になっていた欧州主要国との関係強化を望んでおり、ドイツ、フランス、イタリアと共に地上発射型巡航ミサイルを共同開発する予定だ。
米空軍主導のCCAも豪主導のMQ-28Aもインド太平洋地域での作戦運用に最適化される可能性が高く、これだけ条件が整ってくるとTyphoonを選択して「英独の取り組み」に合流するのが最適解かもしれない。
因みにAirbusは「ドイツ空軍のTyphoonをウイングマンのテスト機に改造する契約を2025年に締結したい」と考えており、最も簡単に有人・無人チーミングの概念を実装する方法は「専用のデータリンクと通信システムをポッドにまとめて外部パイロンに統合する方法だ」と述べている。
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※アイキャッチ画像の出典:Boeing MQ-28
日本の場合製造余剰もある関係から限定的なF-35サプライチェーン参加国ですよね。>後から
整備拠点とかある日本が割と例外枠なんだろうけど。
「後から」といっても米国分のIOC獲得するずっと前の2011年と主要国分が軒並みIOC獲得済みで完全に軌道に乗った2019年では状況にかなり差がありますからね。
開発費分担金の支払いを免除されたり、結果だけ見ると色々と日本は優遇されている。
まあ、米国にとってインド太平洋の比重が高まったと言う、米国ありきの話ではあるんだろうけど。
「インド太平洋向けウイングマン」
と
「欧州向けウイングマン」
どう違うんでしょう?
インド太平洋向けウイングマンは、欧州向けより航続距離が長めで、大型で高価になりがち
って感じでしょうか
日本はトルコが自滅したタイミングで参加したからか、基礎工業力が評価されたのか、F-35プロジェクトでも恵まれた地位にいますね。
しかし英独のウィングマンは本当にタイフーン専用になるんですか?彼等なら販路拡大を考えて、他戦闘機にも適合させてきそうですが。
どこのウィングマンも、もちろん中や露のものも含め後継機でも使用できるようになされていくはずです。
ただ、記事にもある通りまずは「次の戦争」までに実現させにいくことが最優先でしょう。
後継機前提でそれを現行機にも当てはめようとした結果延期を重ねる始末となっちまったは、「ウクライナ後」には許されなくなりましたので。
ウイングマンにどの様に指示を出すのだろう。
ボタン一つで勝手に目標を探して、攻撃してくれるのだろうか?
一々目標をしてして、引鉄を引いてやるのだろうか?
視線でターゲットしてボタンか音声入力なんですかねえ
音声入力なんて遅くてやってらんないと思いますけど、自律攻撃は事故が政治的な意味でも怖いし
技術の未成熟さをカバーするのは中国やロシアがよくやる複座型がシンプルにベターな気がする
技術さえ成熟したらパイロットが意識しないでいいレベルで統合されるんじゃないかな
親機が自動で随伴機のレーダー情報を統合しパイロットに提示、その情報をもとにロックオンしたら自動で随伴機にも伝わり、パイロットは親機か子機か気にせず一つの操作で親機・子機が自動で支持を振り分けて実行
統合情報を評価・状況判断しパイロットないしオペレーターに的確に提示するのはAIの仕事です。
米空軍のモザイク戦構想を参照すれば、単座有人機(F-35A)パイロットは状況を把握・判断し攻撃の可否に係る意思決定を行うだけです。将棋や囲碁のAIソフトのように推奨選択肢を提示するのかもしれません。
後は命令のキャンセル操作が行われない限り、連携無人機はAIシステムの判断による自動戦闘を遂行、てところかと。
単座機で可能か否かはAIの自律化レベルとマン・マシンインターフェイスによるでしょう。
AI搭載型無人機による自律攻撃は国際的なコンセンサスが取れてないのでまだ先でしょうね。
戦闘攻撃機で複座型もあるラファール、F-16、F-15Eは兵装システム士官(WSO)が同乗するのでパイロットに負担をかけないF-35よりも早く形になりそうです。
タイフーンの複座型は用途が調べ切れなかったのでWSOを乗せるには課題があるのかもしれません
そもそも空戦が基本的に視界外で行われるんだからCCAにはポジショニングだけ指示して拡張センサや外付けウェポンベイとして扱うだけじゃないですかね。少なくとも初期のCCAは。
同感。
ただ、F35のウェポンベイ縛りになっている各種兵装のサイズ縛り解除のメリットがかなりデカいと思う。
「だけ」というのは運用のシンプルさの話で、色んな面でメリットは小さくないと思いますよ。
仰る通りペイロードの拡大だけでも大きいし、ラファールやタイフーンみたいなRCS小さめの4.5世代機なら兵装積まずに出撃する、という選択肢もあるでしょう。
数百km前方で別角度から観測できるセンサー機のいやらしさも言うに及ばずですね。
> 英独のウィングマンは本当にタイフーン【専用】になる
そんな事どこにも書いてない様な…。
少なくともこの記事では↓と書いてますが。
>F-35とTyphoonの運用国なので「【両機】に対応したウイングマンを共同で開発する」と示唆した格好
もう次の戦争あるの?ロシア近隣?