ポーランドのドナルド・トゥスク首相は6月「シールドAIからX-BATの生産を打診された」と明かしていたが、8日に開幕した防衛見本市=MSPO 2026でシールドAIとポーランド企業がX-BATの設計、製造、納入およびポーランドにおける維持管理に関するパートナーシップの基本合意書に署名した。
参考:Shield AI signs X-BAT letter of intent with Poland’s PGZ and WZL-2
参考:Back to life: How Shield AI’s future unmanned fighter made decades-old tech new again
参考:The Life of AVEN ® — How a 1990s F-16 Thrust-Vectoring Nozzle Became the Key to X-BAT’s Vertical Takeoff
参考:Navy Invests in Shield’s Vertical-Takeoff Drone; Air Force Holds Off
ポーランドから関心以上の具体的なものを引き出せるかどうかはX-BATの開発が進展するかどうかに懸かっている
Shield AI(シールドAI)は2015年に設立されたAI技術を核とする防衛スタートアップで、特に通信やGPS信号が遮断された環境下で重要になってくる自律技術で優位性を持っているため、XQ-58、MQM-178、MQ-20、FQ-44Aなどの無人機にもシールドAI製の自律ソフトウェア=Hivemind(ハイブマインド)が採用され、さらにシールドAIはV-Batで有名なマーティンUAVを買収して無人機市場に参入を果たし、2025年10月に垂直離着陸が可能な無人戦闘機=X-BAT開発計画を発表して注目を集めている。
MQ-35 V-Batは米海軍、米海兵隊、米国沿岸警備隊、オランダ海軍、オランダ海兵隊、ルーマニア海軍、ギリシャ陸軍、ギリシャ空軍、ポーランド海軍、ウクライナ無人システム軍、アルメニア陸軍、アルゼンチン海軍、インドネシア陸軍、インド陸軍、台湾海軍、海上自衛隊などが採用し、国防総省、米空軍、シンガポール空軍、ボーイング、ノースロップ・グラマン、RTX、L3ハリス、HII、GA-ASI、クラトス、エアバス、EFA Group、台湾中科院、韓国航空宇宙産業、LIG D&A、三菱重工業などもハイブマインド採用で提携しており、自律ソフトウェア分野では限りなくトップティアに近い存在だ。
X-BATも複雑なシステムなしで垂直離着陸が可能、エンジンのアフターバーナーだけで垂直離着陸に必要な推力対重量比を達成できる、搭載武器を放棄することなく垂直着陸が可能、フェリー飛行状態ではなく武器を搭載した状態で最大3,700kmを飛行可能という野心的な計画だが、X-BATはアプローチが革新的なだけで採用技術はどれも成熟したもので構成され、特にX-BATの垂直離着陸を実現する軸対称ベクトル排気ノズル(AVEN)は1990年代のF-16MATV計画で使用されたもので、シールドAIから連絡を受けるまでAVENノズルはGEエアロスペースの倉庫に眠ったままだったらしい。
The afterburner is lit.
We successfully completed afterburner testing with @GE_Aerospace’s AVEN on the F110 engine, validating the thrust and control X-BAT’s propulsion system requires for vertical flight.
X-BAT development continues.
Autonomy for the world. The greatest… pic.twitter.com/IxNvub4daX
— Shield AI (@shieldaitech) September 9, 2026
シールドAIとGEエアロスペースは倉庫からAVENノズルを引っ張り出して改修し、新たにソフトウェアコードを書き直してテストを行うと完璧に作動し、シールドAIのシヴァ・ヴァラバネニ氏は「これが2026年末までにプロトタイプの飛行実験を実現する最大の鍵となった」「ある意味では推力偏向ノズルを製作し、その技術を検証し、我々が必要とするスピードでそれらを成し遂げることのほうがエンジンを調達するよりも困難だ」と述べたが、あくまで30年前のAVENノズルは開発期間を圧縮するためのもので、最終的にはより軽量で、より高速で、より高性能なAVENノズルが作られる予定だ。
つまりX-BATの実現で重要なのは「新しい技術の開発」ではなく「成熟した各技術を上手く統合できるかどうか」に、X-BATをビジネスとして成立させられるかどうかは「潜在的な顧客を確保できるかどうか」に懸かっており、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は6月「シールドAIからX-BATの生産を打診された」と明かした。
トゥスク首相は米産業界との協力の可能性や、防衛産業に関連したポーランドへの投資について語った中で「シールドAIがF-16エンジンの地域整備拠点を構築するという非常に興味深い提案を行ってきた。同社はこれをポーランドに設置することでNATO諸国全体を支える拠点にしたいと考えている」「さらに特筆すべきは同社の真の狙いがポーランドと協力してX-BAT計画に向けた生産体制を構築するという点にある」「これは世界初となる自律型戦闘機であり、いわばF-35の無人機版とも呼べる機体だ」「これは最高峰の先端技術であり、武力紛争下において我が国が航空優勢を確立するための決定的な好機となる」と言及。
Reutersも「ポーランドはシールドAIからX-BATの生産を打診された」「X-BATはF-15やF-16に使用されているF110を使用する予定だ」「シールドAIはF-16エンジンの地域整備拠点をポーランドに構築したとも提案した」と報じ、Defense Newsも「ポーランドはX-BAT計画への参加を検討している」「これはF-35A追加導入を検討している中での出来事だ」と報じていたが、8日にポーランドで開幕した防衛見本市=MSPO 2026でシールドAI、PGZ(ポーランド国営軍需企業)、WZL-2(軍用航空工場第2SA)はX-BATの設計、製造、納入およびポーランドにおける維持管理に関するパートナーシップの基本合意書に署名した。
MSPO 2026 made it clear that X-BAT fills a critical capability gap for Poland and European allies: a multirole aircraft that carries large strike weapons to strategic distances while staying survivable in the air and on the ground.
@rtsengusa and team met with Poland’s senior… pic.twitter.com/z77VDMfHRZ— Shield AI (@shieldaitech) September 11, 2026
シールドAIはプレスリリースの中で「この合意に基づき各社はポーランドおよび他の顧客に向けたX-BATの設計、製造、納入にPGZグループがどのように参画するかを協議して明確化し、ハイブマインドやV-BATなどのシールドAI製品に加え、維持・修理・オーバーホール(MRO)や訓練といった分野のシールドAIサプライチェーンへの参加、さらに技術移転や開発参加も協議対象に含まれている」と説明し、この基本合意書の有効期間は5年間なので「そこまでにX-BATの実現を証明してみせる」という意味だろう。
PGZにとっても「今すぐX-BAT計画に出資する」「具体的な製造に関する取り決めを詰める」「X-BATをポーランド軍に売り込む」というわけではなく、まだ実用化できるかどうか分からない段階でX-BATへの関心を「基本合意書への署名」という具体的な形で示し、X-BATをビジネスとして成立させるための手助け=潜在的な顧客に対するアピール材料を作ることに協力することで「本当にX-BATが実現したときはPGZを優遇してもらう」という一種の取引である可能性が高い。
Yesterday at #MSPO2026, we signed a letter of intent with @PGZ_pl and @WZL2_SA for the delivery of X-BAT to Poland, alongside X-BAT production and sustainment capabilities in country.
The partnership could build Polish capability across production, final assembly, F110 engine… pic.twitter.com/bZYXhxGMbT
— Shield AI (@shieldaitech) September 9, 2026
戦闘機購入を検討している国が「戦闘機購入への関心」を示すことは影響力と友情を買う最も簡単な方法で、戦闘機を提案してくる売り手にも「我々には他の選択肢がある」とアピールすることで交渉立場を強化することができ、今回の件はポーランド政府とPGZが将来有望な可能性=X-BATを開発しているシールドAIから影響力と友情を買い叩いた格好とも言える。
ちなみに米空軍はX-BATについて様子見の姿勢を崩していないが、シールドAIは国防総省の国防イノベーションユニット(DIU)と米海軍から5,000万ドルの資金支援を受け取っており、ミッチェル研究所のヘザー・ペニー氏は「海軍とDIUが資金を投入したいのなら彼らに費用を負担させればいい。最終的にコストと事業としての妥当性が実証されたなら、空軍はそれを完成品として調達すれば済む。空軍の現状を踏まえると現在の装備更新プログラムに充てる十分なリソースすら事欠く有様なので、一杯の瓶にさらに石を詰め込むことはすべきではないし、これ以上の負担を空軍にかけ続けることは全く理にかなっていない」と述べた。
関連記事:シールドAIがポーランドにX-BAT生産を打診、トゥスク首相も好機だと発言
関連記事:GEが垂直離着陸に対応したX-BATにエンジンを独占供給、F-15やF-16と同じF110
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※アイキャッチ画像の出典:Shield AI





















今年はまずホバリング試験らしいですね。期待。
30年前のエンジンと、最新無人機の合体
AVENノズルの動画を検索したら、シールドAIが注目した影響か、最近の動画が増えてますね
エンジンを開発した人たちも、まさか30年後に、無人機を垂直に飛ばす為に使われるとは思っていなかったでしょうね
こういう有り物の活用が大事ですね。
ヘリが載っていない護衛艦の飛行甲板から、X-BATが発進して欲しいものです。
艦体全体で空母に準じた能力を持てれば良いですね。
X-batってF110で飛ぶの!?
なんかおもってたよりだいぶガッツリなんだな
いくら簡単なシステムだとかいってもさすがにそれなりの規模の整備インフラが必要になりそうだし
F110自体そんなポンポン作れるもんでもないんじゃないの
F-16 MATV(NF-16D) は 現在 X-62A VISTAとしてMATVノズルを取り外し、AI自律飛行プログラムのテスト機になっていますね。
シールドAIが「GEにテスト済み多軸推力偏向ノズルがありそう」と目を付けたのは案外、X-62A のAI自律飛行関連で歴史を漁った可能性もありそうなのが興味深いです。
一方でポーランドのF-16エンジンメンテナンス拠点がF110-GEエンジンのみなのか、F100-PWエンジンも対応なのかは気になるところです。
ヨーロッパでF110エンジンを積んだF-16を運用しているのは
・ギリシャ
・スロバキア
・ブルガリア
くらいでポーランドのF-16はF100-PWエンジン搭載機です。