欧州関連

ポーランドメディア、天武導入に関する韓国側との交渉は勢いを増している

ポーランドのディフェンス・メディア「Defence24」は26日、発注が殺到するHIMARSの入手性が怪しいので「天武(K239 Chunmoo)導入に関する韓国側との交渉は最近勢いを増している」と報じて注目を集めている。

参考:Koreański Homar przyspiesza

天武の導入をどれぐらい本気で考えているのかは不明だが、韓国防衛産業界にとってまたとないチャンスであることだけは確かだ

ポーランドと韓国は豪陸軍の次期歩兵戦闘車や米陸軍のブラッドレー後継プログラムに提案されているRedback、アラブ首長国連邦が導入した天武(K239 Chunmoo)の輸出交渉も進められており、韓国メディアは「近い将来に追加契約の発表があるかもしれない」と報じていたが、ポーランドのメディアも「非公式の情報だがK239導入に関する韓国側との交渉は最近勢いを増している」と報じて注目を集めている。

韓国のハンファディフェンスが開発した天武は国産の九龍や米国製のM270 MLRSの後継として開発された多連装ロケットシステムで、MLRSよりも優れた油圧駆動装置とデジタル制御装置を採用しており、高度と方位角の同時駆動が可能で射撃に要する時間がMLRSより20秒ほど短縮、再装填時間に至ってはMLRSより100秒近く短縮されている。

さらに天武には130mmロケット弾(射程23~30km)、227mmロケット弾(射程45km)、HIMARSやMLRSで使用するGMLRS弾に相当するGPS誘導の239mmロケット弾(射程80km)、ATACMSに相当するKTSSM-I(400mm弾道ミサイル/射程180km)とKTSSM-II(600mm弾道ミサイル/射程290km)が用意されており、米国が開発を進めているGMLRS弾の射程拡張弾=ER GMLRS弾に相当する新型ロケット弾(射程160km~200km)の開発も進行中だ。

出典:Hanwha

ポーランドはHIMARSを20輌取得することが決定しているもののウクライナ侵攻を受けて砲兵戦力の拡張を決断、今年5月に「追加でHIMARSを500輌調達したい」と米国に打診しているが、ウクライナ提供分の埋戻し需要に加えてHIMARSの有効性を実感した国(オーストラリア、台湾、エストニア、オランダ、ハンガリー、スウェーデン)から発注や問い合わせが殺到。

米陸軍もHIMARSの追加取得を検討しているためDefence24は「ポーランドの突出した需要を短期間で満たせるか怪しく、国防省はHIMARS調達とは別に韓国からK239を調達するため協議を進めており、非公式の情報だが韓国側との交渉は最近勢いを増している。K239は高度なモジュール設計を採用しているためHIMARS弾薬やポーランドが製造するWR-40向け弾薬に対応させることも技術的に可能だ」と報じており、K239の導入は「大規模な産業協力とセットだ」と付け加えているのが興味深い。

ポーランド陸軍の主力戦車はレオパルト2ファミリー(レオパルト2A4、2A5、2PL/M1)とT-72ファミリー(T-72M1、T-72M1R、PT-91)の2系統で構成されており、これを最終的に直輸入のM1A2と現地製造のK2PLの2系統に更新する予定だが、多連装ロケットシステムも直輸入のHIMARSと現地製造のK239の2系統で構成することをポーランドは考えているという意味だ。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. William Chockey

因みにノルウェー陸軍も退役したM270の代わりとなるシステム=長距離精密射撃システムの調達を計画中で、この需要を狙いノルウェーのコングスベルグと韓国のハンファは「共同で当該システムを開発することで合意した」とユーロサトリ2022で発表している。

恐らく両社は天武ベースでノルウェー陸軍モデルを開発しようと考えている可能性が高く、既に天武は韓国とアラブ首長国連邦が導入済みで、ここにポーランドまで加われればK9の時のように天武を採用する国が一気に増えるかもしれない。

果たしてポーランドは天武の導入をどれぐらい本気で考えているのかは不明だが、韓国防衛産業界にとってまたとないチャンスであることだけは確かだ。

関連記事:アラブ首長国連邦、韓国に発注した多連装ロケットシステム「天武」の1次バッチ/8輌を受領
関連記事:多連装ロケットシステムに発注殺到、ラトビアもHIMARS売却を打診
関連記事:韓国とノルウェー、歩兵戦闘車と長距離精密射撃システムの共同開発で合意

 

※アイキャッチ画像の出典:Hanwha

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コメント

    • δ
    • 2022年 8月 27日

    韓国もポーランドもオスロ条約に署名してないからクラスター弾が運用できないHIMARSじゃなくてK239を選んだんじゃないの

    15
    • zerotester
    • 2022年 8月 27日

    ウクライナ戦争で大いに株を上げた兵器は無人機、MLRS(HIMERS)、GPS誘導榴弾、携行対戦車ミサイル、地対空ミサイルでしょうか。
    当然それらは人気となり、売り手市場ですね。自走砲やMLRSを以前から売り込んでいた韓国はうまく時流に乗ったわけです。長大な前線で長年北とにらみ合っていた経験も生きているでしょうし。

    27
      • ヤゾフ
      • 2022年 8月 27日

      陸地を占領しない限り勝ちはないからやっと古典的な通常戦力の拡充に各国動いてる感じですね。

      7
    • はぁ
    • 2022年 8月 27日

    ポーランド1国でどれだけの実績が作れるのやら。全く韓国は素晴らしいチャンスを手にしましたなぁ。

    37
      • anon
      • 2022年 8月 27日

      武器だけではありません。 7兆円規模のポーランド原発事業も韓国の受注が有力だ。

      6
    • ななし
    • 2022年 8月 27日

    ジェネリック兵器という位置づけなのかな?

    4
      • ヤゾフ
      • 2022年 8月 27日

      単価が安いかは分かりませんが、現地での製造含めて韓国側の提案も魅力的だったのでしょう。
      正直500両も短期間で製造出来るわけないですし…
      産業協力もあるので半導体関係でもポーランドに利益となるのかもしれません。

      9
    • ブルーピーコック
    • 2022年 8月 27日

    これを時代の波に乗れたと見るか節操無しと見るかは人それぞれだと思うが、ウクライナに近い国々からすれば、十分な性能を持つ兵器を自国生産させてくれる韓国メーカーはありがたいだろうな。
    自国産業や技術を保護したがるアメリカやドイツの間隙を突いた形とはいえ、これから兵器輸出するつもりなら参考にできる部分もある。(日本が同じやり方でやれるとは思えないし)

    ただアメリカやドイツ、フランスの軍需産業がこのまま指くわえて見ているとは思えないから、来年か今年の冬あたりに色々と動きそうな予感。

    13
    • 天武
    • 2022年 8月 27日

    まぁ、次から次へと。

    韓国は、グウの音も出ないほど凄いなぁ。

    33
      • まだまだ
      • 2022年 8月 28日

      実機が届いて運用されるまでは予定は未定、信用ならん
      完成品が届きさえすれば本国以上にきっちりメンテもするだろうし文句のない仕事はするだろう
      が、契約だけではなあ。初期の数台だけでもとっとと履行してくれたらそれから畏れ入るよ

        •  
        • 2022年 8月 28日

        >が、契約だけではなあ。

        ポーランドは、第三世界ではないんだよ。

        「契約」の意味を理解しろ。

        27
    • 名無し
    • 2022年 8月 28日

    日本は将来確実に貧しくなってるのに謎に余裕かましてるからな
    今の団塊世代が逃げ切れれば良いと思ってるだけ、それよりも貧しさが加速して来たから今までやってこなかった癖にノウハウ無いのに売れるもの売ろうと兵器輸出なんて言い出しただけだ。

    福祉とか言い出したのも子どもを前世代より産まなかった団塊が老後に危機感今更覚えたからだ

    韓国は内需が弱いのわかってるし外貨を稼がないといけないのをしっかり理解してるから兵器だろうが生き残るのに必死でビジネスは貪欲にやってる

    うさぎと亀状態だぞ

    32
    • Rex
    • 2022年 8月 28日

    このスピード感が強みなのかも、、
    日本はやっぱり政府や企業も「リスク回避」に動偏って動きが鈍くなってんなぁと感じる。
    武器に限らず世論含めて全般的にね。

    32
    • プー
    • 2022年 8月 28日

    ここまでくるとポーランド人は韓国が中国か日本の一部地域だと思ってるんじゃないかって勘ぐってしまうな・・・

      • 幽霊
      • 2022年 8月 28日

      どんな妬みかた?

      30
    • makumaku
    • 2022年 8月 28日

    ポーランドは、一部のK2やK9、場合によってはK239も、ウクライナに提供して、テストベッドにするだろうと思います。相手はロシアなのですから、ウクライナの戦場ほど実用的な試験場もまたとないでしょう。

    • mike
    • 2022年 8月 28日

    実戦を経験してフィードバックできるのは有利よね。
    平和であるのに越したことは無いが、この世界は不穏当すぎる。

    4
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