欧州関連

ポーランド軍、状況に大きな変化が生じたためブラックホーク調達を中止

ポーランド国防省は2023年7月「AH-64EやAW149を補完するためブラックホークの調達手続きを開始した」と発表したが、調達局は「状況に大きな変化が生じたため入札実施や正式な発注が公共の利益に反する事態に陥った」と述べて「S-70i調達を中止する」と発表した。

参考:Polska rezygnuje z kupna śmigłowców Black Hawk dla wojska. “Wystąpiła istotna zmiana”
参考:Black Hawki „przesunięte w czasie”. Agencja Uzbrojenia wyjaśnia

調達局が主張する「予測できなかった状況の大きな変化」が何を指しているのかは不明

ポーランド国防省は2023年7月「AH-64EやAW149を補完するためブラックホークの調達手続きを開始した」と発表、この機体はシコルスキーが製造するUH-60やS-70Aではなく、2007年にシコルスキーが買収したポーランド企業=PZL Mielecが製造するS-70iで32機の調達を予定していたものの、調達局は「状況に大きな変化が生じたため入札実施や正式な発注が公共の利益に反する事態に陥った」「これは以前には予測できなかったことだ」と述べて「S-70i調達を中止する」と発表した。

調達局が主張する「予測できなかった状況の大きな変化」が何を指しているのかは不明だが、ポーランドのディフェンスメディア=Defence24は「このS-70iはAH-64Eと緊密に連携できるよう設計された武装バージョンで地上攻撃と輸送の両方で運用可能だった」「AH-64Eを運用する陸軍航空部隊に配備される予定だった」と報じ、AH-64Eの調達は維持される見込みらしい。

恐らくウクライナとロシアの戦いから得た教訓に基づいて「S-70iの武装バージョンに将来性がない」「この種のプラットホームで地上攻撃を行っても生存性を確保できない」と判断した可能性が高く、現在はヘリに対戦車ミサイルよりも射程距離が長い徘徊型弾薬を統合するのがトレンドなので、思い切ってS-70iの調達を止めたのかもしれない。

出典:Photo by U.S. Army Reserve Sgt. 1st Class Nina J. Ramon, 206th Broadcast Operations Detachment

因みにポーランドが調達するAH-64E V6バージョンは無人機のセンサーや飛行ルートを直接制御(通信範囲も30km~100kmまで拡張)でき、さらにデータ送受信機能が追加された統合戦術無線システムが統合されているためV6バージョンは戦場のネットーワーク化におけるハブとしても機能し、統合部隊間の状況認識力や調整力の向上が期待されている。

関連記事:ポーランドがAH-64E調達契約を締結、米国がAH-64Eの韓国売却を承認
関連記事:ポーランドがサーブ340 AEW&Cの調達を発表、S-70iの調達手続きも開始

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Chase Murray

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コメント

  • コメント (13)

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    • oui
    • 2025年 6月 06日

    新大統領関連じゃなければ問題無しかも

    3
    • SB
    • 2025年 6月 06日

    S70i、たしかUH-60M相当の機体だっけ
    確かに輸送に使うならともかく、攻撃機として使うなら高価な割に武装がショボいから中止するのも分かる

    16
    • たむごん
    • 2025年 6月 07日

    ポーランド軍は、装備拡充を続けているわけですが、メリハリをつけているのでしょう。

    (ロシアを仮想敵国とするならば)ウクライナ戦争の戦訓を生かす必要がありますから、何らかの影響は考えられるわけですが、現時点でどういった防衛線術を考えているのか気になりますね。

    3
    • Xッター
    • 2025年 6月 07日

    ドローンとの連携や対ドローンを考慮していない兵器は
    今後は肩身が狭くなる一方でしょうね

    8
    • 58式素人
    • 2025年 6月 07日

    ”V6バージョンは戦場のネットーワーク化におけるハブとしても機能し”
    自機のセンサーに依らないのならば(無人機のセンサー依存ならば)、
    必ずしも、前線に居る必要はないのかな、と思ったり。
    中継用の無人機とどちらが良いのでしょう?。
    誘導/中継電波の出力が大きいかもしれないのは良いですが、
    そうすると今度は、電波の発信源を狙うドローンに狙われたりして?。
    考えどころ?でしょうか?。

    3
      • John Smith
      • 2025年 6月 07日

      64Eはロングボウ・レーダーを外してデータリンク用のアンテナを積んじゃったから自分の視界が狭い。なので、ロングボウ・レーダーを積んだ僚機(こいつも64E)と二人三脚でAEW & C として活動するのが64Eのコンセプト。

      データリンクの中継機だからといって管制機を無人機にはできない。

      例えるなら64Eは通信能力が高いハイマースで、最前線の情報を元に攻撃するのが役割だけど、データリンク能力が高いから中継機になるし、偵察している16式キドセンにそのまま撃っちまえとか19式榴弾砲に火力支援を指示する権限まで与えられている感じ。

      1
      • nachteule
      • 2025年 6月 08日

       そもそも前線の距離をどう考えてます?数キロ~数十キロとか言われる事もありますが数キロレベルであるなら、ヘルダイアやセンサー類の有効距離とMANPADSのリスクを考えると、元からそこまで前進する必要は無い感じがしますが。
       センサーでの探知だけではなく自機での攻撃まで含めるなら当然そのレンジ内までは前進する必要がある。
       AH-64Eの運用法は様々であるけど米軍のD型でも当初予定に有ったようにロングボウの有無で1個中隊8機中3機は搭載型5機は非搭載型で改良型データモデムの情報共有で攻撃とかあったけど、性能のばらつきが問題だったか最終的にはトータルの運用機数減らしてほぼ全機高価なロングボウを装備するようにしている。国によってはフルスペックは要求せずにマスト上部に蓋をした情報共有型のローの採用は有り得る話。

       それに中継用のUAVとどちらが良いってポーランドに限った話なのかAH-64E導入国の話なのかで変ってくるとしか言い様がない。中継機能を持たせる事が出来るMQ-20があるけど速度や航続距離は優位だと思うけど垂直離着陸や機関砲を装備してないし装甲も薄い。
       運用国がどのようなドクトリンで何をさせたいかで変るから精度の高い答えなんて出ないでしょう。

       発信電波に関しては無指向で垂れ流しみたいな事はしないと思うので指向性や発信時間、本体が移動しながらとか様々な要因があるので単純にリスクが上がるのかって気がしますね。

    • ブルーピーコック
    • 2025年 6月 07日

    武装バージョンはそうだよな。1機分の値段で数十機〜数百機の攻撃型ドローンを調達した方が効率的かもしらんし。でもこの件を曲解して「ブラックホークはもう使えないんだ!!!」とか言う奴は出てきそう。

    4
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2025年 6月 07日

      物理と航空力学という現実があるので「繰り返し整備して使えて、デカいペイロードで多様との積載物に対応できて、安定・高速飛行しつつ搭乗員を入れ替えて色々やりたい」という多用途目的だとまだヘリに一日の長がありますからね
      ドローンもデカくし過ぎたり多用途で使えるようにしようとするとコスト面のメリットが減っていきますし

      11
    • 名無し
    • 2025年 6月 07日

    武装型がダメなだけで別な輸送用中型ヘリの調達続けるのか、そもそもやめてしまうのかどっちだろ

    1
      • ブルーピーコック
      • 2025年 6月 07日

      ポーランド国内のレオナルドの子会社・PZLシフィドニクがAW149をライセンス生産して輸送型やCSAR(戦闘捜索救難)型などを調達しているので、そっちに言及が無いならAW149の方を進めていくのではないでしょうか。

      2
    • 名無しの航空機
    • 2025年 6月 09日

    ポーランドの事だからS-70iからKUH-1に切り替えるのかと思ってたら違った、調達計画自体中止か

    • そら
    • 2025年 6月 10日

    この件には関係ないけど、ヘリをドローンの母機や指揮管制機にするのは無しなんだろうか?
    前線後方から素早く移動できて地形にも左右されず、補給も容易だと思うんだけど

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