ウクライナ戦況

ポーランドのモラヴィエツキ首相、ウクライナに戦車を提供したと認める

ポーランドのモラヴィエツキ首相は26日、初めてウクライナに戦車を提供したと認めたが「提供した数」については言及を避けている。

参考:Kancelaria Premiera

ポーランドも200輌以上保有するT-72M1をウクライナに全て引き渡すのは流石に難しいだろう

ポーランドとウクライナの国境地域ではT-72を運搬する車輌が多数目撃されているもののドゥダ政権は「保有するT-72をウクライナに提供した」と認めてこなかったが、英BBCやTime紙などは「T-72をウクライナに提供したポーランドのギャップを埋めるため英国はチャレンジャー2を送る」と報じており、英国防省もチャレンジャー2をポーランドに送ること認めている。

これを受けてモラヴィエツキ首相は26日「ポーランドはウクライナに戦車を送ったが提供した数は明かせない」とTwitter上で発表した。

因みにポーランド陸軍は今月5日にM1A2/SEPv3×250輌導入に関する正式な契約を締結したが「M1A2はT-72の更新用ではない」ので注意が必要だ。

出典:Photo by Sgt. Nathan Franco, Fort Irwin Operations Group

ポーランドは共産主義時代の1967年に制定された国防法(防衛義務法)を修正もしくは関連法案の付け足しで運用を続けてきたが、2021年10月に「旧国防法を整理して本格的な抑止力を整備する」という目的のため新しい国防法(祖国の防衛に関する新法)を導入を発表、議会での審議や採決など所定の手続きを経て今月23日に発効した。

この新国防法の下でポーランド政府は国防予算をGDP比3.0%に引き上げ、装備の国内調達を義務付ける制約(予算ベースで約50%)廃止、軍の規模を14万人から30万人に増強することになるため、M1A2はT-72の更新用ではなく戦車部隊の拡張用で、検討が進められている次期主力戦車プログラム(ウルフ・プログラム)で旧式戦車の更新を行う予定だ。

出典:Visegrád 24 ポーランドとウクライナの国境地域で目撃されたT-72の様子

しかも2022年に引き渡されるM1A2の数は28輌に過ぎず、250輌全ての引き渡しが完了するのは2026年なので、200輌以上保有するT-72M1をウクライナに全て引き渡すのは流石に難しいだろう。

それでもポーランドがT-72をウクライナに提供したと認めたのは初めてなので中々興味深い。

関連記事:英国、ウクライナにT-72を提供したポーランドにチャレンジャー2を寄贈
関連記事:ポーランドのM1A2導入の真相、やっぱり次期主力戦車プログラムは継続予定

 

※アイキャッチ画像の出典:Mroko94 / CC BY 3.0

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コメント

    • 無無
    • 2022年 4月 26日

    もはやロシアを刺激しすぎないように気を遣う意味があるのかすら怪しい
    プーチンいる限りウクライナ戦争は終わらないだろうし、ウクライナの敗北ですべてが終わるはずもないから西側は支援を続けるしかない
    次は戦闘機の供与に至るのか、そこに注目

    33
      • 四凶
      • 2022年 4月 26日

       最後の一線超えずに他国が非交戦国でいる限りは過去の大戦から普通の対応で十分に気を使っている。
       そうでなければ湾岸戦争やコソボとかみたいに西側の国がガチの正規軍でロシアをとっくの昔に殴っている。

      3
      • けい2020
      • 2022年 4月 26日

      多国籍正規軍でロシア攻撃してないですし、最大限気を使ってるかと
      プーチンがウクライナ相手だけなら、大国ロシアのメンツ的に核を使わないという判断なのでしょう

      ロシアは世界の敵になってるので、すでに将来の危険排除的にも多国籍軍で
      ロシアを全方位から攻撃してもおかしくない状況ですけど、核戦争を避けるために出来ないで居る感じ

      1
    • zerotester
    • 2022年 4月 26日

    ポーランドが供給するのはどの型のT-72でしょうね。独自に近代化改修したものもあるようですが数は限られているでしょうか。

    ウクライナはロシアから鹵獲したT-72AVやT-80BVMを使ってるよという写真がTwitterにありました。これは最新鋭ですね。

    一方ロシアはガチで最新鋭のT-90Mプラルィヴを投入したようでこれも写真があります。ただ配備が始まって1年経ってないので数は限られているのでしょう。

    ウクライナ軍の人は「戦車の訓練なんて2週間あればできるから西側の戦車どんど送ってくれ」と言ってますね。

    18
      • tarota
      • 2022年 4月 26日

      このブログの読者は割と否定的だけど割と速成で戦車兵作れると思うんだよね。達人育てるならまだしも
      なので74式送ってもそれなりに使いこなすとは思う
      流石に対戦車戦闘は無理だと思うけど

      1
        • 猫鉈
        • 2022年 4月 26日

        乗り方、動かし方を2周間で学べることと、運用に必要なインフラを構築できるかはまた別だからではないでしょうか

        25
          • tarota
          • 2022年 4月 26日

          本当にそんなインフラが必要なんですかね…燃料などの兵站面を危惧してるのかもしれませんが
          あんなヘンテコ作りしてるエレファントだってクルクスからベルリンまで戦い抜いたんだし、凄まじい勢いで消耗する戦争になってるのだから、メンテナンスはそこまで考えなくて良いと思うんだが

            • samo
            • 2022年 4月 27日

            自動車ですら、メーカーによる現地サポートがないとまともに動かせないよ
            サポートがない場所は盗難車からかっぱいだ部品使って動かしてる

        • 四凶
        • 2022年 4月 27日

         戦車が日本からしか来ないならともかく選択肢がある中で、自分がウクライナ立場で提供される各戦車のメリットデメリット見た上でそれでも74式選ぶなら薦めればいい。

         榴弾砲ならまだ間接射撃だから逃げようがある。敵に近い位置で戦う戦車なんて達人とは言わないでも、戦車の癖とかやってはいけない事を早々に習熟なんて出来るのかね。
         アサルトライフルがメインのゲリラ相手ならまだ74式でも良いと思うがガチの正規軍相手に提供するにしては装備や状態が悪い。

        2
    • あばばばば
    • 2022年 4月 26日

    ポーランドにしてみればやるしかないのだろうが、現在の戦争によって積み重なった戦費がウルフプログラムに影響を与えるのではないだろうか
    今にしてみればPT-91含むT-72系、レオパルト2A4(PL)/A5、エイブラムスA2SEPv3、チャレンジャー2でグチャグチャだしな

    • 58式素人
    • 2022年 4月 26日

    余計なお世話と思うけれど。
    M1A2の主機を、レオ2と同じユーロパックに換装した方が良いのでは。
    燃料消費が凄くて、兵站が大変らしい。
    聞いた話だけれども、新生イラク軍が、M1A2を貰ったのは良いのだけど、
    燃料消費の件で兵站が追いつかず、使いにくいので、保管状態だとか。
    イラクは産油国だと思うのだけど。M1A2はよほど凄いのかな。
    ユーロパックでなくても、T72の主機は馬力が少ないので、もしその気があれば
    KMBDの6TDFエンジンをライセンスしても良いのでは。現在、1250SHPまでは出せるはず。

    1
      • 戦略眼
      • 2022年 4月 26日

      無理でしょう。
      エンジンルームは、そんなに都合良く出来ていません。
      ルクレルクとは、違います。

      2
        • あばばばば
        • 2022年 4月 26日

        M1のメーカーが、M1にユーロパワーパックを搭載して売り込もうと画策した時点で出来ない事はないのだろう。
        ルクレールでさえユーロパワーパックへの換装にはエンジンルームの拡張が必要になったそうだから、車体とパワーパック側ですり合わせは必要になるし、改造にはアメリカの許可が必要だ(許可が出るかは別問題)。

        交換するにしても、パワーパック自体受注してから2,3年納期が必要になるみたいだし、どのみち、すぐには改造といかないだろう。

          • AH-X
          • 2022年 4月 26日

          確か米軍もM1のエンジンをディーゼルに換装する構想があったと思います。
          実行しなかったのは技術的な問題ではなく費用対効果でしょうね。

          1
      • hoge
      • 2022年 4月 26日

      AGT-1500はTIGERプログラムで何十年も信頼性、整備性、ついでに燃費や出力も当初よりも改善が進んでいることや、
      リンク

      ガスタービンエンジンは実は非常に利点が多いので、下手に換装すると単に性能が劣化して維持整備の費用も含めたコストの圧縮につながるのかも怪しいと思われ。
      リンク

      3
    • 無題
    • 2022年 4月 26日

    M1はアメリカでも兵站が追いつかなくなりかけることもあったくらい燃費悪いからな

    4
    • AAA
    • 2022年 4月 26日

    だいぶ前に戦車を運んでいるところを目撃されてたのに認めてなかったポーランドが遂に認めたか
    素直に発表したチェコとの違いはなんだろう?
    ベラルーシとかいうロシア傘下の国と国境接してるからかな

    2
      •   
      • 2022年 4月 26日

      兵力が法で定められてるから、自国の兵力削ってしまうと法律違反になる
      からだと思う

      超法規的措置ってのも可能だが面倒いだろうし

      4
    • 無印
    • 2022年 4月 26日

    M1エイブラムスが西側第3世代で最大の生産数なのに、採用国があまり多くないのはエンジンのせいなんだろうなぁ…

    2
      • STIH
      • 2022年 4月 26日

      善意か悪意かよくわからないけど供与されたイラクはともかく、ポーランドは燃費の悪さをどうやってカバーするのかが気になるところ。
      とはいえ、戦車の台数に余裕があるところはアメリカぐらいだし、新規生産しているのは西側だと日本と韓国(とトルコ?)くらい。どれも想定戦場がポーランドとは違うから、法的な問題を抜きにしても相応に改造が必要だろうしなあ。

      3
    • 戦略眼
    • 2022年 4月 26日

    良く考えたら、欧米で戦車を新造している国は無いのでは。
    冗談抜きで、K2なり10式なり増産して送らないと不味いかも。
    中東からボッシュートするわけにもいかないし。
    取り敢えず、韓国からT-80とBMP-3とM48をボッシュートとして、ウクライナに送ろう。
    時間が稼げるなら、M48はSabraに改造してから送る。
    イスラエルとトルコが嫌がるかな?

    3
      • けい2020
      • 2022年 4月 26日

      世界でも戦車の車体・エンジン・砲塔・砲・砲弾・その他諸々を
      開発・製造できる国って両手の指すらないんですよね

      主要部分だけでも現在進行系で開発・生産してるのは日本・中国、、あれ?ほか何処だろう

      アメリカはリサイクルしてるが、0からは怪しくなってるし、ドイツ・フランス・イタリアも今は生産してない
      インドは多分できてるのかな、トルコ・韓国は主要部分を自国で作れてないし

      4
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