欧州関連

ロシア訪問を控えたマクロン大統領、ウクライナ侵攻回避に自信あると表明

プーチン大統領との会談を控えたマクロン大統領は現地メディアに「今回の交渉でウクライナ侵攻を回避できる可能性が高い」と明かした。

参考:EXCLUSIF. Crise en Ukraine : ce que Macron va dire à Poutine
参考:Emmanuel Macron says his negotiations with Putin ‘likely to prevent war’ in Ukraine

欧州の主権と平和を維持できる新しいバランスをロシアに提案するマクロン大統領

マクロン大統領はウクライナ問題やロシアの安全保障に対する懸念についてプーチン大統領と会談するため月曜日にモスクワを訪問予定だが、現地のJournal de Dimanche紙に対して「ロシア側と協議してきた内容に基づいて行われるモスクワ訪問で(ウクライナでの軍事衝突を)回避できる可能性があり、事態収束に向けた条件について話し合う予定だ」と明かしたため注目を集めている。

出典:Kremlin.ru / CC BY 4.0

ロシアがウクライナとの国境に10万人の兵力を集結させたのは西側から安全保障分野に関する譲歩を引き出すための戦略の一環に過ぎないと指摘したマクロン大統領は「ロシアの本当の目的はウクライナではなくNATOやEUと共存するためルールを明確化させたいのだ」と明かしたため、英メディアのThe Daily Telegraph紙は「モスクワ出発前にマクロン大統領はルール策定を主導できると自信を見せた」と報じているのだが、マクロン大統領が「ロシアにも国境付近に関する安全保障を要求する権利がある」とも述べているのが興味深い。

プーチン大統領が米国やNATOに一貫して要求している一つに「ウクライナのNATO不加盟確約」があり、これについて西側諸国は「加盟を申請するかどうかはウクライナが自由であり権利なのでNATOの方から加盟申請を受け付けないとは言えない」と主張してロシアの要求を退けたが、マクロン大統領は「ウクライナを含む欧州諸国の主権と安全保障は妥協の対象にならないが、ロシアにも国境付近に関する安全保障問題を提起する権利がある」と述べた。

出典:Mil.ru/CC BY 4.0

侵攻を回避できると自信を見せたマクロン大統領は「欧州の主権と平和を維持できる新しいバランスをロシアに提案する」と述べており、果たして妥協の対象外の手札だけでプーチン大統領と事態収束に向けた条件をまとめられるのだろうか?

もし事前の予言どおり事態を収束できれば欧州におけるフランスの存在感は大きくなり、マクロン大統領の再選も約束されたようなものだが、、、

関連記事:ロシアが侵攻を開始すればキエフは2日以内に陥落、犠牲者は最大5万人

 

※アイキャッチ画像の出典:Kremlin.ru / CC BY 4.0

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コメント

    • 折口
    • 2022年 2月 07日

    マクロン氏の事だから「欧州防衛における米国のコミットメントを規制する」とか出来もしない約束しそうだし、ロシアの侵攻を思いとどまらせたと勝利宣言したうえでロシアに公然と侵攻されて面目丸つぶれになりそうだな、なんて予感が…。
    まぁ過去5年の評価を踏まえると再選も正直微妙な感じですし、負けて元々の精神で分の悪いバクチに仏を賭けようという気持ちは分からないでもないです。

    28
    • A
    • 2022年 2月 07日

    フランスがねぇ~。
    ウクライナ君、風前の灯火。

    11
    • taro
    • 2022年 2月 07日

    そういえば昔チャーチルがヒトラーとの会談後に欧州の平和は保たれたとか言ってたな(すっとぼけ)

    6
      • 2022年 2月 07日

      チェンバレンでは

      20
      • 電話猫
      • 2022年 2月 07日

      それチャーチルじゃなくてチェンバレンじゃなかった?

      12
        • ダヴー
        • 2022年 2月 07日

        チェンバレンだね。
        ただ最近はこのチェンバレンの判断が再評価されているらしい。
        というのも、あの時点でイギリスは戦争準備が全くできておらず、もし開戦となったらイギリスは負けていただろう、この判断のおかげで貴重な時間を稼げた、という見方ね。
        もっともオーストリアは犠牲になってるし、今回は何の時間稼ぎにもなっていないのだけれど。

        17
          • STIH
          • 2022年 2月 07日

          数年前くらいにその説は聞いたな。聞いた当時は納得できたけど、よくよく考えてみたら、そこまで戦略的に考えていたら失意の退陣なんてないから、後付けの見方、あるいは単なる嫌味な気もする。

          5
    • 名前(必須)
    • 2022年 2月 07日

    フランスのジョゼフ・チェンバレンと呼ばれる日も近いか……?

    5
      • 2022年 2月 07日

      ミュンヘン会談のイギリス首相ならジョセフではなくネヴィル。ジョセフは父親でバリバリの帝国拡張主義者

      3
        • 名前 (必須)
        • 2022年 2月 08日

        訂正ありがとうございますm(_ _ )m

    • 無無
    • 2022年 2月 07日

    ロシアと水面下で探りあいをやってたんでしょう、何を交渉材料にするかを調べ落とし処を確かめたからこそ、ロシアに話ができる。
    これが上手く収まれば、逆にドイツは面目失墜しかねない

    1
    • L
    • 2022年 2月 07日

    何!?議論の余地がないからNATOはロシアの要求を突っぱねていたのでは無かったのか?
    一体どういう点から攻めるんだろう全く思い浮かばない

    3
      • 戦略眼
      • 2022年 2月 07日

      中距離弾道ミサイルじゃないかな。

    • 黒丸
    • 2022年 2月 07日

    ウクライナは10年間NATOに加盟しないとか
    現状固定化で話を進めそう。

    5
      • STIH
      • 2022年 2月 07日

      NATOが絶対飲めないのは現時点での加盟国(バルト三国など)からの撤退だったから、落としどころとしては実際ありなのかもしれない。ウクライナも東西をふらふらしすぎだったからねえ。

    • ブルーピーコック
    • 2022年 2月 07日

    マクロン「最低でも(ドネツク)州外。croyez-moi」

    2
    • あああ
    • 2022年 2月 07日

    ♪マクロンなら侵攻回避に自信が持てます

    4
    • くらうん
    • 2022年 2月 07日

    悪いがフラグにしか見えない

    4
    • たけやぶやけた
    • 2022年 2月 08日

    ロシアのウクライナ侵攻を回避出来たらマクロン大統領はノーベル平和賞ものだが果たして

    1
    • 匿名
    • 2022年 2月 08日

    プーチンさん「こいつちょろいから欺瞞情報で踊ってくれるみたいやし戦力集中完結してから全面攻勢に着手するわ従って2月20日まで猶予はあるマクロン君悪いな君のキャリアにドロ塗って!」

    2
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