欧州関連

ポーランド空軍の+α需要、産業協力を提示してタイフーン導入を提案か

英国、ドイツ、イタリア、スペインで構成されるユーロファイターコンソーシアムは28日、産業協力を提示してポーランドにタイフーン導入を呼びかけたと報じられている。

参考:Eurofighter courts Poland for Typhoon sale

+αの需要はF-35A、F-15、KF-21、タイフーンの争いに発展しても不思議ではなく興味深い動き

ジェーンズは「ユーロファイターコンソーシアムがファンボロー航空ショーでポーランドにタイフーンプログラムへの参加を呼びかけ、同機への完全なアクセス権やポーランド産業界に相応しい製造参加を保証した」と報じており、2024年に予定されているF-35Aの引き渡しと同タイミングで「ポーランドは最新のタイフーンを受け取れる」と主張しているらしい。

出典:AIRBUS

ポーランドは米国からF-35A×32機、韓国からFA-50×48機(Block10×12機+Block20×36機)を調達することが確定しているが、ブラスザック国防相は「FA-50導入はポーランド空軍強化の最終ピースではなく、将来的にF-35Aの追加調達やF-15の新規調達も検討中で韓国が開発を進めているKF-21の作業進捗にも注視している」と述べており、ポーランドの戦闘機調達にはまだ+αが残されている。

恐らくコンソーシアム側は「+αの需要」を狙ってタイフーン導入を呼びかけているのだと思われるが、最も可能性の高いF-35Aの追加導入はオフセット内容がポーランドの要求(F-35サプライチェーンへのポーランド企業参加)を満たすものではなく、同じプログラム出資国ではないフィンランドにはサプライチェーンへの参加を認めているためポーランドが「F-35A以外の選択」を検討するかもしれない。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Kevin Long

戦闘機に対する考え方は「何を犠牲にしてもステルスを優先する国」もあれば「性能と産業界へのメリットのバランスを優先する国」もあるため最適解は国よって異なり、もしコンソーシアム側がポーランドの関心を集めるだけの提案を行えば「+αの需要」はF-35A、F-15、KF-21、タイフーンの争いに発展しても不思議ではなく、なかなか興味深い動きだと言えるだろう。

因みにEUはポーランドに分配予定だった340億ユーロ(COVID‑19で打撃を受けた欧州経済を再生するための金融支援=原資はEUが共同債で調達する1兆8,000億ユーロ)の支給手続きを開始したと報じられており、調達する大部分の装備を国内で製造する韓国からの装備調達は「340億ユーロを原資にしているのではないか」と噂されている。

関連記事:ポーランドのブラスザック国防相、韓国製装備の調達理由や内訳を公開

 

※アイキャッチ画像の出典:Copyright Eurofighter

トーネード後継機問題、米国務省が推定84億ドルでドイツへのF-35A売却を承認前のページ

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コメント

    • G
    • 2022年 7月 29日

    韓国との大型契約がまとまった後では提案が遅かったように思えますね
    ポーランドが数ある第4世代機や第4.5世代機ではなく、COIN機のアップデート版にすぎないFA-50の導入を決定したということは陸上兵器に予算の大半を使った結果、まとまった航空戦力を導入するための予算がなくなったと考えるのが自然でしょうし

    18
    • あばばばば
    • 2022年 7月 29日

    F-35A:アメリカ軍がブロック4Aを購入する事を渋っている為、値段が高い部分もあり、時期が悪いといえば時期が悪い
    F-15:もともと生産ラインが細いのもあるが、アメリカ軍がF-15EX、自衛隊が近代化改修の為にボーイングの生産ラインが動き続けている。時期が悪いし、今更感もある
    KF-21:試作機が初飛行を終えたばっか。空対地能力を得るのはbatch2からであり、今購入を決めるのは時期が悪いかも
    タイフーン:(昔ほど悪い選択肢ではないだろうが、生産の一部分は)ドイツか……

    再販に困るのはどちらも同じくらい悪いので、今すぐ決めるならF-35Aかタイフーンの一騎打ちになるだろう。
    10年待てるならKF-21が選択肢に入るかもしれない

    14
      • 幽霊
      • 2022年 7月 29日

      陸戦兵器の大規模導入を決めたばかりなので10年待つというより10年待たざるおえないかもしれませんね。

      8
      • 匿名希望
      • 2022年 7月 29日

      中古機のレストアがありならF-15C/DをJSI仕様に改修という手もあるかな

      1
    • ああああ
    • 2022年 7月 29日

    なぜ名機ラファールではなく迷機タイフーンなのか、コレガワカラナイ

    4
      • 名無し2
      • 2022年 7月 29日

      タイフーンが(技術移転や現地雇用の可能性の面も含めて)優秀でラファールやF-35よりもコストパフォーマンスに優れているから候補に挙がっているんじゃないでしょうか。ラファールがフランス、F-35がアメリカ、タイフーンはユーロファイターなので

      2
        • 2022年 7月 30日

        どうせなら冷戦終結の煽りを受けて中止になったPZL-230スコーピオンを復活させて欲しい。

      •     
      • 2022年 7月 29日

      迷機とか言ってる時点でよく分かってないな

      タイフーンはアップデートをコスト面から怠っていた
      それでオフボアサイト能力があったラファールと近距離でドックファイトやれば分が悪いのは当たり前
      レーダーレンジやステルス性、強力なエンジンからの機体ポテンシャルはタイフーンが上。
      ラファールはレーダーレンジの短さから長射程ミサイルの能力を十分に活用できない欠点を持つ

      機体の寿命も、イタリアが正規の手順通り部品製造を行っていなかった為で、欠陥ではない
      きちんと事情も知らずにデマ飛ばしまくってるキミみたいな連中による風評被害だね

      7
      • バーナーキング
      • 2022年 7月 29日

      名機か迷機かはさておき

      > 【ユーロファイターコンソーシアムは】28日、産業協力を提示して【ポーランドに】タイフーン導入を呼びかけた

      という記事への反応が「何故ラファールでなくタイフーン」という話になるのかがワカラナイヨ
      「フランスは動いてないのか?何故動かないのか?」という話ならともかく。

      1
      • ナニガシ(ラファール信者)
      • 2022年 7月 29日

      ラファール最高。カッコイイ。
      性能?知らぬ。

      2
    • 無無
    • 2022年 7月 29日

    今なら迷機にもワンチャンス商機ありと、軍拡に燃えるポーランドの隙をつく陰謀ですよ
    そこまで酷くはないだろうけど、ロシアの対西側正面装備相手にどこまで使えるのかは?

    • 774545
    • 2022年 7月 29日

    まぁどうせ選ぶならF-35かなぁ…
    ウクライナでの一連の醜態を間近で見ていればタイフーン=ドイツと関わりたくないと思っても不思議じゃない
    正直言ってKF-21より見込みが無いんじゃなかろうか

    5
    • 名無し2
    • 2022年 7月 29日

    もし産業協力も含めたタイフーン導入が実現したらポーランドの根性は本当にすごい。あのドイツに頭を下げて金を払ってタイフーン工場の掃除のやり方から学ばさせていただくガチンコ!欧州軍事塾。ショルツ塾長の口から信じられない発言が!!

    1
    • samo
    • 2022年 7月 29日

    そのプラスアルファの要素は、ポーランド側の視点に立つと、国産機またはそれに準ずる戦闘機を望んでいるだろう
    その要求を叶える条件を出せる戦闘機がその需要を取るだろう

    ただ、F-35がその需要は取れない。取れないが、追加調達そのものはされるかと。
    その上で、国産機はそのF-35の補助を担う立ち位置として導入されるのではないかと

    • 無印
    • 2022年 7月 29日

    そんなに産業育成したいなら、ポーランドもテンペストに参加して、そこからポーランドの望む戦闘機を自分で開発する
    何年かかるかは知らないです

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