ドイツはウクライナの要請に応じて新型自走砲=RCH-155×54両の供給を約束したが、産業界はRCH-155の納入について「早くても30ヶ月後=2025年前半になる」と予想し、ピストリウス国防相は2026年7月「RCH-155の能力はウクライナで非常に高く評価されている」と述べ、RCH-155の戦場到着を示唆した。
参考:RCH 155: Pistorius bestätigt indirekt den Einsatz der Radhaubitze in der Ukraine
参考:German Defense Minister Accidentally Reveals Advanced RCH-155 Howitzers Are Already in Ukraine
参考:Німецький виробник бронетехніки KNDS про її ремонт в Україні
参考:Унікальні верстати, стволи та артилерійські снаряди. Ексклюзивне інтерв’ю з виробником САУ “Богдана”
もう自走砲の供給能力はウクライナ軍のニーズを大幅に超えている可能性すらある
ウクライナとロシアの戦争は高度な地上配備型防空システムによって接近拒否が成立したため、前線の戦場を支配する火力は砲兵部隊によって投射され、この戦いで重要になったのが伝統的な牽引式榴弾砲や自走式榴弾砲で、ウクライナのレズニコフ国防相は2022年7月「RCH-155を購入したい」とドイツのランブレヒト国防相に要請し、最終的にRCH-155×54両(ドイツ政府が8億9,000万ユーロを負担してウクライナがKNDS Deutschlandに2022年夏、2024年2月、2024年半ばに各18両ずつ発注)を供給する取り組みに発展したが、産業界はRCH-155の納入について「早くても30ヶ月後=2025年前半になる」と予想していた。
2022年時点でのRCH-155は社内開発が完了していたものの、ドイツ陸軍の将来型中距離間接射撃システム=Zukünftiges System Indirektes Feuer mittlere Reichweite(ZukSysIndF)が具体的に動き出したのは2023年3月で、ラインメタルとエルビット・システムズが開発を進めていた自走砲(HX10×10と52口径155mm榴弾砲を組み合わせた装輪式自走砲)との競争入札の末、RCH-155調達に関する枠組み協定が締結されたのは2025年12月であり、2022年時点でRCH-155を量産する組立ラインもサプライチェーンも存在していない。
KNDS Deutschlandの顧問を務めるニコラス・ドラモンド氏は2023年8月「ウクライナ向けのRCH-155を生産中で、最初のユニットは2024年第1四半期に納入される予定だ」と言及したものの、デア・シュピーゲル誌の取材に応じたKNDS Deutschlandの関係者は「最初のユニットは2024年末に納入される」と述べ、実際に引き渡されたのは2025年1月だったが、これは最初のユニットを形式的に引き渡しただけでRCH-155を使用したウクライナ軍兵士の訓練には数ヶ月間かかり、さらに細かい修正や改良も必要になったためRCH-155の戦場到着はさらに遅れることになる。
I’m pleased to announce that two new words can now be used to describe the Boxer RCH155: “combat proven.” pic.twitter.com/isCWBlMjOk
— Nicholas Drummond (@nicholadrummond) July 5, 2026
ドラモンド氏は2026年7月5日「RCH-155を表現するのに2つの言葉が使えるようになったことを嬉しく思う。戦闘で実証済みだ」と報告、ボリス・ピストリウス国防相も2026年7月21日「RCH-155の能力はウクライナで非常に高く評価されている」とKNDS Deutschlandの工場を視察した際に述べ、ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも「ピストリウスの言及はウクライナでRCH-155が使用されていることを示唆しているが、これはまだ視覚的に確認されていない」と報じている。
ウクライナの戦場にRCH-155が到着した可能性は非常に高いものの、現時点で積極的に戦闘に投入されているかは不明で、KNDS Deutschlandのラルフ・ケツェル氏は2025年8月「最初のユニットを1月に引き渡した後に何度も試験を行う必要があった。訓練のために専門家をウクライナに派遣もした。この経験を通じてRCH-155に改良を加えることが出来たし、現在もウクライナと緊密なやり取りを通じて技術的問題の解消に努めている。さらにウクライナ軍の戦闘管制システムにRCH-155を統合しなければならない。我々もウクライナ側も他の問題で忙しかったので本件については2024年に全く議論されなかった」と言及している。
Für mich ist heute ein besonderer Tag.
Denn heute übergab Minister Boris Pistorius an die Ukraine die erste von 54 Radhaubitzen RCH 155.
Unser Bedarf ist akuter denn je.So gehen Verbündete miteinander um: Sie schließen Sicherheitslücken — Lücken, die blutende Wunden sind. pic.twitter.com/5KzrnZHQwv
— Oleksii MAKEIEV 🇺🇦 (@Makeiev) January 13, 2025
2025年1月の引き渡しが形式的と呼ばれるのは「ここからウクライナ軍兵士が実際に使用して要望を取り入れた改良を行う」「引き渡したRCH-155はウクライナ軍の戦闘管制システムに統合されていない」「統合作業に関する協議もこれから始める」といった状態だったからで、要するに2025年1月からウクライナ軍向けの最終仕様を確定させていく作業が始まり、様々な改良や修正、戦闘管制システムへの統合作業などを経て2026年上期のどこかで戦場に到着したのだろう。
現在も戦場が必要とする火力の大半は砲兵部隊によって投射されているものの、FPVドローンや徘徊型弾薬の登場と普及で砲兵部隊の役割や必要とされる頻度も変化しており、この間にウクライナ製のボグダナは自走式だけで月40両の生産規模に達し、自走式と牽引式を合わせた累計生産数も1,000門を超えたものの、ウクライナ軍は9ヶ月間も新たな発注を行っていないため製造元のクラマトルスク重工作機械工場も「今後数ヶ月以内に新たな発注がなければ操業を停止しなければならない」「そのためバングラデシュ、サウジアラビア、アフリカ向けの輸出に取り組んでいる」と述べており、もう自走砲の供給能力はウクライナ軍のニーズを大幅に超えている可能性すらある。

出典:АрміяInform
RCH-155が2023年までに到着していれば状況は違ったのかもしれないが、ボグダナよりも先進的なRCH-155が2026年の戦場に到着したところで勝敗を左右するような影響力はなく、ウクライナ軍にとってもRCH-155を急いで戦力化する必要性はないのかもしれない。
ちなみにクラマトルスク重工作機械工場は25mmから203mmまでの砲身も自前で製造することができ、現在は105mm、155mm、122mm、125mm、25mm、40mm、35mmの砲身を製造中で、BAEシステムズ、レオナルド、KNDS、ラインメタルなど欧州の105社と提携し、デッドコピーではなく正規のライセンス契約の下でウクライナに供与された西側装備向けの砲身を供給しているらしい。
関連記事:ドイツ陸軍、射撃と機動の原則に基づき砲兵部隊の大幅増強を予定
関連記事:英陸軍の新型自走砲、RCH-155を72両調達するため約2,100億円を投資
関連記事:英国がRCH-155調達に資金供給を開始、ドイツからプロトタイプを取得
関連記事:独議会が新たな防衛装備調達契約を承認、1年間の承認額が15兆円に到達
関連記事:ドイツの防衛装備調達が本格化、年内にRCH-155を200輌以上発注する見込み
関連記事:英陸軍の次期自走砲、スナク首相がベルリンでRCH155調達を発表
関連記事:ドイツがウクライナのRCH155購入を承認、ただし納品は早くても30ヶ月後
※アイキャッチ画像の出典:Bundeswehr/Celine Liebner





















どうなのでしょうね。
ウクライナのキルゾーンの深さは、一説では、現在40kmになっており、
52口径長155mm榴弾砲の普通砲弾(≒M107、DM21)による
射程とほぼ等しいのでは?。
敵UAVの密度にもよりますが、シュート&スクート射法は、
必ずしも有効ではなくなったのでは?、と想像します。
FPVドローンは、目の付いた徘徊型砲弾、或いは準軽爆のようにも扱われるし。
であれば、、砲兵は、隠れるか、もっと早く逃げるか、強力な対空砲兵に
守られるか、の三択になる?、のかな?。
または、砲弾を工夫してさらなる長射程を目指すか?、かな。
ウクライナ関連の記事を見ていると、ウクライナ軍は、39口径長の
マルタ155mm榴弾砲(牽引砲?)を調達する様子。
これは、隠れる(遮蔽する)方針なのでしょうね、きっと。
嵩も重量も小さくするのでしょうから。
RCH155はどのように使うのかな。
大きいでしょうし、装輪であるので、道路から遠くへは行けないだろうし。
2024年のロシア軍パンフレットでは、砲兵陣地は徹底した隠蔽を施すこととされていましたね
おっしゃる通り隠蔽を考えると自走砲より牽引砲の砲が有利ですし、長砲身より短砲身の方が有利なわけで、シュート&スクートが自殺行為となりつつあったのは事実と思います
ボグダナの短砲身版であるマルタも発注が2024年とされており、また基本的に車載砲であるボグダナとは違ってマルタでは牽引型も平行で開発されている点も含めて、そのあたりの戦訓を受けてのものでしょう
とはいえ既に2年前の話なので、上記の話が必ずしも今の戦場の環境を反映しているとは言えませんが、少なくともボグダナの再発注がないことを鑑みても、シュート&スクートは自殺行為のままなのでしょう
個人的には、当時よりさらに射程内への砲兵の進出が困難になっている以上、野砲の使い道は後方で前もってのトーチカ化に限られると思います
損耗率で見ると牽引砲の脆弱性は明白です
使用の様子を見ましても、ロシア軍は未だ1万近い牽引砲を保管していると見られていますが、実際に使用されているのは数百から1000程度と見られています
あくまでも自走砲が主役であり、牽引砲は不足分の穴埋めでしかない、というのが実情かと
ウクライナ軍が牽引砲を調達するのは、車体の生産が追い付かないための妥協という面があるようです
(Pzh2000もですが)砲身の製造が、ボトルネックになっていたような記憶があるのですが、あってますかね?
戦場の変化は早いですから、ドローンや無人機ぐ猛威をふるってますからね。
ただ兵器備蓄が増えていけば、分散(生存性向上)して砲火力を残せますし、防衛力も高まっていくかもしれませんね。
現在のウクライナでは車体のほうがネックなようです
無数の部品で構成される車体の生産はサプライチェーンの総合力が問われるものであり、生産数の拡大は容易なことではない
情報ありがとうございます、戦場の変化は早いですね。
日本でも、グローバルなアウトソーシングが平成の一時期もてはやされたりしてきましたが、サプライチェーンの総合力は大事ですね。
現在開発中の移動目標に対する攻撃可能な砲弾が実用化されてコストも安くなったら、りゅう弾砲や自走砲もそれなりに生き残るとは思いますね。
射程にもよりますが日本とかだと沿岸防衛や海峡封鎖で需要ありそうですし。
管理人さんの22年9月の記事の一節
>>新規に製造するPzH2000の引き渡しは2024年に始まる予定だが、RCH155の引き渡しは「早くても30ヶ月後=2025年前半」と独KMWが明かしているので、PzH2000ですらロシアとの 戦争に間に合うのか微妙なのにRCH155に至ってはほぼ絶望的だ。勿論、ロシアとの戦いが3年も4年も続けばRCH155の出番もあるかもしれないが、果たしてそこまで戦いが続いているだろうか?
まさか続くとは誰も思わなんだ。
本当に仰る通りです。
(1つの可能性として)4年後も、ウクライナ戦争が続いている事を視野に入れながら、考えるべきなのかもしれませんね…
うーん、つまり砲は足りてるが、砲弾不足ってことでしょうか?西側はセルロースの生産、砲弾の生産がうまく行ってないようですし。
むしろ砲が使い道が少なくなっているのかも
最近出てくる動画を見ていると敵の撃破に使われている従来火力はもっぱらFABと対地ミサイルばかりなような気がします