マクロン大統領は今月15日「フランスが(消耗型無人機の分野で)遅れているのは明白だ」と言及し、ルノーはShahedに類似した長距離無人機の生産準備(年7,200機)を進めており、Defense Newsも「欧州の大手自動車企業が直接兵器製造に進出した稀な事例だ」と報じた。
参考:Un contrat potentiel d’un milliard d’euros : Renault va fabriquer des drones militaires dans ses usines du Mans et de Cléon
参考:French carmaker Renault to produce long-range drones for French forces
今回の件は欧州の大手自動車企業が直接兵器製造に進出した稀な事例で、欧州諸国が兵器生産の急速な拡大を模索している中での出来事だ
軍事利用されるプロペラ推進の無人機について「低レベルな紛争向け」「正規軍同士の戦いには通用しない」「高度な防空システムの保護を突破することはできない」という評価が一般的だったが、有人機と比較してサイズの小さい無人機は低観測性に優れ、弾道ミサイルや巡航ミサイルよりも調達コストが安価なため量を揃えることができ、ウクライナとロシアは自爆型無人機を使用して互いの軍事施設やインフラを攻撃し合っている。

出典:ТЕЛЕКАНАЛ ЗВЕЗДА
特にイラン製自爆型無人機=Shahed-131/136の大量使用(もしくは他の攻撃手段との併用)は防空リソースに無視できない影響をもたらし「これを従来概念の防空アプローチでは対処できない」と証明され、米軍も産業界に「安価なShahed型無人機を開発して欲しい」と要請、米軍と産業界は中東で鹵獲したShahed-136の設計や特徴を模倣してShahed型無人機=LUCASの開発を進め、米中央軍は昨年末「中東地域に一方通行の攻撃ドローン部隊=Task Force Scorpion Strikeを配備した」と発表。
米第5艦隊も「インディペンデンス級沿海域戦闘艦のサンタバーバラがアラビア湾でLUCASの発射に成功した」「LUCASの艦艇発射は手頃な価格で無人機能力を迅速に提供するという取り組みにとってマイルストーンだ」「LUCASは到達範囲が広くカタパルト、ロケットアシスト、地上車輌など様々な方法で発射できる」と発表し、LUCASは機体後部に小型の衛星データリンクを搭載しているためShahed-131/136よりも高度なMan-in-the-Loop制御が可能だ。

出典:U.S. Central Command
さらにLUCASはジンバル式カメラを搭載したタイプとそうではないタイプが存在し、前者は目標付近の状況を視覚的に認識することができ、War Zoneも「ジンバル式カメラを搭載したタイプとそうではないタイプをペアで使用すれば視覚的な状況認識力を共有できる」「これによりLUCASは静止目標だけでなく移動目標への攻撃が可能になる」「この無人機は自律的な協調が可能な機能が含まれているためスウォーム戦術や協調攻撃に適している」「LUCASの調達コストは1機あたり3.5万ドルだ」「この拡張可能なシステムは従来の長距離攻撃兵器の比べて極めて安価で最新の機能を提供できる」と指摘している。
Shahed型無人機を模倣する取り組みは米中央軍に限定された話しではなく、米海兵隊もユマ試験場でLUCASをテストしているのが確認され、Griffon AerospaceもShahed型無人機を模倣したMQM-172 Arrowheadを国防総省に売り込んでおり、ArrowheadはShahedと同等の性能(約45kgのペイロードを2,500km先まで運搬可能)を備えているらしい。

出典:DoD photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
マクロン大統領も今月15日「フランスが(消耗型無人機の分野で)遅れているのは明白だ」「ウクライナの戦場で見られるイノベーションの力とスピードに対応するため迅速に行動する必要がある」と言及し、仏メディアのL’Usine Nouvelleは20日「ルノーがChorus(コーラス)と呼ばれるShahedに類似した多目的任務に使用できる長距離無人機の生産準備を進めている」「コーラスの原型はTurgis Gaillardが開発を進めていたもの」「ルノーはコスト削減と生産の最適化のため自動車用素材の転用や自動車生産ラインで一般的なセルフピアシングリベット接合を採用した」「2026年夏までに10機のプロトタイプを製造する」と報じた。
L’Usine Nouvelleは「このコーラス計画はマクロン大統領が言及したイノベーションの力とスピードに対応することを念頭に設計され、装備総局はプロトタイプのテストが成功すればルノーとTurgis Gaillardの合弁企業と10年契約(最大10億ユーロ)を締結する」「コーラスは全長約10m、全幅約8m、最大速度400km/h、最大高度5,000mだ」「自動車車体の設計・製造を行っているルマンのルノー工場に専用ラインを設置して月600機ほど生産可能になる」と説明。

出典:Renault
Defense Newsも「NATOのルッテ事務総長は繰り返し『戦時体制に移行したロシアの兵器生産は西側諸国を上回ってる』と繰り返し警告しており、今回の件は欧州の大手自動車企業が直接兵器製造に進出した稀な事例で、欧州諸国が兵器生産の急速な拡大を模索している中での出来事だ」「ドイツの防衛産業も自動車生産能力を軍需生産に転換するよう求めており、Rheinmetallは2つの自動車部品工場を軍需生産に拠点に転換した」と報じ、遂に「戦時下でもないのに民需生産を軍需生産に転換する」というエポックメイキングな時代がやって来たのかもしれない。
関連記事:米軍がベネズエラ作戦にShahed型無人機を投入か、防空網制圧に貢献した可能性
関連記事:米軍も導入中のShahed型無人機、沿海域戦闘艦がLUCASの発射に成功
関連記事:米軍もShahed型無人機を導入、米中央軍が中東に配備したLUCASを公開
関連記事:ロシア軍の自爆型無人機に新機能、移動目標への攻撃が可能なGeran-2が登場
関連記事:量という質を実現、空中発射兵器の主流に浮上した低コスト巡航ミサイル
関連記事:自爆型無人機が戦場にもたらす脅威、米軍も調達に関する入札を開始
※アイキャッチ画像の出典:ТЕЛЕКАНАЛ ЗВЕЗДА





















自衛隊もその内(何時?)この手の兵器を持つんだろうけど、その場合ミサイルになるのか、無人航空機になるのか、新カテゴリーになるのか、どれになるんですかね?
シールド構想にこの手の無人機は入っているのだろうか…
たしかに仰る通りで、カテゴリと管轄は気になりますね。
射程1000km超えといえど近海防衛となれば、陸戦で陸上に向けての長距離発射ともまた違うでしょうし、戦術によるのでしょうかね?
兵器産業に投資しないという機関投資家もあるなかで、自動車メーカーのルノーが今から兵器生産するのは興味深いなあと。
フランス政府は、ルノーの筆頭株主かつフロランジュ法により影響力を行使できますから、フランス政府の国策なのかなと少し感じています。
ルノーの売上高(2024年度562億ユーロ)に与える影響は小さいですが、シャヘド型の利益率・生産数が最終的にどうなるのか分かりませんが大胆な決断ですね。
追記です。
ウクライナですが、ドローン生産する計画はあったようですね。
(2025/6/9 ルノーがウクライナでドローン生産検討 軍支援に活用見込み 仏国防省から打診 産経新聞)
自動車産業への救済措置も兼ねているのでしょう。
EU圏はEV移行が大失敗して、自動車産業がボロボロで、このままでは失業者が溢れかえりそうな状況です。
ルノーもかなりやばい状況です。
生産ラインが空いてて、人も余ってますから。
巡航ミサイルでも作らせてれば、景気対策も兼ねて一石二鳥です。
余ってる生産設備を使ってどこでも作れそうなものを作ってるという感は否めないですね。
失業対策で作るんなら物騒なシャヘドタイプの巡航ミサイルドローンより、迎撃ドローンの方を作ってほしいですね。
技術的に難しいんだと思いますが。
ホンダジェットが車屋の道楽かと白眼視されていたのに、それなりに好評で、本業の三菱のMRJは失敗したというのがありましたが、型式証明なんて要らないこういう製品なら、異業種参入の壁は低そう。
EVで、旧来の車屋は、落ち目になっていく可能性がありますから、続く会社もあるかもしれませんね。
このクラスの無人機は自動車工場で生産できると思ってましたが、現実になるんですね。苦境の日産あたりが始めたら、起死回生の策になるかもしれません。素人考えですが・・
既存のメーカーにすぐ作れとは思いませんが、製造ラインの研究開発に国が投資する位はやって欲しいですね。
殺っちゃえ日産
バブル崩壊後の再編で日産がルノーと提携した時に航空宇宙部門切り離したのに
さらに苦しくなったんでルノー見習って航空機作りますって
ものすごい皮肉と言うか喜劇的と言うか…
まさに空飛ぶ日産マーチ。
日産プリンスもそうだけど、日本の場合は戦後食えなくなった飛行機屋が車屋やバイク屋になってますからね。
空飛ぶ日産マーチ?、今更?
普通にスバルやヤマハで良いんじゃ無いかな。カワサキもバイク屋だし。
今回のフランスのケースやアメリカ海軍の現状を見ると自国内に重工業や生産業を残す事が安全保障上重要というのがわかりますね。
まさに仰る通りで、全面的に同意です。
(温室効果ガスの難癖など)製造業が軽んじられる風潮になったり、リストラ続きでショッピングモール・タワマンなどに変わったりする逆風の時代もありました。
日本国内に何とか基盤が残り、好景気を迎えられる業種もありよかったですよね。
Ukraine’s new defence minister vows data-driven overhaul of military
やると思ったがウクライナが戦争の生データをAI学習の餌として外交カードに使うそうな。
Mavic互換機(改良型)の国産化も今月から実戦投入というのも注目点。
シャヘド型より、このカテゴリの消耗品ドローンの国産化の方が重要なのかも。
大戦期にあった自動車産業による航空機製造は過去のものになってしまったかと思いましたが、確かにシャヘドタイプの簡素なものなら対応できそうです。
かつての軍用航空機と同じくとにかく数が重要ですから、メーカーを問わず生産転換が可能な標準型のようなものがあると戦時への良い備えになるかもしれませんね。
8年度予算で計上されたSHIELD構築用UAV機材は8種に及び、イメージ図からその内6種は自爆型です。システム構築を急ぐため今回は全部が輸入で賄われると思われますが、将来的にはライセンス生産や国内開発品への置き換えを視野に置いているのは当然と思います。スタートアップ企業も含め開発と生産の裾野は今後広げる必要が大でしょう。
自動車メーカーは空力設計の設備やノウハウを普通に持ってますし、プレス加工や複合材及び電子機器類の知見もあり対応性は高いと思います。