欧州関連

ラインメタル、トラック搭載のエリコン・リボルバーガンMk3で小型ドローンを無力化

ラインメタルはトラックの荷台にエリコン・リボルバーガンMk3を搭載して8機の小型ドローンと交戦、これを全て無力化することに成功した動画を公開した。

参考:Rheinmetall Air Defence: Skynex truck-mounted engaging drone swarm

エパトリオットシステムの欠点=地平線よりも下を移動する目標を迎撃する拠点防空システムは今後の注目株

ドイツのラインメタルは拠点防空に特化した防空システム「Oerlikon SkyNex」を開発中で、このシステムはロケット弾、砲弾、迫撃砲弾、小型ドローン、空中投下型の精密誘導兵器、巡航ミサイルなどよる飽和攻撃から地上の固定目標を保護するための防空システム(C-RAM)で複数の迎撃手段によって多層式の防衛シールドを構築するのが特徴だ。

SkyNexに用意されている迎撃手段はGPSや通信を妨害する電子妨害システム、電子光学センサーとレーダー追尾機能を内蔵した砲塔タイプの「エリコン・リボルバーガンMk3(35mm機関砲)」、同じく牽引式の「エリコンツインガン GDF009TREO(35mm機関砲)」、指向性エネルギー兵器の「Oerlikon レーザーガン(開発中)」、より広い範囲をカバーするC-RAM専用迎撃弾「チーター(開発中)」の5種類で、これにアラブ首長国連邦の防衛産業企業「EDGE」が開発したC-RAM専用迎撃弾「SkyKnight(スカイナイト)」も統合されるため最大6種類の防衛シールドが用意(この中から顧客の好みに合わせて選択可能)されている。

低空を飛行してサイズ自体も小型なのでレーダー反射断面積(RCS)の値が小さい目標の近距離検出に特化したセンサー「X-TAR3D(脅威のサイズによって検出距離は変わるが最大検出範囲は55km)」が常時360度を警戒、脅威を検出すると最大6種類の防衛シールドで迎撃を行い着弾前に無力化してしまうという寸法だ。

このSkyNexの防衛シールドを構成するエリコン・リボルバーガンMk3は地上に固定配備するか、装甲車輌等に搭載するかの2択だったのだが、ラインメタルは軍用トラックの荷台に搭載したタイプのMk3を今月10日に発表、8機の小型ドローンと交戦して無力化に成功する動画を公開した。

軍用トラック搭載タイプのMk3も電子光学センサーとレーダー追尾機能を内蔵しているため単独で小型ドローンの迎撃に成功しているように見えるが、これが最大限能力を発揮するためには外部センサーによる脅威の事前検出と追尾+Mk3への円滑なデータ受け渡しが重要になってくるので、装甲車輌の移動に随伴させ運用しても近距離防空システム(常時360度を警戒できる専用レーダーを搭載したIM-SHORADやパーンツィリなど)としての自己完結能力はないため、飽くまでSkyNexを構成するMk3の移動が簡単になったという程度だろう。

ただSkyNexの構成要素は全て移動を前提に設計(自走という意味ではなく持ち運びが容易という意味)されているので、Mk3がトラックの荷台に積んだまま作動すれば設置の手間が省けるため展開が楽になるはずだ。

出典:Dynetics Enduring Shield

まぁ今のところラインメタルのSkyNexを導入すると表明している国はいないが、エリア防空のパトリオットシステムは低空=地平線よりも下を移動する目標を迎撃する能力が著しく欠けており、このギャップを埋めるため米陸軍も「エンデュアリング・シールド/Enduring Shield(通称:AIM-9Xインターセプター)」を400セット調達すると表明するなど拠点防空に特化した防空システムは今後大きな注目を集めることが予想されるためSkyNexに注目している国があるかもしれない。

※ドイツは次世代防空システム「TLVS」プログラムへの投資を一時的に停止して、無人航空機対策を優先させると発表しているのでSkyNex導入の有力な候補国

関連記事:アラブ首長国連邦、ドイツに供給する国産の防空ミサイル「SkyKnight」を発表
関連記事:米陸軍、パトリオットのギャップを埋める新しい防空システムに「AIM-9Xインターセプター」を採用
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関連記事:無人航空機対策を優先するドイツ、次世代防空システムを止めて近接防空システムに投資

 

※アイキャッチ画像の出典:Rheinmetall

米企業、小型衛星を無動力で宇宙に打ち上げる加速器のデモンストレーションに成功前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    欧米の紹介動画はかっこいいなぁ。
    日本は防衛関連だけで利益上げてる企業なんてないから、企業イメージを考えてこんなの上げられないんだろうね。

    16
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      そもそもが日本の防衛装備品輸出は政府主導・管理が絶対条件なんで、企業が直接商談を進められない関係で自ら海外向けにPR動画を製作する意義が薄い。国内向けはおっしゃる通りで恐らく逆効果。
      MHIは2014ユーロサトリにMAVの模型とPR動画を展示したが、企業イメージPR以上の効果はなかった。是非欲しいという国でも現れれば防衛装備移転対象品として検討されたかもだが。
      防衛装備品は企業間の国際共同研究/開発も勝手にはできないので色々面倒過ぎて・・・

      8
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    流れ弾に当たったら人体はバラバラになるかも、対戦車ヘリや低速で飛ぶ対地攻撃機にも有効だな。

    3
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      そこなんですよね
      デモ動画で迎撃している小型ドローンなんて、飛行距離が短いから、こんなの使うのは
      人口過密地域とかで都市テロレベルでしょう
      そんな場所でこんなのを四方八方へぶっ放して流れ弾被害は許容出来るもんなのかと。

      14
        • 匿名
        • 2021年 11月 12日

        流れ弾の被害よりも破壊による被害がでかいような防護対象に対して展開するに決まってんだろ。

        2
          • 匿名
          • 2021年 11月 12日

          何で全部選択せにゃならんの?機関砲なんて据え置きか移動の選択肢だし、ミサイルだって2種のうちからどっちかを選べば4種類で済む。

          1
        • 匿名
        • 2021年 11月 12日

        近接信管とは別に時限信管をつけているのでは
        射角で流れ弾が地上に落ちる時間は推測できるし、それ以前に時限信管作動させるよう調整すれば被害はかなり抑えられるはず

        3
        • 匿名
        • 2021年 11月 14日

        WW2で激しい都市空襲を受けた日独では、空襲で落ちて来る爆弾の次に危険だったのは
        地上に落下してくる味方が対空戦闘で撃ち上げた高射砲弾の破片や機関砲弾だったと言わ
        れているので、例え非武装の偵察機であったとしても空襲警報の最中に外を歩くのは危険
        外では必ず防空ヘルメットを被り、堅固な建物への避難は必須だったと言われるので、
        軍事基地や重要施設周辺では住民に平時から避難警報の意味や避難訓練をきちんとして
        やらならないとダメでしょうね

        2
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    8機に対処できたつってもあんなに行儀よく並んで手頃な高度を飛んでるのはデモンストレーション以上の意味を感じないなあ
    まあ一連射で多目標にヒットさせる射撃管制は凄いのかもしらんけど
    拠点防空に6種類もの迎撃手段で重層化させなければならんことにむしろ悲観してしまう

    そういえば元マイクロソフトCTOだったひとが蚊をレーザー迎撃するシステム作ってたけどどうなんたんだろう

    6
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      あとアウトリガーがなくブレがあったから中遠距離で機動飛行するドローンへの有効性もきになるね
      それらを割り切ってコスパを良くした限定的防御システムなのかも

      >蚊をレーザー迎撃するシステム
      システムと蚊の延長上に人(特に目)があったら大惨事になるから中止したんじゃないかな
      できることに対してコスパも悪そうだしリスクも大きすぎる

      4
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    日本にはガンタンクがある!

      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      ゲパルトを退役させるから。

      2
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    ドローンが敵にいないときには水平射撃で人間をミンチにするのに使われそう…

    5
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      実際、現在でもシリアなんかでの市街戦では、シルカの様な自走対空機関砲が戦車や装甲ブルドーザーと共に市街戦で活躍中ですからね

      【強度市街戦での工兵再拡大及び機甲と歩兵との一体化】
      リンク

      8
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      対空砲が対人水平射撃するのは半世紀以上前からの常だからなぁ・・・

      10
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    流石世界のラインメタル、やってくれるぜ!

    7
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    こんな小さいドローンに直接命中させるのか、凄いなあ・・・
    と思ってよく見たら信管を使った炸裂弾だねこれ

    8
      • 匿名
      • 2021年 11月 12日

      直撃は一発もないのでは?
      そもそも直撃したらあのサイズだと木っ端微塵だし

        • 匿名
        • 2021年 11月 14日

        いわゆるABM弾なんだから、直撃にこだわる必要ある?

        2
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    さすが元祖対空戦車の国、経空脅威の事をよく考えている。
    今やってる次期装輪装甲車のコンペの結論が出て、なおかつ16式の生産が一段落する24年以降には共通戦術装輪車ともどもシステム構成要素への設計・生産が始まるが、そうなったら乗せる台車がなくてこの10年ほったらかしになってた国産の高射機関砲システムも日の目を見るんですかね。装軌型(87式後継)とは別に双輪=第7師団以外用の高射砲も調達する予定らしいけど。

    8
      • 匿名
      • 2021年 11月 12日

      あれって40mmCTAを毎分400発でぶっ放すのを全幅3m装輪でやろうしてたから
      AW砲塔再使用のを共用装軌ロング型(要するに99式車体の新型)のでやると思う
      西と水陸であれなんで北の7D装備は極力金かける気ないからFVもAWも35mmで続行かも

      2
        • 匿名
        • 2021年 11月 12日

        文章がよく読み取れないのですが、双輪も装軌も次期自走高射ではCTA砲塔は使わなくて35mm連装砲塔を使うという意味ですか?何か出典があったら教えてほしいです。
        耐用年数の残っている87式のある装軌はともかく、双輪用の自走高射は96WAPCに試験砲塔を搭載した揺動試験機(動画がネットで出回ったもの)を使って将来双輪に必要な最低限の車体性能を検証していて、その結果に基づいてい共通戦術双輪の仕様が決まったので今更無理という話が本当なら驚きです。ゲパルト以下、冷戦期型の自走対空砲はあくまで固定翼機・ヘリコプターを射撃するものであり、独スカイシールドや日本のCTAが志向するような航空機からドローン・迫砲弾まで網羅する性能も発展性もなく、今更再調達する理由がわからないです。

          • 匿名
          • 2021年 11月 12日

          当初2.75mで後にハイエンド3m車幅のMCVの低車高型のに高射砲塔を乗せると車内容積側で余裕無いので砲塔が極めて肥大化する
          では低姿勢のMCV型でなく高さのあるAPC型のに砲塔乗せると今度は3,8m以内に収まらなくなる上に動揺制御が特殊になる
          新型国産砲とりやめで砲塔再使用35mm続行になると車体はTKベースか共用装軌かどっちかでしか無理という結論は既に出てる将来装輪研究とかいうやつで

    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    てらかっこよす。
    ただ市街地じゃ出来ん迎撃方法だな。
    投網しか勝たん。

    2
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    散弾ではなく35ミリ砲弾を直撃させるのか。実戦の状況でどうなるかは今後の開発次第か。しかし良い発射音だ

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      映像見る限り直撃ではなく近接信管つかった炸裂弾だと思われ

      6
        • 匿名
        • 2021年 11月 14日

        ABM弾だと思うが(説明が欲しければ自分でググって)

    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    こんな乱れ打ちでなく35mmのAHEAD一発で何機落とせるかやってくれや・・・
    あれって鴨撃ち散弾みたいなもんでチョークに該当するエアバタイミング次第でかなりの範囲を一発で加害できるはず
    それこそ対AHや砲弾殻抜くCRAM用の転用でなく無装甲のラジコン相手に最適化して散弾で副次被害は極力出さないような鉛玉ので新型砲弾作れば市街地でも使える
    そうすれば1基相手に照射時間が数秒は必要なレーザーなんかより効率的になるんじゃないかな?

    4
    • L
    • 2021年 11月 12日

    近接信管かぁ夢がないな
    まあこのパッケージの肝は統合されたセンサーだな

    • 匿名
    • 2021年 11月 12日

    動画撮影の都合なんだろうけど
    これ近距離で密集隊形でほのろのろ飛んでる状態のドローンって、ただの標的なのでは

    1
    • 匿名
    • 2021年 11月 12日

    ご都合主義の絵に描いた餅。35mm程度だと近接信管使えないからプログラマブル時限信管だろうから全ての攻撃目標をスキャンして追随させておかないと他のドローンに攻撃され、撃破される。危険強度の高い目標から順次撃破していく事になるので複数かつ多種のシステムを連携するマジノ線が必要となる。膨大な期間・予算が無駄になるのは歴史が証明している。それよりも数種類のドローンを開発、量産して相手より多く高性能な物を配備する方のがよっぽど効果的だろう。

    1
      • 匿名
      • 2021年 11月 12日

      絵に描いた餅はどっちだか。

      6
    • 匿名
    • 2021年 11月 12日

    ぶっちゃけ3P弾は一発おいくらだろうか。昔、40mmで80万とかみたが。インドも40mm近接信管でドローン撃墜試験してたがどっちがトータルでのコスパ良いんだろうな。

    近接信管がどうのとか言ってるが昔と比べて多様なターゲット狙うんだから反応マチマチな気もするし、探知した時に砲弾かドローンか対象判定して最適タイミングで炸裂するであろう3P弾のほうが良いと思うけど。

    • 匿名
    • 2021年 11月 13日

    ボフォース3Pは対地対人用エアバが主なので散布パターンが散弾銃的というよりむしろ手榴弾に近い
    一方でエリコンAHEADは対空専用なので散弾銃のような円錐状で弾道最適化されてる上にタングステンの螺旋波状攻撃でめちゃくちゃ貫徹する
    なので3Pで対空は言うほどリーサリティが高くないというか所詮対人向けの威力でしかないのよ

    2
    • 匿名
    • 2021年 11月 13日

    少し砲塔動いたくらいで車体がブルンブルン
    つか落とした残骸全部拾えよな(; ・`д・´)

      • 匿名
      • 2021年 11月 14日

      そうかな?、直ぐに射撃の反動の揺れを収束しているし、むしろ良く動揺を抑え込んでると思ったけど

      3
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