欧州関連

ルーマニア国防省、大隊規模のM1エイブラムス調達に動いていると明かす

ポーランドは米国からM1A2エイブラムスのSEPv3を250輌、米海兵隊が手放したM1A1FEPを116輌を購入する契約を締結したが、今度はルーマニアが「大隊規模のM1エイブラムスを調達するため動いている」と明かして注目を集めている。

参考:Achizițiile de tehnică și echipamente militare în 2023

時代遅れの旧ソ連製戦車を更新するためエイブラムスを54輌取得する可能性がある

昨年末にルーマニア国防省は韓国と防衛協力に関する基本合意書に署名、この基本合意書についてルーマニアのディフェンスメディアは「TR-85を更新するための主力戦車K2、牽引式の旧式榴弾砲を更新するためK9、MLI-84を更新するための歩兵戦闘車Redback、国内での弾薬製造に欠かせない火薬工場の建設が含まれている(4つの分野で交渉を開始するという意味)」と報じ、チウカ首相率いる交渉団が韓国を訪問で協議を行ったり、ルーマニア軍関係者が現代ロテムとハンファを訪問してK2、K9、Redbackの試乗を行っていた。

出典:Ministerul Economiei

今年2月にルーマニア国営企業のロアームと韓国のハンファが防衛産業協力に関するMOUに署名、これに立ち会ったスパタル経済相は「具体的な韓国製装備品の生産は契約が成立したときに説明するものの、これらの装備品を国外輸出する可能性を考慮して法改正の準備を進めている」と述べていたが、ルーマニア国防省はM1エイブラムスを調達するため動いていると明かし注目を集めている。

ルーマニア国防省が発行するObservatorul Militar掲載の記事(2023年の軍事技術・装備の調達状況)の中でインチカシュ軍備局長は「大隊規模のM1エイブラムスを調達するため事前承認を議会に要請している」と明かしており、他にも現在調達中のピラーニャV(計227輌の調達契約を締結済み)について「150輌を追加調達するため事前承認を議会に要請している」と、ヨハニス大統領が昨年言及したF-35A導入についても「来年までには議会に要請して手続きを開始する」と述べているのが興味深い。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Gaspar Cortez

ルーマニアの現地メディアは「時代遅れの旧ソ連製戦車を更新するためエイブラムスを54輌取得する可能性がある」と報じているが、インチカシュ軍備局長が言及した「議会による事前承認」とは購入を前提にした協議を開始するための国内手続きのことで、ポーランドのようにK2とM1の両方を導入するのか、それとも両者を天秤にかけているのか、最初からM1が本命なのかは暫く様子を見てみないと何ともいえない。

因みに資金不足で失われた潜水艦部隊を再建するため「新たな潜水艦調達に関する事前承認が行われている最中だ」とも明かしている。

関連記事:ルーマニアと韓国が地上装備の現地生産に向けMOU署名、韓国版HIMARS導入も視野に
関連記事:ルーマニアのヨハニス大統領、空軍近代化の一貫としてF-35A導入を約束
関連記事:黒海に面したルーマニアが潜水艦部隊を再建、フランスから潜水艦を調達か

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Spc. Christian Carrillo

NATO事務総長、数日以内にバフムートが陥落する可能性を排除できない前のページ

豪州は2030年前半にバージニア級を最大5隻購入、後半に新型原潜を建造次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    歩兵戦闘車の開発に乗り出すイタリア陸軍、数ヶ月以内に開発企業を選定

    イタリア陸軍は老朽化したダルドの交換に150億ユーロ(取得コストは52…

  2. 欧州関連

    空母への無人機統合に動く英海軍、開発予定の無人早期警戒機に関するアイデアを募集中

    英国防省は電磁式カタパルトとアレスティングワイヤに関するRFIを発行に…

  3. 欧州関連

    勝利に近づくアゼルバイジャン、ロシアとイランが武力奪回を容認か

    3度の停戦合意も無視され戦闘が続くナゴルノ・カラバフ紛争についてイラン…

  4. 欧州関連

    ギリシャ、F-35Aではなくラファールを選択したのは納期の違い

    ギリシャがF-35Aではなくラファールを選択したのはフランスが自国の保…

  5. 欧州関連

    ドイツ軍の現役少将、ロシアが制裁下で軍需生産を増加させたのは予想外

    ドイツ軍のクリスチャン・フロイディング少将は「反攻作戦に対する期待は誇…

コメント

    • あばばばば
    • 2023年 3月 09日

    K2戦車は車両生産も生産設備の生産も渋滞しているだろうから、エイブラムスの発注に動いているのだろうが、エイブラムスも予約が渋滞していそうだが大丈夫だろうか?

    レオパルト2? 中古は重度のレストアが必要だし、新規生産はできるが生産量は雀の涙でいつになったら物が引き渡されるか……

    6
      • A
      • 2023年 3月 09日

      そんなところに本邦がスルッと入れたらいいのに。

      4
        • 戦略眼
        • 2023年 3月 09日

        三菱重工の生産量も雀の涙。

        7
        • 2023年 3月 10日

        国内開発の兵器は、国内に特化されていて汎用性も生産数も融通が利かない?のが・・・
        韓国は国内の需要減を海外に割り振ることで生産で来るのかな。

    • AAA
    • 2023年 3月 09日

    やっぱ戦車って陸戦の王者だわ

    5
    • Proteles cristatus
    • 2023年 3月 09日

    凄い事になってきた…仮想戦記みたいな事がまさか現実なるとはなぁ

    6
    • ブルーピーコック
    • 2023年 3月 09日

    ピラーニャを製造するモワクはゼネラル・ダイナミクスの傘下企業だから、GDLS製のエイブラムスと揃える意味はあるか。
    リスク回避や自国製造のためにポーランド同様にK2も採用するかもしれないが。

    1
    • 戦略眼
    • 2023年 3月 09日

    ウクライナに回すソ連系の兵器が増えるな。
    無いよりマシだろう。

    2
    • hoge
    • 2023年 3月 09日

    記事の内容からしたらどうでもよいですが、TR-85はルーマニア独自開発で旧ソ連製ではないですね。

    4
      • ブルーピーコック
      • 2023年 3月 09日

      T-55ベースのTR-580の改良型で、エンジンが西ドイツ製で、レーザー測距器など一部が中国のと同形状ですか。

      何だこのユーラシア箱詰めパック

      2
    • kitty
    • 2023年 3月 10日

    「燃料馬鹿食いのM1は米軍の補給力がないと使いこなせない」とか言われてましたが、別にそんなことはなかったぜと言わんばかりの人気。
    燃費が半分になるというエイブラムスX版の登場が待たれるところ。

    2
    • パセリ
    • 2023年 3月 10日

    正直過剰だと思うんだけどなー
    現状でも防衛に限るんなら十分守り切れるし、そんな大規模な軍拡必要かね。ロシアに攻め込むなら兎も角ね

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP