欧州関連

英海軍、無人化技術の実用化を加速させるXV Patrick Blackettを公開

英国防省は海軍傘下の研究・開発・テスト部門を「NavyX」と呼ばれる部門に再編成、無人化技術の実用化を加速させる専用プラットホーム「XV Patrick Blackett」を導入して29日に公開した。

参考:Royal Navy Christens New Experimental Ship, The XV Patrick Blackett
参考:Royal Navy takes delivery of new experimental vessel

新しい軍事技術を柔軟にテストできるXVの存在は非常に重要で、実戦部隊に新しい技術やコンセプトを届ける作業を加速させる

XV Patrick Blackett(以降はXV)自体はDamen製のFCS4800(約500トン)を改造したもので固有の戦闘能力を備えている訳ではなく、現時点でXVは自律的な運行能力を統合されている訳でもないため5名の乗組員(最大定員数は24名)によって運用されるが、同艦はNavyXプログラム=無人化技術(UUV、USV、UAVとのチーミングに必要な技術の研究・開発・テスト)を効率良く進めるためのプラットホームで、英海軍は「新しい軍事技術を柔軟にテストできるXVの存在は非常に重要で、実戦部隊に新しい技術やコンセプトを届ける作業を加速させる」と述べている。

さらにXVのデジタル制御システムは自律的な運行能力の追加を想定された設計で、米海軍がゴースト・フリート(幽霊艦隊)の概念開発のため調達した無人艦(USVレンジャーやUSVノーマッド)と同じく艦尾に広大なオープンデッキ(国際標準規格のISOコンテナ2基分)を備えており、英海軍も幽霊艦隊の概念実証(米海軍はミサイルランチャーを搭載したUSVレンジャーからSM-6を試射)を行う可能性が高い。

因みにNavyXプログラム下で英海軍は無人化されたスピードボートの運用実験、フランスと共同で進めている無人掃海システムの実用化作業(2030年までに9セット調達予定)、自律的な運行能力の検証艦艇「MADFOX」とUUV、USV、UAVを組み合わせたハイブリット戦術の開発などを進めており、新たに投入される大型のXVは「英海軍が無人化技術やチーミング技術の実用化に本気で取り組んでいる」という現れなのだろう。

関連記事:米海軍に続き英海軍もUAVと連携して無人艦艇からのミサイル発射に成功
関連記事:米海軍が戦力分散化の概念「ゴースト・フリート」を実演、無人艦から艦対空ミサイルSM-6を試射

 

※アイキャッチ画像の出典:Royal Navy

衰えないHIMARSによる攻撃、ノーバ・カホフカの弾薬庫や鉄道橋を破壊前のページ

ロシア元大統領、4ヶ国でウクライナ領を分割統治する地図を公開次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    詐欺師だと批判を受けるドイツのショルツ政権、都合よく人権と武器輸出を使い分け

    内戦関与が疑われているエジプトへの武器輸出をメルケル首相が退陣直前に承…

  2. 欧州関連

    ポーランド、米陸軍のスティンガー更新プログラムにGrom-Mで挑戦

    ポーランドのPGZが「自社製のGrom-Mで米陸軍のスティンガー更新プ…

  3. 欧州関連

    米伊に続きスペイン首相がまもなくキーウ入り、新たな武器支援パッケージ発表に期待

    米国やイタリアに続きスペインのサンチェス首相もキーウにまもなく到着する…

  4. 欧州関連

    ポーランド国防相、国内の修理拠点がウクライナ軍のレオパルト2受け入れを開始

    独メディアは「ポーランドにレオパルト2の修理拠点を開設する話は条件面で…

  5. 欧州関連

    SAAB、スウェーデンから次世代戦闘機システムの概念研究を受注

    SAABは22日「スウェーデン軍国防資材局から次世代戦闘機システムの概…

  6. 欧州関連

    バフムートは危機的状況、クリシェイフカがロシア軍に占領された可能性

    バフムートを守るウクライナ軍の状況は危機的な状況に陥りつつあり、露ワグ…

コメント

    • 2022年 7月 30日

    そういえばアメリカがウクライナに供与するって発表してたUSVはどうなったんだろうな

    5
    • ido
    • 2022年 7月 30日

    こういう小型無人戦闘艦って基地の港とかを警備するためなんだろうか。しかしまあ、EEZが広い日本はどうしても無人艦も大型になりそうだなぁ

    7
      • 無無
      • 2022年 7月 30日

      航洋性ある大型艦を無人化する意味があるのかは議論の余地あり
      大型艦ほど人間の手が必要な問題が起こると思われるから。まさかロボット整備兵の構想までは具体化していないだろ

      6
        • 戦略眼
        • 2022年 7月 30日

        航洋性を考えると、1000トン位は欲しいかな?

        4
          • くらうん
          • 2022年 7月 30日

          海自がかつて運用したゆうばり型DEは全長90mほどで排水量1400tだったけど、日本海の波長の問題で十分な航行性能がなかったようです。
          ほとんど武装の無い新型哨戒艦が全長95m(2000t)と大きいのもそのためのようで、1000tクラスでは小型すぎるかもしれません。

          6
            • 無無
            • 2022年 7月 31日

            仮にその二千トンクラスで無人化して、果たして有人艦とどちらが有効に運用できるだろうか、遭難者を発見しても救助は限定的、不審船やテロリスト相手でも臨検は不可能、警告のみか即撃沈の極端な選択しか選べないのでは?

            6
      • 名無し3
      • 2022年 7月 30日

      つ無人機雷排除システム

      1
      • あばばばば
      • 2022年 7月 30日

      この間話題になったOPV(哨戒艦)は将来的に無人化を検討していたはず。
      広大なEEZ警備できるかはともかく、無人運航の実証実験が自衛隊で行われるのは、そう遠くない将来では?

      民間船舶では数年後に実用化を目指して無人運航船の実験中らしいし(日本の話)。

      2
        • ネコ歩き
        • 2022年 7月 31日

        将来の無人化てのは眉唾じゃないですかね。少なくとも今回の新型哨戒艦の将来的完全無人化ではないと思っています。
        新型哨戒艦の主な任務は沿海域での警戒監視や港湾警備ですが、グレーゾーン事態への対処も必要で任務範囲は単純ではないですし、ショーザフラッグという意味合いからも有人艦であるほうが合理的では。
        防衛省の要求は「長期滞洋性を有し、自動化・省人化を図った艦艇」です。

        2
    • かず
    • 2022年 7月 31日

    乗員5名だが、手を振ってるのが6人いる!

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  3. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP