欧州関連

S-400の特性に対応?トルコが国産化に成功した対レーダーミサイルにまつわる噂

トルコが開発した正体不明のミサイルは、西側諸国で唯一S-400を保有しているというアドバンテージを生かしたS-400対応の対レーダーミサイルかもしれない。

参考:Turkey’s Roketsan develops missile to replace Raytheon weapon
参考:Turkey is hiding a ‘top secret’ missile that could hit the S-400

トルコのアクババはAGM-88HARMを置き換えるための存在か、それともS-400対応の対レーダーミサイルか

トルコ空軍は「Akbaba/アクババ(ハゲタカという意味)」と呼ばれる正体不明のミサイルを第5世代戦闘機「TF-X」の統合リスト含めて注目を集めているのだが、このミサイルの詳細に関するガードは非常に固く米メディアのDefenseNewsは開発企業(Roketsan)に取材を試みても「安全保障上の機密に該当するためアクババ・プロジェクトに関する情報は一切提供できない」と断られたらしい。

出典:Turkish Aerospace Industries

しかし匿名を要求するプロジェクト関係者は「アクババは敵防空網制圧(SEAD)ミッションに使用する米国製のAGM-88HARMを置き換える国産対レーダーミサイルで、すでに空軍のSEAD専門部隊(第151飛行隊)で使用されている」と明かしたが、ロシア人専門家はトルコ側の非常に固いガードの原因について「S-400購入後に同システムに対抗可能なオプションをトルコは探し始めたことに関係している」と言及しており非常に意味深だ。

要するにロシア人専門家は「購入したS-400を見て米国製のAGM-88HARMでは対抗できないと判断、新しいオプションとしてアクババ・プロジェクトを立ち上げトルコは独自にS-400の特性に対応した対レーダーミサイルを開発した」と言っているのだが、仮にそうだったとしてもS-400システムには短距離~中距離をカバーするミサイルも統合されているので「アクババミサイルによる攻撃を安全に処理できるだろう」と付け加えている。

出典:Общественное достояние S-400システムに統合されたレーダー「96L6E」

果たしてロシア人専門家の見立てが正しいのか、それとも単純にAGM-88HARMを置き換えるためのものなのかは不明だが、開発段階から余念のない対外アピールを行うトルコの兵器開発と比較するとアクババ・プロジェクトは非常に機密性が高く設定されておりRoketsanのHPにもアクババに関する情報は一切掲載されておらず(管理人がトルコ関係の情報を収集するサイトでもアクババに関する報道を行っていない)、西側諸国で唯一S-400を保有しているというアドバンテージを考えればアクババ=S-400の特性に対応した対レーダーミサイルという予測も十分ありえる話だ。

もしロシア人専門家の見立てが正しい場合、エルドアン大統領はアクババを対米交渉の材料にすることも十分にありえるので中々興味を惹かれる存在と言える。

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain AGM-88 HARMを登載したF-16

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    S-400の購入条件にロシア人技術者の定期メンテがあると書かれてたが、トルコによってリバースエンジニアリングしてそうだな。

    6
    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    こうなるわな。売らない方がまし

    10
    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    ロシアがそのリスクを考えずに輸出している事はあり得ないけれど
    さて一体どんな対策してるんだろうかねえ?

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 10日

      日本にもスホーイ売る気満々じゃなかった?

        • 匿名
        • 2021年 7月 10日

        日本向けは、売り込みから10年位掛けて実機試乗をピークに立ち消えしたけど、
        中国相手の売り込みは、ライバルを成長させるのに機能しちゃったよね。

        5
          • 匿名
          • 2021年 7月 10日

          試乗までいったんだね
          何にがっかりしたんだろ

            • 匿名
            • 2021年 7月 11日

            報告書の詳細は不明ですが、要約すると「F-15の性能はSu-27以上」との結論だったとの事です。
            コブラ機動をその時見た技術者曰く「Su-27の末恐ろしさを感じた」との事ですが、
            コブラ機動の有効性やSu-27とF-15の性能比較検討から、その結論になったと。

            少し後の「周辺諸国戦闘機との戦力指数比較」をグラフ読みすると
            F-2<F-15J<Su-27S<F-2能力向上≒Su-27SM<F-15J改
            となっています。
            上の要約は、近代化改修後のF-15J﹙の想定値﹚を基にした評価かもしれません。
            同行した技術者は、「F-15将来事業﹙後のF-15J近代化改修﹚」の担当者だったので。

            ちなみに上記技術者は、「特別防衛秘密」資格を保持した民間人で本来ロシアへの渡航は不可なのですが、
            空幕の技術部の支援によりロシア渡航を実現したとの事です。
            Su-27を導入した際の、M社の体制構築の担当者でもあったので、現地調査に出向いたのでしょう。

            8
              • 匿名
              • 2021年 7月 11日

              貴方詳しいですね。
              日本が当時のソ連からSS-20の設計図を手に入れた。
              というのは事実ですか?

                • 匿名
                • 2021年 7月 11日

                Su-27の件は、たまたま紹介記事があったので知っているだけです。
                SS-20の件は分かりません。
                期待に応える事が出来ず、ごめんなさい。

                1
              • 匿名
              • 2022年 9月 04日

              ライン超えの情報が含まれてます、削除を求めます。

    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    演習で陸自の中SAMが三沢のSEAD F-16にJDAMごときで潰された
    っていうお話聞かせて?

    4
      • 匿名
      • 2021年 7月 10日

      F16は曳航式デコイ積んでるし
      SEAD任務機は湾岸戦争のF4以来、撃墜された事無いんじゃないかな
      ロシアの防空網がつおい言うけど、西側が本気で潰しにかかったら壊滅するんじゃないの

      10
      • 匿名
      • 2021年 7月 10日

      対レーダーミサイルへのジャミング機能が効果を発揮してAGM-88HARMを無効化したので、JDAMやガンキルに切り換えた、流石米帝という評価や
      中SAM単独で多重防御を形成してなかったので、低空侵入から最小射程より内側に飛び込まれて狩られた
      といった話しはみかけるけど、実態はどうだったのか知りたいよね。

      「目標空域でミサイルを避けるのは非常に難しかった」
      「世界的にも有能で、よく訓練された防空オペレーターだ」
      といったリップサービス以上の情報。

      14
        • 匿名
        • 2021年 7月 10日

        なるほど。そういう経緯でJDAMを

        • 匿名
        • 2021年 7月 11日

        そう言う事なら、ガチの演習と言うよりも「F-16CJと中SAMの相対的機能比較の為に、実際に両者を戦わせてみた」と見るべきだろうなあ
        結果的に、中SAMはAGM-88HARMを無力化出来たので広域防空用SAMとしては充分なECCM機能を持っていると実証された一方、11式短SAMや93式近SAM等による多重防御の必要性も認識されたって所だろう(でなければ、演習とは言え中SAM単独で戦うシナリオを実施する理由が無い)
        一方、米空軍側は、AGM-88HARMを用いたSEADによる「敵の防空網を一時的に機能不全に陥らせる作戦」が最新の広域防空用SAMには通用しない事、そして最新の防空網を無力化するにはSEADでは無く「最初から敵陣営の防空網を直接的に攻撃し、無力化する事を目指す作戦」、つまりDEAD(敵防空網破壊)を指向しなければならない事を認識したのだと思う(F-16CJ側が攻撃手段をJDAMやバルカン砲に切り換えた理由はこれだろう)

        12
        • 匿名
        • 2021年 7月 11日

        >対レーダーミサイルへのジャミング機能が効果を発揮してAGM-88HARMを無効化

        ついでにGPSジャミングもしとけってな>陸自

      • 匿名
      • 2021年 7月 11日

      この話、とても面白そうだけども、記事になるほどの情報は出てないんだろうなぁ。

      4
        • 匿名
        • 2021年 7月 11日

        確か国内での演習だったかな?
        GPSやレーダー系のジャミングをフルパワーでかけたら、船舶やら航空機に携帯まで影響出るような
        まあ中SAMもなかなかのスペックのようで何より

        7
      • 匿名
      • 2021年 7月 11日

      リンク
      で検索すると出てくる三沢基地のニュースですね。オクシリ アイランドでやったので、GPS妨害すると北海道のカーナビが悲しいことになりそう。

      3
    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    ロシア人専門家のコメントはダミーの可能性が高いと思います。トルコは傍目から見ても離米自主国防に舵を切ってますから、今更ここでロシアを裏切りアメリカにすり寄るような方針は敵だらけになりリスクが高すぎますし、隠さずにむしろアピールする内容でしょう。

    それよりは単純にS-400と連携させていると考えた方がまだ納得できます。この場合は更にアメリカの対応を硬化させるので、隠す必要があります。

      • 匿名
      • 2021年 7月 10日

      航空機搭載ミサイルとS-400を連携させる意味が解らんのだが

      10
        • 匿名
        • 2021年 7月 13日

        単純にデータリンクのことでは?

    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    日本も北方領土にロシアが置いていってくれた奴を解析しよう

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    昔のレーダーはパラボラタイプでその電波を発射してるパラボラめがけて対レーダーミサイル打てばよかったし、レーダー側はそれを感知して電波を止めることで命中を防ぐことができた。
    現在のレーダーは平面上に多数の素子を並べたAESAが主力になっていて周波数拡散方式で使用されている、レーダーが電波を出していることさえ確認が困難な技術で、ケータイの傍受が簡単には不可能なのもこの技術の応用である。
    今では専用ICがあり安価なブルーツース機器やオモチャのラジコンやドローンにも使われている。
    復号化キーが判ればいろいろな情報が手に入るが、軍用では当然手の込んだシステムになっておりそれはなかなか困難で、そのために普段から穿破情報収集機を飛ばすことが重要である。
    電波情報を収集する技術や資金が無い時にはアルメニアのような悲劇が待っていることになる。

    10
    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    配備してこの様な物が出来るのならS-400にがっつり介入した韓国は更に良い物が出来るんでないのかな?

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 10日

      韓国はS-300がベースだったかと

      6
        • 匿名
        • 2021年 7月 11日

        貸した金の代わりにガラクタ兵器押し付けられたんだっけ?
        己より上手なDQNの存在に世界の広さを痛感した事だろう

          • 匿名
          • 2021年 7月 11日

          またそんな下らない事を言ってるんか

          7
          • 匿名
          • 2021年 7月 11日

          ガラクタというより、保守整備を非常に軽視して共食い整備前提の軍隊である韓国軍と、

          故障した部分はパーツごと交換する事で素早く再整備、
          故障したパーツ自体は後方の整備工場に送って修理、

          っていう保守整備体制を維持することが前提のロシア製兵器との相性が非常に悪かったんじゃないかな

          10
      • 匿名
      • 2021年 7月 11日

      この件は、ADDがきっちりロシア企業に報酬を支払って、S-350とS-400の資料を買ってるんだな。ロシア版と少し違う恐れはあるが。

      1
    • 匿名
    • 2021年 7月 10日

    >要するにロシア人専門家は「購入したS-400を見て米国製のAGM-88HARMでは対抗できないと判断

    ここが最も言いたかったのだろう。
    あとはオマケ。

    10
    • 匿名
    • 2021年 7月 11日

    プロパガンダ一つ一つにマトモに取り合ってられないよ

      • 匿名
      • 2021年 7月 11日

      ミサイル技術自体はロシアの方が優れてる面が多いから、こればかりは何とも言えないなぁ

      1
    • 匿名
    • 2021年 7月 11日

    そもそもトルコの今の立ち位置だと既存のAGM-88だろうが後継のAARGM-ERの輸入なんて夢物語だから対レーダーミサイルを有効だと思っているなら国産化は避けて通れない話。対レーダーミサイルに搭載されている敵味方のレーダーに関する情報が入ったチップのせいでどこにでも輸出出来るミサイルではない。

    実際に運用されているようだが見た事もないミサイルを搭載されているとか話題にならないのはよほど見られないような所で運用しているのか既存のミサイルと見分けが付かないレベルなのかな。ある程度大型の射程と速度を持つハイパーソニックミサイルはまだ技術的には無理だろうし、ステルス巡航ミサイルみたいに速度落として射程を伸ばしたタイプとか独自進化はしていそうだが。てかトルコなら速度的な面は諦めて低速なドローンで攻撃しても不思議じゃないな。

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