欧州関連

UAV分野で存在感を増すトルコ、ロシアがトルコ製アンチドローンシステムを購入

UAV開発で先行するトルコの企業が開発したアンチドローンシステム「KALKA」をロシアが購入すると報じられており注目を集めている。

参考:Turkish firm develops mobile anti-drone system

ロシアも購入したトルコのアンチドローンシステム「KALKA」の実力は?

トルコのNationalWar Technologies Defense Systems(ナショナルウォー・テクノロジーズ・ディフェンス・システムズ)が開発した車載式のアンチドローンシステム「KALKA」は最大5km離れたドローンを認識して機能を停止させる能力を持っており、軍事ユニットの移動や油田・石油精製施設や天然ガスのパイプライン保護、ドローンを使用した爆発物や麻薬などの運搬阻止、多くの人が集まる施設や集会場の上空警護などに使用することが可能で、ドローンを使用したスウォーム攻撃に対しても効果を発揮すると言われいる。

今のところKALKAを採用しているのはトルコ軍の治安部隊だけだがロシア、アラブ首長国連邦、カタール、アフガニスタン、パキスタン、マレーシア、バングラデシュ、スリランカから引き合いが殺到しており、実際にロシアとパキスタンがKALKAを発注したらしい。

ナショナルウォーによれば「同種の他社製品よりも幾つかの点でKALKAの方が優れいる」と語り性能を確認するためトルコを訪れたパキスタン代表団はKALKAの性能に満足していたと説明、トルコ人エンジニアの手で開発したKALKAを海外の顧客に輸出できることを誇りに思っていると述べている。

KALKAを発注したロシア企業は自社の施設をドローンから守るために使用する(嘘くさい?)と報じられているが、自国で同種のシステムを調達可能なロシア企業がトルコ製のアンチドローンシステムをわざわざ調達するという点で海外メディアが注目しており、UAV開発で先行するトルコの関連技術やノウハウが他国よりも優れている証拠かもしれない。

出典:アセルサンが開発した電子妨害システム「KORAL」

このアンチドローンシステム「KALKA」は純粋な軍事向け製品でなく、本格的なトルコ軍向けの電子妨害システムは防衛産業企業アセルサンが2009年に開発した「KORAL」だ。

この電子妨害システムはシリア・リビア内戦や最近終結したナゴルノ・カラバフ紛争でも使用され、2019年にシリア国内のクルド人勢力に対するトルコ軍の軍事作戦「平和の泉作戦(または平和の春作戦)」で決定的な役割を果たしたと評価されており現在、後継バージョン開発が行われている。

トルコでは平和の泉作戦中にシリア政府軍の装甲車輌を一方的に壊滅させることに成功した要因に敵が光ファイバーなど電子妨害に対して耐性をもつ通信網をもっていなかったこと、シリア政府軍の通信やセンサーを電子妨害システム「KORAL」で麻痺させることに成功したこと、ロシア製の電子妨害システムの電波特性を研究してバイラクタルTB2やアンカSといった無人航空機(UAV)に対電子妨害対策を施したことを挙げており、今後の地上戦で戦車や装甲車両が効果を発揮するためには電子妨害システムと防空システムの充実が欠かせないとの結論に至ったらしい。

恐らくトルコは実戦でのUAV使用経験が最も豊富な国と言っても過言ではなく、UAVの利点と同時にUAVの弱点も最も知り尽くしていると言えるため、どの様な電子妨害システムを開発するのか世界が注目している。

やや本題から逸れたがトルコのアンチドローンシステム「KALKA」を日本も研究用に購入して、ロシア企業が自国製品を差し置いて購入するKALKAの実力を研究してみるの面白いかもしれない。

関連記事:トルコ、実戦で効果的だった電子妨害システム「KORAL」の後継を開発中

余談だが今月3日、バイラクタルTB2を開発したバイカル社の製造工場に近づき違法な撮影を行なっていた露メディアのロシア人とトルコ人がイスタンブールの警察に逮捕されたと報じられており、ロシアではトルコ製UAVへの関心が高まっている影響だと言っている。

 

※アイキャッチ画像の出典:Capricorn4049 / CC BY-SA 4.0

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 12月 06日

    この2か国の関係は不思議だなぁ。

    20
      • 匿名
      • 2020年 12月 07日

      ロシアとしてはリバースエンジニアリングする気満々だと思いますね。
      そうやって米国製兵器をコピーしてきた過去の歴史もありますから。

      3
    • 匿名
    • 2020年 12月 06日

    ロシアに輸出って、数年後は似たようなロシア製アンチドローンが競争相手になってしまいそうだけど大丈夫なのかな

    9
    • 匿名
    • 2020年 12月 06日

    売れて利益が出れば、コピーは危険視しないのかな。本国をコピーで攻められたら問題になるだろうけど、海外派遣先で戦っても気にしない。お互い本国には手を出さない暗黙の了解が?

    2
    • 匿名
    • 2020年 12月 06日

    売れるんだっていうより売るんだそれっていう驚きのほうが強いですね
    トルコ内では既に旧世代のシステムって事なんでしょうけど最新システムもその延長上に存在する訳ですし…それだけ自信があるって事なんですかね

    自衛隊もこういう装備を少量調達して研究を進めたほうがいいっていうのは賛成ですね
    物理的対抗手段としての防空レーザーだけではなく、電子戦領域でも対抗手段の幅を広げていくのは重要だと思います

    15
      • 野嘗
      • 2020年 12月 06日

      そもそもこれ日本で使えるのか? 大陸から日本列島攻撃する航続距離を持つUAVなんてどこも作らないと思うけど
      巡航ミサイルや弾道ミサイルで十分そうだしねえ

      1
        • 匿名
        • 2020年 12月 06日

        本土及び近海での戦闘のみに限定するならその通りかも知れませんが、島嶼防衛や海外派遣時を考慮するなら検討の余地があるのでは無いでしょうか
        島嶼侵攻においても偵察、攻撃にUAVは投入されるでしょうし、特に海外派遣においてはLRADと同じく攻撃力のない対UAVシステムは制限をあまり受けずに展開できると考えられるので、ありだと思うのですが

        9
        • 匿名
        • 2020年 12月 06日

        有事の際非対称戦術を相手は同時に展開してくるだろうし停泊してる潜水艦とか重要な対象に対して有効なのでは?

        8
        • 匿名
        • 2020年 12月 06日

        とりあえず研究位は最低限必要でしょう。

        7
        • 匿名
        • 2020年 12月 07日

        ミサイルぶっぱなすと即戦争だが、UAV使えば正体不明の攻撃として、温度差や時間差を生むことができる
        その隙をつくのが戦術の常道でしょうが

        2
      • 匿名
      • 2020年 12月 06日

      矛と盾だし盾はコピーされてばら撒かれてもその盾を貫ける矛を売ってるのがトルコだけとなれば
      みんなトルコから買うからかえって儲けって事になったりして?
      順調に死の商人として成り上がっていきそう……

      3
    • 匿名
    • 2020年 12月 06日

    これからの戦争にUAVが重要で、その対策がもっと重要なのは同意するけど、ちょっとこれ一色になり過ぎじゃない?
    引き合いに出されるナゴルノ=カラバフ紛争だけど、今日の朝刊に両軍の軍人の犠牲者数が乗ってて
    アルメニア軍2718人
    アゼルバイジャン軍2783人
    巷で言われる程、UAVを多用したアゼルバイジャンのワンサイドゲームではなかった。
    社会の混乱を目的としたテロならともかく、国同士の戦争は、UAVで戦局を有利に運べても最後は現場・前線の兵士が戦うことになる訳で。

    9
      • 匿名
      • 2020年 12月 14日

      平地で互い攻撃し合う形なら五分の結果と言えるかもしれないけど、何十年も防備を固めた陣地を今まで攻略できなかったのに今回は同レベルの損害で攻略できたのでワンサイドゲームと言っても良い結果では?

      1
    • にわかミリオタ
    • 2020年 12月 06日

    前述している人がいるように、トルコとロシアの関係は謎ですね。ナゴルノカラバフ紛争では、お互いに敵対しているように思えたのですが裏ではつながっていたのでしょうか?
    この2つの国の関係は、今後も目が離せません。

    5
      • 匿名
      • 2020年 12月 06日

      人種や主義主張や、宗教で世界を説明できるみたいな単純な思考は現実には通用しないということで
      まわりから不思議に見えても、当事者間には明白な理由と利益があるはずです

      1
        • にわかミリオタ
        • 2020年 12月 06日

        利益ねぇ。
        何があるんだろうか。

        1
          • 匿名
          • 2020年 12月 07日

          本当は、トルコとロシアは仲良くしたいのかも。
          周辺とのしがらみがあるから表だって言えないだけ

          1
            • にわかミリオタ
            • 2020年 12月 07日

            あぁ、確かに

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