ウクライナ戦況

ロシア軍がノーバ・カホフカを事実上放棄、関係者や協力者を全員連れ出す

ウクライナ側のパルチザンは「ロシア軍がノーバ・カホフカから占領行政の関係者や協力者などを全て連れ出した」と報告しており、オレシキーに続きノーバ・カホフカも事実上放棄(直ぐにウクライナ軍が解放できるという意味ではない)した格好だ。

参考:ОКУПАНТИ ВИВЕЗЛИ З НОВОЇ КАХОВКИ ВСІХ КОЛАБОРАНТІВ
参考:Британская разведка: Херсон остается уязвимым для большинства артиллерийских систем РФ

ウクライナ軍もロシア軍もドニエプル川を挟んだ互いの砲撃を効果的に阻止できないため、川沿いの地域を無人化するつもりなのだろう

ウクライナ軍は「ドニエプル川左岸に展開するロシア軍が川沿いの拠点を放棄して15km~20kmほど内陸に後退している」と明かしていたが、現地のパルチザンは「ロシア軍がノーバ・カホフカから占領行政の関係者、ロシア軍の協力者、親ロシア住民などを全て連れ出した」と報告しており、視覚的な確認はないものの放棄が報告された拠点は2つ目(最初に放棄が報告されたのはオレシキー)になる。

出典:Google Map ヘルソン州の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

逆に英国防省は28日「解放したヘルソン市は後方に下がったロシア軍砲兵部隊の射程距離内に収まっているため非常に脆弱で、毎日激しい砲撃を受けている」と指摘、ウクライナ政府は「解放したヘルソン州に暖房を供給できない」という理由で住民避難を開始しており、恐らくウクライナ軍もロシア軍もドニエプル川を挟んだ互いの砲撃を効果的に阻止できないため川沿いの地域を無人化するつもりなのだろう。

因みにウクライナ軍南部司令部は28日「キンバーン砂州での作戦は続いているものの気象条件の悪化、ドニプロフスカ湾を渡る必要性、穀物回廊にムィコラーイウ地域を含めるべきという交渉の影響うけて作戦は非常に困難だ」と述べている。

出典:Public Domain

穀物回廊の軍事利用は禁止されているため同地域が回廊の条件に含まれるとキンバーン砂州やキンバーン半島の扱いが難しくなるらしく、キンバーン半島経由でドニエプル川左岸に入るという構想は怪しくなってきた。

追記:ボーイングはサーブと共同開発したGLSDB(地上発射型小口径爆弾)がウクライナ支援の新たな選択になると明かしていたが、国防総省がボーイングの提案を検討しているとロイターが報じている。

GBU-39とM26ロケットモーター(HIMARSで使用されるロケット弾の推進部分)を組み合わせたGLSDBは最大150km先の静止目標だけでなく移動目標も攻撃可能で、ウクライナ軍が提供を要請しているATACMS(300km)よりも射程は短いが、HIMARSで運用中のGMLRS弾(80km)よりも射程が長く、使用されている技術も枯れた技術の組み合わせなのでロシア軍に残骸が鹵獲されても問題が少ない。

関連記事:戦場は泥の海、それでもウクライナ軍とロシア軍の戦いは止まらない
関連記事:ウクライナ軍とロシア軍の戦い、攻勢を止めても敵が戦力を回復するだけ

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • ズマ
    • 2022年 11月 28日

    m26はクラスター爆弾規制条約で行き場のなくなったロケットだったと記憶していたが、SDBと合体して第二の余生を過ごせそうで何よ開発に時間がかかり過ぎたのは失点だが
    陸自にも魅力的なロケットのように見えるがmlrsを廃棄してしまえば使用は不可能

    10
      • ミリオタの猫
      • 2022年 11月 28日

      あのですね…陸自が持っていたM26ロケット弾はクラスター弾禁止条約(オスロ条約)によって、条約による保管期限(条約発効後8年間)である2018年7月末までに全弾廃棄しているのですが?
      今回、米国でGBU-39とM26ロケットモーターを組み合わせたGLSDBを作ろうと言うアイデアが何故出たのかと言えば、米国はオスロ条約を批准していない為、M26ロケット弾を保管しても国際的に問題が無いからです
      後、陸自のMLRSにしても、後継となる島嶼防衛用高速滑空弾のブロック1(機動式弾道弾)が来年度から量産開始なので、陸自的には廃棄しても惜しく無いのでしょう(ウクライナヘ送れって声が出そうだけど)

      7
        • ズマ
        • 2022年 11月 28日

        条約の主旨から言えば廃棄するべきはM26のクラスター弾頭であり、推進機構の廃棄は原則必要でないからSDBと組み合わせれば安価に小型弾道ミサイルの類似品が製作出来るというアイデア
        既存兵器の融合であることに価値があった
        品質管理さえ上手く可能ならmlrsやHIMARSを有する国家には魅力的

        11
          • ミリオタの猫
          • 2022年 11月 28日

          それは後知恵で、多分オスロ条約では推進機構も廃棄する様にと認識される条文になっていた可能性も有りますね…(少なくとも日本だとそう認識していたのかも)
          後、もう一度書きますが米国はオスロ条約を批准していません

          4
    • 名無しさん
    • 2022年 11月 28日

    中国がよく使ってる降雨用のロケット、ロシア側に積極的に撃てたりしないんですかね・・・

    • ホテルラウンジ
    • 2022年 11月 28日

    ドニエプル川はキーウ辺りではカッチコチに川面が凍って歩いて渡れるぐらいに凍るようですが
    へルソン辺りは最高気温が真冬でも0度を上回るみたいなんで歩いて渡れるほど川に氷が張る事は無さそうですね

    1
    • 2022年 11月 28日

    安いんだよねー
    600万か700万

    3
      • ズマ
      • 2022年 11月 28日

      これが開発されていたので、エクスカリバーは要らないだろうと当時ミリオタ界隈で話題になっていた
      最も、炸薬重量は16kgしかないが

        • りんりん
        • 2022年 11月 29日

        アメリカが供与okしそうなのは、その弾頭重量ゆえに数発当てた程度では、ケルチ大橋を落とせないからかも知れませんね。
        (コンクリの薄い掩体壕程度は貫通できるらしいので、上手く当てれば橋の破壊もできそうな気もしますが)

        • せい
        • 2022年 11月 29日

        補給拠点や要塞化されてない司令基地叩くには充分ですな。

    • 黒丸
    • 2022年 11月 28日

    低騒音で低赤外線の電動ドローンは
    観測手段として活用されれば厄介な相手ですが
    低温環境でも夏と同じように活動できるのでしょうか?
    車みたいに寒冷地仕様があるのかな?

    3
    • 戦略眼
    • 2022年 11月 28日

    ロシアは、ちゃんと協力者を連れ出しているんだ。

    1
      • ミリ猫
      • 2022年 11月 28日

      連れ出したあとの処分はどうなることやら。
      極寒のシベリアで木を数える仕事を与えられても文句は言えない。。。

      11
      • かn
      • 2022年 11月 29日

      ウクライナ側に知られちゃ不味い情報沢山知ってるからね。  扱いは〔人間〕というより、〔機密書類〕みたいな存在なんじゃね?

      ウクライナ側に寝返られて、司法取引じゃないけど、ロシアの機密をペラペラ喋って安全の保証をしてもらうなんて考える輩が出てくるとも限らないし… 
      というか、そういうコトをロシア側にしたのがこの協力者だからね。 一度裏切るヤツは何度も裏切るよ、国家や土地や仲間よりも、結局は自分が一番可愛いからそういう行動取るんだ。 

      協力者なんて用が済んだら邪魔だろうけど、生かしたまま放置しても何しでかすかわからない。少ないともロシア側に有利に作用することはないだろう…。 現地で殺して処分しても、ジェノサイドだとか騒がれてウクライナのプロパガンダの材料にされる。 

      ちゃんとロシア(自宅)に持ち帰ってから処分するんだろ。キャンプのゴミと同じ。自宅でゴミを処分するなら誰にも文句を言われないだろう?

      18
      • TKT
      • 2022年 11月 29日

      アフガニスタンでアメリカ軍やNATO軍に協力したアフガニスタン人は、ほとんど見捨てられましたからね。

      日本政府に協力したアフガニスタン人を、自衛隊が救出することもほとんどできませんでした。

      しかしウクライナ側に行ったところで、電気もろくに使えませんし、この冬に暖房も十分に取れるかわからず、ヘルソン市街は砲撃ですでに無人地帯、ノーマンズランドと化しています。

      首都のキーウでさえも、ゼレンスキー大統領とクリチコ市長の間で対立、責任の押し付け合いになっています。

      ポーランドのような国外に脱出しても、ポーランド政府がウクライナ政府を激しく批判するようなことも起きており、この先、ウクライナ人の避難者がどんな扱いを受けるか予想できません。

      1
      • タイヤキ
      • 2022年 11月 29日

      ロシアは内通や協力者への扱いはいいから、裕福にウクライナ側の暗殺に怯えながら暮らすでしょうね。
      現地協力者ないがしろにすると、裏切る人が出てくれないから、ロシアはロシアに協力したアメリカ人や日本人への扱いもかなりよいみたいですからね。
      プーチン大統領のスパイ出身だったからウクライナ人にいかにロシアに協力すればよいことになるかの広告塔として使われる。
      ウクライナ人の恨みはかっているから、戦争前に冬にいつものとおりロシアに出稼ぎにきて帰れなくなったウクライナ人300万人以上の中にいるウクライナに協力する人たちに暗殺される可能性も高いから、ロシアにとってもよい囮になりますからね。

    • 名無しパン
    • 2022年 11月 29日

    日本もそろそろ対戦車誘導弾の整理を行った方がいいのだろうね。87式とか96式とか射程10㎞クラスじゃほぼ相手にならんでしょ。上陸艇相手に海岸まで向かえるか微妙だし弾薬の投射量からしても高機動車に3発とか明らかに足らんだろう。これからは対ドローン戦術が増えて相手方の防空システムも強化されるだろうし、同時弾着機能の強化は必須ともいえる。
    もう20年以上前のシステムに頼るのではなく、新たに開発すべき時期なんだろうな。ちょっと遅すぎるように思うが。

    6
      • ブルーピーコック
      • 2022年 11月 29日

      『射程延伸、同時多目標対処、高速目標対処、全周対処等の機能・性能を向上しつつ、取得コストを低減した』(防衛省HP) 96式の後継である多目的誘導弾システム(改)が25年の配備を目指して川崎重工主体で開発中です。今年から24年まで試験するとか。

      87式は既に中距離多目的誘導弾に更新中です。歩兵が携行できなくなりましたが、それはジャベリンに近い性能の軽MATと、パンツァーファウスト3の役割になりました。

      1
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