ウクライナ戦況

ロシア軍がほぼリシチャンシクに到達、ゾロテを守るウクライナ軍も包囲寸前

南方の防衛ラインを突したロシア軍はウクライナ軍の重要拠点であるリシチャンシクに到達する寸前で、パポスナ陥落後も抵抗を続けてきたゾロテもロシア軍に包囲される寸前だ。

Toshkivka陥落で状況が刻々と悪化していくウクライナ軍、バフムート方面の状況も芳しくない

ロシア軍の前進を1ヶ月以上も阻止してきたToshkivkaが陥落したことでリシチャンシク周辺の状況は急速に悪化、遂にロシア軍はBila Horaまで到達してウクライナ軍と交戦中、西方向にPidlisneまで抜かれたたためゾロテを守るウクライナ軍は包囲される寸前だ。

出典:GoogleMap 大まかなドンバスの状況/管理人加工

バフムート方面でもロシア軍の前進を阻止しているLuhans’keを側面から包囲する動きを見せており、この試みが成功すればウクライナ軍は後退を余儀なくされるだろう。

小型ボートやロープ輸送に頼るセベロドネツクの抵抗がどれだけ続くのか不明だが、仮にリシチャンシクに後退してもロシア軍が南方から迫ってるいるため高台という地形しかウクライナ軍に味方するものはなく、すでに絶え間なく降り注ぐ砲弾でリシチャンシクの街自体が破壊されつつある。

出典:GoogleMap 大まかなセベロドネツク周辺の状況/管理人加工

因みにハーンシク州知事のガイダイ氏は21日、ウクライナ軍が保持するセベロドネツク郊外の工業地区にロシア軍が侵入して激しい戦闘が行われていると明かしており、ゾロテからウクライナ軍が撤退したという情報も出てきた。

パポスナ陥落と同じようにToshkivka陥落の影響は当分続く見込みだが、もうリシチャンシクの目前に敵が迫っているため「後退できる空間」がウクライナ軍に残されているとは思えない。

関連記事:ロシア軍がセベロドネツク周辺で前進、リシチャンシクへの突破口を開く

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • あさり
    • 2022年 6月 22日

    正規軍相手の戦い方を思い出したロシアはやっぱり強いですね
    最初からこうしていれば西側のここまでの介入を招くことはなかっただろうに
    本格的な装備が投入できるまでの間でウクライナの国土が壊滅的になりそうだ
    こんだけ街壊してロシアはどう復興するつもりなんだろう

    26
      • 名無し
      • 2022年 6月 22日

      最初はクレムリンからの横槍というか命令で無茶な空港確保に始まり渋滞だのなんだのだったみたいですからねえ。
      言い方はなんですが真面目に地道に殴り合えば砲兵戦じゃどうしたって有利です。

      22
      • 成層圏
      • 2022年 6月 22日

      無能な上司(将校)が一掃された影響だったりして。

      5
    • 2022年 6月 22日

    あんまりいいニュースを聞かないな…
    じわじわとだけど包囲網が狭まってきてらぁ…

    21
    • ido
    • 2022年 6月 22日

    第2のマリウポリにならないといいが。もっと早くゼベロドネツクから撤退していれば。

    10
    • ミリオタの猫(やっぱり、アンツィオ…いや、ロシア軍は強い?)
    • 2022年 6月 22日

    今、他の戦場MAPも確認したのですが、ロシア軍は進撃出来ていてもポパスナ方面の幹線道路T1302とT0513を押さえる事が出来ていないので、恐らくウクライナ軍はこの幹線道路へロシア軍が進撃しない限りは我慢すると思います。
    昨日の段階でロシア軍は一気に攻め上がって包囲作戦に出ると思っていたのですが、samoさんから「ドネツ川西南域は丘陵地帯で起伏も激しく複雑な地形。今回取られた町も高台に位置しているけれど、そこからさらに西も丘陵地帯で、見通しは効かず、リシチャンスクの補給線は維持される」との指摘が有ったので、少し考えを変えました。
    只、いずれ背後を取られて包囲されるのは時間の問題で有る事には変わりありません。

    【戦場MAP・他参照】
    Twitter“かみぱぱ”様
    MILITARYLAND(海外ブログ) リンク

    5
      • トブルク
      • 2022年 6月 22日

      ロシア軍がセベロドネツクへと続く回廊を攻撃し包囲する可能性は1ヶ月前から指摘されていましたが、それをしなかったのは兵力不足でできないからでしょう。
      もし、ロシア軍司令官の手元に自由に運用できる3個師団程度の攻撃部隊があれば、ウクライナ軍の戦線を突破し、包囲戦を仕掛けていたと思います。
      しかし実際は、この1ヶ月で戦線に大きな変化はありません。
      ロシア軍には攻撃のための予備戦力が尽きていて、前線に張り付いている部隊が、目の前の敵と戦い、ジワジワ押していくのが精一杯なんでしょう。
      私はロシア軍の今回の攻勢の最終目標は、ドネツク州北部のスラビャンスク一帯だと思ってます。しかしそこまで行くには大規模な突破が必要ですが、ロシア軍にそんな力は残っていないように感じます。
      ウクライナ側はセベロドネツクを失いそうですが、リシチャンシクでもう一度ロシア軍を拘束し、動きを止める展開になると予測します。
      戦は数だよ、は戦争の真理ですが、今のロシア軍を一言で言えば、ロシアに兵なし、だと思います。

      17
        • 成層圏
        • 2022年 6月 22日

        ロシア側も今は砲弾に余裕があるけど、供給に支障がでると兵士不足で敗走するんじゃないかな?
        いくらロシアとはいえ、短期間でそんなに砲弾が作れるはずがない。ソ連時代の備蓄もいずれ尽きるだろう。

        8
      • かず
      • 2022年 6月 22日

      T0513はともかくT1302は小火器の射程内なんでろくに機能してないのでは?

      3
    • 匿名
    • 2022年 6月 22日

    ゾロテは既に放棄されて、主要部隊は撤退済みとの事ですが、しんがり役の後方支援部隊が残っている様です

    ここでのウクライナ軍の戦略目標は、縦深防御によるロシア軍の進軍速度を削ぎ、市街戦にて損耗させるという事ですが、いよいよ引き際かも知れませんね

    戦力比を覆す地形を手放すのは非常に惜しいですが、主力2万人と供与された長距離砲をここで失う訳にはいかないでしょう

    13
    • ななし
    • 2022年 6月 22日

    ロシア本土へは攻撃出来ないのであれば、守備兵力を逐次攻撃へと回せるロシアが圧倒的に強いよな。

    支援側も攻撃距離なんぞ気にせず渡したら良いよ。
    そしたらロシアの攻撃は鈍る。

    兵器は更新効くが、ウクライナ兵とウクライナ国民は換えが効かない。

    22
    • 匿名希望
    • 2022年 6月 22日

    ロシアは接敵したら、後退し、直ぐに砲弾が飛んでくるとか
    建物も一つずつ確認しながら進んでるから、非常に速度が遅いように見えるけど、ずっとそんな感じで進んでるよね
    ウクライナが本当に強くて反撃能力が高いなら、ヘルソンで一部奪還した後、ヘルソン方面からどんどん盛り返せた。
    そんなね、大砲送ったって直ぐ使えるわけじゃないよ
    もう、ナゴルノカラバフ紛争末期みたいに、ウクライナはドンバスの街へ無差別攻撃してるから、ウクライナ軍の崩壊は近いよ
    どうしようもなくなったら、キエフでクーデターのような騒乱になると思うが・・・
    9月には重要な軍事博覧会が開かれるから、それまでにはお互い武器を収めるでしょう

    11
      • ミリオタの猫(やっぱり、アンツィオ…いや、ロシア軍は強い?)
      • 2022年 6月 22日

      こっちが調べた限りでは、ウクライナ軍がドンバスで無差別攻撃をしている明らかな証拠は出なかったのですが…ロシア軍の無差別攻撃と勘違いしていません?
      後、ロシア軍が本当に強かったら、とっくの昔にポパスナ方面の幹線道路T1302とT0513を押さえてセベロドネツク方面のウクライナ軍を包囲していると思うのですが…?

      19
        • 浅見真規
        • 2022年 6月 23日

        >後、ロシア軍が本当に強かったら、
        >とっくの昔にポパスナ方面の幹線道路T1302とT0513を押さえて
        >セベロドネツク方面のウクライナ軍を包囲していると思うのですが…?

        ロシア軍にとって、そういう戦い方は分が悪いので、そういう戦い方は止めにして、ロシア軍にとって有利な砲撃戦に持ち込み、ウクライナ軍は東部戦線の最前線で三方をロシア軍に囲まれた不利な場所に無理して砲を投入しては破壊されてるみたい。タダだと思ってか大砲をクレクレって言ってるみたいだが、砲がすぐに破壊される場所に無理して投入してたら熟練砲兵も死傷してしまう事がわからないのかな。
        ロシア軍の発表によれば昨日は一日で15基の榴弾砲が破壊したそうだ。
        リンク

        3
        •  
        • 2022年 6月 23日

        戦術学的に包囲っていうのは後方連絡線を脅かした状態で成立するんであって別に逃げ道全てを塞いで全周囲む必要はない
        むしろ全周包囲は包囲機動中と包囲後両方で死に物狂いの反撃を招くから避けるべきであっていつでも全周包囲に移行出来る体勢を維持しつつ部分包囲を続けるのが定石
        そうしないのは取り急ぎ別の方面に戦力を抽出したい場合くらい、マリウポリとかね

        セベロドネツク突出部で言えばT1302とT0513を圧迫出来ている時点で既にこの戦域の包囲は成立してるわけでわざわざ制圧維持する必要がない
        実際にウクライナ軍はほとんど役に立たないT1302を死守するために広正面で連続線防御を行って戦力を貼り付けざるをえず戦闘効率の低下は明らか
        ロシア軍は外から見えていたほど強くないけどだからこそ戦術学的に悪手であるT1302とT0513の早期遮断を試みることもない

        5
          • ミリオタの猫(やっぱり、アンツィオ…いや、ロシア軍は強い?)
          • 2022年 6月 23日

          その事なんですが、Twitterのかみぱぱ(@kamipapa_ro)さんからのツイートによると、22日にリシチャンスク南東部のウクライナ軍がロシア軍の攻撃で壊乱した為、現在リシチャンスク郊外が南東部から半包囲されている様ですので、ロシア軍はT1302とT0513を圧迫するだけでは不足だったと判断したようですね(だからこそ、より狭い範囲の包囲をやった事になる)。

            •  
            • 2022年 6月 23日

            因果が逆
            包囲されて戦闘効率が下がったセベロドネツク突出部のウクライナ軍に対してポパスナ突出部は優勢に拡大を続けて連続包囲が可能になった

    • 匿名
    • 2022年 6月 22日

    最初からこんな感じで進むと思ってた
    まあ腐っても大国という訳か

    9
    • AAA
    • 2022年 6月 22日

    Toshkivkaが落ちてもゾロテ一帯は少しの間は持つと予想してたが、実際は一日で急速に崩壊してしまったな…。
    昨日の時点でこれを予想していた筆者さんは流石ですね。

    3
    • NATTO
    • 2022年 6月 22日

    ウクライナ側も小銃の主力はAK74なんだな。
    外人部隊がSCARとかBRENを使っていたけど、補給が怪しいと弾が敵と同じ方が良いんだろう。
    冬戦争も小銃の弾位は困らなかったみたいだし。

    1
    • 浅見真規
    • 2022年 6月 22日

    リシチャンシク等は包囲される前に、ロシア軍の榴弾砲の射程圏で三方を囲まれ十字砲火を受けるためかウクライナ軍の榴弾砲が狙われ西側から軍事支援された榴弾砲(自走砲を含む)は東部の前線に実戦配備直後に破壊されてるみたいですね。ロシア側の発表によれば昨日は21基の榴弾砲を破壊したとか。(サバ読んで3倍水増しで発表してるとしても5基破壊。)
    https://news.yahoo.co.jp/articles/1799f5d3ca041f6af833cc192fd6914c93b832e5
    ウクライナは大砲が破壊されて足りないからクレクレと言ってるみたいだけど、ロシア軍の榴弾砲の射程圏で三方を囲まれ十字砲火を受ける場所に投入すれば破壊されて当然。

    管理人さんの記事『リシチャンシクに自走砲KRABが到着、セベロドネツクを巡る戦いに変化』(元記事のウクライナ語記事をGoogle翻訳で見ましたが「リシチャンシクに自走砲KRABが到着」は未確認ですが)についても、本当に自走砲KRABをリシチャンシクに投入してたら破壊されるのは時間の問題。BB弾で射程40kmならリシチャンシクに投入せずに後方20kmで十分のはず。

    欧米諸国からの軍事支援で無料だと思ってるのか、すぐに破壊される場所に投入して榴弾砲が破壊されると、ウクライナの熟練砲兵も死傷して砲兵の大半が初心者の新兵になってしまうという不利に気付くべき。

    ともかく、包囲される前から射程圏で三方囲まれ十字砲火受ける場所は軍事的に不利なので、早急に計画的撤退すべき。

    今日は、こんな記事も見た。
    リンク
    >ロシア軍の戦車に自動小銃のみで攻撃を仕掛けるような
    >「自殺行為に近い作戦」を命じられた兵士らが、
    >逃亡するケースが出ているという。

    これって、ゼレンスキー大統領が「後退した方が有利だがセベロドネツク奪還は高くつく」と実質的にセベロドネツク死守を命じた事に起因するのだと思う。「綸言汗の如し」という東洋の格言を彼に贈りたい。カリスマ性のあるトップの不用意な発言のために千人以上の兵士が無駄に死んでいく危険もある事を自覚すべきだ。

    5
      • 浅見真規
      • 2022年 6月 23日

      書き間違いを発見したので訂正します。

      (誤)ロシア側の発表によれば昨日は21基の榴弾砲を破壊したとか。
      (正)ロシア側の発表によれば昨日は15基の榴弾砲を破壊したとか。

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