ウクライナ戦況

リシチャンシク接近を阻んできた防衛ラインをロシア軍が突破?

ウクライナ軍とロシア軍がセベロドネツクを巡って激しい戦いを演じているが、リシチャンシクを守る防衛ラインが突破されたという報告が出てきた。

ロシア軍はセベロドネツク郊外の工業地区に立て籠もるウクライナ軍を包囲しようと動いているらしい

ウクライナ政府の関係者は「リシチャンシクに自走砲KRABが到着して戦いの流れが変わりつつある」と主張、ゼレンスキー大統領も「米国からの支援量が増加して前線の状況に改善が見られた」と述べていたが、Toshkivkaの防衛ラインをロシア軍に突破されたという報告が出てきた。

出典:GoogleMap 大まかなセベロドネツク周辺の状況/管理人加工

Toshkivkaを制圧したロシア軍は攻めあぐねいたドネツ川沿いのUstynivkaを背後から突くと予想されており、本当にToshkivkaをロシア軍に奪われたのならUstynivkaを守るウクライナ軍も後退を強いられるはずで、ロシア軍はリシチャンシクまで約5kmの位置にたどり着いたことになる。

さらにロシア軍はセベロドネツク郊外の工業地区に立て籠もるウクライナ軍を包囲しようと動いているらしく、もしポッケトが閉じてしまえば工業地区の地下シェルターに避難している市民約500人とウクライナ軍部隊は絶望的な状況に陥るだろう。

出典:IgorGirkin

セベロドネツクとリシチャンシクの間に流れるドネツ川を渡る橋は全て破壊されており、ウクライナ軍はドネツ川の何処かに舟橋を設置してセベロドネツク方面とのアクセスを確保していると信じられているが、Borivs’keもロシア軍の砲撃で街の建物が瓦礫と化しているらしい。

因みに上記の戦況マップはオープンソースの情報に基づいたもので、ハーンシク州知事のガイダイ氏は「セベロドネツク郊外に位置するMet’olkineの支配権を失った」としか認めていない。

追記:Toshkivkaでウクライナ軍が最後まで保持していた区画への攻撃シーン、まだ最後の地区をウクライナ軍が維持できているのかは不明だが、1ヶ月以上もロシア軍の前進を食い止めていたToshkivkaはほぼ制圧されてしまったのだろう。

関連記事:リシチャンシクに自走砲KRABが到着、セベロドネツクを巡る戦いに変化

 

※アイキャッチ画像の出典:Сергій Гайдай

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コメント

    • ido
    • 2022年 6月 20日

    これは一旦高台のリシチャンシクからの砲撃のため全員地下に隠れ街を廃墟にするしかないのかな。マリウポリの二の舞にならなければいいが。ただ、強行突破撤退はできんこともない距離。というか架橋戦車ってウクライナ軍にないんかね。あったら展開してすぐ撤退できるんだが。

    6
      • 四凶
      • 2022年 6月 21日

       ウクライナ自体は持っているかは知らないが鹵獲した物はあったはず。例えあったとしても展開出来る所は全て榴弾砲の通常弾射程圏内でしかないと思うんだが。

       渡河する時は渡る先の安全確保必要だけど占領はされていないとは言え敵攻撃の射程圏内、小型船か浮航能力ある装甲車で浮橋作ろうが門橋作ろうがUAVで見付かってどこかの時点で攻撃されて終わりじゃないの?
       むしろ籠もっている敵が出てきてくれて有り難い事この上ない。

       今の時点で目立つ撤退手段はとれないから、仮に元気な人間を逃がすなら川幅狭い所にロープなり網張って大部分を水面下にして少しずつ伝って移動させるぐらいが関の山では。

      5
    • 名無し
    • 2022年 6月 20日

    軍事的じゃなく政治的思惑で動いて序盤失敗したってのを反省して堅実に攻め込んでる感じがあるから、ロシア軍が前進してても不思議はないが街の裏をとられたらウクライナとしてはまずかろうな。

    18
    • R
    • 2022年 6月 20日

    さっさと撤退すればよかったのに、、
    ゼレンスキーの政治的思惑が優先して包囲されてしまった。
    ここまできたらドネツ川を盾に西を守って、西側からの重装備を待つしか無いわな。

    10
      • G
      • 2022年 6月 22日

      しかしゼレンスキーの政治的姿勢とウクライナ側が各所でさっさと撤退せず意地を見せてきたからこそ西側がこれだけ支援するようになったわけで
      もし危なくなったらさっさとその地区を放棄するということを繰り返していたらロシア軍は現在より支配地域を大幅に獲得していたでしょうし、ウクライナがこれほど支援を取り付けることはできなかったのでは

      1
    • ネコ歩き
    • 2022年 6月 20日

    衛星写真を見ると工場街西側は川沿いの住宅地以外は湿地帯ぽいですね。
    進撃ルートはリシチャンシク側から側面を狙い撃ちにされそうですが、住宅街が河岸林の中にあることや住民が残っているとかで効果的砲撃等が出来ない状況なんでしょうか。

    5
      • 鳥刺
      • 2022年 6月 20日

      ご指摘の通り、アゾット工場と川岸の間は氾濫原で、正直ウクライナの砲兵を制圧していないと長期滞在はしたくない場所なんですが。完全か時限的にかはともかく、それを達成したという事でしょうかね。

      7
      • WSO
      • 2022年 6月 20日

      T1302の保有ルートが使えない現状、リシチャンシクの火砲も弾薬不足が深刻なのかもしれませんね。そこまでいかずとも弾薬消費と補給との相互関係で節約ないし沈黙するタイミングが生じているとか。地図を見ているとパッと見はけっこう支援砲撃できそうな印象なんですけどね…

      5
        • WSO
        • 2022年 6月 20日

        誤)保有  正)補給

        1
    • ミリオタの猫(やっぱり、アンツィオ…いや、ロシア軍は強い?)
    • 2022年 6月 20日

    本ブログの先の記事で、ゼレンスキー大統領が19日に「ウクライナにとって歴史的な1週間が始まるため『ロシア軍の敵対的な行動(攻撃)が増加するだろう』と明かしていましたが、その中身の一つがこれなんですかねえ…?
    だとすれば、ここ1~2週間が正念場だと思われますが、ロシア軍がリシチャンシクを押さえれば、セベロドネツクの運命とは無関係にロシア軍は得意の縦深攻撃が可能となる(リシチャンシクから西側・キーウ方面はほぼ平野部で、これと言った要害が無い)為、大マジで首都キーウ陥落も見えてきます。
    自分は、いずれどこかの段階でNATOが全面介入しない限り、ウクライナの勝ちは無いと思っていましたが(但しその確率は5%程度)、もしかするとそのまさかが現実になるかも知れません。

    7
    • 名無し
    • 2022年 6月 20日

    キーウのボグダンさんが言ってたが前線で戦ってて今ローテで戻ってきてる兵士の話では本当にあらゆる砲弾が足りないらしい。
    兵隊の数はローテ回せるくらい余裕があるけど弾薬不足がとにかく深刻とか。
    露から飛んでくるミサイルやロケットも不発が多くて半分くらいは爆発しないらしい。だから特殊工兵が不発弾を爆死覚悟で回収してリサイクルできるものはリサイクルして撃ち返すという涙ぐましい努力をしてるんだと。
    米の多連装ロケットに関しては実はもう少数配備されてるが長射程の為東部戦線では使用が許可されずに南部限定で投入だとか。
    あと米軍から支給されてるM4小銃がマジで東部の野戦では役立たずでAK47が主兵装になってる。とにかく泥や砂が詰まってすぐ壊れる。実戦で使う銃は射程や威力や精密性は必要ない。とにかく「壊れない事」が重要で西側の銃は3日経たずお釈迦とか。

    28
      • 伊怜
      • 2022年 6月 20日

      M16系列は米軍のマニュアルでは一日に三回クリーニングすることになってたかな。劣勢で余裕の無い軍隊には無理な話です。

      10
      • ダヴー
      • 2022年 6月 20日

      不発が多いというのは最近の情報でしょうか?
      そうであれば、1日に数万発と言われる砲撃の多くは古い在庫のものである可能性が高く、ロシアの砲弾薬の生産体制が大きく増えたということでは、少なくとも今時点では無さそうですね。
      であればいずれ在庫が尽きそうなものですが、一体ソ連時代にどれだけの量を生産していたのだろう・・・。

      あと、以前にロシアの砲撃の効果に問題が有るという考察をしていた方がいましたが、数万発の砲撃を受けながらもウクライナ軍が持ちこたえられている理由の中に、この不発弾の多さ・精度の低さが有るのかもしれないですね。

      7
        • ダヴー
        • 2022年 6月 21日

        砲弾の生産数が気になったので物凄く雑な計算での推測。

        wikiにあった1990年のソ連野砲の数
        2S1 2,751
        2S3 2,325
        D-30 4,379
        D-20 1,700
        計11,155

        これらに5000発分の弾薬が生産されているとして55775000発。
        仮にこのうち残されているのが半数がとしても約2500万発・・・。
        う~ん・・・。

        2
        • ミリオタの猫(やっぱり、アンツィオ…いや、ロシア軍は強い?)
        • 2022年 6月 21日

        参考程度ですが、昔、江畑謙介さんの著作で「砲弾や爆弾の不発弾は、概ね全体の1割程度は発生し得る(WW2の話等を交えた上で)」と言う話を読んだ事が有るので、ロシア軍の現状を考えると砲弾の不発弾が再利用出来る程有ってもおかしくは無いと思います。

        4
      • おわふ
      • 2022年 6月 21日

      東部でMLRS使わせないのは、ひどすぎるな。

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