ウクライナ戦況

ロシア軍がセベロドネツク市の大部分を支配、戦闘は市中心部で発生

ルハーンシク州政府のロマン・ヴラセンコ氏は31日、ロシア軍がセベロドネツク市の大部分を支配して戦闘は市中心部で行われていると発表した。

参考:Російські війська контролюють значну частину Сєвєродонецька, бої точаться в центрі міста – Власенко

視覚的に確認できるロシア軍の支配地域だけを見ても数日間で大きく拡張されており、最前線は市の大通りに到達している

ルハーンシク州知事のガイダイ氏は28日に「ロシア軍がセベロドネツク市内の一角に侵入したが、ウクライナ軍の砲撃を受けて前進できないでいる」と主張したが、ヴラセンコ氏の説明によるとセベロドネツク市に対するロシア軍の最初の攻撃は失敗、2回目の攻撃で市の北側にあるミールホテルやバスターミナルの一角を確保することに成功。

出典:GoogleMap 大まかなセベロドネツク周辺の状況/管理人加工

ロシア軍は確保した地域から市内中心部に向けて前進、現在の戦闘は市中心部で行われており「セベロドネツク市の大部分(50%)はロシア軍の支配下にある」と述べているが、市内の状況に関する詳しい情報はウクライナ側もロシア側も開示していないので「どこまでロシア軍が前進しかのか?」「どの地域をロシア軍に奪われたのか?」などは良くわからない。

ただ従軍記者やルガンスク人民共和国側がネット上に投稿する画像や映像からセベロドネツク市内の前線を推定すると以下の通りになる。

出典:GoogleMap 大まかなセベロドネツク周辺の状況/管理人加工(更新)

ヴラセンコ氏の説明が正しいならロシア軍が確保しているセベロドネツク市内の範囲はもっと多いはずだが、視覚的に確認できるロシア軍の支配地域だけを見ても数日間で大きく拡張されており、最前線は市の大通りに到達している。

米シンクタンクの戦争研究所(ISW)などは「ロシア軍は市街戦に不慣れでセベロドネツクの攻略に手間取るだろう」と予測していたが、一旦市内に足場を築いたロシア軍は急速に市街戦を制して市内を制圧しており、もう何を参考にしていいのか分からなくなってきた。

追記:セベロドネツク市内のロシア軍支配範囲を更新。

出典:GoogleMap

追記:ロシア領クルスク州に展開する大規模なロシア軍部隊(数は不明)がウクライナのスームィ州国境に向けて移動を開始したという情報があり、これが事実ならウクライナ軍の戦力は更に分散を強いられることになる。

関連記事:ロシア軍がセベロドネツク市内の一角に侵入、州知事は撤退の可能性に言及

 

※アイキャッチ画像の出典:Сергій Гайдай

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コメント

    • や、やめろー
    • 2022年 5月 31日

    せめてリシチャンシクだけでも…一番下の橋を緊急修復して戦車とか渡さないと

    1
    • 戦略眼
    • 2022年 5月 31日

    今のロシア軍は、チェチェン紛争等で市街戦の経験を積んでいるからね。
    真面目に戦争したら、こんなものだろう。
    資源価格も高騰しているので、軍資金もたんまりある。
    動員力も大きいし、時間が経つ程ロシアが有利かもしれない。

    21
      • ああああ
      • 2022年 5月 31日

      正直もうロシアの逆転勝利が近づいてると思います。
      5個下の記事にあるように、東部を占領されればそこから一気に西側の瓦解が始まるかと。
      もうなにもかも手遅れ、世界はロシアの蛮行に何もなすすべが無いことを証明する結果になりそうです。
      次はこれ幸いにと中国が日本を攻めて来たりしそうでもう絶望的な情勢ですね…

      14
        • ミリオタの猫(ロシア軍、今度こそ架空戦記張りの大逆転をやるのか?)
        • 2022年 5月 31日

        それでも日本が台湾有事に巻き込まれる場合は海が主戦場の為、ある程度の時間的な余裕が有ります(上陸作戦の準備にはそれだけの時間が掛かる上、台湾侵攻の場合は大部隊が必要なので事前にバレる可能性が高い)。
        先日のバイデン米大統領の訪問時に、日米間で必要な打ち合わせもやっているでしょうから、少なくとも日本の場合は絶望的とまでは言えないと思います。
        それよりも、もっと絶望的なのはEU諸国、特にバルト三国・スウェーデン・フィンランド・そしてポーランドですね…ウクライナが殲滅されたら間違い無くプーチンとロシア軍の「御礼参り」がやって来ますよ(恐らく核弾頭付きでやって来るので、NATOもビビる可能性有り)。
        これらの国々はスウェーデンを除いて陸続きだから、ロシア軍に何時蹂躙されるか分かりません。

        9
          • ああああ
          • 2022年 5月 31日

          自由民主主義も堕ちるとこまで堕ちましたね…
          独裁者産んで、衆愚政治のはてに核保有国による虐殺が当たり前の世界で、どうやって生きていけばいいのか…

          8
            • ミリオタの猫(ロシア軍、今度こそ架空戦記張りの大逆転をやるのか?)
            • 2022年 5月 31日

            う~ん、でもロシアのウクライナ侵攻以前から民主主義の限界は指摘されていたし、それ以前に環境・資源問題等で人類滅亡の可能性も有りましたから、これを機に人類の歴史は終わりへと向かって行くんじゃないでしょうかね?(オイ)

            5
              • ああああ
              • 2022年 5月 31日

              いっそのことロシアを核攻撃やら生物兵器やらで皆殺しにすべきでしょうかね、西側が生き残るチャンスは。
              ロシアの侵略による緩やかで確実な滅亡か、僅かな可能性にかけロシア消滅を狙うか…

              4
                • ミリオタの猫(ロシア軍、今度こそ架空戦記張りの大逆転をやるのか?)
                • 2022年 5月 31日

                いや、世の中には「相互確証破壊」と言う理論が有りまして、いっその事ロシアを核攻撃やら生物兵器やらで皆殺しにしようとしたらロシアからも同じ報復をされて人類皆兄弟じゃ無かった、人類皆滅亡すると言うオチが待っておりますので(滝汗)。

                2
            • 匿名
            • 2022年 6月 01日

            どうやら21世紀は「中華圏とルースキーミールの時代」となりそうですかねぇ

            1
      • a
      • 2022年 5月 31日

      ここの人たちって、なんでチェチェンを完全に制圧するのに10年もかかったロシアがウクライナを短期間で制覇できると思っているんだろう?

      資源高騰で軍資金がとか言うけど、いくら石油があふれていたって半導体がわいてくるわけでもないし、資源が何年も高騰し続けるとも限らない。
      グダグダ戦争し続けている間に資源価格が下落すれば、資源依存をますます深めていくロシアはどうするつもりなんだろうね?

      26
        • トト
        • 2022年 5月 31日

        長いのはゲリラ戦であって全面戦争はなかなか体力が持たない。
        西側が支援続けられないと言ったらウクライナも講和せざるをえなくなるだろう。

        12
        • hiroさん
        • 2022年 5月 31日

        本当に、いきなりここまで悲観的な観測が出来る理由が知りたいですね。
        今、ウクライナが劣勢なのはロシア軍が戦線整理をして戦力の集中が可能になったのと、元々兵力が少なかったウクライナ軍が蓄積した損害の補充の過程にあることが影響しているのでは?
        仮にロシア軍が東部を確保しても、西部に再攻勢する体力が残っているかどうか。
        更に言えば、NATOや日本に戦線を拡大するなんて非現実的な発想だと思いますよ。

        19
          • sunn
          • 2022年 5月 31日

          全文同感です。
          悲観主義は感情に属し、楽観主義は意志に属するというアランの言葉がありますが、つまりはまあそういうことではないでしょうか。

          12
        •  
        • 2022年 5月 31日

        ではアフガニスタンで20年かかって失敗した米軍ならイラク制覇に30年かかりましたか?
        ゲリラ戦と正規戦はまた別です

        5
        • や、やめろー
        • 2022年 5月 31日

        じゃああなたはここで自分はウクライナが勝つと最初から思っていたのですか?開戦の記事の時にそんな人見かけませんでしたけどね。結果論だしかないんじゃないですか?

        6
    • kankan
    • 2022年 5月 31日

    セベロドネツクが落ちるのも時間の問題か
    ただ、ロシアがここというかルハーンシク州を取ったとして
    果たして今までの多大な犠牲に見合うものなんだろうか?
    ロシアにとっちゃ下っ端の軍人なんて文字通りの捨て駒みたいな物だろうけど
    あと、軍事的には取られたからって今戦争でウクライナが著しく不利になる訳じゃないし
    取り返す事も可能ではあるよね
    言われてる通りに6月中に戦力が整うかはちょっと不安だが

    13
      •  
      • 2022年 5月 31日

      ただセベロドネツクを取られただけなら奪還は可能です
      しかし包囲され補給を脅かされたこの戦線のウクライナ軍の消耗はロシア軍と比べても著しいと思われます
      通常包囲された軍は脱出を試みるのが定石ですが、ウクライナ軍はどうやら固守を選んだようで、全滅するまで戦い続けるのでしょう
      少なくともドンバス戦線のウクライナ軍は以降著しく不利になると思います、これが他の戦線に波及しなければいいのですが

      13
        • STIH
        • 2022年 5月 31日

        固守を選択ですか。
        確かに撤退しようとした瞬間に一斉攻勢を仕掛けられたら戦線が崩壊しかねないから、西側兵器が出揃うまでの時間稼ぎのためにも徹底抗戦せざる得ないとはいえ、マリウポリの二の舞いは、自国民からも批判が出るのではないでしょうか。

          •  
          • 2022年 5月 31日

          そもそもウクライナも東側の国ですからね
          世論が悪化したからといってそれで体制に影響があるかと言えば否でしょう
          人的資源に劣るロシア軍としても固守を選択された方が出血が増えて困りますし、妥当といえば妥当な判断でしょう
          前線のウクライナ兵士はたまったものではないでしょうが…

          1
    • makumaku
    • 2022年 5月 31日

    ウクライナ軍は、セヴェロドネツク市の南東方面 – シローチネ、ヴォロノヴェ、ボリフシク – へ退却しているらしいです(どこかでドネツ川を渡る?)。
    リンク

    5
    • 通りすがりのななし犬
    • 2022年 5月 31日

    一般市民の避難は無事済んでいるんだろうか? ロシア軍が尋常じゃない兵力を投入しているようなので、軍もここに固執せず撤退すべきだと思うのだけれど。もう手遅れなのか? 兵士たちの人命の損失を避けることを希望します。捕虜になったらどういう待遇を受けるか、ロシアを信用できないので着の身着のままでいいから撤退をと考えます。

    5
    • 深さ18
    • 2022年 5月 31日

    うーん苦しい話になりました。
    ウクライナ🇺🇦も人の子、
    2月のロシア軍のようにミスを
    重ねたように見えます。

    固守、籠城は援軍ありきの作戦
    ですが敵陣を突破することに
    ついてウ軍の様子がまだ分かりません

    私たちの忍耐も何やら試されている
    ような気がします。

    3
    • ミリオタの猫(ロシア軍、今度こそ架空戦記張りの大逆転をやるのか?)
    • 2022年 5月 31日

    以前、『もしかするとロシア軍はウクライナ軍がセベロドネツク周辺からの撤退を始めるタイミングを見計らって東部・南部全戦線で同時に大攻勢に出るかも知れません(イメージとしてはWW独ソ戦のバクラチオン作戦が近い)』と予測(これについては5/28付の「ロシア軍がセベロドネツク市内の一角に侵入、州知事は撤退の可能性に言及」の当方コメントを参照)した者ですが、今回の記事で一番重要なのはセベロドネツクでは無く「ロシア領クルスク州に展開する大規模なロシア軍部隊(数は不明)がウクライナのスームィ州国境に向けて移動を開始した」と言う情報だと思います。
    実は、昨日の段階で別の軍事まとめブログのコメント欄にて「ウクライナ軍が言ってるから事実だとは思うけどハリコフ方面でロシア領に戻ったロシア軍部隊が新たな軍集団を作ってる話が出てきましたね(註・原文のママ)」と書き込んだ方がおり、今回のクルスク州方面のロシア軍情報と一致する事から、これはもしかすると首都キーウ攻略を狙った大規模な縦深攻撃の可能性が考えられます。
    セベロドネツク周辺のウクライナ軍背後をロシア軍がポパスナを占領する事で遮断した辺りから、何れロシア軍は戦力を蓄積してバクラチオン作戦張りの縦深突破を狙って来ると思っていましたが、まさか北部から直接首都キーウを再攻撃するとは思っていませんでした。
    もしかすると、ここ数日バイデン米大統領がMLRSの供与を渋ったりEUの足並みが乱れていたのも、このロシア軍の動きから「ウクライナ軍に勝機無し」と判断した結果なのかも知れません。

    5
    • たかさん
    • 2022年 5月 31日

    南部ヘルソンではウクライナ軍の猛進撃が行われてようです。宇側の航空優勢も確保されてるとの情報が……しかし、情報が錯綜してます

    8
    • 2022年 6月 01日

    いよいよ6月。
    貼り付けた東部の犠牲が報われる事を願う。

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