フランス国防省は2024年10月「ラファールF5規格の開発」を発表、サフランもパリ航空ショーで「ラファールに搭載されているM88の推力強化バージョン=M88T-REX(最大88.2kN)を開発中」と発表、Janesは「M88T-REXの推力は現行のM88と比較して20%向上する」と報じた。
参考:Safran unveils higher-thrust version of M88 for future Rafale upgrades
参考:Paris Air Show 2025: Safran confirms development of higher-thrust M88 engine for Dassault Rafale
F5規格の開発範囲は機体だけでなくエンジンに及ぶため投資規模は小さくないだろう
現段階で有人戦闘機とウイングマンの組み合わせがもたらす効果は空想上の産物に過ぎないが、ウクライナとロシアの戦争は安全保障環境を決定的に不安定化させ「次の戦争までに次世代戦闘機は間に合わない」という見方も登場し、西側諸国が入手可能な第5世代機=F-35は導入待ちの長い行列が発生している上、継続的な開発作業が大幅に遅れて機能のアップグレードや新しい兵器システムの統合に支障が生じており、リスク分散のため第4世代機への投資や需要が上昇傾向だ。

出典:U.S. Air Force photo Senior Airman Shelimar Rivera Rosado
英国、ドイツ、イタリア、スペインが共同開発したタイフーンにも開発国と海外輸出から250機以上の需要が期待され、ユーロファイター・コンソーシアムのデゲンハート最高経営責任者はパリ航空ショーで「安全保障環境の変化を受けて、我々はより多くの戦闘機をより早く生産することにした。タイフーンの年間生産数は現在14機だが、3年以内に年20機に増やし、海外から新規発注が入れば年30機まで増やすつもりだ。新しいタイフーンは2060年まで問題なく機能するだろう」と言及。
Defense Newsも「戦闘機を早く量産するというアイデアは欧州や周辺地域で勃発した戦争の緊急性を反映したものだ」「ステルスが欠ける第4世代+機で構成された大規模な航空戦力は、今のところ紙の上でしか存在しな未来的な航空戦力=第6世代機よりも優れてる」「フランスでも同じ傾向が見られる」と指摘。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexander Cook
Defense Newsが指摘したのは「F5規格の開発発表」と「nEUROnベースのウイングマン開発」のことで、フランス国防省は2024年10月「核抑止をミラージュ2000Nから引き続くラファールF5規格の初回発注を行った」「2030年に完成予定のF5規格はコネクティビティとデータ処理能力の面で革新的な技術を導入しているF4規格を発展させたものでコネクティビティ戦闘機の第2世代だ」「F5規格は通常任務と核抑止の両方で仏空軍の作戦能力を強化し、偵察任務や敵防空網への侵入を容易にするよう設計されたステルス無人戦闘機の支援を受けられる」と発表。
ルコルニュ国防相もラファールのコックピットから制御可能なステルス無人戦闘機について「ダッソーが中心となって開発した技術検証機=nEUROnの結果に基づいて開発される」「このステルス無人戦闘機の任務はラファールよりも先行して敵地侵入のための道を切り開くことだ」と、ダッソーの最高経営責任者を務めるトラピエ氏も「ステルス無人戦闘機は2033年までに仏空軍の技術的・作戦的優位性に貢献するようになる」と述べている。
サフランもパリ航空ショーで「ラファールに搭載されているM88の推力強化バージョン=M88T-REXを開発中だ。この次世代エンジンは最大88.2kN(アフターバーナー使用時)の推力を発揮できる。M88T-REXはM88より軽量化されて高い推力重力比を実現し、ラファールF5の能力向上に貢献するだろう」と述べ、Janesは「M88T-REXの推力は現行のM88と比較して20%向上する」「M88T-REXは2030年までに完成してF5規格で利用可能になる」「M88からM88T-REXへの変更点は最小限に抑えられる」と報じた。
これまでもM88は複数の派生型が提案され、この中にはインド向けに提案された推力強化バージョン=M88-4も存在するものの、フランス軍向けに本格的な推力強化バージョンが開発されるのは初めてで、F5規格の開発範囲は機体だけでなくエンジンに及ぶため投資規模は小さくないだろう。

出典:Ministère des Armées et des Anciens combattants
非ステルス機からステルス機への移行は今後も止まらないと思うが、安価な長距離兵器の開発も急ピッチで進んでおり、ここにウイングマンが加わると非ステルス機=第4世代機の評価が大きく様変わりするかもしれないため、有人機に究極のステルス性能を求める考え方にも変化が起きるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Safran
戦闘機だけの突出した性能よりも、長射程兵器とウイングマン、ドローン、早期警戒管制機、空中給油機、レーダー&地対空ミサイル発射機、AI…それらとの組み合わせた総合力が重要で、それが勝っていればステルス機でなくても十分戦えるのかもしれませんね。
実質的に本体の維持メンテのコストを増やさずに、ステルス性と航続距離、ペイロードを増やす効果がありそうですしね >無人のウイングマン
机上では素晴らしい技術が現実では見込み違いで上手くいかないなんて枚挙にいとまがないですし。
>机上では素晴らしい技術が現実では見込み違いで上手くいかないなんて枚挙にいとまがないですし。
この部分は、ウイングマンも該当する可能性はあるので、予算や開発リソースの許す範囲で色々な方向に手を広げて欲しい。
トヨタの 「マルチパスウェイ(全方位)戦略」みたいな感じで。
第5世代機でさえも、見通しが立たない面もあるわけですから、第6世代機はなおさらどうなるのか分からないですからね。
4.5世代機を使っていくのも、現実的な判断と思います。
まずは基地の警備体制が大事よね
日本なんかどんなに優れた戦闘機配備したところで開戦前に全滅必至
ロシアとイランの犠牲を無駄にしてはいけませんね
戦訓は陣営を問いません
仰る通りですね。
空中給油機が、早速やられたかもしれないですし…
>活動団体「パレスチナアクション」は、所属する活動家2人がオックスフォードシャー州のブライズノートン基地に侵入し、ボイジャー機のエンジンに塗料を吹き付け、バールでさらに損害を与えたと発表した。
(2025年6月20日 英空軍基地に親パレスチナ活動家が侵入、軍用機2機を損傷 ロイター)
いくらなんでもウクライナとイスラエルの襲撃で自衛隊もマトモに対応策考えるやろと思っていたけど、昨日、射撃練習場で紛失した1発の5.56弾を230人で10日間捜索したニュースを見て、この組織大丈夫なんだろうかと心配になった。
タイフーンは生産量増やしても年20機か、、、
まあ戦時体制になると解らんが、やっぱり西側の兵器に対する製造力は衰えたなぁ
ドローンやUAVで補えきれるだろうか?
特に日本はどうしても、有人無人に関わらず足の長い大型機が必要だから、今後の戦略は本当に大変だ
核持てればなぁ
砲弾類はともかく、航空機については製造力が衰えたのではなく、需要と供給の問題だと思いますが。
エアバスの世界シェア世界一位ですし、大型ジェット機を年間600機とか作ってますよね?
戦時体制に移行して ライン整えれば、それくらいのペースで作れると思いますよ。
製造ラインを追加するのがどれだけ大変な事かを想像するべきかと
資金、場所、時間、人材の育成、インフラ、サプライチェーン、それらの確保や構築のコストを考えると、そう簡単に増やせない
国営で採算を一切考えないならまた違うけれど、国有化のデメリットもあるので
こういう〇〇世代という区分は防衛企業がマーケティングで生み出した単語
に過ぎないと思う…
戦車不要論を言うつもりはないが例えば戦車の〇〇世代って意味あった?
ウに西側戦車が供与されたってその性能でバリバリ戦果を上げたりはしていない。
ロシア人が言うように西側戦車が見掛け倒しのゴミだからじゃない。
お金をかけた分だけ精巧な兵器ではある、ただそもそも戦車が戦車と
戦う能力に拘ること自体にあまり意味がなかった。
最新式のオプティックサイトなんか知らないとコープケージをつけるし
T-62ですら戦車砲が撃てるというだけで役に立ってしまう訳で。
戦闘機の何とか世代という言葉にも十分気をつけたほうが良い。
ウクライナ側の西側戦車は数十年前の骨董品ばかりで、辛うじて現代的な車両はわずかなLeopard2 A6Mのみですよ(おそらくそれすらすでに稼働しているか怪しい)
それ以外の車両は近代化されたT-72にFCSも防護力も劣る骨董品で、評価がボロクソなのも当たり前。
T-62でもLeopard1と比較したら必要最小限の装甲があるだけマシでしょうし。
後出しなら何とでも言える典型的な例だと思います。少なくともそれ意味あったか何て露宇戦争が始まる前に言ってるなら分かりますが、現時点の結果をして先人の行いをけなす資格なんてありますかね。
風向きが変わったのはここ数年で、古い戦車だろうが脅威なのは対抗手段がない時でしょう。と言うか対抗手段がない場合だと古い装甲車すら脅威になるので走攻守のバランスが取れた戦車に限った話ではないと思う。
MBTがMBTと戦う流れがあったのは他には無い徹甲弾を扱えたり優れた正面装甲を持つ事や走破性に優れるからで、これは他の陸上兵器には真似出来ない。マッハ5で飛翔するAPFSDSとか3キロ以内なら2秒内に着弾して気付かないうちに撃破されますみたいなケースがあるので戦車には戦車をぶつけるのが1番楽だった。
世代について本質を捉えていないという意味でなら同意です。ですが、戦車を相手に止められる兵器は結局戦車とそれに随伴する歩兵との協同も必要です。
戦闘機も現状お金の掛かるF-35が中東で活躍してるので運用法で結果は変わってくるのかと思います。
コメ主さんの言いたい事と離れてたら申し訳ないです。
戦闘機の世代は戦車以上に違いが明確だし性能差も歴然としてるよ。
世代遅れはどうあがいても新しい世代に勝てない。
F-104でSu-35に勝ったりMig-21でF-35に勝ったりできると?
しかし、おフランスの企業はプレゼンすらオシャレだなあ。
>ステルスが欠ける第4世代+機で構成された大規模な航空戦力は、今のところ紙の上でしか存在しな未来的な航空戦力=第6世代機よりも優れてる
確かにそうですね。日本もGCAPやF-35に投資するのも結構ですがF-2にも大規模アップグレードが絶対に必要だと思います。主翼の寿命の問題もあるようですが主翼の再生産も含めて検討してもいいと思います。費用の問題もありそうですが各国のアップグレードの金額見てたらそのくらいの投資は避けられないかなと。
使い勝手のいい4.5世代機をもってアレコレといじくりまわしたり新技術や新装備の実証試験機として使えたり
正直そういうところは羨ましいです
我が国、将来的にGCAPとF-35A/Bだけになってしまうと、高コスト機ばっかりになりますし
使い倒すのにちょうどいい4.5++世代の双発機も必要になってくるのではないでしょうか