フランスがウクライナ軍に提供したCaesarは「地獄のような連射」でポーランドにあるNATOの整備拠点に運び込まなければならないほど消耗、M777も激しい射撃でスペアパーツの供給が間に合っていないらしい。
参考:Guerre en Ukraine: Sébastien Lecornu en visite à Kiev
今年は「ウクライナ国内における保守体制の確立」や「スペアパーツの供給量」が問題になってくるのだろう
ウクライナ軍はロシア軍との火力差を埋めるため西側製の榴弾砲や自走砲を酷使しており、1日あたり100発以上の砲弾を発射するウクライナ軍の運用方法(連続射撃モードの多用)はPzH2000の装填機構やシステム自体に大きな負担を与えたためオーバーホールが必要で「リトアニアの整備拠点」まで陸送しなければならなかったが、フランスが提供したCaesarも「地獄のような連射で消耗して18輌の内17輌がメンテナンスを必要としている」と仏メディアが報じている。

出典:Головнокомандувач ЗС України
フランスのルコルニュ国防相は「Caesarのダメージは深刻だ」と認めており、18輌の内1輌は完全に破壊(約1ヶ月前にロシア軍の無人機で破壊されもの)され、残りの17輌も地獄のような連射で発砲の衝撃を吸収するトラック自体に問題が発生したもの、摩耗した砲身の交換が必要なもの、タレット自体の交換が必要なものなど何らかの問題を抱えており、ポーランドに運び込む必要(メンテナンスレベルは3段階=戦場で修理可能/ウクライナ企業で対応可能/NATOの修理拠点での修理)があるのだが、ウクライナ軍は輸送の無駄を省くため仏企業に協力を要請しているらしい。
さらに米国、カナダ、オーストラリアが提供したM777も砲身を4回も交換するほど消耗が激しく「スペアパーツの供給が間に合っていない=1日あたりの射撃量が西側諸国の想定より数倍多い」とも報じられており、今年は「ウクライナ国内における保守体制の確立」や「スペアパーツの供給量」が問題になってくるのだろう。
ロシア軍は「シヴェルシク方面の兵站遮断」と「ビロホリフカに伸びた突出部の突き崩し」を狙っている可能性が高い
ウクライナ軍参謀本部の発表(2日)や視覚的な証拠でウクライナ東部戦線には幾つか興味深い動きが確認されており、これを反映させると東部戦線の戦況は以下の通りになる。
まずスバトボから南西に位置するカルマジニフカを視覚的にロシア軍が奪回したことを確認、逆に参謀本部は「プロシュチャンカ、チェルボノポピフカ、ディブロバでロシア軍の砲撃を受けた」と発表しているため同拠点にウクライナ軍部隊が存在している可能性が高く、特に興味深いのは「ドネツク州のロズドリフカとクラスナ・ホラでロシア軍部隊を撃退した」という発表だ。
ロシア側の情報源は「ロシア軍がヤコブレフカからロズドリフカ、ヴァイセル、ソレダルの側面に向けて攻撃を開始した」と主張していたが、参謀本部の発表で「シヴェルシク方面の兵站を支える唯一の舗装道路(T0513)を遮断する動き=ヤコブレフカからロズドリフカへの攻撃」が初めて確認され、さらにスラビャンスク方面から舗装道路でシヴェルシクに向かう接続部=M03とT0513が交差するクラスナ・ホラへの攻撃も確認されたため「シヴェルシク方面の兵站遮断」と「ビロホリフカに伸びた突出部の突き崩し」を狙っている可能性が高い。
クリシェイフカを巡る戦いが拠点の直ぐ側で行われていること、ウクライナ軍がクルデュミフカ方向に反撃を試みていることも視覚的に確認されているが、クレミンナに迫っているという噂されるウクライナ軍の動きは謎に包まれており、どちらが東部戦線で成功を手にするのかまだ誰にも分からない。
因みに戦況マップの黄色丸は参謀本部が「ロシア軍の攻撃を撃退した」と主張する拠点で、緑色丸は参謀本部が「ロシア軍から砲撃を受けた」と主張する拠点だ。
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※アイキャッチ画像の出典:public domain カエサル6×6
やはり質対量の戦いを征するのは、最終的には数量ということか……。
民主主義の国では決して出来ないやり方、人間を肉壁に、死体を積み上げて防塁とするタイプの敵は厄介極まりないということがわかる……。悪い見本になるので、このままロシアに粘り勝ちさせたくない。
やはりクラスター爆弾のような、面で大勢を制圧する兵器の有効性が改めてわかるなあ。
只、ロシア側もここへ来て砲弾のストックが尽きつつある(砲弾の発射弾数が最盛期の1日6万発から現在では1.9万~2万発に減少している)と言うISWからの指摘(昨年の12/31付)が有る他、Oryxのデータによると多連装ロケットはもう打ち止めでは無いかとする指摘も出ています
一方、ウクライナ側は旧ソ連製の122mmと152mmの砲弾の国内生産体制が整い始めて前線への供給が始まったとするツイートが流れている他、この年末年始にロシア軍は毎日700人台の戦死者(1週間だと約4900人)を出しているとの発表が有るので、この冬が両軍に取って一つの正念場になると思います
後は、ロシア軍が制裁を潜り抜けてどれだけの巡航ミサイルとドローンを生産できるかでしょう
この点については、日本も含めた欧米諸国が制裁の見直しをする必要が有ると思っています
EU
「諸国民の安全と生命のため、クラスター爆弾と対人地雷の禁止を撤回します!!!」
数カ月後に、こんな事を言ってきそうな気がしてきたんですが、杞憂ですかね。
ウクライナにもクラスター弾の在庫はあり、ロシア軍がクラスター弾を撃ってる地域では
ウクライナ軍も打ち返しているようです。
ウクライナはアメリカ軍の保有するクラスター弾の在庫の提供を求めているようですが、
アメリカ軍は使う予定はないのだが、提供する事には二の足を踏んでる模様。
当たり前の話、オスロプロセスの批准をしてないとは言え実質的には批准国で不発率の高いクラスター弾は処分、不発率の低いクラスターだって余程のことがあって将校の許可無しには使えないガチガチの体制の筈。主要企業だってクラスター弾製造から撤退している流れ。
ウクライナに提供した時点で自由な使用を認める事になって、その責任はウクライナが全て負うと言おうがどう考えても同罪だろう。ATACMSを渡さないのはロシア側への配慮、クラスター弾を渡さないのは世界(主に西側諸国)への配慮だと思う。そうで無ければとっくの昔にMLRSのM26A1/2を提供しているだろう、10年以上前に処分して新規に作らないと無理だけど。
西側の想定する砲身寿命の交換サイクルが対露戦(きっと対中戦も)にマッチしていないのが根本的な原因ではなかろうか。
紛争に介入する程度なら全く問題無いシステムなのでしょうか…。
思うにポーランドの否定した「充分な練度と装備を有する小規模軍隊」とは、有事の際に発生する該当部門の負荷が現代社会に許容出来ないほどの高負荷を与える側面もあるんじゃないかな
韓国軍の自走りゅう弾砲の定数が3000門で、K9を1000門調達してまだ足りないと主張していたのはあながち間違いじゃないんだな(小並感)
なんだかかんだ西欧で戦争が起きなくなって70年以上、冷戦が終結してから30年以上が経過しているし、赤い津波が想定にないのではないだろうか
有るわけない、それに根本的に攻撃が制限ありすぎて手持ちの陸上兵器を過剰なまでに使用するしかないウクライナと敵対国国土や兵器群への攻撃や兵站の多様さがあるNATOと比較してもどうしようもない。
韓国は一応休戦状態で北朝鮮の質はともかく人数は韓国の2倍くらい居るはずで自国対応考えるなら、余程効率よく殺傷出来ないなら昔の再現が起きても不思議じゃない。
砲の損傷や摩耗についてはロシア側も事情は同じはずですがどういう運用になってるのか気になる
遠隔地まで整備しにいかないといけないデメリットが深刻だな
とはいえ、NATO軍人及び民間企業の従事者がウクライナ国内に整備拠点を設けるのも現実的ではない訳で、戦争の長期化を見込んでウクライナ国内にウクライナ人で運営する整備拠点を設けて、そちらで重整備を行えるようにするよう体制を移行していく必要があるのか、それともそのような準備が行われているのか。
アメリカ軍やNATO軍は空爆前提のドクトリンですからねえ。
当然補給体勢もそれに従って構築されている。
前提が崩れれば、確かに自走砲や野砲のパーツ(砲弾も)が不足すると思います。
今回の侵攻から得た教訓を元に、各国の軍がどのように変革を遂げることになるのかは興味深いですね。
西側では航空爆弾はほぼ完全にGPS誘導化され空対地ロケットでさえ固定翼機ではレーザー誘導を使う。戦時にGPSは使えないという疑惑も核戦争でなければそうもならないと実証された。JDAM供与もこれから始まる。
これら前提を砲兵火力に照らし合わせると無誘導砲弾の連続射撃は砲システムの残存性を著しく低下させ、その際の消耗は戦時下では修復が容易ではない。昨今の装備品は輸入アッセンブリの塊でもある。更には砲弾の平時備蓄量にも限りがある。
限りある装備量と備蓄量で火力の最大効果を得たい、更には最大射程でも少射撃で確実に標的を破壊できる精度が必要だ。そうでないと無人機脅威から残存できない。導き出されるのはGPS誘導砲弾をとにかく買い溜めろという事だろう。
そもそもハイマースの弾頭は既にGPS誘導が基本だ。15榴の砲弾も同じで良いのではないか。120mmの重迫撃砲でさえそうではないか。全弾薬での誘導化、そしてそれらは運用と調達の合理性から少なくとも同盟国間では共通化すべきだ。走行装置が装軌か装輪かという問題よりも実戦ではそっちがはるかにクリティカルだった。実際にカエサルはほぼ完璧に残存した。
対砲兵射撃や司令部・弾薬庫と言った高価値目標への精密射撃なら少数の誘導砲弾が効果的なのは仰るとおりだけど、味方陣地前に散開した敵攻撃部隊のような精密な観測が困難な目標の場合は安価な通常榴弾による弾幕が必要かと。
ドローンで目標座標がm単位でわかってるならともかく、現実では相変わらず遠距離からの誤差のある観測情報に頼っている場面も多いみたいですし。
陸自ですけど19式は方面隊運用です。もしこれの配属を受けるとして普通科連隊につき1個中隊が関の山でしょう。15榴の直接支援は今後、実際どうなるかかなり微妙です。そういった防御戦闘の場面に限らず攻撃火力でも重迫中隊の頼りになる。
となると重迫は延伸化しつつ精度向上が必要です。従来の射程8kmでは不足でロケットアシストの精密誘導化が必要になる。しかしこれの多用は難しいので浮上するのが軽迫の高機能化です。
特科火砲の重迫代替と同時に近接戦闘支援、主に防御火力では軽迫が重要になる。これの安さは今や重要ではない。既存のそれは分割可搬式の携行火力であればよく、新たに制圧能力を高めた軽迫システムが別途あれば良い。
つまり4輪車に車載で自動化されたやつです。それも連装化であると尚良い。これを装輪装甲化すると最良です。ナンバー中隊がLAV化でも軽迫小隊はAMVで良い。高機化でも軽迫だけはAMVで防御陣地に留まらず機動的に残存してくれたほうが多分良いはずです。
エースコンバット7の終盤のような、なりふり構わぬ衛星攻撃されても良いようにアナログ照準器の搭載と教育もしておくべきだとは思います。19式は通信できない時のためにコリメーターを載せていますが、カエサルにはアナログ系の照準器は載せていないとのこと。部隊単位で持っているのかもしれませんが。
ルハンシク州で活躍中のAHSクラブ自走榴弾砲(ポーランドから供与)。この車両はエクスカリバー砲弾でロシアのムスタS自走砲を撃破したこともあるとか。なお、この車両は砲身寿命1500発を超える3500発を発射しているという(流石に砲身交換済みだと思うが)
リンク
こちらは砲身が折れてしまったAHSクラブ自走榴弾砲。砲身の摩耗と発射時の砲火によって砲身が折れてしまったらしい
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ルハーンシク州からポーランドまで1700㎞くらいあるので、この距離をロシア軍の攻撃を避けながら重トレーラーで輸送するとなると大変だと思います。キーウには「キーウ装甲工場(BTR-3の製造とT-72の修理)」が、前線に近いハルキウには「V.Oマリシェフ工場(T-84の製造やT-64・72・80の近代化など)」があり、ここで西側製榴弾砲(M109・PzH2000・AHSクラブ・カエサルなど)が修理可能となれば兵站の負担も大分減ると思います。
既にウクライナ軍の整備兵はイギリスやドイツなどで西側製兵器を修理できる様に訓練を受けているのであとはウクライナ国内で、オーバーホールを含めた重整備が出来る様になるかが課題だと思います。幸いなことにウクライナは旧ソ連随一の工業国であり、その技術力は独立後も健在なので西側製兵器の保守およびスペアパーツの生産が軌道に乗る可能性はあるでしょう。
今回のことで先進国が短期で非対称のオペレーション的戦闘のみに慣れてしまって、長期の兵力のすり潰し合いを想定してないことが露呈した。
幸か不幸か、対中戦争が始まる前に想定出来ておいてよかったですね。
中国もおそらくは短期決戦を想定していたと思いますが、
攻めた側も自分の都合で停戦するのは難しいと言う現実が明らかになりましたし。
先進国というよりも、アメリカ軍を中心とするNATO軍であり、それももとをたどると海外派兵のための装備体系の変更、部隊の再編成、アウトソーシング化、民間委託の結果ともいえ、ドナルド・ラムズフェルドや、ディック・チェイニーあたりからの流れです。
財政赤字が増える中でアメリカ軍の海外派兵をアメリカ議会で承認させるためには、徹底的なコスト削減、効率化で金のかからない短期決戦が可能であるということをアメリカ議会でアピールするしかありませんでした。
その具体的な方法、手段とされたのが、ソーコムのような特殊部隊や、空輸可能な兵器、部隊の重視、無人機やドローン、精密誘導兵器の多用、戦争広告代理店などを使った情報戦、心理戦、サイバー攻撃などです。
しかし実際はアフガニスタンを見ればわかるように、それらは単なる手抜きのやり方みたいになることも多く、かえって軽薄短小なIT企業や、広告代理店などに無駄に軍事予算が流れたりして、むしろそれ等を口実、言い訳にして、長期戦、消耗戦に備えた兵器の生産や、部隊の編成、訓練、教育、人事などはどんどん減らされていったわけです。
アメリカ軍がそうなっていけば、アメリカ軍中心の共同作戦を前提とするNATO軍の装備や訓練、教育、人事がどんどんそうなっていくのも自然な流れです。もちろん自衛隊も決して他人事ではありません。
PZH2000の時はドイツ兵器脆すぎ!って言われてたけど要求仕様超えた酷使だったという話だったんだなと
使い勝手がいいから馬車馬のごとく働かされてたから先にガタが来ただけで他の兵器も軒並み故障だし
むしろウクライナが使ってるソ連由来の兵器はまだいけるのか?整備が自前でできるから問題ないのかな?
ウクライナの榴弾砲弾不足で2千砲使っていなかったから酷使していないだけでしょうかね。
ロシアの支援で弾が手にはいったとは20万発ぐらいらしいから弾の節約して撃っているのでソ連の榴弾砲のほうが酷使していない。
記事の中で、カエサルのトラック部分に重整備が必要とか。
トラックベースの重砲は、車体部分に掛けられる負担に限界があるのかな。
牽引式重砲のように、きちんと発射時の力を地面で受け止める
準備しておかないと車体を歪めてしまうのかな。
そうならば、使用手順の手抜きはダメですね。地面の状態にもよりますが。
同じ52口径長砲で、PzH2000は55.3t、カエサルは17.7tですから
当然のことかもしれませんが。
あけましておめでとうございます。
今年は陸自もウクライナにFH70を供与するかもしれませんね。
砲弾のストックがあるかはさておき…。
大和の砲身寿命は200発で専用の運搬船があったの思い出した
自衛隊の総火演とか観てると、数発撃って陣地変換ってのを繰り返すのかな?って自分の理解なんですけど、これだと砲身よりも組み立て機構のほうが先にいかれそうな気がするんですけど・・・。