欧州ではイスラエル製の多連装ロケットシステム=PULS導入が相次いでおり、セルビアのブチッチ大統領も演説の中で「PULS購入」を強く示唆し、クロアチアは対立関係が再燃しつつあるセルビアとイスラエルの接近に驚いているものの、イスラエルメディアは当然の結果と見ている。
参考:Serbia Buys Advanced Artillery and Drones From Israel’s Elbit Systems
参考:Greek army planning rocket artillery upgrade
クロアチアは対立関係が再燃しつつあるセルビアとイスラエルの接近に驚く
ドイツ陸軍は保有するM270の中から5基をウクライナに提供し、その穴埋め分としてイスラエル製のPULSを取得、M270の後継システムにもRheinmetallとLockheed Martinが提案したHIMARSベースのGMARSではなく、KNDSとElbitが提案したPULSベースのEuroPULSを選択したと報じれており、フランスもドイツの決定に続く可能性が高く、欧州でPULS及びEuroPULSを採用する国(デンマーク、オランダ、スペイン、ドイツ)が増加傾向だ。

出典:KNDS
さらにセルビアまでPULSを購入したという報道が登場し、クロアチアは「なぜイスラエルは我々との関係を軽視してセルビアに武器を与えるか」と疑問に思っているらしい。
Elbitは昨年11月「欧州の国とPULS、PULSで使用するロケット弾、Hermes900の売却(推定3.35億ユーロ)で合意した」と発表、イスラエルメディア=Haaretzは「この取引相手はクロアチアとの軍拡競争を演じているセルビアだ」「ブチッチ大統領は演説の中で『世界で最も強力な砲兵システムと無人機を購入する契約を締結した。これは無人機が発見した標的データを受信し、即座に目標を破壊することが出来る洗練されたシステムで、間違いなくHIMARSよりも強力だ。これで我々が何を購入したか分かるだろう』と述べた」と指摘。
ブチッチ大統領がHIMARSを引き合いに出したのはクロアチアがHIMARS購入を決定したためで、Haaretzは「クロアチアの政治筋は『なぜ我々との関係を軽視してセルビアに武器を与えるのか』と疑問に思っている」「考えられる理由の1つはクロアチアがイスラエルとの協力ではなく欧米製の兵器システムを購入している点だ」と報じ、先に関係を軽視したのはクロアチアの方だと示唆しているのが興味深い。
クロアチアとイスラエルは旧ソ連製兵器のアップグレードや対戦車ミサイルの供給で協力関係を構築してきたが、クロアチアはイスラエルが提案した中古F-16やPULSではなく、フランスから中古ラファール、米国からHIMARSを購入し、一方のセルビアはハマスとの戦争が始まるとイスラエルが必要とする155mm砲弾、迫撃砲弾、小口径弾薬の大量供給に応じ、Haaretzは「セルビアからイスラエルへの武器輸送量が数千%増加した」と報じている。

出典:Republic of Serbia Ministry of Foreign Affairs 2024年11月にセルビアを訪問するヘルツォグ大統領
つまりハマスとの戦争をきっかけにイスラエルとセルビアの関係は「急速に強化されていた」という意味で、セルビアはウクライナ侵攻の勃発でロシア製兵器が入手出来なくなったため関係が強化されたイスラエルからPULSを購入し、クロアチアは対立関係が再燃しつつあるセルビアとイスラエルの接近に驚いたと言ったところだろう。
因みにHaaretzは「今回の契約に付随して何らかの保証をイスラエルがセルビアに与えたのか、セルビアに売却するPULSやHermes900をNATO加盟に使用しない制限が含まれているのか不明だ」と述べている。
追記:ギリシャもPULS導入が濃厚で、今年2月に発表される長期計画の中で発表される可能性が高い。
関連記事:弾薬統合の自由、ドイツ軍の選択はGMARSではなくEuroPULS
関連記事:外交に及ぼす防衛産業の影響力は軍事力と同じ、持続可能な生産規模が重要
関連記事:欧州が取り組む武器システムの主権回復、ITAR Freeがトレンドに浮上
関連記事:クロアチアはHIMARSを選択、ノルウェーはPULSやChunmooも検討
関連記事:セルビアとフランスが契約に署名、2029年までにラファールを12機導入
関連記事:クロアチア空軍も次期戦闘機にラファールを選択
※アイキャッチ画像の出典:Elbit Systems
ウクライナ支援に忙しくてイスラエル支援があまりできなかったNATO加盟国と違ってセルビアはウクライナ支援をまともにしてないですからね。
しかしクロアチアは理解に苦しむ。自分達はセルビアが嫌いだからイスラエルもセルビアを嫌いだろう。みたいな考えだったのかな?
NATO加盟国って、どこか非加盟国を敵とか下に見てる感じがする。
第2次大戦中にセルビア民族主義者がナチスによるユダヤ人虐殺に加担したので
それが今でもイスラエルに対して有効に働くと考えたのではないでしょうか。
実際のところ、ネタニヤフ政権は歴史的正義に執着しないので無視されたと考えます。
大戦中のユーゴスラビアの責任は全部セルビア。自分達は関係ないって感じですよね。
むしろ大戦中に独立しようとして積極的にドイツに協力したのがクロアチアなのですが。
WW2時にユダヤ人虐殺に大々的に加担したのは、セルビア人ではなく、ナチスの傀儡であるクロアチア独立国の下で猛威を振るったクロアチア民族主義者(ウスタシャ)の方ですね。なので、正直クロアチアとイスラエルの関係は元々微妙なところがあります。まぁ、両国とも米国の同盟国であるという共通点はありますが。
一方、セルビアはユーゴ時代から基本的にはパレスチナ寄り(パレスチナ国家承認済)なのですが、前回トランプ政権の末期に、アメリカが強引な仲介を図って、イスラエルを絡めたセルビア・コソボ間の経済関係正常化合意(実質的な中身はほとんど無いですが)を成立させてこともあり、近年はイスラエルとの軍事協力が粛々と進行している印象です。
セルビアとクロアチアは宿敵の間柄ですがまだまだ蟠りが解けないんでしょうね、祖父や祖母や親族が相手に〜が残っていると3世代4世代では難しい所なのでしょう。
>>セルビアはウクライナ支援をまともにしてないですからね。
そら支援する義務なぞないからな
欧米に比べると微々たる額ですが、一応セルビアも数千万ユーロ規模の支援(主に人道・難民支援)はウクライナに供与しています。また、最近はウクライナ関連の国連決議でも概ね欧米と同じ投票行動していますね。無論、対露制裁は頑として拒否していますが。
あと、表立ってはやっていないですが、トルコやカナダ経由で相当量のセルビア製の弾薬がウクライナに流入していると報じられており、セルビア政府は知らぬ存ぜぬを通していますが、ウクライナに持ち込まれることを承知の上で売ったんだろうとセルビア国内でも考えられています。
陸自のM270をドイツに売ったら、玉突きでウクライナに行かないかな。
いまのタイミングで売ったとして足の遅い装軌MLRSをウクライナに渡してプラスになるかなんだよね。発射体の供給と長射程ミサイルの割合で活かせるかどうかってのは有るんだし。
モスボール予算も出ているみたいだし、仮に処分がてら売るにしても一部日本仕様の国産ライセンスMLRSなんているのかなとは思う。
は?M270を供給されたウクライナは喜んでるぞ?
足の遅い?射撃陣地への侵入も陣地転換もM270もM142も同じか不正地ならM270の方が早いぐらい
カタログ上の速度でM270はM142より20km遅い程度なんだから誤差レベル
そもウクライナは牽引榴弾砲や装軌榴弾砲を多数運用していて砲兵火力の主力としているのに装軌MLRSは足の遅いからとか言い出すのは論理が破綻してるし一部日本仕様とか主要コンポーネントは共通である以上はどうとでも出来る程度の差異でしかない
イスラエルからすれば仮想敵イラン以外なら何でも売るだろうな。なんなら、かなり前だが、中国にさえ兵器売ってたし。
余程EUが刺激しない限り、今のセルビアがコソボを拗らせてイランに接近することはないだろう。
1月中にロシアとイランが戦略的パートナーシップ協定に調印する予定
イランの核兵器開発をイスラエルとアメリカが爆撃で阻止するのを抑止
でき、核保有国のイランとイスラエル米国という新たな構図に変る
ボスニアは解体したほうがいいよ、
セルビアには民族自治を受け入れろとコソボから追い出したのに、コソボやボスニアのセルビア人の独立を認めず未だにコソボやボスニアの支配が続いている
特にボスニアは大統領の上にEUの高等弁務官がいてここが全権もってるいまだに占領地みたいなもん
クロアチア系とセルビア系が独立してボスニア系だけでやっていけばいい
民族融和とかいうならユーゴでよかったのに
我が国でも共産党が、自衛隊のイスラエル製兵器購入を非難し始めました。
“自爆”ドローン310機導入へ
ガザ虐殺加担 イスラエル製が選択肢
防衛省概算要求
購入すれば「死の商人」潤す
赤旗
個人的にはアラブ諸国のヘイトを買うので、出来れば他から買った方が良い気がします。
他に例えばトルコ製で良いの無いのかな?
今のトルコには無いですね。逆にトルコはイスラエル製の徘徊兵器のハロップ、ハーピーを輸入してますし。
自爆ドローンは絶対必要だけどホロコースト中かつ反日国家のイスラエルから買うのは反対。
随分前ですが平和主義者の北欧の首相(大統領?)暗殺の犯行声明か何かで、ウスタシの名前が出てきたりと、中・東欧は「複雑怪奇也」なのかも知れません。民族主義者や旧王侯貴族、欧州最大規模のユダヤ人コミュニティetc.…。20年一寸前、ジョージ・ソロス氏が莫大な私財をポンと「東欧の民主化の為」寄付したとの報に触れた時も「ああ、米国の大失策で中東がヤバいんで、ホームランドに“第2イスラエル”でも用意すんのかな?」等と考えた程でしたから…。その直後(ホント、直後)に例のマイダンが起きて「はあー、やっぱ金がある所は仕事が速いな(当時はその程度の認識。その後の内戦でゲンナリ…)」と思ったり…。日本人の知識・経験・認識では計り知れないモノを感じます。
まぁイスラエルもフランスと同様に外交的には節操がないからな
昔は中華民国とつるんで南アフリカと嫌われ者国家連盟と陰口を叩かれたと持っていたら中華人民共和国に技術移転したりとやらかしているから驚くほどでもない