Financial Timesは22日「セルビアは西側諸国の対ロシア制裁に加わっていないにも関わらず、ウクライナ軍の強化に繋がる支援国への弾薬輸出を静かに強化している」「セルビアが第三国経由でウクライナに輸出した弾薬の総額は約8億ユーロに上る」と報じた。
参考:Serbia turns blind eye to its ammunition ending up in Ukraine
ウクライナにとって金させ払えば弾薬を売ってくれるセルビアの存在は非常に大きい
ブチッチ大統領はFinancial Timesの取材に「確かに弾薬を輸出しており、これは我々にとって経済復興の一環だ。交戦中のウクライナやロシアに弾薬を輸出していないものの、米国、スペイン、チェコなどと多くの契約を結んでいる。最終的にそれをどうするかは彼らの問題だ。仮に輸出した弾薬が何処に行き着くのかを知っていても、それは我々の仕事ではない。我々の仕事は合法的に弾薬を製造して販売できることを保証するだけだ。我々は製造に従事する雇用を守らなければならない」と述べており、約8億ユーロ=約1,300億円という数字についても「概ねその程度だ(2022年から現在までの輸出額)」と認めている。
The Ukrainian Defense Forces use new Serbian ER Grad 2000 122mm rockets. They significantly exceed the capabilities of other same types rockets in the arsenal of the Ukrainian armyhttps://t.co/QL2hFJKAhd#Ukraine #UkraineRussiaWar #Serbia #Rocket #ERGrad
— Militarnyi Polska (@MilitarnyiPL) March 1, 2023
セルビアはユーゴスラビア時代から武器製造が盛んで、現在もウクライナ軍が使用しているソ連規格の弾薬を生産し続けており、ブチッチ大統領は現在の状況を「弾薬輸出を拡大する絶好のチャンス=防衛産業界における雇用拡大」と捉え、セルビアのマリ財務相も「私は防衛産業をビジネスグループと見ている。先進国と比較して産業力(約2万人が従事する防衛産業の規模)が劣っていると思うが、これを拡大させる機会が訪れている」と述べているため、ウクライナにとって金させ払えば弾薬を売ってくれるセルビアの存在は非常に大きい。
因みに西側諸国の外交官は「欧米はプーチン大統領からブチッチ大統領を遠ざけることに取り組んで来た」「侵攻直後にゼルビア大使としてベオグラードに入ったクリストファー・ヒル氏は両国の関係を遠ざけることに成功した」「ブチッチ大統領はプーチン大統領と距離を置いており、もう何年も直接会談や電話をしていない」「勿論、プーチン大統領との関係が遠ざかったのは間接的なウクライナへの武器輸出も影響している」と、オーストリアのシンクタンクも「西側諸国にとってセルビアに民主的な改革を迫るより、ウクライナ支援を引き出す方が重要になっている」「セルビアはウクライナに大規模な支援を提供している」と述べている。
関連記事:ウクライナへの軍事支援に否定的もしくは消極的だった国でも態度の変化を確認
関連記事:セルビアが旧ソ連機更新のためラファールを選択、契約は2ヶ月以内に締結
※アイキャッチ画像の出典:Kremlin.ru/CC BY 4.0
ウクライナ戦争が起きるちょっと前にセルビアのMiG-29の改修費用の値引きや初期型機の無償供与など南東諸国の中で唯一ロシアと友好的な国であったので今回のニュースは驚きですね。
チェコが主導してかき集めた砲弾の中にセルビア産も多数ありという事ですね。
金の切れ目が縁の切れ目とよく言います
西欧が齎す富以上の何かをロシアが提供できない限り
もしくはセルビアが看過できないような打撃をロシアがセルビアに与えることができない限り
セルビアは西側陣営の弾薬供給源として機能し続けるということでしょうね
今後どうなるかも含めて興味深い話です
ロシア買い負けてるってことだよな。
ですね
しかもカネの損得以上の価値をロシアが打ち出せてないから制止するものがない
セルビアはノーラなどの優秀な榴弾砲で知られる国
砲弾の質も期待できるとは思う
ロシアもnvidiaのチップやスターリンクなどの製品を戦場に持ち込んでいるので、セルビアからしても別に構わんと言う外交スタイルなのかもしれない
ノーラB52は155mm口径だけれど。
セルビアは装備の西側化をしつつあるのかな。
俺もそれが気になった。
輸出も狙っているのか、ロシア離れを狙っているのか。
直接は売らないけど、買った後はどうしようが知らないってスタンスは分かりやすくていいのでは。
欧州は自前では数が揃えられないなら、買うのが手っ取り早いとこもあるでしょうし。
ロシアにとっても分かり易い話だ
文句があるなら買い占めればいいだけなんだから
こうしたニュースを本邦マスコミ様が知らないはずはないのだが、セルビア国をして「死の商人」と呼ぶことはないあたりアレである。
国防用の兵器まで纏めて死の商人呼ばわり。
けっこう雑じゃない?
流石に現在進行形で侵略を受けてガチの民生用インフラまで狙われてる
ウクライナへの武器輸出を非難するマスコミほぼないだろう。
コソボ関連の動向も含めると手放しで称賛はしにくいけどさ
「まさしくその『雑な死の商人批判』を防衛装備移転についてしまくってきた本邦マスコミが」という文脈でしょう。
以前より、東側兵器の152mmや122mm砲弾をどの様に取得してるのか不思議でしたが、セルビアからとは驚きました。
阿弥陀の光も金次第(地獄の沙汰も・・・)とはよく言ったもんです。
少し前にエストニアから資金さえ用意できれば入手出来る。との報道(話題のforbes 2024.04.08 例の記者様)もありましたが…。
他にも驚く様な国から密かに供給されているのでしょうか?興味が湧きますね。
セルビアも、コソボ問題の対NATOを見据えて、中国と関係強化を行っていると言われていました。
ヨーロッパ情勢は複雑怪奇という感じで、経済合理性は別なのかもしれませんが、自国の利益を見据えてるように感じますね。
(2024年5月7日 「決して忘れない」、中国大使館の米誤爆から25年-習主席セルビア訪問 Bloomberg)
追記です。
コソボ=セルビア情勢、管理人様の過去記事です。
(2023.05.30 コソボでNATO部隊とセルビア人住民が衝突、兵士25人と住民52人が負傷 航空万能論)
(2023.10.2 コソボ首相、襲撃事件はセルビア側によるコソボ北部併合計画の一部だった 航空万能論)
セルビアからしても、仮に他国にセルビアが攻め込まれても意味のある援軍を中国が出すとは考えづらい
そのため、可能な限り全方位外交をせざる得ない
まさに仰る通りです。
日本も、第二次大戦の歴史の教訓がありますね。
欧州=極東は、そもそも地理的に遠すぎて援軍・支援を出すのも難しいですし…
武器弾薬を輸出する際に、購入する側は最終消費者証明書を出さないといけないはずだが
そこにどこの国の名前が記載されてるのか興味深いね
経産省資料によれば、セルビアが参加する国際輸出管理レジームは「原子力供給国グループ」だけで、通常兵器の輸出管理に係る「ワッセナー・アレンジメント」には参加していません。
つまり、セルビア政府には通常兵器の売却先に最終消費者証明書を求める国際的義務は無い。関連する規制国内法令が無くともおかしくありません。
それが「最終的にそれをどうするかは彼らの問題だ」という大統領発言の根拠なんでしょう。
まあ、当事者じゃない国からしたら、今回の戦争で儲けられる選択肢があるならそうするでしょう。ハンガリーがロシアからガスを買い続けたり、韓国が自国兵器輸出を欧州向けにどんどん拡大させるために行動するのもその一つ。
ロシアは文句の一つは言うだろうが、どの道、今すぐセルビアにどうこうできる訳でもないし、比較的安全圏で外貨を稼げるなんて賢いと思いますね。日本も戦争特需を利用できればいいのになぁ。
ロシアは日本の隣国ですからねえ。
ウラル以東に中国と仲の悪い別の国ができたら話が違ってくるんじゃないですか。
日本は、お隣の朝鮮半島で戦争が起こったときに、特需によって成長した過去があります…
ウクライナ戦争においては、日本も復興に一枚噛みたいという意図は透けて見えていますね。
台湾海峡戦が起こったら、韓国が漁夫の利を得そうね。
戦場に近いから。
と思ったが、参戦するのかな。
朝鮮特需は構造的に不健全で戦後日本の経済復興には総合的にはマイナスの方が大きかったという意見もありますね。
たらればの話になってしまいますが、あの戦争が起きなかった場合は、米国としては日本を中進国に留めておきたい意向があったようなので、日本にとっても歴史的な転換点になったということは言えそうです。
ロシアのガスの権益をまだもってますから損しないように立ち回ってはいると言っていいんじゃない?
(なので西側として非軍事の資金援助はガンガンやらないとダメな立ち位置ではあるんですよね)
価格競争力のある兵器が無いというのもありますが今の状態が一番得できる(損しない)んじゃないかな?
実利実益は大切だな
セルビアにとっては特需か
こういう国が長引かせようと画策しなければ良いけど…
一番儲けてるのは中国とインドだと思う。
無いとは思うけどもさてはて
8億ユーロという数字を見ると軍需産業はそこまで儲からんなってのが感想
そりゃ自由市場じゃ投資も進むまい
GDPが600億ユーロかそこらの中で1国向けの弾薬のみで8億ユーロ、ですよ?
日本に例えると8兆円の武器輸出か。
確かにセルビアでは大きくても、2年で輸出総額8億ユーロですから日本円換算年間売上650億円、1割粗利としても年間粗利65億円。戦時特需でこのレベルですから、先進国の民営企業としては厳しいですね…。
日本企業レベルだと1200〜1500位くらい、業界中堅企業と同じです。投資対象にはなりにくいかと…。あくまでも先進国企業としてですが。
セルビアの弾薬売上を「先進国の民営企業として」評価する意味が分かりません。
イーロンマスクさんの
>軍需産業はそこまで儲からんなってのが感想
そりゃ自由市場じゃ投資も進むまい
に繋げてのレスとして、日本円に換算の上、市場経済の企業投資に準えて民営企業と定義しました。
おっしゃる通り、セルビアとしては非常に大きい数字である事は同意です。
また乱暴で適当な数字を出している事も承知しております。わかり易い例としてお許し下さい。
毎年安定してその利益が出るのでなければほとんど意味ないです
GDP1%超えの金額を「安定してなきゃほとんど意味ない」とは豪快な話ですねぇ。
短期的利益には短期的利益なりのメリットがありますし、そもそも世界中の在庫をかき集めてる話の中でセルビアに限った金額なんだから金額はともかく需要増は長期に渡って続くでしょう。仮にロシアが今日全面的に撤退したとしても世界は「次」に備えるだろうし、少なくともこれまでに減った備蓄を補充しなくてはいけません。
投資の話なんだから新規生産ラインを立ち上げるようなことかどうかなんだけど
今後最低でも20年程度は継続する需要が見込めないと投資するには厳しいという当たり前の常識の話でしかない
開戦当初弾薬製造の生産ラインの増加をメーカーが絞ったのを見てないのか
開戦当初と現在では状況も各国産業界の見通しも全然違うでしょう。それこそ2年以上何を見てきたんですか。
別に新規ラインを立ち上げなくたって、使い古しのポンコツ旋盤を同じ規模のNC旋盤に入れ替えるだけだって、なんなら建屋の雨漏り直すだけだって立派な設備投資ですし、ちゃんと相応の生産性の向上や収益性の改善をもたらします。
砲弾は企業が勝手に外国に売れるようなもんじゃないし、需要がシリコンサイクルなんて目じゃないレベルで読みにくいし、しかも高付加価値でもない
つまりすげえやりにくい商品なんすよ
コロナ禍のマスクみたいなもん
有事向けの生産体制構築するでって一人はしゃいでも国の買い上げ保証がなければ戦争終わればすぐ倒産ですわ
つまり国の政策にかなり依存するんですね
車とかスマホとかほかの業種では企業が勝手に将来描いてガンガン投資するので性質が違うんです
そうしたハードルの高さは否定しませんが、
元コメントは国家や経済・産業の規模や限定条件を無視した8億ユーロ、という数字だけを根拠に「軍需産業はそこまで儲からん」「そりゃ自由市場じゃ投資も進むまい」ですからね。
仰る通り砲弾なんて1企業が気軽にポンポン増産して売れる様な物じゃない。つまり8億ユーロというのはセルビアとその企業がほぼ手持ちの設備と人材で地力で無理なく生産して輸出しただけで余剰に売り上げた金額です。それがGDP1%超え。
そして既に書いた通り「戦争終わればすぐ需要減」とはなりませんしそもそも戦争がすぐには終わりません(どちらも残念ながら)。
あ、「8億ユーロのボトルネックは明らかに需要ではなくセルビアの生産能力でしょう」が抜けた。
先ずもってセルビアが良い悪いやどうこうという話しでは無く、軍需産業の行く末についてだと思われます。
セルビア政府も言及している通り、復興事業で有り、2万人の雇用を支え大きな利益を産んでいる政策は、至極真っ当であり、国の安全保障を担う産業を維持・発展しようとする素晴らしい政策だと思います。
然しながら、世界規模で思案すると微少であり、当ブログの別記事にてラインメタル社への155mm砲弾だけで85億ユーロの政府支出・長期契約との報道がある通り、軍需産業の維持・育成にはそれ相応の長期的な投資と利益が必要と考えます。
巷にある死の商人的な軍需産業は儲かる等の陰謀論ではなく、安全保障にとって大切な、儲からない・
維持が厳しくなっている軍需安全保障企業に対して維持・育成に適切な投資と利益を産む事が行えないのか?という憂いであり、願望の声であるとご理解頂きたいです。
本邦も民間企業の防衛産業撤退や再編合併が相次いでおり、その心配でもあります…。
本記事から逸脱し誇張した話ではありますが。
レス場所ミス。長文失礼しました。
でもセルビアくん、あなたカザフスタン経由の迂回貿易してますよね?
ウクライナの味方というよりただの中立国なのでは
西側が仲を改善した!と勝手に思うのは勝手だが
関与してる時点で中立とは言わないと思うけど、セルビアなりのバランス外交なんじゃないかな(悪く言うとコウモリ外交?)
ロシアに益をもたらしてないのにウクライナには益をもたらす = ロシアの敵
ロシアに益をもたらしてるのにウクライナ(西側)には益を提供しない = 西側の敵
ロシアのロジック的にはセルビアのやり方は許されるとは思うんだけど、西側がなんで迂回貿易してる国々に何も言わないのか不思議なんすよね
カザフスタンとかもう西側の制裁に中指立ててるでしょ
中指を立ててるというほど反抗はしてないような?
欧州も日本もロシアとの経済を完全に切れてるわけじゃないから、よそに強く要求できないだけだと思う。それに西側の制裁も一気に全部じゃなく大きなところ、やりやすいところから制裁してから徐々に強化してるから、それに合わせて(西側からにらまれない程度に)コントロールしてるだけだと思う
『「八方美人」外交、カザフの存在感 欧米と制裁歩調、露にも配慮』 毎日新聞 2023/11/25
ここで西側西側と対立煽りしてる人ほど、グローバル・サウスはイデオロギーにまみれてないってことだと思う
この記事と、もう一つの最近のニュース「122ミリロケットの国際取引価格が平時の6倍に」を合わせてみると、セルビアの気持ちが良く分かりますね。
そりゃこんな特需が舞い込んできたら、目の色変えて売りまくりますよ。時代遅れの生産ラインを何の工夫も無くぶん回して旧式兵器を作るだけで、うなるように外貨が入ってくるわけですから。産業振興の原資としてボーナスが空から降ってくるようなものですよ。
朝鮮戦争の時の日本もこんな気分だったんだろうと思いますね。
まさに仰る通りです。
設備は償却済み、暴騰している中で言い値で売れるて、値上げ分そのまま利益が増えます。
平時の利益率10%くらいと仮定して、取引価格が6倍になるのであればですが。
利益率80%くらい、FOBなど有利な輸出条件なら90%くらいあるかもしれませんね…
(1)平時 定価100 利益10
(2)戦時 定価600 利益510
朝鮮戦争当時の収支は1953年には輸出額12億7000万ドルに対し輸入24億1000万ドル、実に11億7000万ドルの輸入超過らしいので利益は出てないのではないかと思う
セルビアがそのような状況を強制されたとは考えづらい
これって、日本が製造したミサイルを輸出できるという前提ですよね。
時代は変わったもんだ。。。。
リンク
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ラーム・エマニュエルは米国と日本にミサイル生産の加速を呼びかける