ウクライナ戦況

スロバキア、155mm砲弾対応の自走砲Zuzana2をウクライナに納品

スロバキアから購入した新型自走砲「Zuzana2」がウクライナに到着、西側諸国提供分と商業ベースで調達する分を合わせると400門以上の155mm砲弾対応装備をウクライナは手に入れる計算だ。

参考:Jaro Naď – minister obrany SR, OĽANO

Zuzana2がウクライナに到着、商業ベースを通じた重装備の調達が軌道に乗ってきた格好だ

スロバキア陸軍は保有する自走砲「Zuzana」を更新するため後継バージョンの「Zuzana2」を導入中で、不要になるZuzanaに関心を示したウクライナと売却交渉が進められていたが、スロバキア陸軍が発注済みのZuzana2をウクライナに売却することで6月3日に合意、ナド国防相は今月13日に「ウクライナとの契約に基づき4輌のZuzana2を引き渡した」と発表した。

出典:Jaro Naď – minister obrany SR, OĽANO

ポーランドも陸軍在庫から提供したKRABと別にウクライナとKRAB×60輌提供に関する契約を6月7日に締結、陸軍向けに発注していたKRABをウクライナに回すことで7月13日に10輌の引き渡しを実現、ドイツ政府も7月末に「KMWからPzH2000×100輌を購入したい」というウクライナの要請を承認したと報じられており、商業ベースを通じたウクライナの重装備調達が軌道に乗ってきた格好だ。

しかし新造されたPzH2000の引き渡しは2024年頃になる予定見込みなので、PzH2000を保有する国が一時的に在庫分をウクライナに回すなどの対策が必要になってくるだろう。

ウクライナ軍が入手済み・入手予定の155mm砲弾に対応した榴弾砲や自走砲
無償提供分M777136門引き渡し済み
FH70数量不明引き渡し済み
M10942輌以上引き渡し済み
Caesar18輌引き渡し済み
PzH200018輌引き渡し済み
KRAB18輌引き渡し済み
232門以上
商業取引分PzH2000100輌(推定17億ユーロ)ドイツ政府が売却を承認した段階
KRAB60輌(推定6.5億ユーロ)引き渡し中
Zuzana28輌引き渡し中
168門

提供国や数量が判明している分だけでも既に232門以上の引渡しが完了、イタリアとエストニアが提供したと言われるFH70、イタリアが提供した可能性が高いPzH2000を含めると引き渡し済みの155mm砲弾対応装備はもっと増える見込みで、提供された旧ソ連製規格のD-20、D-30、Goździk、DANA、105mm榴弾砲のL119も加えれれば引き渡し済み砲兵装備は310門以上になる。

因みに西側諸国がウクライナに提供した多連装ロケットシステム(HIMARS×16輌、MLRS×9輌、BM-21×20輌、RM-70×20輌)は65輌に達している。

関連記事:スロバキア、ウクライナに最新の自走砲Zuzana2を提供すると明かす
関連記事:ゼレンスキー大統領、ポーランドから追加の自走砲KRABを受け取った
関連記事:ドイツがPzH2000×100輌のウクライナ売却を承認、売却額は17億ユーロ

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain

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コメント

    • Formula750
    • 2022年 8月 14日

    スロバキアも新造分のZuzana2の売却で、Zuzanaは残すという事なのでしょうか?

    米CBSニュースが、「アメリカがウクライナに対し行っている数十億ドルの軍事支援のうち、同国の最前線に届くのはわずか30%である」と報じました。

    という記事が流れてきました。
    CBSはアメリカでは信頼されている方のメディアなだけに、管理人さんにこの話題の信頼性を考察する記事をリクエストします。

    2
      • NHG
      • 2022年 8月 14日

      重兵器は訓練も必要だろうから、提供表明分が額面通りに提供されてるとも限らないのでは

      流出が100%ないとは断言はしないけど、NATOの一員であるポーランドが横流しするとは考えにくいし、戦時体制で動いてる国でそうおいそれと闇市場に兵器を流すことはできないと思うので、提供した兵器の70%が丸々闇市場に流出というのは短絡的すぎると思います

      21
        • mo
        • 2022年 8月 14日

        Formula750 さん

        該当記事は8月7日にCBSホームページに掲載された「Why military aid in Ukraine may not always get to the front lines」でしょうか。

        記事をgoogle翻訳しましたが「状況はそれ以来大幅に改善され、今でははるかに多くの量が本来あるべき場所に到達している」とも書かれていましたよ。30%というのは今年の4月の話のようです。

        また「アメリカがウクライナに対し行っている数十億ドルの軍事支援のうち、同国の最前線に届くのはわずか30%である」の文言をgoogle検索にかけたところ、parstoday.comなるニュースサイトが最上位に表示されます。

        このサイトは日本語で書かれていますが、運営はイランのマスメディアによるものです。

        話を戻してCBSニュースの記事ですが、4月の兵站の混乱は「絶え間なく移動する前線」「ウクライナ兵の大部分が志願兵および民兵組織」という状況が原因だとしており、横流しの可能性については「そういった指摘をする人もいる」とぼかされて紹介されていました。

        22
        • カディロフ
        • 2022年 8月 14日

        ウクライナを舐めたらいかんよ
        あの国は昔から腐敗がひどくて戦時だろうがなんだろうが手癖の悪いやつは普通に横流しする
        日本の感覚だと異常に見えるし信じたくないだろうけどそれが現実なんだわ

        1
          • 無無
          • 2022年 8月 14日

          それはロシアも同じだから
          ゼレンスキーが唐突に人事を動かし続けているのは、そういう汚職に対する警告と引き締めでないかと読んでいるんだが

          17
      • とうりすがり
      • 2022年 8月 14日

      後方支援への援助はどれくらいなのでしょうね

      • 航空万能論GF管理人
      • 2022年 8月 14日

      ウクライナのNGO団体「Blue-Yellow」が主張した「30%しか前線に届いていない」という評価は4月末のものなので、現在の状況を反映したものではありません。

      CBCはBlue-Yellowの主張を引用したドキュメンタリー「Arming Ukraine」をプロモーションするツイートを削除、4月下旬に取材を行った後に前線への武器供給は大幅に改善されたと付け加えているので、4月上旬に首都攻防が終了、戦いの舞台が東部戦線に移ったことで兵站が混乱、前線への武器供給が一時的に滞っただけだと思いますよ。

      35
      • 名無しさん
      • 2022年 8月 14日

      金も払っていない個人のブログで管理人に「〇〇について記事を書いてほしい」って何様かと思う。
      管理人がまとめてる情報とは趣旨が違うし、それでも知りたいなら、
      自分で調べるか、記者に報酬を払って記事を書いてもらえば?

      37
    • くらうん
    • 2022年 8月 14日

    スロバキアは自国の調達分の自走砲まで先にウクライナに回し、Mig-29の供与も決定。
    共通の敵とはいえ、ここまでする覚悟は中々持てるものじゃない。

    22
    • カディロフ
    • 2022年 8月 14日

    ウクライナ債務不履行に陥った割にはまだ高い買い物が出来る余裕があるみたいだね
    南部での反抗が失速してゼレンスキーが兵器が足らないといつものようにわめき出したから
    少しでも足しになるといいけど

    1
      • 名無しさん
      • 2022年 8月 14日

      経済というのは信用で成り立つものですので。
      金がなくてもモノが買える国もあれば、金はあるのにモノを売ってもらえない国もあるのです。

      31
      • ナイトアウル
      • 2022年 8月 15日

       そもそも8/12投降された『25ヶ国がロシアと戦うウクライナへの戦費提供で合意、日本も戦費を負担』のなかでデフォルトの凍結言われてるじゃんよ。

       それでもウクライナの格付けに関して引き上げられた話は無いように思うんで危機の先送りでしか無いと思うが、その時にどんな救済があるんだろうな。

      6
        • shkk
        • 2022年 8月 15日

        下手に負債抱えさせたら「ロシアにさっさと降伏してればよかったんだ」「西側も当てにならない」
        みたいな論調を強化させることになるんだろうな

        西側にとっては茨の道だよね

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