欧州でのF-35販売の行き詰まりは本物で、ポルトガルは「F-16後継機選定は始まってもいない」という立場を崩さず、期待されていたドイツのF-35追加調達も消滅し、スペインでも「AV-8Bの後継機と目されていたF-35B」「2機種体制維持のため検討されてきたF-35A」の取得を断念しつつある。
トランプ政権に対する政治的不信感からF-35Aの取得が困難になった
スペイン空軍は戦闘機戦力はタイフーン Tranche1/2/3×約70機、EF-18M/MB×約65機、F/A-18A+×約19機で構成され、タイフーンはアンダルシア州モロン空軍基地の第11航空団、カスティーリャ・ラ・マンチャ州アルバセテ空軍基地の第14航空団で、EF-18M/MBはマドリード州トレホン空軍基地の第12航空団、アラゴン州サラゴサ空軍基地の第15航空団、F/A-18A+はアフリカ北西部の沖合に位置するグランカナリア島ガンド空軍基地の第46航空団で運用されている。

出典:Ejército del Aire
このEF-18M/MBとF/A-18A+の更新需要にはタイフーンとF-35Aが提案され、2022年6月と2024年11月にTranche4を計45機発注(65億ユーロ超)したが、スペイン空軍は長年「単一機種への依存リスクを回避するため2機種体制の運用が望ましい」と考えており、2040年以降に取得するNGF(FCASの中核となる次世代有人戦闘機)までの繋ぎとしてF-35Aの取得を検討していたものの、トランプ政権に対する政治的不信感からF-35Aの取得が困難になった。
EF-18M/MBは2期目のトランプ政権誕生前から退役予定を2030年から2035年に延長していたが、スペイン国防省は議会で「EF-18M/MBのライフサイクル延長計画は2040年までをカバーしている」と説明し、スペインのディフェンスメディア=Infodefensaも23日「スペインはFCASの不確実性と取得可能な第5世代戦闘機が存在しないため、EF-18M/MBの退役はほぼ10年間延長することを検討中だ」「もはやFCASについては語る必要もなく、市場から入手できるF-35Aの取得も政治的決定で見送られている」「EF-18M/MBの退役延長はエンジン部品の確保や米国からの継続的な部品供給が重要になってくる」と言及。

出典:Armada
さらにスペインメディアのEl Paisは2025年8月「スペイン軍向けのF-35購入計画は完全に棚上げされた」「開始していた予備交渉も無期限に停止となった」と報じたことがあり、この中で海軍がフアン・カルロス1世で運用しているAV-8Bの後継機について以下のように述べた。
“空軍はEF-18更新のためタイフーンT4を45機発注済みで、最後のEF-18が退役する2035年まで時間的余裕があるが、海軍は2030年にAV-8Bを退役させるため選択肢がなくなった。F-35Bの放棄はフアン・カルロス1世での固定翼機運用を断念することを意味するものの、海軍は艦艇から固定翼機を運用することを諦めた訳では無い。海軍は将来取得する強襲揚陸艦を通常型空母に変更する構想をもっており、この実現可能性に関する調査をNavantiaに委託している”

出典:Marine Corps photo by Lance Cpl. Joseph E. DeMarcus
“通常型空母はアレスティングフックを備えた固定翼機を運用するのに十分な飛行甲板を備えたものになり、ラファールのような艦載機の導入が可能になるものの、通常型空母の導入がAV-8B退役に間に合うわけではないため、海軍は艦艇から固定翼機を運用する能力を何年間か失うだろう。政権交代によってF-35購入の選択肢は復活する可能性も十分ある”
“トランプ大統領の要求はスペインの国益と真っ向から衝突する。サンチェス政権が総額5.0%を拒否する要因の1つは欧州の防衛産業が急激な需要増に対応できず域外依存、つまり米国依存が増大して自主開発能力を否定し、欧州の戦略的自主性の喪失に繋がるからだ。ロッキード・マーティンはスペイン向けのF-35について「イタリアで製造されるため欧州製だ」と主張しているが、それでも我々にとってF-35が魅力的でない理由が幾つかある”

出典:NATO
“米国はF-35の重要な技術情報へのアクセスを制限しているため、これは同機の運用国にとってブラックボックスとなっている。さらに米国製システムは潜在的な戦争における使用が制限される可能性があり、メンテナンスに必要なインフラの高コスト、スイスなどの導入国でスキャンダルを引き起こした売却価格の釣り上げ問題も存在し、これらの技術に依存することは欠点も多い”
スペイン海軍のサンチェス参謀総長も2025年9月「AV-8Bのメンテナンス契約を結んでいるAirbusは機体寿命を2032年まで延長できると言っている」「我々も米国とイタリアから退役するAV-8Bの取得を検討している」「これは飛行可能なAV-8Bを取得するのではなくスペアパーツを確保するためだ」「この決定は国際関係に関連している」「現時点の状況は良くないものの明日には全てが変わっているかもしれない」「そうなればAV-8BとEF-18の後継機取得が可能になるかもしれない」「我々は状況を緩和するよう努力する」と言及。

出典:Armada
サンチェス参謀総長の発言は「AV-8Bの機体寿命を出来るだけ延長して政治的な対米関係の好転を待つ」と示唆しているように見えるものの、別のイベントに出席した際「信じられないかもしれないが通常型空母の建造はフリゲート艦を建造するよりも簡単だ」「Navantiaが通常型空母を国内技術で国内建造できると確信している」「現在進めている実現可能性の調査はNavantiaが海軍の要件を満たせるかどうか確認するためのものだ」と述べ、AV-8Bの後継機はF-35Bに限定されていないとも示唆。
Infodefensaも「通常型空母の利点は運用可能な航空機がAV-8BやF-35Bのような垂直離着陸機に制限されないところだ」「まだ通常型空母のサイズは定義されていないものの海軍はシャルル・ド・ゴールを例に挙げている」「サンチェス参謀総長はFCASの海軍バージョンが運用可能な通常型空母計画を支持している」と報じており、通常型空母の取得についてはトルコとの協力も噂されている。

出典:Armada
どちらにしてもスペインは「AV-8Bの後継機と目されていたF-35B」「2機種体制維持のため検討されてきたF-35A」の取得を断念しつつあり、欧州でのF-35販売の行き詰まりは本物だ。
そして欧州の将来航空戦力はFCAS再編の結果、実用化が目前に迫っている無人戦闘機の有用性や効果、いつまでに脅威への備えを完成させるのかに大きく左右され、程度に差があったとしても米国依存は相当引き下げられるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Ejército del Aire y del Espacio




















安い通常動力型空母とEF-18で、今後開発が続くステルス戦闘機や無人戦闘機に勝つことを考える、というのはまさに
「トップガン マーヴェリック」
のような話であり、スペイン海軍においては、まだ戦闘機パイロットの時代は終らない、これからも続くということです。
世界各地からAV-8Bの部品を集めて使い続ける、というのはまさに
「エリア88」
のような話であり、それも超大国アメリカによる権力の独占、支配、暴走に対抗するため、というのはなかなか映画的、マンガ的です。ただこの流れが世界的に広がると、航空自衛隊におけるF-35の運用コストは今以上に上がり、稼働率が下がることが予想され、日本としては困った話です。
スペインの話が出るたび言われる
「空母を建造するのはフリゲートを建造するより簡単だ」
これは本当かよ
中国ですら、福建まで2隻挟んだんやで
クオリティを気にしなければ問題ない
まあ、イランでも作れるし。
「運用抜きの設計は」ではなかろうか
効率的な離発着のための導線や整備しやすい空間なども棚上げで
あれだけ経験積んでいる米国ですら
フォード級で失敗(運用は可能ですが)しているのに
これを言えるのは凄いですよね…
アメリカはフリゲートでも失敗してるので…
最前線でのしばき合いはクズルエルマ等を買うなりしてステルス無人機に任せるとしても、随伴『させる』海軍機は本当にどうするんだか。F-35B以外でハリアーと似たような挙動の機体なんて、ティルトローター機のV-280くらいしか思いつかん。
この緊迫した状況で、F-35Bを買わずにファン・カルロス1世の戦闘機を無くすとか、お花畑過ぎる。
イタリアだって、インドネシアへジュゼッペ・ガリバルディとセットでAV-8Bを売るかもしれないし、タイのチャクリ・ナルエベト復活用にも売るかもしれない。
古いAV-8Bを延命するとして、ステルス性も無く、航続距離も短くて搭載量も少ない。
流行りの無人機ウイングマンの母機になるのでもなく。
それは本当に使い物になるんでしょうか?
殺到する大量の無人機に圧倒されて、簡単にやられてしまいそうな印象ですが。
産廃と思われてたA-10や攻撃ヘリが思わぬ所で活躍したみたいなこともあるから、理想的な代替先が見つからないなら取りあえず現在の戦力を保持しとくのは、いいことだと思うよ
「有人の固定翼機は戦場で何をするのか」が激変の最中にあり、今後も各国暗中模索していくのでしょう。
結局、「無人機に担わせることが可能な範囲」が相当程度定まってこなければ、有人機の役割も流動し続けると。
スペインは、極東や東欧と違って、地政学的に気楽な場所ですからね…
モロッコとは経済関係ありつつも、領土問題・不法移民問題などを抱えていて。
ロシア=アルジェリアは、経済軍事的関係を深めていて、原発(経済)やSu57(軍事)を導入しているわけです。
スペインに危機感が、芽生えそうなものですが、NATO加盟国だから何だかんだ助けてもらえるくらいの感覚でしょうし。
モロッコ=アルジェリアが、戦争したり断行したりしてるので、こっち(スペイン)に火の粉すぐ飛んでこないくらいのものかなと(スペイン向けガス価格引き上げみたいな話しはありましたね)。
NATO脱退はできないにしても、のらりくらり軍事費を削減する理由はいくらでもある国だ
After トランプを見据えた現実解だ
スペインが「発火点」たりうるのは、独立問題か移民問題くらい?
いずれにせよ、F-35を掻き集める動機にはならなそう。
スペインが外から焼かれるほどの事態なら、F-35が数十機あったところでどうにかはならないのでしょうし。