欧州関連

スペインが武器主権の確保に向けた投資、次期主力戦車の研究開発を開始

将来を見据えた主力戦車の動きは徐々に活発化しており、ドイツもMGCSの暫定的な解決策として新型主力戦車の開発を開始し、スペイン国防省も将来の陸上戦闘車輛に関する研究開発契約をIndraに授与した。スペインの動きは武器主権や国内産業の保護といった長期的視点に基づく動きだ。

参考:Primer paso para el desarrollo del nuevo carro de combate español: Indra recibe 45 millones para su diseño

将来の戦場でも陸上戦闘車輛の中心的な存在になると思われるが、将来の主力戦車は視界内戦闘ではなく視界外戦闘を重視したものになるかもしれない

スペイン陸軍はLeopard2EをLeopard2A8に準じたアップグレードを検討中で、訓練目的で取得したLeopard2A4をLeopard2A8で更新する計画も浮上しているが、長期的には独仏共同開発の次期主力戦車=MGCS計画に合流、もしくは新型戦車の独自開発を目指しており、Indraは国防省から将来の陸上戦闘車輛に関する研究開発契約(4,500万ユーロ)を獲得した。

出典:Ejército de Tierra

この契約は将来の陸上戦闘車輛について「極めて過酷な環境での運用を想定し、現行の能力を大幅に上回る性能レベルを備える」「推進力、防御力、打撃力、状況認識の分野において先端技術を統合する」「高い戦術的・戦略的機動性と多国籍環境における完全な相互運用性を保証する」「オープンかつ拡張可能なデジタルアーキテクチャによりライフサイクル全体を通じて持続的な技術進化を可能にし、構造的な再設計を行うことなく将来的な改良の組み込みも容易にする」と定義している。

スペインのディフェンスメディア=Infodefensaも30日「この契約はLeopard2Eを更新する新型戦車の研究開発だ」と指摘し、要するに「スペイン産業界はLeopard2E導入の際、インテグレーターではなくライセンス生産の立場に甘んじたため、MGCSに合流するにしても、新型戦車を独自開発するにしても基盤技術を確保しておかないと武器主権や国内産業の保護が困難になる」という意味で、2年という契約期間まで加味すると今回の契約は新型戦車を構成する全基盤技術の研究開発ではなく「陸上戦闘車輛のコンセプト開発」「必要な構成技術の割り出し」「どの分野でスペイン産業界の強みが活かせるか」を追求する可能性が高い。

出典:Rheinmetall

MGCSに合流するなら強みを活かせる形でスペイン産業界の立場を主張し、新型戦車を独自開発するなら構成する全基盤技術の開発(イタリアと同じようにベース車輛を国外から持ってくる可能性も)に移行すると思われるが、肝心のMGCSがほとんど動きを見せておらず、ドイツは2045年まで手に入らないMGCSの暫定的な解決策として「新型主力戦車の開発」を開始しているため、Leopard2Eの後継戦車もどのようなアプローチを採用するのか流動的だ。

それでも将来を見据えた主力戦車の動きは徐々に活発化しており、ドローン戦争の当事国=ウクライナやロシアも主力戦車というプラットフォームを諦めておらず、将来の戦場でも陸上戦闘車輛の中心的な存在になると思われるが、将来の主力戦車は視界内戦闘ではなく視界外戦闘を重視したものになる可能性が高く、もう主力戦車同士が視界内で交戦することはレアケース(ウクライナやロシアでも主力戦車同士の交戦は稀)になるかもしれない。

恐らく本記事の投稿が2025年最後の更新になると思います。今年も熱心な読者の方に支えられた一年で無事走り切ることが出来ました。趣味で始めたブログがここまで続くとは想像もしていませんでしたが、来年も続ける予定なのでお付き合いください。

本年も読者の方には大変お世話になりました。良いお年をお迎えください。

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※アイキャッチ画像の出典:Public Domain レオパルド2E

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コメント

  • コメント (20)

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    • たむごん
    • 2025年 12月 31日

    激動の1年間、お疲れ様でした。よいお年を!

    38
      • アキバ
      • 2025年 12月 31日

      2025年貴重な情報ありがとうございました。
      そしてお疲れ様でした。

      来年も管理人様からの情報発信を期待しております。

      後これは私個人の意見ですが来年からは趣味では無くディフェンスニュースサイトとして本格的に活動されてはどうでしょうか?

      少なくとも安全保障関連に関しては主流メディアよりは遥かに信用出来ますしこのブログの読者の殆ども望んでいるんじゃ無いですかね?

      あくまで私個人の意見ですので。

      では良いお年を🙇

      11
        • 時々書き込み
        • 2025年 12月 31日

        管理人さま

        1年間多大な労力を費やしていただきありがとうございました、来年もよろしくおねがいいたします。
        よいお年を!

        5
          • 朴秀
          • 2025年 12月 31日

          今年も一年間お疲れ様でした
          来年も更新をよろしくお願いします
          よいお年を

          5
    • Whiskey Dick
    • 2025年 12月 31日

    >将来の主力戦車は視界内戦闘ではなく視界外戦闘を重視したものになる可能性が高く

    「大口径・長射程の自走迫撃砲」か「小口径・短射程の自走カノン砲」みたいになりそう。
    ドローン対策のためジャマ―とか対空戦闘を想定したRWS、センサー類も必須だ。

    3
      • 半分の軍事費の国から
      • 2026年 1月 01日

      イタリアはこんな感じなので、スペインは何を担当するのやら‥
      120 mm VULCANO は、VULCANO アンダーキャリバー/精密ファミリーの最新の発射体で、MBT の 120 mm 銃口だけでなく、同様の口径の車輪付きおよび装軌式重偵察砲(CENTAURO II および AICS-120) にも装備するように設計されています。新しい発射体の最大射程は約30キロメートルとされている。したがって、VULCANO-120 を使用すると、装甲車両、ロケットランチャー、防空サイトなどの目標だけでなく、敵の MBT 自体とも交戦することができ、後者の場合、いわゆる機能損傷、つまり光学系やアンテナなどの破壊を引き起こします。その構想は、現代の運用シナリオの進化に基づいて生まれ、それに関して接触操作の範囲は深く広がり、他の側面も包含しています地上のものに加えて。これに関連して、MBT は、ますますまばらで非線形なデバイスをサポートするための、一種の多目的多役割戦闘プラットフォーム(PPMC)に進化しており、遠隔地から攻撃できる必要もあります。

      1
    • S U
    • 2025年 12月 31日

    記事で兵器メーカーを書く時はメーカーの国籍も書いて欲しい。

    2
      • kitty
      • 2026年 1月 02日

      他所でも書いてたけど、そう単純な話でもないんだから、チャッピーにでも聞いたら?
      edgeを最新バージョンにしてcopilot modeオンにしたら簡単ですよ。

      2
    • nachteule
    • 2025年 12月 31日

    今年も一年お疲れ様でした

    >将来の主力戦車は視界内戦闘ではなく視界外戦闘を重視したものになる可能性が高く
     そんな流れになるのであれば現状砲塔で120mm以上の大口径直射砲が必要なのかって議論が出てきそう。視界外戦闘に比重を置くならサイズの大きい無人砲塔で仰角を増やし精密機器を搭載した誘導砲弾や有線誘導砲弾を発射出来る砲の搭載したり、大口径機関砲+徘徊型UAV/ミサイルのランチャーを搭載するとか現状の戦車の形態からは外れた物が出てきそう。

     日本の10式とか陸上で直射2.5km以上はほぼ無いから搭載しようとした機能の一つ不採用していたし、仰角が浅い直射が活かしにくい状況しか想定出来ないならば国情によって別物が出来る可能性が高いかな。上陸する敵に対する攻撃なら長距離は有効とか言うなら、どうせ誘導弾発射するんだし装輪の方がマシって話にしかならない気がする。

    4
      • ウララ
      • 2025年 12月 31日

      毎日、拝見させて頂いております。来年の更新も楽しみにしております。

      2
    • nachteule
    • 2025年 12月 31日

    今年も一年お疲れ様でした

    >将来の主力戦車は視界内戦闘ではなく視界外戦闘を重視したものになる可能性が高く
     そんな流れになるのであれば現状砲塔で120mm以上の大口径直射砲が必要なのかって議論が出てきそう。視界外戦闘に比重を置くならサイズの大きい無人砲塔で仰角を増やし精密機器を搭載した誘導砲弾や有線誘導砲弾を発射出来る砲の搭載したり、大口径機関砲+徘徊型UAV/ミサイルのランチャーを搭載するとか現状の戦車の形態からは外れた物が出てきそう。

     日本の10式とか陸上で直射2.5km以上はほぼ無いから搭載しようとした機能の一つ不採用していたし、仰角が浅い直射が活かしにくい状況しか想定出来ないならば国情によって別物が出来る可能性が高いかな。上陸する敵に対する攻撃なら長距離は有効とか言うなら、どうせ誘導弾発射するんだし装輪の方がマシって話にしかならない気がする。

    2
    • fuyu
    • 2025年 12月 31日

    管理人様、本年も種々の記事をありがとうございました。

    5年くらい前は、昼休み中に戦闘機ネタを好んで読んでいたような気がします。
    それが今は、自国が戦争の渦中にさらされるかもしれない & 自分が前線に立つことになるかもしれないと思いながら読むことになるとは。

    > 「推進力、防御力、打撃力、状況認識の分野において先端技術を統合する」

    推進力と状況認識は納得なのですが、
    防御力と打撃力は優先度が落ちそうな気がします。

    もちろん、車両に乗り込む兵士の立場にたてば防御力が欲しいのは当然と思うのですが、
    防御力は重量とコストを要するような気がいたします。
    ※戦車1両のコストで、「ランドクルーザーのようなものにレーダー類を載せたもの」を10台以上用意できるのでは。

    結局のところ、数を質では補えないというのがウクライナでわかった現実でしょうから、
    空におけるFPVドローンのようなものを、地上に用意するのが先決なのではないでしょうか。
    なんなら、ランドクルーザーと言わず、ジムニーでもよいでしょう。
    それらを、なるべく無人のまま群制御できるようにして行かないと、兵士のコストが高い西側は有効に戦えないと感じています。

    つまり、防御力は[陸上の無人戦力]の数で代替できるのではという主張です。

    打撃力に関しては、いろいろなリスクを鑑みると保守的に・・・つまり戦車が欲しくなるのは納得なのですが、
    欲しいのは戦車ではなく打撃力という観点に立てば、割り切って 対戦車車両や対戦車ミサイルやFPVドローンに軸足を移さざるを得ないのではないでしょうか。対戦車ミサイルやドローン母艦のような機能であれば、[陸上の無人戦力]も担当できるでしょう。

    ーーー
    とまぁ、結局は数が必要と言いたいところなのですが、西側は平時に役に立たないものを大量に揃えられるわけもなく。
    ここからが本題です。

    西側の平時において、どうすれば軍用車輌を増やせるのでしょうか。
    たとえば、自国兵士に、ランドクルーザーやジムニーなどを無償貸出する? ←車体の絶対数を増やす手段(無人化はその後考える)
    たとえば、過疎地における荷物輸送や人員輸送を、自動運転のランドクルーザーやジムニーなどに担わせる? ←無人車両の実験手段

    無茶であっても、現実的な対策をしていかないと、西側(というか日本)は有事に間に合わないのではないかという感覚が拭えません。

    5
      •  
      • 2026年 1月 01日

      まるで西側以外には問題がないとでも言いたいような文章だな

      4
        • fuyu
        • 2026年 1月 01日

        お読みくださりありがとうございます
        私はほぼ書き込まないもので・・・反応があるだけでも嬉しいです

        私は西側以外に問題がないと思っていません
        西側以外の「問題な部分」は、無視でよいと思っているだけになります
         ※西側にとって得な部分であるため。

        西側以外の「問題ではない部分」については、
        それに対応できる手段を西側として講じる必要があろうと考えています

        2
          • バーナーキング
          • 2026年 1月 02日

          加えて専制国家では平時でも為政者の鶴の一声で戦時体制とっちゃえば(民の飢えや不満は黙殺)いいだけなので、まさしく「西側だけで問題になる問題」ともいえるでしょう。

          3
            •  
            • 2026年 1月 02日

            そういう国は得てして金欠だったりそこまでしても西側に敵わない国が殆どだしな
            余所に喧嘩を売る前にまず国内をどうにかしろよ、と
            まあ、主にイランとかロシアとかのことだけど

            6
    • 他人事では無い
    • 2026年 1月 01日

    明けまして御目出度う御座います。
    今年が第三次世界大戦の始まりにならないよう、祈っております。

    2
    • 反革命分子
    • 2026年 1月 01日

    ドローンで着弾観測して間接照準射撃、って書くと戦艦じみていますね。戦艦はそれまで順当に伸びてきた射程が視程外に至り実用性を欠いてしまったわけですが、遠距離への攻撃は現代なら特に支障はない。

    それなら自走砲と歩兵戦闘車で代替できそうですが、戦車を全廃してしまうと戦車が活躍できる余地が生まれそうなジレンマ。

    2
      • 半分の軍事費の国から
      • 2026年 1月 01日

      イタリアは120mmL55A1砲の技術移転を受けるようですが、オリジナルな部分が有りまして‥誘導砲弾です。

      レオナルドは、イタリアのグループとドイツのラインメタルの合弁会社であるlrmvが開発中のイタリア陸軍の将来のmbt(kf-51に基づく)であるi-mbtに新しい120mm L55を搭載することを目指しています。
      レオナルドは、120/55 砲の公開に合わせて、車両に搭載された 120mm 砲用の新しい VULCANO サブキャリバー誘導弾も発表しました。
      120 mm VULCANO は、VULCANO アンダーキャリバー/精密ファミリーの最新の発射体で、MBT の 120 mm 銃口だけでなく、同様の口径の車輪付きおよび装軌式重偵察砲(CENTAURO II および AICS-120) にも装備するように設計されています。新しい発射体の最大射程は約30キロメートルとされている。したがって、VULCANO-120 を使用すると、装甲車両、ロケットランチャー、防空サイトなどの目標だけでなく、敵の MBT 自体とも交戦することができ、後者の場合、いわゆる機能損傷、つまり光学系やアンテナなどの破壊を引き起こします。その構想は、現代の運用シナリオの進化に基づいて生まれ、それに関して接触操作の範囲は深く広がり、他の側面も包含しています地上のものに加えて。これに関連して、MBT は、ますますまばらで非線形なデバイスをサポートするための、一種の多目的多役割戦闘プラットフォーム(PPMC)に進化しており、遠隔地から攻撃できる必要もあります。

      こんな感じなので、戦車も多機能化の方向で、誘導砲弾の撃てる130mm砲に行きそうですね。
      装甲も主にセラミックとチタンで造られて、大型化して装弾数をふやしつつ軽量化でしょうし‥量産効果無いと高そうですね。

      2
    • LD
    • 2026年 1月 03日

    カウンタードローンが戦車の直掩につく未来もありうるので主力戦車とは別口で軽戦車復活がリスクヘッジだろうか。

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