スペインは国防支出5%を拒否したため、欧州諸国から辛辣に批判され、Politico Europeにも「スペインはNATOの新たな敵」と書かれ、トランプ大統領も「スペインがNATO首脳会談を妨害すると脅迫した」と言及し、NATOにおけるサンチェス首相の立場は酷いものになるかもしれない。
参考:Trump sobre el gasto de Defensa en la OTAN: «España se ha convertido en un problema»
サンチェス首相が国防支出の増額に同意すると連立政権は確実に崩壊するため、どれだけ責められても下を向いて耐え忍ぶしか選択肢がない
これまで慢性的なカナダの国防支出不足はNATOにとって頭痛の種で、昨年のNATO首脳会談でカナダのトルドー首相は「2%基準を満たす追加の国防支出」を拒否して加盟国からの怒りを買ったが、今年のNATO首脳会談に出席するカーニー首相は「90億ドルを追加支出することで2%基準を7年前倒し=年内達成する」と発表し、NATOにおける「のけ者の地位」から脱却することに成功したが、今年のNATO首脳会談ではスペインが最大の頭痛の種で、同盟国の怒りを買うスロバキアが僅差で2位だ。
España ha logrado un acuerdo histórico con la OTAN que le permitirá seguir siendo un miembro clave de la Alianza y contribuir de forma proporcional a sus capacidades, sin tener que aumentar su gasto en defensa, ni alcanzar el 5% del PIB.
Tenemos que proteger Europa. Pero también… pic.twitter.com/jYc2Ilneaw
— Pedro Sánchez (@sanchezcastejon) June 22, 2025
スペインは土壇場で「我々は5%という目標にコミットしない」と主張、他の加盟国が国防支出基準の合意を守る中で「5%免除」を獲得することに成功し、サンチェス首相は23日「5%を達成したい国とそうでない国の権利を調和させることができる合意に達した」「NATO加盟国は目標を達成するかどうかを決定する権利を持っている」「我々は主権国家として総額5%達成を約束しないと明言してきた」「我々は5%未満の支出でより良いバランスを選択する」と、NATOが各加盟国に課す能力要件についても「国防支出を2.1%まで引き上げれば達成できる」と述べたが、国外では厳しい立場に立たされている。
スウェーデンのクリステション首相は「例外を認める余地が何処にも見たらない」と、デンマークのフレデリクセン首相も「ロシアから最も遠い国が5%免除を求めるのは公平ではないし、これは加盟国32ヶ国の団結に関する問題、欧州を自ら防衛するための問題で、特定の加盟国が5%を免除されるという考えには反対だ」と、ポーランドのコシニャク・カミシュ国防相も「スペインの5%免除は非常に悪い前例を作っただけでNATOの模範的な同盟国ではない」と、ある英国の議員も「スペインは欧州の安全保障に連帯したり、これを支持する姿勢が全く見られない」と辛辣に批判。

出典:NATO
さらにPolitico Europeは「NATOにとっての新たな敵はスペインだ」と書くほどで、欧州の国防当局者も「もし5%達成への取り組みを否定すればトランプ大統領の怒りを買うだけだ」「火曜日の夕食会でトランプ大統領に『5%まで増額しなくてもNATOの能力要件を満たすことができる』と直接伝えることに期待している」と述べていたが、スペインメディアのEFEも24日「トランプ大統領がスペインの5%免除を問題視している」と報じている。
トランプ大統領は先週「スペインの国防支出は慢性的に不足している」「他の加盟国と同じ額を支払うべきだ」「NATOは代償を支払っていないスペインと交渉しなければならない」「これはスペインにとって良い交渉者だったか、正しいことをしなかったかのどちらかだ」と述べていたが、NATO首脳会談に向かう機上でも「スペインと間で問題を抱えている」「スペインとの間には常に問題がある」「スペインは(総額5%に)同意しなかった」「これは他の国々とって非常に不公平だ」と言及。

出典:Truth Social
さらにトランプ大統領はTruth Socialに「スペインがNATO首脳会談を妨害すると脅迫」「スペインは国防支出を5%に増額する要求に抵抗している」「これはトランプ大統領を怒りを宥めることを目的にしたNATO首脳会談を混乱させる恐れがある」というグラフィックを投稿しており、25日に開幕するNATO首脳会談でサンチェス首相の立場は酷いものになるかもしれない。
但し、サンチェス首相が国防支出の増額に同意すると連立政権は確実に崩壊するため、米国を含む加盟国からどれだけ責められても下を向いて耐え忍ぶしか選択肢がなく、スペインの行動に同調したスロバキアのフィツォ首相も立場も非常に微妙なものになるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Truth Social
もし石破さんが叫んでいたアジア版NATOが存在しており日本がそれに加盟していたら間違いなく今のスペインと同じかそれ以上に苦しい立場に立たされていただろうな。
同町圧力、すごいですね。
欧州他国も、連立政権・少数与党・ねじれ議会・ねじれ首相大統領があるわけでして。
スペインだけ例外を認めると、自国の政権内・党内部・野党から苦しい立場に追い込まれかねなわけですから、仕方ないのだろうなと。
実際独仏含めて反米系右派が支持を拡大している主要国含め、スペインとかは立ち向かったのに米国の言うがまま、苦境の国内経済ないがしろにして金を出すのかという批判はちらほら聞こえてきますね。
軍事同盟の難しいバランスで、今回はあまりにも同盟上位からの強制的な支出二倍以上の指示だったので、正直相当NATOは動揺するかと思います。
まあ2035年期限でトランプの任期が切れる2029に見直すと言ってるのでのらりくらりするつもり満々なのが見えてるのですが。トランプ期までの欧州選挙は相当与党にとってつらいことになるでしょうね。
仰る通りで、スペイン根性あると思いました。
ガソリン車全廃・ハイブリッド車規制として、EUの新規制に、日本中が大騒ぎになった事例が有名かなと。
EU各国なんだかんだで骨抜きにしたりして、いつの間にかハイブリッド車がOKになったりウロウロしてますので、似たような感じになるのかなと少し予想しています。
日本もグラグラになってるので人の事を言ってられないのですが…
リフォームUK・AfDの躍進を見ていると、イギリスやドイツを中心に、ほんと大丈夫なのかなあと見てしまいます。
オランダだとBBBが既存政党をなぎ倒しましたね。まあBBB躍進の理由はルッテ元首相(現EU事務総長)の農政改革への反発ですが。
GDP比5%なんて本当にやれば社会保障費を大幅削減せざる得なくなってオウンゴールでポピュリズム政党が大喜びするだけ
特にフランスはただでさえデモスト好きの国民性の上に国民連合というカリスマ政治家がいる福祉重視のポピュリズム政党があるのにこんなこと本気でやれば極右阻止の共和国戦線が崩壊するよ
酒もタバコも飯も小食で食えないのに…なんなら行きたくもないのに、付き合いがあるから仕方なく参加して、払いたくもない飲み会代を「お前もみんなと同じ額出せよ!」ってカツアゲされてる私にはスペインを悪く言えない。
それほど簡単な話ではないのは分かっているけど、ロシアなどの東からの脅威が直接スペインに届くまでには多数の国があり、ポーランドやバルド三国、北欧諸国などのロシアと国境を接している国と同程度の危機感を持て、というのが難しいというのも事実でしょうね。
仰る通りで、NATO西端の国々は、ロシアの脅威ないに等しいんですよね。
NATO加盟国としての義務が…国内インテリが言ったところで、スペインは財政赤字・貿易赤字の国ですから、国民がついていけるのか注目しています。
ぶっちゃけスペインは脱退しても困らんがな
スペインに侵攻できる勢力はNATOくらいしかないわけで
NATOは国内問題も国外の難民問題にも役立たない
パレスチナ国を承認したり、西側と意見が合わないからな。
オーストリアも加盟していないし。
独自外交をするならNATO離脱もありか・・
パレスチナの国家承認はしてない国の方が少ないだろ
世界的には承認している国が多数派で、おしゃることは正しいのですが。
西側に限定すると、承認しているのは少数派です。
スペインとオランダは位置的に安心安全って感じですからね
そりゃNATO加盟国の中でも温度差があるのは仕方ないですよ
NATO脱退して、中立決め込んでも、国防費は…ってスイスの国防費を調べたら2023年で驚異の0.7%…。
まあ人口当たりGDPが世界三位の経済大国でGDPがかさ増しされているとは言え、かつての孤高のハリネズミはどこに…。
NATO加盟国の軍事費は全体でロシアの10倍ぐらいあり何を恐れているのかはよくわからないですね。
ウォーゲーム的に考えると、ロシアは資金1で10ユニット分の戦闘力の兵器を生産できるけど、NATOは資金1で1ユニットしか生産できないということか?
もし中国なら20ユニット生産できるのかもね。
強いて言うなら、かつてハンガリー共産党が唱えた事が由来のサラミ戦術ですかね。
ウクライナ東部と同じ事をされるのをバルト三国やポーランドが恐れるのは当然の事です。なにせ『ロシア兵が足を踏み入れた場所は全てロシアのもの』なんですから。
それに加え、人口もロシアの7倍くらいいますね。アメリカを差し引いても4倍。
不安を抱えさせ人々を騙しやすくしたいのか、覇権の延命を企んでいるのか。
単純な軍事費で見ても戦力の比較は出来ませんからねー
ドイツとイギリスは防衛費を今後爆増させると表明していますが(イギリスは核戦力の維持整備に資金が吸われているとはいえ)、現状でも日本以上の防衛予算を投入しているはずなのにボロボロの状態ですからね
何を恐れているのか、といえばNATOの足並みが揃わないことを恐れているのだと思います。
仮想敵はNATO5条を試しにくるだろうと予測されていますが、その時にNATOとして連合して戦えないことを恐れている。NATO内部でも一部の国が参加した有志国連合しか結成できないかもしれない。
そうなれば単独である程度は戦え、有志国連合で仮想敵を退ける力が必要になります。
有志国を募るにも実際に脅威に曝されて直接の当事国として戦う羽目になった国の軍事力が弱い場合、有志国の負担がなおさら増して参戦意欲が殺がれます。勝てない戦には誰も乗りたくない、たとえそれにどんな大義名分やもっと言えば恒久不変の正義があろうとも。
だから最低限有志国を募ることができ、さらにNATOの理念を実行してNATOとして戦うためにはそれぞれの国が強いことが必要になってしまったと思います。
ロシアがEUへの領土的侵略を画策するのは難しいですが、NATOの破壊は確実に狙うでしょうね。
ウクライナ戦争がウクライナのNATO加盟妨害が目的の一つだったわけですが、次のロシアの戦争はNATOの形骸化を狙うのですな。
スペインはNATO脱退すればええんないかマジで。スペインを攻めようとする国存在しないやろ。
まあ元々NATO自体がドイツ絶対殺す同盟ですからねぇ
NATO諸国が金を出させたいのと、海峡問題や分離独立問題も抱えているので、NATO脱退したらNATO諸国から干渉されてユーゴみたいに分割されかねないんじゃないですかね。
なんかNATOがシチリアマフィアみたいですね。
足抜けしたら沈黙の掟に従って始末される、と。
フランスとかドイツ、イギリスって内政問題、国内経済状況の悪化で首相が変わったり、政権交代したり(しそうになったり)してるけど、5%実現のために社会保障の削減や増税をする事になっても大丈夫なんだろうか?
そこは日本も人の事は言えないけど選挙でポピュリズム政党に負けるような事になったら意味がないと思うけど
さすがにスペグジットする勇気はないだろうけど、やらないならやらないでEUの軍事市場でスペイン企業の影が薄くされて、より達成できなくなりそうな。
乱暴な意見だが日本が防衛費5%と巨額の財政赤字解消の両方を達成するには最早年金をはじめとした高齢者向け社会保障費を全てゼロにするしか無いのでは?
国民皆保険と子ども家庭庁捨てればいけますね
まあ自民党は跡形も無くなると思いますけど
なあに、その時に自民党が下野していれば済む話ですよw。
全然、非現実的な話ではなくなってきていますし。
スペインはイギリスへイギリス専用哨戒艦一隻売る。イギリスはスペインへスペイン専用改修型ストームシャドウ一発売る。それぞれ値札は500億ユーロ。別に他の装備品でもかまわないし額面は都合で好きにいじればよい。政府間取引で相殺して金銭移動は無し。(なんならスペイン専用改修型ストームシャドウは505億ユーロに設定してイギリスへ5億ユーロの謝礼を支払ってもよい。)
これでスペインの軍事支出は帳簿上で爆増してGDP比基準満たせるでしょう。
こういう抜け道は思い付きます。
実のとこ、ウクライナを守らなければ次は我々の番だと言って結束と限界無き支援を誓った欧州が海で隔てられた米国より先に音を上げました。揉めるのは当たり前だと思います。どこが最初に言い出すかだけ。上で書いたような不正な取引でもって基準を満たそうとする国も現れるでしょう。
ロシアを脅威に感じるならそれこそ当初誓った通り支援し、EU域内資金を流出させてでも砲弾を買い付ける決意はできたでしょう。
国の行く末決める様な大事なんだし民主主義なんだから各国選挙して民意問えば宜しい、ポピリズム政党が躍進するならそれまでのことでロシア中国に上手いことやらててもそれが民意であるなら受け入れるしかないのではないでしょうか。
防衛費増額の流れは確実に来てしまってるなぁ
最低でも3.5は絶対だろうし、そこをやらないって言って選挙で騙される層は確実に出る
日本はスペインと違って敵と直接対峙する立場なんだけど、選挙までにそれを周知させな、わけわからん政治で最悪増税防衛費増なのに自衛隊の装備はたいして強化されないとか言う事態になりかねんぞ
ロシアは往時のソ連ではない。明らかに過剰反応というか、アメリカ(というかトランプ)は手を引きたいのだろうし、ドイツとフランスは手を引かせたいのだろう。
GDP5%なら、フランスの核の傘とドイツの通常戦力でアメリカ抜きの西欧同盟はあり得る。そうしたいのだろう。
日本にもそう言ってくるなら、そういう意味なんだろうとも思う。確かにGDP5%あれば核も含めて武装中立はあり得る。
日本のサヨクは本質的には反米ナショナリストなのでこの誘惑に耐えられるか疑問だ。自主防衛、武装中立。実に素晴らしい。
親米(珍米)ナショナリストとしては「金の掛からない方が良いんじゃないの」と思うが、確かに魅力的だよね。
当面はローテーションで各国がバルト三国に軍を派遣してるけど、暫くはスペイン軍が常駐しないとダメそう。
、
日本で言えばだいたい消費税20%にしないとGDP比5%は達成できない
もしくは赤字国債の発行額を今の倍にするか
率直に言えば詰んでる
今の陸自を1/3、海自を1/2にして核武装した方がマシかな
老人の医療費を削れば余裕で達成出来ます
もし「そんなこと出来る訳無いだろ」と思うのなら
それは財源ではなく日本人の政策思考の問題
消費税20%はけっこうハードル高いですが、他国を例にすれば額面上はそのくらいの国はありますしね。
日本人の国民性を考えると、むしろトランプに頼んで世論がプチパニックになるくらいガツンと脅してもらって、国民が耐乏生活への覚悟を決めたところで法案通すのが有効かも知れませんが…。
1.8%ぐらいでお茶を濁そうとしている某島国はどうなってしまうのや
互助会、見ようによっては連合なのに義務を果たさない国が出てきたらいずれ瓦解。
EUもNATOもそうだが、規模に守られる以上、規模に干渉されることも受け入れるしかない。
嫌なら自国の影響力を増す(拠出金増やす、一国でも防衛できるだけの力をつける、など)しかない。
2国間の安全保障よりも問題は複雑でしょうね。
日本やオーストラリア、フィリピンなどはアメリカとはもうダメな時って結局中露いずれかと手を結ぶしか選択肢がないですから。
(米国製兵器なしに西側の軍事は成り立たない現実もあるし、そもそも欧州は地理的に遠く前線基地や艦隊が存在しない、新たに日本に作るにしても反対運動でまともに進まない)
内容関係ないけど、ちょっと韻踏んでる?っぽい
忘れている人もいるようだがフランスですらNATOは脱退していた時期があるしね。イギリスと違いスペインに大事なのはEUだし、普通にNATO脱退しても驚かない。