欧州関連

スペイン陸軍が砲兵戦力の更新を計画中、自走砲などを200輌以上調達か

スペイン陸軍が砲兵戦力の更新を計画しており、現地のディフェンスメディアは「自走砲×145輌、装輪式自走砲×109輌、牽引式榴弾砲×36門の調達を検討している」と報じており、GDELSはKNDSと提携して無人砲塔を採用したDONARとPIRANHA AACを発表している。

参考:Defensa pone cifras por primera vez a la sustitución del M109: 145 obuses, 36 piezas con ruedas y 109 sobre cadenas

DONAR、PIRANHA AAC、M777の組み合わせに落ち着くのではないかと思っている

スペイン陸軍の砲兵戦力は半世紀以上前に米国から導入したM109A5(96輌)、Santa Bárbara Sistemasが製造した155mm榴弾砲(84門)、英国から導入したL118(56門)で構成されており、これを更新するための計画が進んでいる。まだ正式な計画が立ち上がっていないため調達規模も確定していないが、現地のディフェンスメディア=Infodefensaは「自走砲×145輌、装輪式自走砲×109輌、牽引式榴弾砲×36門の調達を検討している」と報じており、既に産業界が動き出しているのが興味深い。

Santa Bárbara Sistemasを傘下に収めたGDELSはスペイン陸軍の需要を見込んでKNDSと提携、155mm榴弾砲を搭載するArtillerie-Geschütz-Modul=AGMをASCODに統合したDONAR、Piranhaに統合したPIRANHA AACを発表済で、AGMはPzH2000の技術を流用してKMWが開発した無人砲塔でRCH155にも採用されているため、DONAR、PIRANHA AAC、RCH155はベース車輌が異なることを除けばAGMを採用するファミリーシステムと言えるだろう。

但し、Infodefensaは「M109A6、K9、PzH2000、Caesar、RCH155、SIGMA、Roemなども調達候補に入ってくる」と指摘しており、国内投資と雇用を優先して独自モデルを採用するか、規模の経済とスペアパーツ等の入手性を考慮して海外モデルを採用するか悩ましいところだが、DONAR、PIRANHA AAC、M777の組み合わせに落ち着くのではないかと思っている。

出典:Krauss-Maffei Wegmann GmbH & Co. KG/CC BY 4.0

因みに生存性が劣る牽引式榴弾砲を装輪式自走砲で更新するのがトレンドになっており、スペイン陸軍も自走砲と装輪式自走砲の組み合わせに変更してくるかもしれない。

関連記事:英陸軍の次期自走砲、スナク首相がベルリンでRCH155調達を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:KNDS

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コメント

    • あああ
    • 2024年 7月 14日

    MT-LBに海軍砲をポン付けと同じ発想のDONAR
    最近のトレンドなんですかね?

    1
      • あああ
      • 2024年 7月 14日

      発想 → ✕
      デザイン → ◯

    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 7月 14日

    最近のNATO加盟国の軍備増強・刷新の話を見ていて思うのは「お前らなんで装備・兵器を統一しようとしないの?」です
    勿論すぐに出来る話ではないですし、眼の前の軍備増強の必要性も理解は出来るのですが、ウクライナで複数兵器の混合による兵站負荷が指摘されているのに各国が好き放題に兵器を選定してバラバラに軍備を整えるのはどうなのと思ってしまいます

    8
      • 774
      • 2024年 7月 14日

      まあその辺は自国兵器メーカーを育てるという考えもありますし
      それにウクライナの事案は緊急だからああなってしまった面が強いかと
      もうこれは統一国家や地球連邦みたいな形になるまではバラバラのままでしょう

      25
      • 幽霊
      • 2024年 7月 14日

      そんなこと言うと日本だってアメリカの軍事力に依存してるんだからアメリカ製で軍備を揃えろよってなりません?

      19
    • bbb
    • 2024年 7月 14日

    装輪、装軌で合計250門としてじゃあ10輪ピラニアにドナール搭載のは一体どっちに属するのか?装輪榴弾砲と言うと普通は車幅2,5m高機動トラック車載式を言います。
    アーティキュレートはともかくライノやダナら専用車体のは装輪装甲自走砲でしょう。それらよりも高性能な装輪装甲車ベースならば装軌自走と価格差が無いどころかむしろ高額になる。
    しかしピラニア5の派生車体ならば既に採用済みのスペイン国産のそれに互換性がある。RCH155もボクサーベースなので独軍採用なら同じです。IFVを装輪装甲化して榴弾砲もファミリー化というとわーくにも目論んだ所ではある。16式派生で同様のを今後やるべきに思います。
    しかし、その場合に砲塔システムはどうなるか。JSWで99式ベースの無人砲塔を実現できるのか。K9が出来る事が日本で可能か。それともドナール統合化なのか。

    1
      • 鼻毛
      • 2024年 7月 14日

      陸上戦艦って感じの面白い見た目をしてますね

        • 鼻毛
        • 2024年 7月 14日

        すみませんこちら間違えてレスで投稿しましたが他意はありません

        2
        • 戦略眼
        • 2024年 7月 15日

        16式の車体にAGMを載せるとか。

      • nachteule
      • 2024年 7月 15日

       その考え方はおかしいでしょう普通に棲み分け出来ているじゃないですか。装輪はタイヤで移動する車両全て、装軌式はいわゆる無限軌道/クローラー/キャタピラとか言われる金属製かゴム製の物で動く車両を指します。分類シンプルに分かれているのですから10輪ピラニア+DONARは装輪自走砲でしかない。DONAR+装軌車両もあるんだから装輪装軌は完全に分かれている。

       装軌式自走榴弾砲より装甲車ベースの装輪自走砲は高価になるかどうかは不明です。射撃反動抑制と砲塔自体はどうしても流用よりはオリジナルにならざるを得ないでしょうが。

       装輪装甲車ベースのメリット
       ・自ら高速で展開出来、戦略機動性がある(トランスポータは基本いらない)
       ・履帯より複数コンバットタイヤの方が軽く10倍は安い(10式履帯と16式コンバットタイヤで適当に比較)。
       ・履帯よりコンバットタイヤの方が遙かに軽い(燃費に直結)
       ・履帯よりタイヤの方が寿命が長い(と思われる)
       ・履帯は複雑な構造で維持整備や兵站に負担が掛かる、質が高いタイヤを使用する限り大きな問題が無い
       ・大量に採用されるプラットフォームのインフラを最大限に活用出来る
       ・振動が少ない(人と車体に対するダメージ減)
       ・トラックベースの既存装輪自走榴弾砲と比べ装軌式と同様の即応射撃性能(RCH155)
       ・360°射撃可能(RCH155 恐らく最大装薬だと真横には撃てないのでは無いか?)

       装甲車ベース装輪式のデメリット
       ・汎用トラック搭載と比較してコストが高い(と思われる)
       ・汎用トラックと比較して重量が重い
       ・装軌式の方が安定性は高い(と思われる)
       ・装軌式の方が悪路走破性は高い

       10輪装甲車ベース装輪式のメリット
       ・タイヤが増える事での1輪あたりの接地圧減少
       ・タイヤが増える事での破損への冗長性
       ・高いクロスカントリー性能
       ・積載量の増大
       ・防御力は強化されている
       ・射撃プラットフォームの安定性向上

       10輪装甲車ベースのデメリット
       ・タイヤが増える事でのコスト増
       ・重量増
       ・サイズが大きくなる
       ・本体価格が高い

       海洋国家である日本でわざわざ16式ベースの新たな榴弾砲を作る必要があるかは検討すべき、将来的に99式の後継として考えるのなら有りだとは思う。
       ボクサーならベース・シャーシがあって多様なミッションモジュールを搭載出来るようにして40t位までは想定するような拡張性を持っている。Piranha AACは10輪で全長が伸び拡張性が増えている。装輪2種のよう幅が狭く砲塔サイズが縦長のDONARを搭載するために抉ったようなシャーシを数が期待出来るかも分からないのに作る必要があるのか。

       最低限の費用と改造で作るならならチェンタウロ155/39LWは参考になるだろう。大型砲塔の39口径で左右15度の制限だらけでトラック装輪の方がマシのような奴。簡易的にやるならトップヘビー・車高が高くなる・左右各制限の問題は出てくる。

      1
        • bbb
        • 2024年 7月 15日

        ピラニア5の10輪モデルは回収車でも使えますな。メーカーはPLSや野戦指揮で使えるとも言いますが、これは微妙。現状の装輪装甲の回収は社格と装甲量の拡大で難儀してる所で、完全装輪装甲化でも回収車は普通の高機動トラックベースだったりします。
        わーくににしろここまでハイエンドの装輪装甲を多用するならば16式派生で10輪にして新型回収車が必要でしょう。これに無人化火砲搭載で99式後継に充てるという事です。
        その場合の価格はミッションモジュール化の10輪車体に99式ベースの砲塔をポン付けで済むのであれば当然、開発費はかなり低減できる。(無論、無人化は別途の費用)ミッションモジュール式のボクサーでのRCH155とかまさにそれですね。しかしそうでないのであれば車体が5000万しないのに7億する19式どころでは無い単価に至る。
        とは言え装輪機動の火砲でも用途が違うのですから正当化は難しくありません。19式は装甲化でも砲塔式でもありませんから。ですのでこの時点でも装輪/装軌の分別は既に消失してる。16式系での装軌車後継なのですから。そもそも車載式というのはあくまで牽引砲の後継です。

    • 58式素人
    • 2024年 7月 14日

    トップの写真を見ると。
    M270の車体を延長して、RCH155の砲塔を載せたのかな?。
    ちょっと安直なような気もしますが。
    それにしても、M270の車台は、長持ちしそうな気がします。M109並に(笑)。
    GDLSなら、黙って(笑)M109の砲塔を再設計したら良いのでは、と思ったり。
    日本の99式が40tなので、少し軽いかも?とも思いますが。

    1
    • 自分もM270ぽいやん。砲塔システム乗せるだけとはいえやっつけすぎだろw
      って思ったけど文中にある通りちゃんとASCODの車体を延長したものっぽい

      ・・・で も M270にAGMのプロトタイプをのせた車両は存在するようです。

      リンク先のGoogle翻訳だけど
      このモジュールは、6×6 または 8×8 の大型シャーシ、多連装ロケット システム (MLRS) の装軌式車体、または主力戦車の車体に取り付けることができます。車両が反動に耐えられるように、車輪付きプラットフォームに油圧式スタビライザーと発射スペードを取り付ける必要があります。MLRS シャーシに取り付けられた AGM の戦闘重量は 27 トンです。6×6 トラックに搭載すると、戦闘重量は約 22.5 トンになりますが、PzH 2000 の戦闘重量は約 55 トンです。

      だそうで。リンク先の画像見ると転輪がちゃんとM270ですね
      ・・・でも見比べないと素人だと分からんぐらいソックリ

      1
        • 戦略眼
        • 2024年 7月 15日

        M109の車体にAGMを載せれば良いのではないか。

        1
        • shkk
        • 2024年 7月 15日

        おっとURLのところに貼り付けると名前のところのリンクになるのね…

        ↑の私の名前のところがリンク先
        もしくはartillery gun moduleで検索するとMLRSに乗せてる画像が見れます

        そっくりだけど転輪の配置をみると別物というのが分かります(数も違います)

    • 名無し
    • 2024年 7月 14日

    更新計画を建てるにはずいぶん遅くないか?
    といっても買えそうな自走砲だとボクサーとかK9とかカエサル8×8くらいのような…
    M109後継は頓挫してしまったし

      • 戦略眼
      • 2024年 7月 15日

      M109の車体にAGMを載せれば良いのではないか。

    • 名無しパン
    • 2024年 7月 14日

    大体一両当たり一万発撃つことになりそうだけど、足回りをあんなに揺らして大丈夫なのかね?早晩壊れそうな揺れ方だが。

    1
      • 戦略眼
      • 2024年 7月 15日

      その前に当たるのか?

      1
    • p
    • 2024年 7月 14日

    「PIRANHA AAC、M777の組み合わせに落ち着くのではないか」
    NATO諸国で生産されている牽引式榴弾砲の中でも中型ヘリで輸送できるM777なのでしょうね。
    イギリス製兵器を購入しないスペインですから、アメリカ製の物を調達するのでしょうと予想。

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