欧州関連

パキスタン向けAH-1Zの数奇な運命、スロバキアは拒否してUH-60を選択

スロバキアはウクライナにMiG-29を提供した見返りとして「割安なAH-1Z導入契約」を提示されていたが、最終的にAH-1ZではなくUH-60を選択したため、パキスタン向けに製造されたAH-1Zの引き取り先が再び消滅し、手を挙げているウクライナに向う可能性が少しだけ高まった。

参考:Slovakia buys Black Hawk helicopters, leaving Vipers up for grabs

スロバキアが購入しないかもしれないAH-1Zにウクライナが手を挙げている

スロバキアはF-16V導入前にMiG-29をウクライナに提供した見返りとして「ポーランド空軍とチェコ空軍による領空保護の提供」「欧州平和ファシリティから2億ユーロの補填」「米国による割安なAH-1Z導入契約の提供」を確保、特に後者は「AH-1Z×12機、ヘルファイア×500発、関連機器、各種サポートを含む約10億ドル相当の契約を3.4億ドルで提供する」というものだったが、新たに誕生したウクライナ支援に否定的なフィツォ政権は「もはやAH-1Z調達は優先事項ではない」と述べ、MiG-29提供の見返りをAH-1Zの契約から切り離して「F-16Vの追加調達やパトリオットシステムの購入で割引を受けたい」と方針を転換。

出典:European Council/CC BY-NC-ND 2.0

但し、スロバキア政府はAH-1Z調達を正式に撤回しておらず、米国務省は今年7月「AH-1Zをスロバキアに6億ドルで売却する可能性を承認した」と発表し、この承認された6億ドルの売却内容は「ヘルファイア×500発」が含まれていないため、業界関係者は「この大幅な値上げはスロバキアに対するワシントンの不満の現れだ」と指摘。

スロバキアは大幅に値上げされたAH-1Zを購入するかどうか躊躇していため、米国は新たに2つの提案(AH-1Z×12機/5.5億ユーロとUH-60×12機/1.5億ユーロ)を行い、カリニャーク国防相は「数日以内に提案内容の分析結果が出る」と述べていたが、Defense Newsは18日「数ヶ月間の検討の末、スロバキアはUH-60を購入することを決めた」「そのため行き場が無くなったAH-1Zに対するウクライナのロビー活動が強化されるかもしれない」と報じている。

出典:U.S. Marine Corps Photo by Sgt. Alex Kouns

元々、スロバキアに提供を予定していたAH-1Zは2015年にパキスタンが発注した機体で、両国間の政治的緊張が高まったため引き渡しが中止になり、完成していたAH-1Zにモロッコ、ポーランド、オーストラリア、タイ、フィリピン、ナイジェリアが関心を示すも調達が具体化せず、スロバキアが購入しないかもしれないAH-1Zにウクライナが手を挙げており「もしスロバキアに必要ないなら出来るだけ早くウクライナに引き渡して欲しい」「東部戦線やクルスク方面で戦う兵士達のためにもAH-1Zが必要だ」と主張している。

果たしてスロバキアにも蹴られたAH-1Zは何処に行き着くのだろうか?

関連記事:パキスタン向けAH-1Zの数奇な運命、最終的に誰の元に行き着くのか?
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Staff Sgt. William L.Holdaway

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コメント

    • 他人事では無い
    • 2024年 12月 19日

    AH-1Zは、陸自に押し付けられそうな気がする。
    10年近く不良在庫になっているのか。
    トランプの動向がどうなるか。

    8
      • さだを
      • 2024年 12月 20日

      発注がその頃というだけで完成したものが眠っていた期間はもっと短いですよ。
      日本は全廃を掲げているのでどこにも引き取り手がなければ米海兵隊が予備機として買うんじゃないですかね。
      AHを縮小するにせよ、廃止はやりすぎだと思っているので、日本に来るなら個人的にはありがたいですけれども。

      17
        • 匿名希望係
        • 2024年 12月 20日

        UH-2に412のオプションつけて戦闘ヘリ化したのを少数配備ぐらいじゃあないですかね?

        1
          • さだを
          • 2024年 12月 20日

          実際はそうだと思います。
          次点でバトルホーク化。

          1
        •  さ
        • 2024年 12月 20日

        押し付けるなら寧ろ、GDP比3%云々でやりあう事になるNATO諸国が対象になる気がする
        トランプ次期大統領は、ウクライナ問題はまず欧州が何とかしろという主張をしているのだし

        4
    • センツァノーメ
    • 2024年 12月 19日

    保有するMiG-29の全機提供と引き換えのAH-1Z割引だったはずなのにさらっと反故にする米帝そういうとこやぞ。

    32
      • 他人事では無い
      • 2024年 12月 19日

      喧嘩売るなら、もらう物もらってからにしようよ。

      7
    • 匿名
    • 2024年 12月 19日

    ヴァイパー、某FPSゲームではよくお世話になりました

    3
    • イーロンマスク
    • 2024年 12月 19日

    写真のゴテゴテ感がたまらん
    優秀な兵器に違いない(偏見

    9
    • P-tra
    • 2024年 12月 19日

    戦闘ヘリオワコンだと思ってるから汎用ヘリとパトリとF-16のほうが欲しいっていうのは納得だが、ウクライナは欲しいんだね。
    ウクライナが攻勢に出てた時期に露のカモフが車両を引き撃ちして戦果挙げてたやつをやりたいのかな。
    このやり方じゃ防空ミサイルが前進してくるタイムラグ内でしか通用しないとは思うけど。

    3
      • kasugi
      • 2024年 12月 20日

      ニュースで目立たない間も稼働してないわけじゃなかったってことですよ

      攻撃ヘリをオワコン扱いしてるの陸自だけですからね

      10
        • P-tra
        • 2024年 12月 20日

        オワコンっていうのはさ役に立たないっていうか代替できるでしょ?って思ってるんだよね。
        ドローンでやらない理由ある?って話で。

        3
          • kasugi
          • 2024年 12月 20日

          「ドローン」と何の前提もなしに言われても「なんか飛んでるやつ」ぐらいの情報量しかこっちは受け取れませんよ

          運動性能も低空飛行性能も乏しい大型ドローンでは、長射程の大型SAMにカタログスペックを発揮されてしまい「防空ミサイルが前進してくるタイムラグ」が著しく短くなります
          地形追随飛行が可能な攻撃ヘリであればこのタイムラグを「敵の低空レーダー・短射程ミサイル部隊が十分な密度で展開する」まで延長できます
          味方の前線が十全に機能していればそのタイムラグは事実上無限大です

          7
            • P-tra
            • 2024年 12月 20日

            別にバイラクタルの話をしたつもりはなかった。
            不正確な言い方だったのは申し訳ない。
            でもヘリの地形追随飛行がそんなに強力だとは思えない。実際食われてるし、地対空ミサイルに対して低空侵入が重要ならできるだけ小RCSな方がいいはずで距離に合わせてGroup1、2を運用する方が適切じゃないのか?
            仮に短SAMを展開されても消耗可能な小型ドローンなら任務続行できる、有人戦闘ヘリはその時に何をするの?(味方が何とかするまで待ってるのか?それはコストに見合うのか?)

            1
              • kasugi
              • 2024年 12月 20日

              「実際食われてる」という印象は、食ってるシーンばかりがネットに上がってることで生じる確証性バイアスです
              特に攻撃ヘリは低空飛行する都合、いざ撃墜できたとなるとそれが至近距離での出来事になるので「映える」映像になりがちですね

              妥当な分析を得るには「この動画はどういう前提で撮影されたのだろう?」というところまで想像しなければなりません
              例えば上述した動画の多くは、緒戦において斬首作戦的な短期決戦を志していたロシアが、攻撃ヘリにハイリスクな深部進出を繰り返させていた頃に撮影されたものです
              ロシアヘリが自らウクライナ勢力圏に深々と攻め込んできたのですから、短SAMを展開し撃墜するのも難しくなかったというわけです

              しかしながらそうした状況でない場合、短SAMを展開するのは困難を極めます
              自衛能力を欠く短SAMは前線まで進出できませんので、近接支援に徹する攻撃ヘリを迎撃することは困難ですし、配備の空隙を疲れた場合に穴を埋めることも困難です

              またGroup-1のドローンは手榴弾一個程度、Group-2のドローンでも軽迫撃砲ぐらいの火力投射が関の山ですので攻撃ヘリの代替候補としては力不足です
              Group-2のドローンは単価もさることながら運用になかなか手間がかかるので、その文脈で「消耗可能」と言えるかは疑問符がつきますし

              9
        • ネコ歩き
        • 2024年 12月 20日

        >攻撃ヘリをオワコン扱いしてるの陸自だけ
        陸自はAHをオワコン扱いしてるわけじゃないですよ。
        南西諸島地域への侵攻蓋然性は高いが本土侵攻の蓋然性は極めて低い、というのが日本政府による東西冷戦終結から続く情勢判断です。対外安全保障政策を大きく誤らない前提でですが、それは今後も継続されるでしょう。
        縦深があり入り組んだ山岳地形がかなりを占める本土はAHが活躍できる局面が多い地勢環境なのですが、先に書いた通り本土侵攻の蓋然性は極めて低い。一方の南西諸島地域ではどうかといえば、従来型AHがその特性を遺憾なく発揮できる戦場環境ではなく、戦果に対し多くの損耗が予想される、というのが大方の意見ではないでしょうか。
        つまり、想定戦場に於いては従来型AHでは期待できる抑止効果が低く、調達・維持・訓練等に要する馬鹿にできない予算規模に見合わない。然しながらAHを代替し得る経空対地支援装備は依然として必要なので、損耗許容度の高い「多用途/攻撃用無人機」及び「小型攻撃用無人機」の早期装備化(及び今後の発展)にシフトする決断をした、ということかと。

        10
          • ネコ歩き
          • 2024年 12月 20日

          (訂正)
          南西諸島地域への侵攻を特に警戒する情勢分析はここ十数年来ですね。

          1
      • 匿名希望係
      • 2024年 12月 20日

      F-16同様にデータリンクが削られてるだろうから
      ウクライナ軍へつながるデータリンク端末の増設はいりそう。

      1
    • PKF
    • 2024年 12月 19日

    海自用に日本が安保同盟価格で買っちゃえ

    そんな予算はない…

    2
    • cosine
    • 2024年 12月 20日

    金が際限無くあるならば、何だって欲しいし買ったり造ったりするかと。
    国によって優先度は異なるのであり、ある兵器種をオワコン扱いするのは、買えないことを「煩い方々」に言い訳するための口実でしょうね。

    6
    • daishi
    • 2024年 12月 20日

    ここまで数奇な道のりだと最後はマッコイじいさんが買って中東にでも送りそうですが、中東もキナ臭いですからねぇ

    1
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