欧州関連

印ミラージュ2000改修契約の疑惑がフランスで浮上、汚職防止法をバイパスするスキーム

英メディアのThe Daily Telegraphは9日、インド空軍との契約を確保するため仏タレスに雇われたインド人防衛コンサルタントが「手数料が支払われていない」とフランスで訴訟を起こしており、マクロン大統領に大きな政治的ダメージをもたらすかもしれないと報じられている。

参考:Corruption claims threaten Emmanuel Macron’s fighter jet deal

汚職防止法を意図的にバイパスする金融スキームの存在を黙認していた場合、4月に大統領選挙を控えるマクロン大統領にとって大きな逆風になるかもしれない

Telegraphの説明よるとフランス政府はインド空軍のミラージュ2000アップグレード契約(24億ユーロ)を獲得するため複数の仏防衛産業企業で構成されたコンソーシアムを結成、これに参加したタレスはシン国防相を含むインド政府高官との面会をセッティングするためインド人防衛コンサルタントのサンジャイ・バンダリ氏を2,000万ユーロの報酬で雇用したが、実際には900万ユーロしか支払われなかったためフランスの裁判所に「タレスは不足分の報酬を支払え」と訴訟を起こしているのだ。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Daniel Asselta 仏空軍のミラージュ2000

問題は国際的な武器取引においてバンダリ氏のようなコンサルタントを雇用し報酬を支払うのはフランスの汚職防止法に抵触するという点で、タレス側は「汚職防止法を遵守してバンダリ氏を雇用していない」と主張しているもののバンダリ氏は裁判所に提出した訴状の中でタレスの汚職防止法回避に関する手法を具体的に言及しているため非常に興味深い。

バンダリ氏の明かした内容を要約すると以下の通りになる。

  • 汚職防止法を回避して極秘のロビー活動資金を捻出する金融スキームをタレス・インドで社長を務めていたフランソワ・デュポン氏から聞いた
  • この手法を開発して管理しているのはThales Middle East&Africaと呼ばれるタレスの特別子会社
  • 24億ユーロの契約にはインドに利益をもたらす技術移転=オフセットが設定されていてタレスが受け取る資金の一部はこれを実行するためもの
  • タレスはオフセットを実行するため印企業2社とドバイのUHY Saxena Consultingと呼ばれる企業に仕事を発注したことになっている
  • このドバイ企業はバンダリ氏に報酬を支払う以外の活動をなにもしてない。

つまりタレスは汚職防止法を回避して極秘のロビー活動資金を捻出するため「インド向けのオフセット発注」という名目でドバイ企業に資金を移転、この会社の口座からロビー活動に従事したバンダリ氏に報酬を支払っていたという内容で、タレス側はモディ首相を支持するインド人民党からの政治的迫害で英国に亡命したバンダリ氏(現在身柄引き渡しで裁判中)に対する支払いを900万ユーロで停止したと主張している。

出典:Remi Jouan / CC BY 4.0

バンダリ氏に近い関係者は「インド国内の政治的状況を考慮したタレスは契約締結に貢献したバンダリ氏との関係を破棄してしまったが、これはダビデとゴリアテの戦いで最終的に誰が勝利するのか分かってる」と述べているとTelegraphは伝えており、ラファール売却に関する汚職も取り沙汰されるマクロン大統領にとって非常に都合が悪い話だ。

もし汚職防止法を意図的にバイパスするため上記の手法が用いられフランス政府も黙認していた場合、4月に大統領選挙を控えるマクロン大統領にとって大きな逆風になることが予想される。

関連記事:マクロン大統領も関与? 仏検察はラファール売却に絡む汚職調査のため調査官を任命

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain 仏空軍のミラージュ2000C

モロッコ海軍の海上哨戒機を巡りP-8A、SC-130J、ATR 72MPA、C295MPAが競合前のページ

印ヒンドスタン航空機、テジャスMK.1Aの製造は順調でMK.2も2024年に空を飛ぶ次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    和平協定の行方、アルメニアがアゼルバイジャンとの首脳会談を発表

    アルメニアとアゼルバイジャンは10月5日に首脳会談を行う予定で、アルメ…

  2. 欧州関連

    戦争を回避するには戦争の準備が必要、ポーランドが軍を14万人→30万人以上に増強すると発表

    ポーランドは26日、共産主義時代の1967年に制定された時代遅れの国防…

  3. 欧州関連

    ウォレス英国防相、トルコ製UAV「バイラクタルTB2」が証明した実力を称賛

    英国のベン・ウォレス国防大臣が「トルコは自らの技術革新によってバイラク…

  4. 欧州関連

    ポーランドがウクライナへのレオパルト2提供を発表、但しドイツ承認がネック

    今月20日にNATO加盟国を含む42ヶ国がウクライナへの武器支援を協議…

  5. 欧州関連

    空母の守りは? 英国、統合電気推進を採用した45型駆逐艦の早期退役を計画

    英国防省は最近、64億6,000万ポンド(約9,100億円)を投じて調…

  6. 欧州関連

    ポーランドが装備調達に15兆円を投資、ロシアの野蛮な侵略に対する正しい反応

    ブラスザック国防相はポーランドの安全を保証するため「2035年までに5…

コメント

    • 戦略眼
    • 2022年 1月 10日

    この手の汚さに日本は慣れていないからな。

    24
    • 無無
    • 2022年 1月 10日

    いやフランスから叩かれたオリンピック誘致・・・(笑)
    どの国にもどんくさい連中はいる、ここでは防衛関連だということ

    21
    • ブルーピーコック
    • 2022年 1月 10日

    突風(ラファール)で契約が蜃気楼(ミラージュ)みたいに消えてしまう・・・はい、覚えた単語を使いたかっただけです

    先日出た戦車の契約にも影響しそうだな

    15
    • 伝説のハムスター☆☆☆
    • 2022年 1月 10日

    袖の下の賄賂なんて価格に含めればいいんですよbyタレス

    2
    • Yanti
    • 2022年 1月 10日

    日本にもね、明確に禁止する法律があるのですよ。
    渡した人も、会社も罰せられます。

    経済産業省
    リンク

    > 国際商取引において自分らの利益を得たり、維持するために、
    > 外国公務員に対して直接または第三者を通して、金銭等を
    > 渡したり申し出たりすると、犯罪となります。

    6
    • らんらんるー
    • 2022年 1月 10日

    叩けるときに叩くのは大事、なのかな?

    • バーナーキング
    • 2022年 1月 10日

    > 2021年に最も新規受注を獲得したのは、、、
    1位:ラファールF3R×128機受注! 累計契約額220億ドル以上!(てっててー♪

    の翌日にこのニュースとはなんともスパイシーだなぁ…

    6
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP