欧州関連

NATO加盟国を目指すスウェーデン、トルコ要求の身柄引き渡しに同意

NATO加盟国を目指すスウェーデンは「トルコが要求した人物の身柄引き渡しに同意した」と報じられており、トルコの要求に屈するべきではないと考えるフィンランドの対応に注目が集まる。

参考:Sweden agrees to extradite man to Turkey in wake of NATO deal

トルコは「批准手続きに時間をかける」という政治的選択肢を持っているため、要求に応じなければフィンランドのNATO加盟は半永久的に阻止されるだろう

トルコ、フィンランド、スウェーデンの首脳は6月末にマドリードで協議を行い、フィンランドとスウェーデンはクルディスタン労働者党(PKK)への支援禁止、国内でPKKが資金調達や組織の拡張活動を行うのを禁止、PKKを含むテロ組織やネットワークの活動阻止、トルコに対する禁輸措置を解除することに同意、逆にトルコは両国のNATO加盟を支持することで合意した。

出典:NATO

この合意を受けて全NATO加盟国はフィンランドとスウェーデンの加入を了承、加盟国の議会で批准手続きが進められているが、3ヶ国の合意文書には「トルコが指定したテロ容疑者の強制送還または引き渡し要求に迅速かつ徹底的に対処する」という文言が盛り込まれており、トルコのボスダグ法務相は早速「以前から両国に要請していたクルディスタン労働者党(PKK)とフェトフッラー・ギュレン氏が率いるグループ(FETÖ)のメンバー33人の引き渡し実行を求める」と要求。

フィンランドメディアは「PKK関係者の引き渡しについては合意文書に含まれておらず、我々は従来の立場を維持している。3ヶ国が署名した合意文書には解釈の余地が残さているので我々の観点からは何も変わらないが、これをどのように解釈するかはトルコの問題で合意内容を政治的に利用して解釈に異議を唱えることも可能だ」と強気に出いていたが、スウェーデンはトルコが要求していた人物の引き渡しに同意したと報じられている。

出典:Kurdishstruggle / CC BY 2.0

フィンランドでは「NATO加盟のためトルコの要求に屈するべきではない」という意見が広く支持(世論調査の結果では約70%)されており、スウェーデンに追従してフィンランドもトルコの要求に応じるかは未知数だが、トルコは「批准手続きに時間をかける」という政治的選択肢を持っているため要求に応じなければフィンランドのNATO加盟は半永久的に阻止されるだろう。

関連記事:トルコ、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟支持を確約
関連記事:トルコ、フィンランドやスウェーデンにテロ容疑者33人の引き渡しを要請

 

※アイキャッチ画像の出典:SwedishPM

25ヶ国がロシアと戦うウクライナへの戦費提供で合意、日本も戦費を負担前のページ

最新の世論調査、ウクライナ人の97%が「ロシアとの戦争に勝つ」と回答次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    北朝鮮の猛反発も影響? 空母クイーン・エリザベスの韓国訪問中止はデルタ型の感染拡大が原因

    韓国国内の新型コロナウイルス感染状況や北朝鮮の反発を理由に「英海軍は空…

  2. 欧州関連

    英海軍もハープーンの後継にNaval Strike Missile導入を決定

    米海軍に次ぐネームバリューをもつ英海軍もKongsberg製のNava…

  3. 欧州関連

    多くの命を救った英雄? アフガニスタンを離れる最終便に駆け込んだスロバキア軍兵士

    アフガニスタンからの撤退期限を迎えた先月31日、スロバキア軍特殊部隊の…

  4. 欧州関連

    ギリシャ、2025年までに退役する英空軍のタイフーン・トランシェ1取得を検討

    英空軍にはアップグレード計画から漏れたタイフーン・トランシェ1が×30…

  5. 欧州関連

    英国、予算不足で「クイーン・エリザベス級空母」を米海軍にリース?

    国防大臣は予算不足を解消するため、海軍の空母クイーン・エリザベスか空母…

コメント

    • さめ
    • 2022年 8月 12日

    仕方ないよね、て気持ちと同時にやっちまったな
    とも

    10
      • 名無し
      • 2022年 8月 12日

      自国を防衛するために、どれだけ犠牲を払う覚悟があるのでしょうか。国内政治や国民感情という形での代金支払いで。

      5
      • ミリオタの猫(ロシア軍は強い…と思っていた時期が私にもありました)
      • 2022年 8月 12日

      と言うか、PKKは米国やEUもテロ組織と認めている以上、この問題はトルコの方に分が有りましたからね。
      個人的には仕方無いと言うよりも当然の結末だと思います。
      フィンランドは未だゴネているみたいですが、時間の問題でしょう(国民もNATOに加盟出来ないと分かれば意見を翻すはず)。

      54
    • HY
    • 2022年 8月 12日

     もし仮にフィンランドが突っ張ってNATO加盟が長丁場になった場合、ウクライナ征服をひと段落させたロシアに攻め込まれる可能性が出てくるな。

    6
      • くらうん
      • 2022年 8月 12日

      北欧最強の戦闘能力を持つフィンランドに、旧ソ連の遺産を食いつぶしたロシアが何かできるとは思わないですがね。
      まああの国の意思決定に「現実的な見通し」が含まれていないのは今回はっきりしてしまったからやらかすかもしれないが。

      3
    • 無無
    • 2022年 8月 12日

    トルコとていつまでも今の体制ではないし、未来のクルドもどうなるかは判らないよ
    今はこうするしかなくても、このフィンランドの苦悩こそ美徳とされる未来もあり得る
    敗けるときは敗けとけ

    2
      • 南蛮一の知恵者朶思大王
      • 2022年 8月 12日

      綺麗事を言っても始まらないが、自国の利益のために政治難民を引き渡すのが、NATOが守るべき「自由主義」だろうか。
      でもトルコが約束を守るかどうかはエルドアン大統領の胸先三寸なので、ロシアの脅威が切実なフィンランドの方が見識と気骨を(今のところは)示したというべき。
      軍事同盟のパートナーとして、スウェーデンとフィンランドのどちらが信頼に足るかは明らか。

      4
    • 2022年 8月 12日

    国、国土のない民族は悲惨だよな。
    この手のクルド人の武装組織は周辺各国の思惑で、各国が金を出して運営している。
    ウクライナ戦の当初には馬鹿が「降伏した方がいい」とか言っていたが国がなくなればこうなるわな。
    憲法改正しろという前に日本人も”国”とは何か、”国土”とは何か、”国民”とはということをじっくり考えないといけない時期が来ているのでは?
    九条教徒と同じぐらい害悪だったたあの世に行った誰かさんとその一派みたいに、勇ましいことを言うっているけど実態が伴わなけれま全く意味がない。

    27
      • A
      • 2022年 8月 12日

       国から逃げて、プーチンが死んだら戻れば良いとか言ってる某元知事・元市長・元弁護士もいましたね・・・。

       クルドの悲哀だってそうですし、チベットもウイグルも、習近平が死ぬまで待てば独立できるんですかね・・?

       イスラエルの過剰なほどの国土防衛意識も、2000年にわたる亡国がその端緒でしょうし・・・。

       この人物が我が物顔でテレビに出ている日本の言論事情ってのはどうなってるんだと思いますね・・。

      20
    • スターリン
    • 2022年 8月 12日

    約束は守らないとだめだよ

    2
    • 2022年 8月 12日

    我が身>他人の人権

    しかし根性ねえなあ

    1
    • general
    • 2022年 8月 12日

    ウイグル、クルド、ロシア国内の先住民族…
    強権国家の版図に含まれてしまった少数民族の苦難は計り知れないな。彼らに幸あらんことを願うほかない。

    6
    • 2022年 8月 12日

    クルド人は数が多すぎてなあ…最終的解決策は「居住地に同化してよ」くらいしか思い当たらない。

    2
    • 名無し2
    • 2022年 8月 12日

    F-35を65機買ったフィンランドならNATO加盟しなくてもバルチック艦隊全滅させてレニングラード包囲程度は余裕だろうな

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP