欧州関連

スウェーデン、グリペンの後継機開発のため英国に次期戦闘機研究所を設立

スウェーデン防衛産業企業大手のサーブは、今週中にも自国の次期戦闘機開発に関連した技術開発のため英国に5,000万ポンド(約68億円)の投資を行うことを発表すると報じられている。

参考:UK’s Tempest air defence project set for £50m Saab investment

スウェーデンが開発する次世代戦闘機はテンペストベースの独自仕様機でほぼ確定か

英国が主導する第6世代戦闘機「テンペスト」開発に合流したスウェーデン防衛産業企業大手のサーブは、今週中にも自国の次期戦闘機開発に関連した技術開発のため英国に5,000万ポンド(約68億円)の投資を行うことを発表すると報じられており、この流れはスウェーデン国防省は7月に明らかにした「次世代戦闘機開発の準備」に沿った決定だとみられる。

スウェーデンのフルトクヴィスト国防大臣は6月、NATOのミッションフォーラムで戦闘機グリペンの後継機と目される次世代戦闘機の開発を開始すると明らかにし、スウェーデン国防省も「次世代戦闘機開発の準備が2021年~2025年までに開始され、この準備には1ヶ国まはた複数の国際パートナーとの共同研究、技術開発、デモンストレーター活動が含まれる」と発表したためスウェーデンの動向に注目が集まっていた。

引用:BAE Systems 第6世代戦闘機「テンペスト」

要するにスウェーデンがグリペンの後継機に第6世代戦闘機「テンペスト」をそのまま採用するのか、テンペスト開発に参加して得た技術を元に独自開発するのかという点に注目が集まっていた訳だが、サーブはテンペスト開発プログラムにおける英国との協力関係を強化するため、5,000万ポンド(※)を投資して次期戦闘機研究所を「チーム・テンペスト」を率いるBAEシステムズの拠点(イングランド北西部ランカシャー州)近くに設立することを今週中にも発表する予定で、サーブはテンペスト開発に参加して得た技術や経験を元にグリペンEのアップグレード開発や次期戦闘機の開発準備を進める予定らしい。

※補足:5,000万ポンドは初期投資額であり、今後も必要に応じて追加投資が行われる見込み

そのためスウェーデンの次期戦闘機は「テンペストベースの独自仕様機=小型で低コストな単発機」でほぼ間違いないと見られ、あとは次期戦闘機の設計にステルスをどこまで取り入れてくるかが注目点だ。

出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

形状制御技術を用いてレーダー観測に対する低観測性(レーダーに映りにくくする)を追究した「ステルス」を追求すればするほど製造コストや維持コストが高騰するため、機体形状のステルスはほどほどにしてデジタルステルス(※)で補う方向で手堅くまとめてくるかもしれない。

補足:イスラエルは先進的なF-35のステルスについて「10年程度でレーダー技術に追いつかれる」と予測しており、敵のレーダーに対して自機の位置や速度の誤認させる信号を発信して正確な情報が得られにくくするデジタルステルス技術の開発に注力しており、イスラエルは独自に改造を施したF-35Iに開発した新型の電子妨害装置を搭載して優位性を確保しようとしている。
関連記事:狙いはS-400の情報収集? ロシアが警戒するイスラエルのF-35特殊試験機

とにかくスウェーデンの戦闘機開発は独特な要求に基づいて開発されるため、他の第6世代戦闘機とは一風変わったものになることを期待している。

 

追記:サーブが英国に次期戦闘機研究所を設立するため5,000万ポンド(約68億円)の投資を正式に発表、さらに英国はイングランドに拠点を置く防衛産業企業GKN、マーチンベーカー、キネティックと国際的な防衛産業企業ボンバルディア(カナダ)、GEアビエーション(米国)、コリンズエアロスペース(米国)、タレス(フランス)をチームテンペストに加えることも発表した。

 

※アイキャッチ画像の出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    クルマで言う所の派生車種みたいな展開にするんだろう
    アメリカのデジタルセンチュリーも同じようなやり方なんじゃないかな?
    一時期、ヨーロッパは同じボディ設計、エンジンのクルマだらけだったし

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    スウェーデンが欲しい戦闘機は獲得と維持コストが低いコストパフォーマンスに優れた機体である事は間違いない。

    徹底的にステルス性能を追求して1時間当たりの飛行コストが50~60万円程度と言われているグリペンに対して飛行コストが何倍も上昇するのは望んでいないはず。

    ただ、低コストのグリペンも海外セールスが大成功とは言い難いから新戦闘機も海外セールスは苦戦すると思う。

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    じゃあテンペストに参加してるのはイギリスとイタリアだけ?
    2035年配備予定だからもう参加国待ってる時間ないしこのまま開発開始か

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    本邦のP-1/C-2開発的なコンポーネント単位での共通化ですかね? 同じ戦闘機ですから、コンポーネント単位の共通点はより多そうですけども
    P306/P305だと、単発仕様も双発仕様も両方有りましたけどね
    そもそもグリペンって元から国際共同開発で、半分以上BAEに作ってもらった様な機体だと認識していますが

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      テンペストの主翼の幅を切り詰め胴体を短くしてエンジンを一基ににすることで低コストの開発を狙ってるって、まるで個人製作のラジコン機だな。
      F-16の代替を狙っているのだろう、上手くいくといいね。
      RRのエンジンさえ手に入ればアメリカのご機嫌をうかがうことなく世界中に輸出できるようになる、下手すると本家より生産・輸出量が多くなったりして。

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    取得と維持コストを低く抑える事を念頭に開発したら完成しても第6世代戦闘機にはカテゴライズされず第5.5世代とか第5世代+とか微妙な位置付けになるかも。

    維持コスト重視でステルス性能で妥協したら第5世代戦闘機にも当たらなくなるのかな?

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    空力コンセプトを共有してほぼ相似形、同じエンジンで双発と単発を開発。
    ミラージュ2000/4000みたいですね。中国のMiG-21系でもありましたね。
    はたして上手くいくのでしょうか?

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      それを見極める為の出先研究機関でしょう?
      そんな貴方は何の「否定」専門家?

        • 匿名
        • 2020年 7月 21日

        何だこいつ…

        • 匿名
        • 2020年 7月 24日

        おいおい、何故そんなレスが出てくるんだ?
        もっと文章をよく読んでから書き込めよ?
        読解力に問題がありすぎるぞ?
        親切心からいってやるが、ホントに日本語の勉強をやり直した方が良いんじゃないか?

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    現実的なところを手堅くまとめるサーブのやり方は好感が持てます。
    身の丈以上のことはどう足掻いてもできないものはできませんから。
    どこかの半島の自称4.5世代機(一人歩きして何故か第5世代機扱い)のようなことにはならないでしょう。

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    日本もデジタルステルス開発してほしい

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      似たようなジャミング方式はもう実証済みだったように思う

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      もう基礎研究は始めてるんじゃないかな
      イタチごっこだろうけど今後のトレンドになる技術だろうから出遅れてほしくないね

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    共同開発に参加しつつ技術を利用して廉価な戦闘機を開発するって世界初の試みだから結果が気になる。

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    合理的な選択ですよ、
    スウェーデンは中立時代からも、一貫して英国とは絶対に戦争しないって方針ですから。つまりスウェーデンは中立でなく、群れないだけでずっと西側
    無意味な単独開発にこだわる軍ヲタは教養を磨きなさい

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      日本も戦闘機開発では群れないけどずっと西側だが?
      てゆうか日本の周りに西側諸国は無いからなぁ

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      スウェーデンは西側諸国以外と戦争する可能性があるから戦闘機を開発してるって事ね

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      中国様に言ってあげてください、偉大な中国も自国開発にこだわっている。
      特にロシア並みのエンジンが製造できないからロシアに首根っこを掴まれている状態、現在必死で開発中だが極限の冶金技術はなかなかパクれない。
      日本はXF9-1でお先に失礼。

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      無意味な単独開発の定義が怪しいからなぁ。
      日本語がおかしいから多分釣りか、何かなんだろうけど。

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    「無意味な単独開発」こそ教養の無い人間の言葉ですよ
    その「無意味な単独開発」でどれだけのプロジェクトが炎上したり中止になったか知りませんか?
    例を上げるなら
    空ならタイフーンとラファールの分離
    陸ならMBT-70海ならNFR-90
    「無意味な単独開発」も確かにあるでしょうが共同開発が何のリスクも無いただ一つの正解ではありません

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      今後は、中国含めて単独開発は消えるって方向性を理解しましょう
      技術面のみならず、資金協力の形で国際化が常識になるのは間違いない
      昭和の妄想にしがみつかれても笑うしかない

        • 匿名
        • 2020年 7月 21日

        貴方は共同開発に幻想を抱いていると私は言ってるのです
        どれだけ面子を集めても「船頭多くして船山に上る」が
        何度も何度も起こってるという現実を見てるから言ってるのです
        妄想は貴方の方です
        単独開発はこれからも少数ではあっても行われます

        • 匿名
        • 2020年 7月 21日

        残念ながら共同開発万能論は平成の亡霊となっております
        冷戦後の平和の配当から生まれた緊張感を欠いた公共事業でしかありませんでした

        • 匿名
        • 2020年 7月 23日

        今後どころか30年以上前から完全な単独開発なんてほぼないんですがそれは。
        30年以上前で既に国際開発が増えていたのに、今さら「今後は云々」だとか、頭の更新が50年以上前で止まっているんですかね?
        他人に「今後はデンデン」とか講釈垂れる前に、半世紀前の頭の更新でもしたらどうですか。

        ところで中国のC919やC929は、何時に完全単独開発になるんですかね?

          • 匿名
          • 2020年 7月 23日

          「完全な」単独開発、なんて話は誰もしてないでしょう。
          自国主導で自国用に仕様を定め自国で費用の大半を負担するならそれは「単独開発」と言って良い。
          それに「30年以上前で既に国際開発が増えていた」ってのは別に「今後も増えていく」根拠にはなりません。
          むしろそれらの大掛かりな国際共同開発が大難産であった事を踏まえ、今後は(例えばテンペスト計画の様な)「緩い共同開発」にシフトしていくと考えるのが自然かと思います。
          FCASがすんなり進めば潮目が変わるかもしれませんが…

      • 匿名
      • 2020年 7月 22日

      そもそもグリペン自体がほぼBAEグリペンと揶揄できるできだからな

      技術のある国に丸投げしている単独開発(w)ってのがスウェーデンとグリペンを参考にするとできるわけだよね。

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    共同開発でもこんな感じの主導はBAEに任せて使いたい技術だけ貰ってくわってのは上手いやり方だと思う
    対等な関係にしちゃうと主導権争いで揉めるからなぁ
    イギリススウェーデンは過去に学んでドイツフランスは学ばなかったと……
    船頭多くして船山に上るみたいなことわざ海外にはないのだろうか?

      • 匿名
      • 2020年 7月 22日

      求める戦闘機像が近いから共同で開発、というならともかく、まず共同ありきでマルチロールだ制空戦闘機だ防空戦闘機だ艦載機だ、の議論から始めるんじゃ話がまとまる訳がないんだよね。
      タイフーンなんてフランスが離脱して自力で開発する力と覚悟あったからまだなんとかなったものの、フランスが計画に居残って艦載機求め続けてたらどうなってた事やら。

      とはいえテンペスト計画もこれはこれで、開発協力のコストメリットは極めて限定的だよね。
      なんなら自腹開発する覚悟のあるスウェーデンはともかく、英や伊は開発費負担に耐えられるのかね。

      • 匿名
      • 2020年 7月 23日

      その分コストメリット・スケールメリットは小さい訳ですけどね。
      スウェーデンの場合はなんなら自費開発するだけの覚悟があるから問題ないんだろうけど、イタリアはどうするんだろう。
      テンペストじゃ大き過ぎる、スウェーデン版じゃ小さ過ぎる、となった時自費でイタリア版を作る覚悟はあるんだろうか。

      • 匿名
      • 2020年 7月 24日

      EU内では、艦艇の共同開発は上手くいっている例が多数存在する。
      特にここ最近は。
      なので航空機でも行けると踏んでいるのかもしれない。
      ただドイツと組むのだけはどうもなぁ……。

    • 匿名
    • 2020年 7月 21日

    凄いな
    テンペスト計画はドンドン進む
    一体どんな第6世代になるだろうか、世界を牽引する事は間違いないだろう

      • 匿名
      • 2020年 7月 21日

      最終的には西側の戦闘機が全てF-3になるだろうけど、それはそれで寂しいのでテンペストは是非実現してほしいところ

    • 匿名
    • 2020年 7月 22日

    共同開発の真の狙いは経済性のみならず、軍事面での固定したメンバーを確定することですよ
    もう戦闘機単独で戦争やれない時代なんだから。それこそF35とかは戦闘機というより、軍事衛星から地上施設まで組み込んだ防衛システムの端末でしょ?
    そういう大きな話は単独国には負担だし、いったんパートナー国を決めると相互に抜けられない状況に入りやすい、つまり安定した体制を構築できるからですよ。

    • 匿名
    • 2020年 9月 10日

    単発テンペストか

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