欧州関連

ロシア軍が攻勢をかけるバフムート周辺の戦い、状況的には非常に際どい

ウクライナ軍東部司令部はロシア軍の攻勢を認めつつ「依然としてソレダルを支配している」と主張、しかしロシア軍は市中心部に向けて前進しているのが視覚的に確認されており、バフムートの東に位置するピドロドネも失った可能性がある。

参考:В Соледаре тяжелые кровопролитные бои, но россияне не контролируют город – Череватый

バフムートの南側ではなく東側で攻勢をかけてきたロシア軍、そろそろ敵の前進を止めないと不味い状況

ウクライナ軍東部司令部は7日、ロシア軍が攻勢に出ているソレダル方面の戦いについて「血なまぐさい激しい戦闘が行われているもののロシア軍の支配下ではない。現地の詳細な状況を後日明かす」と述べたが、ソレダル中心部に向けてロシア軍は前進している。

出典:GoogleMap ソレダル方面の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

戦況マップに記述されたⒶ=48.702793, 38.067428とⒷ=48.703772, 38.069507で見つかった視覚的な証拠は「ロシア軍がソレダルの北から市内に侵入してウクライナ軍と交戦していることを示すもの」と、Ⓒ=48.691451, 38.072295で見つかった視覚的な証拠は「ソレダルの駅近くをロシア軍が支配していることを示すもの」なので、ソレダルの約半分がロシア軍の支配下にあると解釈するのが妥当だろう。

Ⓓ=48°41’39.7″N 38°03’29.5″Eで見つかった視覚的な証拠は「ソレダル市の中心部にある岩塩坑施設をロシア軍から取り戻したを示すもの」と言われているが、ここまでロシア軍が侵入していたという報告は今のところなく、一時的にロシア軍の最先端が岩塩坑施設まで到達していたのかもしれない。

出典:Twitter Telegram

さらにワグナーは「バフムートの東に位置するピドロドネを支配している」と主張、ウクライナ軍兵士がピドロドネから撤退している視覚的な証拠も確認されているため、同拠点はロシア軍の支配下に入った可能性が高い。

ここをロシア軍に抑えられるとスラビャンスクからシヴェルシクに向かうM03とT0513の接続部=パラスコヴィーフカやクラスナ・ホラが危なくなるため際どい状態だが、果たしてロシア軍の攻勢はどこまで続くのだろうか?

因みに3日頃からロシア軍の東部戦線における砲撃範囲が急増(ウクライナ軍参謀本部の発表で確認)していたが、ソレダル方面の防衛ラインが突破されたのは「ロシア軍がここに砲兵戦力の火力を集中したため」という指摘があり、これが事実なら「ウクライナ軍は単純に火力で押されている」という意味になるため興味深い傾向だ。

関連記事:ロシア軍がバフムート周辺で大きな前進を遂げる、ソレダルの防衛ラインを突破か
関連記事:ウクライナ侵攻314日目の戦況、ロシア軍がバフムート攻勢に全力を傾ける

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • おわふ
    • 2023年 1月 08日

    市街戦になると人海戦術が生きますね。
    まさに地獄の白兵戦。

    12
    • タイヤキ
    • 2023年 1月 08日

    ロシア軍の砲を集中されると、ロシア軍の火力のほうがでかくなる。人海戦術すると、要塞戦の構築や兵器の移動など特殊技能必要ない後方支援に人まわせるからはやくなるからつよいな。今年は小麦がロシアで豊作のせいで、食糧の補給だけは上手くいっているのもありますね。売る先が減ったので、補給にまわしているだけだと思いますがね。

    7
      • 今川焼き
      • 2023年 1月 08日

      もうウクライナ軍増援部隊にソルダル奪還されましたよ。

      についてひと言お願いします。

      20
        • タイヤキ
        • 2023年 1月 08日

        ソルダル完全に奪われたのがウクライナ軍が空挺部隊の増援投入してソルダルの中心街まで奪還したという話ですかね。
        ソルダルに空挺部隊投入しすぎてバクムットの入り口のオプトネとかが動員兵おとりにワグナー部隊主力にウクライナ守備兵劣勢とかなりロシア軍優勢と他のまとめには書いてあるから、ウクライナ軍のバクムットへのウクライナ軍の主力空挺部隊増援使いきってなければよいですね。

        2
          • 通りすがり
          • 2023年 1月 08日

          ソルダルが1度完全にロシア軍に奪われたって話は見たことないけど、どこ情報ですか?

          何か自論をゴリ押しするために適当なこと言ってない?

          11
            • タイヤキ
            • 2023年 1月 09日

            YouTubeの動画サイトのウクライナ戦争で防衛チャンネルとかいくつかの動画でソルダルの防衛網の陥落いくつか出ていたのであげただけです。
            そこの動画の反撃してソルダル中心部まで奪いかえした部分は詳しく調べていませんので、間違っていたらすみません。

    • 匿名です
    • 2023年 1月 08日

    西側からのウクライナ支援がランクアップしているのは、従来の支援では不十分だからでしょう。しかし3月と言われている反抗が計画通り進められるならば、バフムートでは固執せず遅滞で十分なのでは。問題は暖冬等の異常気象で、計画した時期に機動戦を行えるか不安なこと。

    7
    • 朝市
    • 2023年 1月 08日

    もうウクライナ軍増援部隊にソルダルは奪還されたって書き込んでた人が居たけど、やっぱり適当なこと言ってたんだ。

    基本的にウクライナを応援してるけど、タイヤキって人の書き込みはウクライナ擁護が極端過ぎて当てにならんな。

    31
      • 無為孫孫
      • 2023年 1月 08日

      前にも似たような指摘見たぞ

      ウクライナに不利な話を良い方向に持って行きたい気持ちは分からんでもないけど、やり過ぎるとZ脳と変わりがなくなるからな・・・

      32
    • ぱんぱーす
    • 2023年 1月 08日

    >Ⓓ=48°41’39.7″N 38°03’29.5″Eで見つかった視覚的な証拠は「ソレダル市の中心部にある岩塩坑施設をロシア軍から取り戻したを示すもの」と言われているが、ここまでロシア軍が侵入していたという報告は今のところなく、一時的にロシア軍の最先端が岩塩坑施設まで到達していたのかもしれない。

    中心部の岩塩鉱山を獲った獲られたという話を目にしましたが、確かなものでは無かったんですね。
    情報が錯綜してる時に信用できるのは視覚的に確認出来る情報だけですねホントに。
    現在のところロ軍有利のようですが、ソレダルに火力を集中したという事は他が手薄になったという事でもありますし、バフムートの戦い全体ではどうなるかまだ判りません。

    7
    • TKT
    • 2023年 1月 08日

    ロシア軍は人海戦術だとか、動員兵を肉の壁にしているだとか、砲弾不足で支援のための準備砲撃をしないで突撃させていると、すでに人数不足で、小隊や分隊で攻撃させているとか、いろいろと矛盾する表現、解釈、あるいは分析がありますが、いろいろと解釈に矛盾があるにせよ、一定の事実を踏まえた表現だと思われます。

    動員兵を肉の壁にしているというのは、単純に考えて、動員兵に交代で前哨陣地の警戒や監視をさせている、戦場慣れをさせる、近距離の斥候や、偵察をさせるということでしょう。

    準備砲撃なしで突撃させるとか、小隊や分隊の単位で攻撃させるというのは、砲弾不足とか、人数不足とかではなくて、第一次世界大戦の東部戦線の
    「ブルシロフ攻勢」
    などで行われた浸透戦術、フーチェルのシュトゥ―ストルッペン、イタリアのカポレット、西部戦線のカイザーシュラハト、フランス軍の戦闘群戦法などのような、堅固な多重陣地を突破するための偽騙戦法の一種かもしれません。

    歩兵の突撃の前には常に猛烈な準備支援砲撃がある、という守備側の先入観、警戒心の裏をかいて、準備砲撃なしで潜入突撃を行うと、前哨陣地を素通りして、一気に後方を制圧できる場合もあります。

    ソレダルの岩塩鉱山は入り口を制圧されただけかもしれませんが、地下壕陣地は砲撃には強くても、沖縄の海兵隊の
    「馬乗り戦術」
    のように、入り口を押さえられると一気に袋のネズミになってしまいます。

    戦車兵や、砲兵を一時的に歩兵として使うのも、日本軍やアメリカ海兵隊などでもあり、特にアメリカ海兵隊では
    「全てのマリーンはライフルマン」
    というような強い信条があり、常識なのです。

    ソレダルに限らず、バフムトの方も東側交差点だとか、酒造工場だとか、南側の倉庫だとかは、結局みんなロシア軍に制圧、占拠されているようで、バフムトの東側でウクライナ軍がロシア軍の敗残兵に対する掃討作戦を行っている、というのも戦場の幻想、願望だったのかもしれません。

    ロシア軍は防寒服が足りないから、寒くなると攻撃できない、というのもあるいは一部の話で全体の話では決してなかったのでしょう。

    5
      • ミリオタの猫
      • 2023年 1月 08日

      バフムート・ソレダルの攻防戦については、未だ決着が付いていない可能性が高い(実際、ウクライナ軍東部司令部もソレダル方面の戦いについて「現地の詳細な状況を後日明かす」と述べている)ので、迂闊な事は言わない方が良いと思いますよ
      昨日から他のまとめも含めた書き込みを読んで行くと、ソレダル攻防戦に関しては「ソレダルを守備していたウクライナ軍部隊が交替するタイミングでロシア軍の攻撃を受けてソレダルを奪われたが、その後増援で来たウクライナ軍第46空挺旅団がソレダルを奪回」「ソレダル方面にロシア軍が砲撃を集中して来た」との二説が存在する為、未だ確実な戦況が明らかになっていないと思います
      ですので、今回のソレダルに対するロシア軍の攻撃が準備砲撃抜きの浸透戦術だったかどうかは未だ分かりません
      第一、浸透戦術は各部隊指揮官にある程度の権限を委譲する必要が有る為、今回の戦争でそれをやっていないロシア軍が今になって作戦上の指揮権限を各部隊指揮官に委譲するのかと言う疑惑が生じます
      それと、あと一つだけ指摘するなら、米海兵隊や日本陸軍に限らずどこの軍隊でも追い詰められると戦車や火砲を失った戦車兵や砲兵を一時的に歩兵として使う事が有りますが、これは一般的に言ってその部隊の壊滅が近付いている前兆です
      そして、戦車兵や砲兵を歩兵として使っても歩兵が足りなくなった時は、後方勤務の補給・兵站部隊の将兵が歩兵となって戦います

      19
        • バーナーキング
        • 2023年 1月 08日

        ましてや「全てのマリーンはライフルマン」は当たり前ですが単なる信条だけの問題じゃなくて、十分な訓練あっての話ですからね。
        今のロシア軍兵士にそんな時間と士気と予算と装備と弾薬があるとはちょっと考え難いですね。
        ワグナー等のPMCは別として。

        10
    • twn5w
    • 2023年 1月 08日

    ソレダルの北半分をウクライナ軍が保持してるのなら、ロシア軍がソレダル全体を制圧するのにまだまだ時間は掛かりますね。
    ウクライナ軍が押し返しているとの情報もありますし、戦線はまた硬直すると思います。

    4
    • mun
    • 2023年 1月 08日

    ついにウクライナに冬将軍が訪れたようです
    最高気温も大きく0度を下回っているようですので
    機甲戦力が動き始めるかも知れません

    これについては両軍とも条件は同じですが
    戦況にどのような影響を及ぼしていくのか予測が難しい所ではあります
    泥濘によって進軍速度が落ちていた戦場では、攻め手に有利になるかも知れません
    ソルダー含めバクムット周辺もさらなる激戦になると思われますが
    ウクライナ軍が後手に回り、このまま状況が推移すると厳しいですね

    逆にウクライナ軍に有利になる戦場もあると思います
    スバトボやクレミンナではウクライナ軍の進軍速度が上がる可能性があります

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