デンマーク会計検査院は8日「約10年間の間にF-35Aはコスト上昇の兆候が見られたのに国防省が適切な対応を取らなかった」と発表し、デンマークは米国、英国、オランダ、イタリア、カナダ、オーストラリア、ノルウェーの会計検査機関とF-35購入・運用に関する情報を共有しているらしい。
参考:Beretning om udgifter til F-35-kampfly
参考:Forsvarsministeriet har regnet forkert – danske F-35-fly bliver markant dyrere
ロッキード・マーティンの初期見積もりが楽観的だった可能性は否定できないが、情報を得ながらコスト予測を更新しなかった国防省の責任が大きい
デンマークはグリーンランド問題に関連して「米国は信頼できるパートナーではない」という認識が急速に広まり、ラスムス・ヤルロフ国防委員長も2025年3月「デンマークのF-35A購入決定に関与した1人として私は後悔している」と発言して注目を集めたことがある。
I dont know if there is a kill switch in the F35’s or not. We obviously can not take your word for it.
As one of the decision makers behind Denmark’s purchase of F35’s, I regret it.
The USA can certainly disable the planes by simple stopping the supply of spare parts. They… https://t.co/rDucWMUXDz
— Rasmus Jarlov (@RasmusJarlov) March 19, 2025
“F-35にキルスイッチがあるかどうかは知らないが、これを否定するロッキード・マーティンの言葉も信じることができない。デンマークのF-35A購入決定に関与した1人として私は後悔している。米国はスペアパーツの供給を止めるだけで間違いなくF-35Aを無力化できる。彼らはロシアを強化し欧州を弱体化させたいと考えており、そのためならカナダのような平和的で忠実な同盟国に多大な損害を与えることも厭わない”
“米国はデンマークにグリーンランドを要求し、これを拒否すれば「米国製システムを使用できなくしてロシアに攻撃させる」と脅してくる状況は容易に想像できる。従って「米国製システムの購入」は安全保障上のリスクでしかない。我々は今後数年間、戦闘機、防空、大砲などの武器システムに莫大な投資を行うことになるが、その中で可能な限り米国製システムを避けなければならない。同盟国や友好国も我々と同じことを行うよう勧める”

出典:Forsvarsministeriet
デンマークは検討していた長距離防空システムに米国製のパトリオットではなく欧州製のSAMP/Tを選択したが、デンマーク国防省は2025年10月「F-35Aを16機追加調達する」「さらにCCAも複数調達する」と発表し、まだ正式な政府間契約(Letter of Offer and Acceptance=LOA)や生産契約の締結には至っていないものの、国防総省が2026年3月にロッキード・マーティンへ授与した約7.4億ドルの契約=主要部品の事前購入=Advanced Procurementにはデンマークが拠出した約3億ドルの資金が含まれているため、F-35Aの追加調達は正式契約を待たずに動き出している格好だ。
ただし、デンマーク国内では会計検査院がF-35A調達に関する報告書を8日に公開し、この中で「デンマーク議会は2017年にF-35A×27機の購入を決定した」「当時の説明では27機の購入費用、30年間の運用・維持を含む総費用を571億デンマーク・クローネ=約1.4兆円と見積もっていた」「国防省は2026年1月までの約10年間、コスト上昇の兆候が数多く見られたにもかかわらず当初見積もりを維持してきた」「国防省は会計検査院が調査に入ると見積もり額を712億クローネ=約1.7兆円に修正した」「約140億クローネの支出増は年間約5億クローネの追加支出に相当する」と指摘。

出典:Rigsrevisionen
“このコスト上昇は主にF-35Aの運⽤コスト(運用・維持に必要な要員増加に伴う人件費の上昇、国際共同プログラムに対する分担金の増加、教育や研修など関連サービスの購⼊に伴う外部サプライヤーへの支出増加)が予想を上回ったことに起因し、当初見積もりにはソフトウェアの継続的なアップデート、警備、保安、航空管制官、装備の再取得など運用に係る追加費用も発生している”
“我々の調査によればF-35JPOは2021年に運営・維持費が増加したと国防省に通知してきた。国防省は国際共同プログラムからトルコが排除されたことで「F-35の開発、⽣産、運⽤にかかる共同コストが増加する」とも認識していた。国防省は2022年にスペアパーツ等のコスト上昇を把握していた。国防省は2023年に機体価格の上昇、要員の教育・訓練に係る費用増加を把握していた。デンマークと同様に国際共同プログラムに参加している幾つかの国はF-35に関するコスト予測を更新している。例えばノルウェー、オランダ、英国の国防省は⾒積もりや⾒積もりの不確実性を毎年調整している”

出典:Flyvevåbnet
“米国の政府説明責任局(GAO)は2022年以降「F-35の大幅な費用増加」を継続的に指摘しており、2024年の報告では運用・維持費用の推計が2018年以降44%上昇したと評価している。ノルウェーの会計検査院は2023年の報告で「F-35購入決定時と比べて費用が2倍以上になると推計される」と、英国の国家監査局も「F-35に係る費用が従来の推計より約25%高くなる」と指摘している。国防省はF-35Aの購入、30年間の運用・維持を含む総費用を議会の財政委員会に毎年報告しているが、この金額にはF-35Aの購入関連費用、予備費、運用基地のインフラ整備費用などが含まれていなかった”
要するに「コスト上昇の通知や兆候を把握していたにもかかわらず、財政委員会には約10年間「総費用は当初見積もりを維持できている」と報告したのは国防省の怠慢だ」「さらに総費用に含めるべき支出を財政委員会に報告していなかったのはプログラムに対する透明性の欠如だ」という意味で、デンマーク公共放送のTV2も「国防省は計算を誤った」「デンマークのF-35Aは当初予想よりも大幅に高額になるだろう」「会計検査院は他のNATO加盟国ができることを出来ていないことに驚いている」「F-35Aの追加導入も旧見積もり基準で決定していれば追加費用が発生する」と批判、議会も正確な情報が提供されていないことに憤慨している。

出典:UK National Audit Office
今回の件でF-35Aの追加導入が白紙化されることはないものの、各国の会計検査院が発表するF-35の報告書は中々興味深く、管理人が見た範囲では選定時「F-35は競合機種よりも運用・維持コストが安価だ」という主張の大半は会計検査院の調査で「計算方法がおかしい」と突っ込まれており、ロッキード・マーティンの初期見積もりが楽観的だった可能性は否定できないが、情報を得ながらコスト予測を更新しなかった国防省の責任が大きく「F-35プログラム全体で運用・維持コストの見積もり甘さ」が複数の参加国で繰り返し指摘されているパターンに合致する。
ちなみにデンマークの会計検査院は今回の報告書の中で「我々は米国、英国、オランダ、イタリア、カナダ、オーストラリア、ノルウェーの会計検査機関と国際的な協力関係にあり、特にF-35購入および運用に関する情報を共有している」「このグループは年1回会合を開き各国の調査結果や知見を交換している」と明かしている。
関連記事:英会計検査院、F-35Bの稼働率は目標の約半分しかなく期待外れ
関連記事:カナダ会計検査院、F-35A導入コストが大幅に増加していると報告
関連記事:デンマーク国防省がF-35A追加調達とCCA取得を発表、投資額は42億ドル
関連記事:デンマークがSAMP/Tを選択、中長距離防空システムに総額1.3兆円を投資
関連記事:欧州で防空分野への投資が急増、デンマークも年内に長距離防空システムを選択
関連記事:デンマークが防空システムを再取得、IRIS-T、VL-MICA、NASAMS導入を発表
関連記事:デンマークがF-35A導入を後悔、米国製システムは安全保障上のリスクでしかない
※アイキャッチ画像の出典:Flyvevåbnet





















ステルス性維持もそうですが、それよりもソフトウェアのアップデートとエンジンメンテナンスにお金がかかりすぎている感じでしょうか。
日本もかなりの機数を維持していかなくてはならないので、頭が痛いですね。
いうてもF-35自体のソフトウェア問題もあるにしろコロナによるサプライヤー再編やら戦争による全体的なインフレも理由だから他の機体でも多かれ少なかれコスト増はしてるでしょうし……
でも購入して運用してるのは米豪を除けば開発非参加国ばっかりというね。
F-35の理想と現実が剥離した事は否めないけど、それはそれとしてトランプやインフレを理由に導入できない理由探しばっかりしているようにも感じる。
「米国は信頼できるパートナーではない」のなら、グリーンランドにもっと増派してもろて。元が100人から増えたらしいが、生半可な人数じゃ足りないでしょ。
すみません。開発国は英、伊、蘭、ノルウェー、ベルギーも納入・運用しています。データを読み間違えました。
デンマークなんかノボノルディスクの痩せ薬で
米国からとんでもない利益得てるじゃん
ここはF35買って少しはお返ししないと
我が国も空自の予算がF-35の運用コストで吹き飛んだりしないでしょうかね?
大丈夫ですかね?
コスト高で飛ばせなくなったらF2戦闘機みたいに格納庫で部品取り&共食い整備になるだけじゃない?w