トルコの外交、安全保障、軍事問題を監視する非営利団体「北欧モニター/Nordic Monitor」は3日、海外市場で圧倒的な人気を集める「バイラクタルTB2」にトルコはキルスイッチを仕込んでいる可能性があると指摘した。
参考:Turkey may have planted kill switches in exported Bayraktar armed drones
恐らく顧客国は事前説明を受けて「何からの制限」に同意することが輸出条件の一部になっていると考えるのが自然だ
トルコのバイラクタルTB2は偵察・監視任務を行うMALE(中高度を長時間飛行できる無人機を指すカテゴリー)タイプの無人航空機(UAV)だが、精密誘導兵器を運用できる能力も統合されているため米国のMQ-9と同じ無人戦闘機/攻撃機(UCAV)に分類され、MQ-9と同等の滞空能力を備えているにも関わらず1機あたりの導入コストが600万ドル(管制装置や関連費用込み)を下回るため海外市場でも圧倒的な人気を集めており、トルコ、カタール、リビア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モロッコ、ポーランド 、イラク、エチオピア、キルギス、ニジェールが最低でも343機以上導入(今後引き渡し分込み)している。
トルコ国防省調達部門のトップを務めるイスマイル・デミール氏は「トルコが輸出したUCAVが我々を攻撃することに使用できるのか?」という現地メディアの質問に笑みを浮かべながら「我々はトルコを危険に晒すような行動は取らない。トルコ軍向けと輸出向けのUCAVは仕様が異なり、海外輸出には外務省の意見も取り入れながら最終的に国防省の承認が必要となる」と説明して、トルコ製UCAVが自身に向けられる可能性を十分考慮して輸出していると示唆した。
このような武器輸出に関する配慮は米国の対外有償軍事援助でも行われており、米国製兵器購入に関する要請は国務省が審査を行い要請のあった兵器の能力や調達規模が地域の軍事バランスに影響を及ぼすかどうかを査定して「問題ない」と判断された場合にのみ議会に通知、政治的な要件をクリアすると議会が認めると武器輸出に関する承認が下りて顧客と企業間で本格的な輸出交渉が始まる仕組みなのでトルコだけが特別な仕組みで武器輸出を管理している訳ではない。
しかしトルコの外交、安全保障、軍事問題を監視する非営利団体「北欧モニター/Nordic Monitor」は3日、デミール氏の発言は専門家が「キルスイッチ(トルコにとって不都合な国や組織に輸出したUCAVが使用されるのを防ぐため遠隔操作で機能を停止させるシステムのこと)」と呼ぶ仕組みをトルコが秘密裏に採用している手がかりになると報じており中々刺激的な指摘だ。
本当にトルコが輸出しているTB2を含むUCAVに「キルスイッチ」を搭載しているのか具体的な証拠を北欧モニターは何も提示していないため噂の域を出ないが、米国の国防総省も「輸出兵器に対するエンドユーザーの制限(内容は不明)を行っており、この部分に関して如何なる交渉にも応じない」と公式に認めており、マレーシアの元首相マハティール氏(2020年に引退)は米国製戦闘機について「F/A-18Dは性能が良く搭載されているエンジンも強力だが制限が多く、同機を戦闘に使用するための機密コードが共有されていないためワシントンの同意が無い限り作戦に使用できない」と明かして注目を集めたことがある。
またマハティール氏は「米国製戦闘機と比較してロシア製戦闘機の方が導入国の判断で自由に使用できる=ロシアが輸出する兵器にも制限があるが米国が輸出する兵器に比べ制限は緩いという意味」と述べており、米国から武器の禁輸措置を課されたカンボジアのフン・セン首相も「導入国にとってメリットよりもデメリットの方が大きい米国製兵器は顧客の独立性を毀損するだけだ」と厳しく批判しているため海外市場で調達する武器には何らかの制限が課されているというのが事実(本来この部分について言及するのは契約で禁じられている可能性が高い)なのだろう。
そのため北欧モニターが指摘するような「キルスイッチ」をトルコが輸出したUCAVに仕込んでいたとしても武器輸出国の特権であり、恐らく顧客国は事前説明を受けて「何からの制限」に同意することが輸出条件の一部になっていると考えるのが自然だ。
さらに付け加えれば第三世界の国々が兵器の調達先を分散させるのは武器輸出国によって「何からの制限」が異なるため、複数の組み合わせを揃えておくことが外交政策や安全保障政策の自由を担保(究極的な自由=独立を勝ち取るには全ての防衛装備品を国産化する必要がある)することに繋がると見て良いのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:baykarsavunma
これは日本人必読の記事ですね
外国から兵器を輸入することの意味、逆に輸出することの意味は単なる経済的な損得だけでないって知って欲しい
誰かにコントロールされたり、コントロールできるんだよ
ただK2関連の記事でパワーパックがーとかネジがーとか騒ぎ出すレベルの人がいるけど、現実問題単独で純国産化は難しい。できるところは国産化すべきだけどそれこそK2みたいに最初は輸入パワーパックでもいいから戦力化して順次国産化とかね。かなり細かい部品まで最初は国外製だったけどどんどん国産部品に置き換えてるみたいだし。また生産能力にだって限りがある。無限のリソースがあるなら別だけど、制限があったとしても輸入兵器も揃えておくに越したことはない。日本の場合西側兵器に関しての制限はあってないようなものだろう。防衛戦しかしないのだから。
兵器の所有権は購入国にあるけれど、使用には販売国の許可がいるということですかね。
実際の戦闘行動に使うには、記事で言われている機密コードの入力が必要だということは、自衛隊のF-15やF-35なども同様の仕組みがあるのでしょうか。
どのような制限なのか知りたいところです。
ソ連はイデオロギーにこだわって負けたけど今度はアメリカが負けそうだよな
中国やロシアは制約が少ないしアメリカの制裁法案がなかったら飛ぶように売れそう
そういう機能をこっそり付けるのはしょーがないけど
それをわざわざ仄めかすのは流石にどうかと思う
「装備の詳しい性能についてはお答え出来ません」で良かったじゃん
嫌なら買うなったことですね。
それを呑んで導入する程魅力的なんだなぁ
F-3にアメがいっちょ噛みしてくるのもこういうことよね
中露の兵器の方が自由度高いだろうけども、アメリカ製兵器と似たような機能は付いていると思う
むしろ、ないほうがおかしい
最近の中露なら機能停止と言わず自爆スイッチをつけててもおかしくないと思ってしまう
韓国がF-35Bを空母に載せても日本と戦えない。
どちらも一部の頭おかしい人たちの脳内を除けばありえないことだけど、日本から韓国、韓国から日本への攻撃には基本的に何らかの制限があるのなら引っかかるだろうけど…機密コードなるものがあるとして、スクランブルとかはどういう対応なんだろうか?いちいち聞いてるのだろうか。
鉄人28号にはついていませんでしたな