英国のルーク・ポラード国防即応・産業担当相は質問に応える形で「F-35B部隊の主要任務は攻撃的・防御的対空作戦、敵防空網制圧・破壊、航空阻止作戦、近接航空支援、戦術偵察・電子戦、戦略攻撃の戦術任務だ」と言及したが、現状では近接航空支援、偵察、空対空戦闘にしか対応してない。
参考:House of Commons Written Questions and Answers Daily Report Friday, 12 June 2026
参考:Britain’s F-35: seven roles, not all within reach
現行のF-35 Block3FをBlock4に対応させるにはTechnology Refresh3への物理的な交換とソフトウェアのアップグレードが必要
ルーク・ポラード国防即応・産業担当相は保守党のベン・オベセ=ジェクティ議員から「ライトニング部隊の主要任務7つとは何か?」と質問され「英国は多用途戦闘機をNATOの空軍ドクトリン、すなわち連合空宇宙作戦ドクトリン=Allied Joint Doctrine for Air and Space Operations, AJP-3.3に準拠させている」「この枠組みにおいて航空戦力の主要任務は攻撃的対空作戦、防御的対空作戦、敵防空網の制圧と破壊、航空阻止作戦、近接航空支援、戦術偵察および電子戦、戦略攻撃の戦術任務に分類される」と回答した。

出典:Royal Navy
この件について英ディフェンスメディアのUK Defence Journalは13日「F-35Bの主要任務7つが全て実行可能とは限らない。大臣の回答は現在のF-35Bが何をできるのかではなくF-35B部隊を編成した際のドクトリンであり、現在の能力と編成時に期待された能力の間のギャップこそF-35Bの実態を浮き彫りにする」と報じており、これは英国が運用するF-35Bの問題というよりF-35全体の問題だ。
“F-35は世界で最も有能な戦闘機の一つとして評価されており、F-35プログラムを最も厳しく検証してきた機関でさえその点を認めている。政府の歳出監視機関である国家監査院も2025年7月の報告書の中で「技術的に最先端の多用途ステルス戦闘機」と位置づけた。公共会計委員会も2025年10月末のフォローアップ評価で一連の欠点を指摘する前にF-35の技術的成果を称賛した。そしてF-35の欠点にほぼ共通するのは機体そのものの欠陥ではなく、搭載する兵器やソフトウェアに関するものである点だ。そしてこれらの統合作業の多くは英国主導ではなく、米国主導のF-35 Joint Program Officeが管理しているという現実がある”

出典:NATO Allied Air Command
“英軍のF-35は現在配備されているAMRAAMとASRAAMを使用して敵機と交戦可能であり、ペイブウェイIVを用いて飛行場などの地上目標を攻撃することができる。ライトニング部隊のパフォーマンスを一変させると期待されているのが、AMRAAMよりもはるかに遠距離から敵機を撃墜するよう設計された欧州製のミーティアだが、その統合は度々延期されており、現在では2030年代初頭まで完了しないと見込まれている。この遅延はサプライヤーのパフォーマンスの低さ、納入を優先しなかった商業的取り決め、そして広範な国際プログラムの中でのミーティア統合の優先順位の低さに起因している”
“最も明白な能力ギャップは敵陣の奥深くにある地上目標の攻撃や、従来型の戦略攻撃と見なされる任務の大部分において現れている。国家監査院の調査によると現在のF-35にはスタンドオフ兵器、すなわち厳重に防御された目標に接近することなく安全な距離から発射できるミサイルが欠如している。F-35が依存しているペイブウェイIVにはその任務を効果的に遂行するための射程がなく、そのためパイロットはステルス機が本来避けるべき防空網そのものに接近せざるを得なくなっていると指摘している。この問題に対する英国の解決策=MBDA製巡航ミサイルのSPEAR 3導入も2030年代初頭へとずれ込んでいる”

出典:Photo by Dane Wiedmann
“数年前にストーム・シャドウをF-35に搭載しないという決定が下されたため、現在のところF-35向けに計画されている長距離攻撃兵器も存在しない。国防省は2026年5月にこのギャップを一時的に埋めるためのスタンドオフ能力として米国製の精密誘導兵器=GBU-53/B StormBreaker(SDBII)をFMS契約で購入することを承認した。敵のレーダーや地対空ミサイルシステムを無力化・破壊する任務(SEAD/DEAD)はセンサーを満載したステルス機に適した任務で、F-35は危険な空域で生き残り、他の航空機が攻撃するための目標の発見・識別でも任務に貢献できるものの、海軍はSEAD/DEADを単独で行うための専用兵器を持っていない”
“有力な候補は米国製の対レーダーミサイル=AGM-88G AARGM-ERだが、ソフトウェアのアップデートが遅れているためSEAD/DEAD能力の獲得は暫く先になりそうだ。これらの能力ギャップにほぼ共通するのはBlock4と呼ばれる大規模なソフトウェアのアップグレードだ。これはほぼすべての新兵器が使用承認を得る前に通過しなければならないゲートウェイとして機能しており、この作業のための長い待機列のかなり後方に英国は位置している。程度の差はあってもF-35を運用する他の国々とこのフラストレーションを共有している”

出典:Royal Air Force
“即応性に関する広範な問題の状況は「憂慮すべき」というより「複雑な状況」と表現するのが最も適切である。国防省は当初計画より約2年遅れの2025年末までに完全作戦能力(FOC)の宣言を目指していたが、国家監査院は「スタンドオフ兵器の欠如、ステルス性能を確認する国内施設の不在、人員不足といった重大なギャップが未解決のままFOCを宣言しようとしている」「仮に宣言しても短期的にはFOCを維持できないだろう」と警告していた”
“2025年の大規模な空母展開中、F-35の稼働率は実際に向上し、飛行可能な機体の割合という目標を大まかに達成したが、国家監査院は「その稼働率を展開終了後に維持できる可能性は低い」と警告している。さらに2029年から2030年頃まで続くと予測されるパイロット不足、追加エンジニアの採用活動、ハイマスト作戦と呼ばれた長期の海上展開後に表面化した腐食問題にも注意を喚起している。そしてF-35のライフサイクルコストについても約710億ポンドと算出しており、この数字は国防省が以前に提示していた数字を大幅に上回っている”
Gearing up for #TalismanSabre@HMSPWLS leads the UK #CSG25 with F35B jets ready to fly. pic.twitter.com/WOiFRhLA2H
— UK Carrier Strike Group (@COMUKCSG) July 9, 2025
“ルーク・ポラード国防即応・産業担当相が挙げた7つの主要任務は「F-35が達成に失敗したチェックリスト」ではなく、ライトニング部隊の意図された獲得能力を表している。そしてF-35は英国を含む同盟国によってすでに実戦で使用されている。現状でもライトニング部隊は近接航空支援、偵察、空対空戦闘を確実に遂行できる。同時に長距離攻撃、敵防空網制圧、完全な電子戦、戦略攻撃の核攻撃任務に残されたギャップを埋めるために必要な作業を公に認め、その大部分に資金を提供している”
“つまり、ルーク・ポラード国防即応・産業担当相の回答に対する最も公正な解釈は「挙げたドクトリンが希望的観測に過ぎない」ということではなく、ライトニング部隊が7つの主要任務において最大限の能力を発揮できるようになるには「まだ数年の歳月と大幅に遅延しているBlock4と呼ばれるソフトウェアのアップグレードが必要だ」といったところだ”

出典:F-35 Lightning II Pax River ITF
F-35 Block3Fに統合済みの兵器は空対空ミサイル(AIM-120、AIM-9X、ASRAAM)と近接航空支援向けの精密誘導弾薬(GBU-12 PavewayII、GBU-31 JDAM、GBU-32 JDAM、GBU-39/B SDB-I、Paveway IV、PavewayIV)しかないため、現行のF-35には静止目標に対する長距離攻撃能力、対レーダーミサイルを使用した敵防空網制圧・破壊能力、海上目標を攻撃する対艦攻撃能力が欠けており、英メディア=Telegraphは「F-35Bは2030年代初頭までSPEAR 3が使用できないため、地上目標を攻撃するのに第二次世界大戦時と同じ方法、つまりランカスターの乗組員が遂行したリスクの高い任務になる」と指摘している。
F-35 Block4ではAIM-260 JATM、ミーティア、AGM-88G AARGM-ER、SiAW、GBU-53/B SDB-II、JSM、SPEAR 3、JASSM-ER、LRASMの統合が予定されているものの、シュミット中将は2024年4月「Block4で予定されている多くの能力は2030年代まで実現しないためBlock4自体を再構築する」「再構築されたBlock4は産業界が本当に提供可能なもので構成されなければならず、必須能力の提供のみに焦点を当てる」と言及。

出典:U.S. Air Force photo by Brian G. Rhodes
政府説明責任局(GAO)も2025年9月「Block4はF135の能力を強化するEngine Core Upgrade=ECUと電力・冷却システム=Power and Thermal Management System(PTMS)の改良を必要とせず、2031年までに実現可能な機能に重点を置く」「ECUとPTMS改良に依存する機能の一部は将来のアップグレードまで延期される」と言及し、Block4向けのPTMS改良の生産は2033年まで予定されていないため、Block4のダウングレード版は2031年、フル機能版は2033年以降に提供される可能性が高い。
要するにライトニング部隊が7つの主要任務において最大限の能力を発揮できるのは2030年代の話で、F-35 Block3F向けにAIM-260 JATM、ミーティア、AGM-88G AARGM-ER、SiAW、GBU-53/B SDB-II、JSM、SPEAR 3、JASSM-ER、LRASMの統合作業は予定されていないため、UK Defence Journalの「まだ数年の歳月と大幅に遅延しているBlock4と呼ばれるソフトウェアのアップグレードが必要だ」という言及をもっとシンプルにすると、現行のF-35 Block3FをBlock4に対応させるにはシステムインフラストラクチャーを刷新するTechnology Refresh3=TR3への物理的な交換とソフトウェアのアップグレードが必要になるという意味だ。

出典:Royal Air Force
TR3はLot15から量産機への組み込みが始まっているもののソフトウェアが未だに未完成で、戦闘に不可欠な機能が含まれていない暫定バージョンで動くTR3構成機はBlock3Fのソフトウェア(もしくは限定的なBlock4初期バージョン)で動いており、戦闘に不可欠な機能が含まれている完全バージョンのTR3のソフトウェアは2026年夏にテストが開始される予定なので、Block4ダウングレード版への道のりですら本当に険しいものがある。
関連記事:Block4開発遅延、航空幕僚長が現行のF-35AにJSM運用能力はないと言及
関連記事:英会計検査院、F-35Bの稼働率は目標の約半分しかなく期待外れ
関連記事:3度目の遅延、英国が要求したMeteorのF-35統合は2030年代初頭
関連記事:長距離攻撃能力が欠けるF-35、地上攻撃は第二次世界大戦時と同じ方法
関連記事:3度目の遅延、英国が要求したSPEAR-3のF-35統合は2030年代初頭
関連記事:F-35 Block4のダウングレード版は2031年、フル機能版は2033年以降
関連記事:米軍向けのF-35、秋以降に納入される全機体はレーダー未搭載
関連記事:F-35 Block4の新型レーダー実装が破綻、米軍向けはレーダー未搭載で納入か
関連記事:F-35 Block4のダウングレードが確定、2031年までに実現可能な機能のみ
関連記事:F-35 Block4の新型レーダー開発が遅延、Lot17からの組込みは絶望的
関連記事:F-35向けの次世代レーダー、ノースロップ・グラマンがAPG-85を開発中だと発表
関連記事:3度目の遅延、英国が要求したSPEAR-3のF-35統合は2030年代初頭
関連記事:ノルウェーがJSMを初取得、問題はF-35Aが運用能力を備えているかどうか
関連記事:戦闘準備が整ったTR3構成機の完成時期は? 2026年にずれ込む可能性大
関連記事:国防総省の現実的な決定、1年間の納入停止を経てTR3構成機を受け入れる
関連記事:F-35量産機の納入停止問題、2024年7月の引き渡しにはリスクがある
関連記事:ベルギーのF-16提供はF-35A取得と連動、TR3構成機の問題が影響する可能性
関連記事:ロッキード・マーティン、当面TR3構成機は訓練飛行にしか使用できない
関連記事:F-35Block4の能力追加を縮小、TR3構成機は完全な戦闘能力なしで引き渡し
関連記事:F-35のTech Refresh3問題、国防総省は149機分のアップグレードを中断
関連記事:70機近くまで膨れ上がった保管状態のF-35、米空軍や同盟国に影響
関連記事:多難なF-35Block4、未検証のシステム搭載による出荷停止は秋まで続く
関連記事:検証作業中のTR3でトラブルが発生、F-35の年内引き渡しが97機に減少
関連記事:F-35Block4実用化に向けたマイルストーン、TR3搭載の試験機が初飛行
※アイキャッチ画像の出典:Royal Air Force





















スタンドオフ兵器の欠如というのは、なかなか気になりますね。
(単純に比較できるものでもないですが)第4.5世代戦闘機で、スタンドオフ兵器を使える機体の方が、使いやすい場面も充分に有り得るのかなあと。
これは航空自衛隊のF-35や、海上自衛隊の空母型護衛艦のことを考えても、なかなかヤバい話、場合によっては非常にヤバい話ですよ。
遠くから撃てる兵器、爆弾や誘導弾がない、ので、標的の近くまで飛んでいかないといけない、ということは、要するに赤外線探知機や、あるいは肉眼で発見され、肉眼や、赤外線誘導で撃てる対空兵器、高射砲や地対空誘導弾で撃墜される危険が大きくなるということでしょう。
遠くから撃てない、ということは高い高度から撃てない、ということでもあり、そうなると必然的に高度を下げて低空低速飛行せざるを得ない、そうなると小型の地対空誘導弾に撃たれる、撃墜される危険が大きくなる。特に危険なのは、爆弾投下後の帰り、帰路の飛行です。
レーダーには映りにくい、とは言っても赤外線は探知できるし、肉眼や暗視装置ではもちろん見える。航空自衛隊の場合には中国軍に見られて、いろいろ撃たれる。海上目標を攻撃する対艦攻撃能力は欠けている、というのは、日本の場合には第二次大戦時におけるランカスターではなく、太平洋戦争時における一式陸攻や四式重爆・飛龍、つまり
「台湾沖航空戦」
の再来になる危険があるということです。
日本の場合、F-35に期待しているのは、対空戦闘とその高度なセンサーでないかな?
対潜哨戒機としては無駄に機動性を追求しているP-1の中攻志向振りや、元祖対艦番長F-2、西側諸国の中で異様な程充実させてるASMなど、共々対艦攻撃の手段は豊富な方だから、
F-35への対艦攻撃不要は、手段を増やす程度の意味合いだと解釈しています。
あと対地に至っては対空・対艦に比べて低優先度なのが空自での位置付けだろうし。
あっ、抜けてた
誤:西側諸国の中で異様な程充実させてるASMなど
正:西側諸国の中で異様な程充実させてるASMやSSMなど
>AMRAAMよりもはるかに遠距離から敵機を撃墜するよう設計された欧州製のミーティアだが、その統合は度々延期されており、現在では2030年代初頭まで完了しないと見込まれている。この遅延はサプライヤーのパフォーマンスの低さ、納入を優先しなかった商業的取り決め、そして広範な国際プログラムの中でのミーティア統合の優先順位の低さに起因している”
やっぱり武器の統合は導入国が自由にできるぐらいしないとパンクするだけ
独自兵器積んでるF-35Iの例もあるし、ウクライナでは独自にロシア製兵器をF-16に積んだりしてるんだから、できるアウトソーシングはやればいいのに
現状運用しているスタンドオフミサイルの統合ですらBlock4ないしBlock4のダウングレード版待たないといけないとなると、F-35とCCAの連携はいつになるかわかったものじゃないですね。
ミーティア積んだ欧州産CCAをタブレットで動かすほうが早かったりとか………
最近の米国ITエンジニアの求人、AI台頭の影響で氷河期を迎えようとしているみたいですね。
それだけsw生成面でAIが優位性を示すのなら、金融界にIT関連の人材を奪われていただろう米国防衛産業に取っては朗報かも?
先日の「Anthropicショック」で、マジもののキルスイッチを発動させた分野だし、
せめて米国で難航している分野のソフト開発に活躍して欲しい、と願望込みだけど。
>現行のF-35 Block3FをBlock4に対応させるにはシステムインフラストラクチャーを刷新するTechnology Refresh3=TR3への物理的な交換とソフトウェアのアップグレードが必要になるという意味だ。
現実論だと上記の通りなのだろうけど、下記①②の何方なのでしょうね?
①(F-2のMCのように)TR-2のリソース不足起因で、TR-3へのアップデートが必要
②ソフト開発の人的リソース不足起因で(Black4のアップデートにリソース集約した結果)、とばっちりから従来機のTR-3へのアップデートが必要になった
②が要因の場合、どうせ見捨てているBlock3Fなのだし、Northrop GrummanやBAE Systemsなどにアップデート(一部武器の統合作業)の担当を解放しろよ、と思っちゃう。
相手がLMなので無理筋だろうけど。
凄いなぁ、ドンガラにも問題抱えてて、ソフトウェアも未熟。これなら無人機の簡易指示システム組んで、各種兵装を無人機に統合した方が各国の自由度が上がりそう。
ソフトウェアや開発体制含めたシステムの不備。
ソフトウェア定義型兵器が新興企業から出てる中で、昔ながらの仕組み。
空母が出てきた頃の戦艦のよう