フランス装備総局(DGA)はパリ航空ショーで「最近の激しい紛争を通じて中高度を長時間飛行できる武装可能な無人航空機=UCAVの必要性が浮き彫りになった」「現代戦においてUCAVは重要な役割を果たしている」と述べ、仏企業5社と契約して国内開発に乗り出すことを発表した。
参考:Bourget 2025 : La DGA accélère dans le domaine des drones
参考:France gauges a new crop of MALE drones for surveillance, strike
フランスが市場で存在感のある輸出国になるのか、実用化に成功しただけの国になるのかは蓋を開けてみないと分からない
フランス装備総局(DGA)はパリ航空ショーで「最近の激しい紛争を通じて中高度を長時間飛行でき、低コスト、モジュール性、マルチミッション、妨害耐性、迅速な展開能力といった特性をもつ無人機の必要性が浮き彫りになった」「この種の無人機は現代戦において優れた偵察、監視、情報収集、軽攻撃能力で重要な役割を果たしている」「我々はAURA AERO、Daher、FLY-R、SE Aviation、Turgis Gaillardと契約を締結してMALEデモンストレーターの生産を支援する」「この決定によってフランスは選択肢の多様化と輸出機会に対する展望が獲得できる」と発表した。

出典:GA-ASI
中高度を長時間飛行できるMALEタイプの無人機とは米国のMQ-9やMQ-1C、イスラエルのHermes900やHeron、トルコのTB2やAkinci、中国のWing LoongシリーズやCHシリーズといった武装可能な無人航空機=UCAVのことで、Defense Newsも「MALEタイプの無人機はウクライナとロシアの戦いで有効性と限界を示しため、この種の市場は急速な変化と進化が起きている」「この分野でフランスやトルコなどは国内の開発能力を戦略的に育成しており、パリ航空ショーでも開発を進めている新しいMALEタイプの無人機が10機以上も展示された」と報じている。
“Airbus、Dassault、Leonardoが手掛けるEurodroneは開発が遅れているため、プログラムコストが高騰し、技術的な陳腐化のリスクも高まっている。そのためフランスやドイツなどの欧州諸国はMQ-9やHeronなどの代替品に頼ることを余儀なくされている。DGAは仏企業5社とMALEタイプの無人機開発契約を締結することで選択肢を広げ、輸出機会を創出し、フランス軍に利益をもたらす競争力を備えたMALEタイプの無人機産業を育成したと考えている。但し、5社に対するDGAの初期投資額(計1,000万ユーロ=約17億円)は控えめだ”

出典:Airbus
“この5社が提供するMALEタイプの無人機はサイズ、ペイロード、コスト、耐久性がかなり異なっており、機体は専用設計のものから認証済みの商用機をベースにしたもの、コストも500万ユーロ~3,000万ユーロまで様々だ。この取り組みの第2フェーズでどれだけの計画を維持するのは不明だが、これはDGAが能力の異なる複数の無人機取得を目指すのか、全ての任務を1つの機体で実行可能な無人機取得を目指すのかに左右されるだろう”
Eurodroneは当初「2025年の実戦配備」を目指していたが、試作機製造に関する契約締結はCOVID-19の影響で2019年から2022年に、初飛行も2024年から2027年に、量産機引き渡しも2027年から2028年以降にずれ込んでしまい、Airbusは「Eurodroneを2020年代末までに戦力化したい」と述べているものの、平和な時代に策定された要求要件はEurodroneをMALEタイプの無人機とは思えないほどの機体サイズに押し上げ、もはやMQ-9ではなくRQ-4に近いサイズ感で、これを見たフランス人議員は巨大するぎる機体サイズに驚いたと言われている。
恐らくフランスは4ヶ国の取り組み=Eurodroneに期待しておらず、MALEタイプの市場と需要が「単独投資のリスクを冒すだけの規模に成長した」と判断した可能性が高く、米国、イスラエル、トルコ、中国の土壇場だったMALEタイプの無人機にも5ヶ国目の選択肢ができるかもしれない。
因みに市場での存在感はないものの「MALEタイプの無人機」を実用化している国は二桁台に達しており、フランスが市場で存在感のある輸出国になるのか、実用化に成功しただけの国になるのかは蓋を開けてみないと分からないが、フランスと同じようにEurodroneの商業的失敗を確信しているLeonardoは「Baykarとの提携」と「無人航空機技術の開発に特化した合弁企業=LBA Systemsの設立」を発表済みで、パリ航空ショーでLBA SystemsブランドのAkinciとTB3を披露している。
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※アイキャッチ画像の出典:Turgis Gaillard
MALEは「便利だけど強くはない」って言葉がピッタリだと思う。
ペイロードがあって人間を搭載する必要がないから便利ではある。
でもそれなりに高価かつ防空で結構簡単に死ぬので生存性は微妙。
通常の航空機にしては手軽だけど滑走路に依存する点同じだし
ちゃんと運用したければ衛星通信関連も必要だからドローンのカテゴリでは
重厚長大でその点Group1,2のUAVのような陸戦のゲームチェンジャーではないわ。
ウクライナでTB2が期待されたほど活躍できなかったのは結構ニュースにはなってたと思うけど
フーシ派への攻撃に関連して、アメリカのMQ-9がかなり損害を出したってのもこの辺りの話を考えるのに大事な話なのよね
今のところは、非常に興味深い分野だ、以上のことは何も言えないってのが現状かと
SNSではドローン神を拝め奉るドローン万能主義者やドローンを必要以上に過小評価する時代錯誤の人が跋扈している(特に万能主義者は少しでもドローンの欠点を挙げると専門家に対しても噛みつきまるでその分野の第一人者のように振る舞う)のに対してここの記事はバランスが取れていて現状を等身大に認識していると思う。