欧州関連

オランダも潜水艦でのトマホーク運用を断念、生産再開のため費用が高額

オーストラリアは2024年6月「コリンズ級潜水艦へのトマホーク統合を見送る」と発表したが、オランダも21日に公開した報告書の中で「潜水艦でのトマホーク運用を断念する」と明かし、魚雷発射管から発射するバージョン=UGM-109Eの生産再開費用がネックになったらしい。

参考:Defensie Projectenoverzicht (DPO) Rapportage 2025
参考:Netherlands abandons Tomahawk integration in submarines

今のところオランダ海軍が別の巡航ミサイル統合を模索しているかは不明だ

オランダ軍の長距離攻撃能力はPzH2000の砲撃と航空戦力の対地攻撃=JDAMに依存し、ウクライナとロシアの戦争を受けて「より射程の長い長距離攻撃能力の必要性」を認識したため、2022年7月に発表された国防白書に「新たな長距離攻撃能力の確保」が盛り込まれ、2023年4月「イスラエル製のPULS、米国製のJASSM-ERとトマホークを取得する」と発表。

出典:ロッキード・マーティン JASSM-ER

JASSM-ERについて「オランダ空軍のF-35Aは近距離の地上目標を攻撃するための武器(JDAM)しか保有しておらず、敵の防空システムがカバーするエリアの目標を攻撃するには長距離攻撃兵器が必要だ」と、トマホークについても「海軍の艦艇は敵のバンカーを破壊するのに十分な威力と射程を備えた攻撃手段を持っておらず、導入するトマホークはフリゲートと潜水艦に搭載される」と述べ、現行のワルラス級潜水艦と新たに4隻取得するオルカ級潜水艦(Naval Groupのバラクーダ級)にトマホークを統合する予定だったが、21日に公開した報告書の中で「潜水艦でのトマホーク運用を断念する」と明かした。

オランダ海軍はフリゲート艦で運用するVLSバージョンのRGM-109Eと、潜水艦の魚雷発射管から発射するバージョンのUGM-109Eを要求したが、後者は2014年に受注した英海軍分を最後に生産が中止されており、オランダは潜水艦でトマホークを運用したい国と見つけて共同購入=生産再開に必要な費用の分担を模索したものの見つからず、オランダ単独での発注は費用対効果が悪い判断して潜水艦でのトマホーク運用を断念したらしい。

出典:Koninklijke Marine

Naval Newsは「代替システムとしてオルカ級潜水艦へのMdCN統合が考えられる」と指摘しているが、今のところオランダ海軍が別の巡航ミサイル統合を模索しているかは不明だ。

因みにオーストラリア海軍もコリンズ級潜水艦のアップグレードに合わせてトマホーク統合を検討していたが、豪政府は2024年6月「2026年にコリンズ級潜水艦に対するアップグレードを開始し、最初に2番艦ファーンコムのアップグレードを行う」「費用対効果が見合わないという米国の助言に従ってコリンズ級潜水艦へのトマホーク統合は見送られた」と明かしている。

関連記事:オランダ国防省、フリゲート艦と潜水艦向けにトマホークを取得すると発表
関連記事:通常動力型潜水艦に対する空前の需要、オランダがバラクーダ級契約に署名
関連記事:コリンズ級潜水艦のアップグレードは2026年開始、トマホーク統合は断念

 

※アイキャッチ画像の出典:Naval Group

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コメント

  • コメント (12)

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    • たむごん
    • 2025年 5月 25日

    オランダは、カリブ海に海外領土を少し抱えているだけで過去の栄光はなく、オランダ本国は地政学的にみて極めて安全ですからね。

    (NATO加盟国としての防衛戦力は必要ですが)どちからといえばドイツ・ベルギー・フランスと同じように、外国人によるテロ抑止の方が問題なのかなと感じる面があります。

    オランダ政府債務残高GDP比43%しかなく、日本財政と比較にならないくらいに良好なわけですから、シーレーンへの切迫感・日本とは安全保障環境が違うことを強く感じますね(対ロシアを本気で見据えるなら陸軍戦力でしょうか)。

    (2018年9月28日 オランダで「大規模なテロ攻撃を阻止」 7人逮捕 BBC)
    (2025年4月24日最終更新日 オランダの政府債務残高の推移 世界経済のネタ帳)

    5
      • とくめい
      • 2025年 5月 25日

      オランダは、西欧諸国がガチで争ってた頃は地政学的に極めて不安定な地域だったのに、
      欧州での係争ネタが大きく東に移動した結果、真逆な状況になっていますね。

      歴史の経過と共に、脅威が中国単独(唐とか元)から、ロシアやアメリカが追加され、
      気が付けば軍事三大国に囲まれてる状態。
      暫くはこの状態が続くでしょうから、オランダの状況はうらやましいです。

      13
        • たむごん
        • 2025年 5月 25日

        全盛期はバチバチでしたが、皮肉なことに現状は、まさに仰る通りです。
        第二次大戦後に、オランダが周辺外交を上手くやった結果とも、言い換える事ができるかもしれませんね。

        対中国の脅威論についても、平成に入ってからほぼ常にそうですが、日本とオランダだけでなく、日本とヨーロッパ諸国では分かり合えないなと感じています。
        イギリス=中国は、香港問題により利害関係がありましたから、イギリスくらいでしょうか?(それも時間の経過と共に、末端レベルでは忘れ去られるかもしれないなと…)

        6
    • ななし
    • 2025年 5月 25日

    魚雷発射管から打ち出す巡航ミサイルって日本でも開発予定だよなぁと思ったけど
    まぁ出来てもいないものを売り込みに行くわけにもいかないし
    共同開発するより発注した方が安上がりだろうし

    7
      • 戦車
      • 2025年 5月 25日

      一応、2025年度以降から潜水艦発射型誘導弾は量産開始ですが具体的な性能は不明ですし、武器輸出をする予定は無いでしょうね。

      4
      • nachteule
      • 2025年 5月 25日

       普通にモノになっている筈のフランスMdCN(Missile De Croisière Naval)があるから、積ませて下さいと交渉すればいいんじゃないだろうか?弾頭威力は落ちようが射程は1000km超えるみたいだし既存発射管の有効活用という点では申し分ない性能だと思う。ただMdCNがトマホーク武器管制システム(TWCS)みたいな物が無くても運用出来るのか必要だとして組み込めるのかってのがあるだろうけど。

    • 2025年 5月 25日

    EU共同購入の話が出てくるのかな
    でも米国への支払だと反対されるか

    • 名無し
    • 2025年 5月 25日

    あったほうが良いのはわかるが、一隻に積んでおけるSLCM数発でどのくらいの戦略的価値になるのかよくわからん
    潜んでて怖いのはトレーラーから撃つ場合も同じだし

    4
    • 58式素人
    • 2025年 5月 25日

    「潜水艦でのトマホーク運用を断念する」
    これはホントなのかな?。VLSで復活したりするのでは?。
    元々、MdCNの存在を知った上でトマホークを選んでいたのでは?、と思ったり。
    欧州の潜水艦で、トマホークのVLS装備例はないと思うけれど、
    必要ならば、米国にVLSの技術を提供してもらえば良いのでは。
    バラクーダ級ですが、VLS装備で多少大きくなっても意味はあるのでは?。
    などと思ったり。

    • れんちゃ
    • 2025年 5月 26日

    欧米の企業は合理化という名の非合理をやりがちなんだよね…だからクッソ高く付く事がある。まあ、中露もスペック倒れな事があったりするそうで、ロケット軍や戦略軍の重鎮が飛ばされてたけどなかなかむずかしいねこういうのは。

    • hiro
    • 2025年 5月 28日

    生産終了したということは今持っている国も、ある分を使っちゃったらもう補充はできないということか。
    実質戦力外では。。

      • 58式素人
      • 2025年 5月 28日

      どうでしょう。
      魚雷発射管射出型をVLSから発射しても良いのでは?。
      あちこち読むと、筐体の設計強度の話だけのようですし。
      英国の次の攻撃型原潜は、おそらくAUKUS原潜でしょう。
      豪州での前級のバージニア級がVLS装備ですから、AUKUS原潜も多分。
      その意味で、現用トマホークは継続使用されるのでは?、と思います。
      記事に戻れば、オランダ海軍もVLSを装備すれば良い、とも思えます。
      VLSがあれば、トマホーク以降の何かしらも運用ができるでしょうし。

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