英国のThe TIMESやTelegraphは15日「スターマー首相は党首選に備えた政治的反撃の一環として180億ポンドの国防費増額を来週にも承認する」「この180億ポンドの財源は不明だが、国防省が求める280億ポンドのニーズは満たせない」と報じ、肝心の国防投資計画を発表する気配はない。
参考:Starmer readies for leadership battle with £18bn boost for defence
参考:Starmer ‘to unveil £18bn defence boost’ ahead of leadership contest
180億ポンドの増額で足りるのか、その180億ポンドをどこからもってくるのか、そもそも党首選を乗り切れるのか、肝心の国防投資計画はいつ発表するのか
英国政府は2025年6月に国防戦略の見直し結果を発表し、スターマー首相は「この報告書が提案した62項目の勧告全てを受け入れて実行に移す」と表明、国防予算を2027年までにGDP比2.3%から2.5%、2035年までに3.0%まで引き上げる予定だったが、NATO加盟国は6月下旬に開催された首脳会談で国防支出を総額5.0%(国防支出3.5%+軍事インフラとしても活用できる分野への投資1.5%)にすることで合意、英国も総額5.0%を支持したものの「いつまでに達成するのか」「そのための財源をどうやって確保するのか」は決まっていない。

出典:UK Ministry of Defence
さらに国防戦略の見直し結果=62項目の勧告を実行に移すと「今後4年間で280億ポンドの不足が生じる」と指摘され、スターマー首相は2025年秋に予定していた「今後10年間をカバーする国防投資計画の発表」を先送りし、不足する280億ポンドを確保するため社会保障費の大幅削減を試みたものの、労働党議員の約1/4が「労働党の魂(労働者や社会的弱者の保護)を売るのか」と反発して頓挫、既に削減した海外援助のさらなる削減も労働党議員から「こうした削減は労働党の価値観に反する」と反対の声が上がり、リーブス財務相は市場の支持を維持するため「借入ルールの変更」に強く反対しているため市場からの資金調達も困難だ。
スターマー政権は野党から「いつになったら国防投資計画を公表するのか」「きちんとスケジュールを提示しろ」「2週間後に議会が閉会するまでに公表できるのか」と問い詰められ「スナク政権から引き継いだ計画は費用が算出されていなかったため実現不可能だった」「できるだけ早く公表する」というポジショントークを繰り返すことしか出来ず、国防戦略の見直しを行ったジョージ・ロバートソン卿からも「今日の政治指導者層には国家を内部から蝕むような深刻な慢心が蔓延している」「彼らは口先ばかりの懸念で約束されていたはずの国防に関する国民的な議論すら未だに始められずにいるのだ」と批判。

出典:UK Prime Minister
地方選挙に大敗し、首相続投に反対した閣僚5人が辞任し、70人以上の労働党議員からも辞任を求められ、党首選出馬をウェス・ストリーティング元保健・社会介護相やマンチェスターのアンディ・バーナム市長が狙っており、スターマー首相は政治的反撃の一環として国防費増額を来週にも承認するとTIMESやTelegraphが報じた。
TIMESは15日「スターマー首相は政治生命をかけた戦いに直面する中、国防費を180億ポンド増額する案を承認する見込みだ。歳出増の財源は不明だが「財政的に可能だ」と政府関係者は主張している。180億ポンドの増額があれば62項目の勧告を全て実行できると見られており、ここにはGCAP計画の推進、造船、核兵器を搭載可能なF-35A戦闘機の購入、弾薬の備蓄、部隊の戦闘力強化のための新型兵器の購入などが含まれている。しかし180億ポンドでは280億ポンドの不足分を完全に穴埋めできない」と言及。

出典:GlobalCombatAir
Telegraphも「180億ポンドでは国防省が求める280億ポンドのニーズに及ばない」「政府が歳出増や歳出削減を発表することなく、どのようにしてこの増額分を賄うことができるのか疑問だ」と報じ、TIMESやTelegraphは「首相の座を守る反撃の一環として国防費増額を利用しようとしている」と指摘している。
ちなみに180億ポンドの増額が来週発表されたとしても、今のところ肝心の国防投資計画を発表する気配はなく、280億ポンドのニーズを180億ポンドで満たせると主張するのはジャムをトーストに薄く伸ばすような対応(全体の資金供給を薄くして計画期間を伸ばす)になるという意味だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:UK Prime Minister





















まだ決まってないとは言えGCAP関係は取り敢えず落ち着きそう
今年のG7サミットはフランス、ヨーロッパ開催、おそらく安全保障が議題の中心になるはずで、イギリスはそれまでに体裁整えないといけないですからね。サミット前までに国防予算関係についてはある程度決まっていくんじゃないでしょうか。
支持率低迷の理由は経済や社会保障、ガバナンスなのに、国防費増やしても全く意味ないでしょ。いくら軍事増強がトレンドだとはいえ、さすがに他にやるべきことがありすぎる
政権維持のためにやるべきことは違うにしろ、国益を考えたらこちらの方が意味があるし日本としても歓迎できるかと。
「ジャムをトーストに薄く伸ばす」表現、最近お気に入りなんか。
それを床に落とすと必ずジャムのほうが下になる。
「ジャムだ…雪風がそう言ってる」
今は見守るしかない
国債を発行するんでしょうかねえ?
イギリスが、どういう国造りするのかを考える時に、政治の停滞が決まっているのは厳しいですね。
ソフトバンクグループがアーム買収(アメリカ上場)したり、オイルメジャー(BP)が脱炭素やりすぎて低迷してきたり、アストラゼネカ(製薬)はアメリカ重視を掲げていたり…。
国防・経済が激動のなか、弱い政治ではどうにもならない気もしますが、今後どうなっていくのか見守りたいと思います。