ウクライナ戦況

ウクライナが無人機を迎撃できる無人機を開発中、まもなく状況が変化する

ロシア軍はウクライナのインフラ攻撃に各種巡航ミサイルとイラン製無人機「Shahed-136」を使用しているが、フェドロフ副首相兼デジタル化担当相は「敵無人機と直接交戦できる無人機を開発中で2月か3月までに状況が劇的に変化する」と断言した。

参考:Minister: Ukraine aims to develop air-to-air combat drones

期待されている以上のことをしなければならず、技術の進歩は待ってくれない

AP通信の取材に応じたウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル化担当相は「戦場の偵察や監視に使用する小型UAVの調達が進んでいるため次は攻撃向けのUAVだ」と明かし、爆発するUAVと3~10kmまで飛んで目標を攻撃するUAVの2つ上げて「今話しているのはウクライナ国内で開発しているUAVのことだ」と付け加えている。

出典:FEDOROV

無人機は特徴を示す明確な名称(航空機なら戦闘機や爆撃機といった感じ)が定まっていないため「ニュアンス」で語られることが多く、爆発するUAVとはウクロボロンプロムが開発を進めている自爆型UAV(作動範囲1,000km/弾頭重量75kg)を、3~10kmまで飛んで目標を攻撃するUAVとはSwitchbladeやWarmateのような小型の徘徊型弾薬を指している可能性が高いが、最も興味深いのは「敵の無人機と直接交戦できる無人機の研究開発を進めており、2月か3月までには状況が劇的に変化する」という言及だろう。

敵の無人機と直接交戦できる無人機について管理人は2つ存在を把握しており、1つ目はウクライナ軍が運用しているTB2でShahed-136狩りができるようになる可能性だ。

出典:Baykar

ロシア軍がShahed-136をインフラ攻撃に使用し始めたことについてBaykarのハルク・バイラクタル最高経営責任者は「いかなる場合でも対抗策を準備しておく必要があり、我々はウクライナの主権を守る戦いを全面的に支持している。まもなくTB2やAkinciに空対空ミサイルが統合されドローンや敵機の迎撃に使用できるようになる。現在テストが行われている最中だ」と明かしており、この線で行くならTB2への空対空ミサイル統合が間もなく完了するという意味かもしれない。

2つ目はウクライナ人のプロジェクトチームが開発を進めているドローン迎撃システム「Fowler」の完成が間近に迫っているという可能性で、FowlerUAV(重量1.3kg/最大高度1,000m/最大飛行距離1,500m/最大速度50 m/s)は搭載されたEO/IRセンサーで目標を捕捉して接近、拡張式のメッシュネットを目標に発射して無力化するか、直接衝突して目標を破壊することができ、前者の方法だとFowlerUAVは帰還して再使用することができる。

出典:Oleksandr Butkaliuk

ただFowlerUAVはサイズが小型なのでShahed-136を迎撃できるのかは謎だが、フェドロフ氏は「敵の無人機と直接交戦できる無人機の研究開発を進めている」と述べているため、これが国内開発を指しているならFowlerUAVの方だろう。

どちらにしてもウクライナが「別の無人機を開発をしている」という可能性もあるので上記の話は管理人の推測に過ぎないが、軍に無人機を供給するのが自分の役割だと主張するフェドロフ氏は「期待されている以上のことをしなければならず、技術の進歩は待ってくれない」と述べ、ロシア軍の無人機分野における技術力についても「連中は技術的な可能性を全く信じていない」と言及しているのが興味深く、もしかすると「ロシア軍が採用している技術は遅れている」という意味なのかもしれない。

関連記事:トルコのBaykar、まもなくTB2でShahed-136を迎撃出来るようになる
関連記事:ウクライナがFowlerUAVを公開、迎撃ドローンで敵ドローンを無力化
関連記事:ウクライナが開発中の自爆型の無人航空機、早ければ年明けにも実戦投入
関連記事:472機のUAVを受けったウクライナ、ロシア軍を監視する無人機の群れを公開
関連記事:ウクライナ、ロシア軍を監視するため小型UAVを986機調達すると発表

 

※アイキャッチ画像の出典:IMA Media 演習に登場したShahed-136

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コメント

    • 2022年 12月 29日

    また軍オタに皆さんが「ミサイルと何が違うんだ?」とか見当違いなことを言い出しそう。

    2
      • 名無し
      • 2022年 12月 29日

      実質、これ無人機 制空戦闘機 だな

      無人機も偵察→爆撃→制空
      に進展していった所を見ると
      まんま軍事航空機の歴史そのもの

      28
        • 平八郎
        • 2022年 12月 29日

        今回ウクライナが作ろうとしてるものがどれほどのものかわかりませんが、要撃機ドローンで再利用前提というコンセプトは興味深いですね。
        再利用していいんなら高性能高機能にしても元が取れる。
        敵陣まで行かないから地対空ミサイルに狙われる心配もない。
        自爆ドローンは所詮安物なわけだから回避運動とか難しいことも出来ないでしょうし、将来的には一方的にカモられる存在になるかも。

        ドローンも軍用航空機の歴史をなぞるなら、このあと護衛戦闘機ドローンも随伴させるかとか、事前に制空戦闘機ドローンで相手直掩機ドローンを駆逐しないと、みたいな話になりますね。
        そうなると「あれ?自爆ドローンて結局高くね?」「普通に巡航ミサイル撃ったほうが安くね?」みたいな話になりそう。

        シャハドみたいなプロペラでノロノロ長距離を飛んでくる自爆ドローンはきっと黎明期の徒花なんでしょうね。
        高速高機動で敵の攻撃を躱しつつ爆弾を落として帰ってくる賢くて高価なドローンという方向に攻撃側も進化していきそうです。

        15
          • shkk
          • 2022年 12月 30日

          インフラを狙うならコスパはいいんじゃないかなぁ

          現状でも巡航ミサイルも80%落とされてるんで10倍安いシャハドなら98%落とされてもコスパは良いことになる計算ですし
          しかも数に見合った迎撃コストを相手に使わせることも加味すると割とアリだと思います
          物量ゴリ押しなら突破できるのは証明済みですからね

          100機揃えても200~500万ドルですし8割落とされる巡航ミサイル3発分ぐらいですからね

          1
    • ミリオタの猫
    • 2022年 12月 29日

    やはり、戦車には戦車、戦闘機には戦闘機、ミサイルにはミサイルと言う歴史の流れ同様に、ドローンにはドローンをぶつけた方が正解の様な気がします

    18
    • 2022年 12月 29日

    迎撃ドローンに対抗して爆撃ドローンの護衛戦闘ドローンが追随してくるようになると

    6
      • クッサーシュミット
      • 2022年 12月 29日

      やがて迎撃ドローンがジョットエンジンを積み始め 護衛ドローンを翻弄・・・

      なんかどこかで聞いた話

      5
    • 名無し太郎
    • 2022年 12月 29日

    こういう開発の分野なら、日本も協力が可能だと思うんだけどね。光学センサーに関してはキヤノンとかは世界最先端の技術をもっているし、AIに関しても先端の技術をもっている企業があるのだから、ウクライナと協力すべきだと思う。
    日本の企業にとっても、貴重なデータが入手できるので、得られるものも大きいはず。武器を提供できないのなら、こういう部分で支援することで、技術先進国としての責務を果たすべきだと思う。

    15
    • 58式素人
    • 2022年 12月 29日

    ある程度開けた場所でなら飛行機でも良いと思うけれど。
    市街地に入り込まれたら、飛行機は使いにくいかなと。
    高度50mとすると、敵撃墜より自分の安全に注意ですね。
    また、機関砲やミサイルを下向きには撃てないだろうし。
    被攻撃目標までも間近だろうし、やはり、地上からの対空砲火かな。。
    機関砲で。ミサイルは飛翔時間が勿体無いような気がします。

    • 霞ヶ浦
    • 2022年 12月 29日

    対ドローンと言うよりは巡航ミサイル等の飽和攻撃に無人機を活用したいな

    4
    • 早く休みたい
    • 2022年 12月 29日

    いつも思うけど、
    「ドローンは見つけにくい」
    って話置き去りにして対ドローン用ドローンを開発ってどうやって探知すんのかね?
    ウクライナでは、目視と携行ミサイルで対抗してるって記事を数日前に読んだし、韓国でも、2日前ぐらいに本当に来たのか?鳥なのか?ドローンで大騒ぎしてろくな対応できなかったみたいだけど、そこらへん最新の情報だとどーなってるんですかね?

    7
      • ミリオタの猫
      • 2022年 12月 29日

      探知の問題ですが、これはノースロップグラマンのFAAD C2システムの様なC-UAS(無人機対処用の防空システム)の導入が必要と言う結論になっています
      FAAD C2システムでは移動式レーダーと電子工学センサーで探知するとされていますが、どうもそれよりも探知した情報を指揮官や各防空部隊へ素早く伝達する事の方が重要視されている様です
      つまり、今ドローン対処で一番難しいのは探知も去る事ながら、識別・確認・情報伝達までに掛かる手間と時間が長過ぎると言う事だと思います
      後、これは私の想像ですが、将来ドローンの群体制御が容易に出来る様になったら、複数のドローンを防空エリアに展開させる事で敵ドローンの侵入を事前に探知・対処する事が出来ると思います(群体なら、多数のドローンから得られる情報を統合して分析する事により、探知・対処の能力が飛躍的に向上する可能性が有る)

      6
        • ネコ歩き
        • 2022年 12月 29日

        防衛省では来年度から2027年度までのスケジュールで「ミサイルシステム 協調型誘導システムの研究」を行います。
        強調型誘導システムとは、事前の事業評価で
        >「広い範囲に多数存在するUAVを捜索し、個々に追尾及び識別する群目標捜索識別技術並びにネットワーク連接された迎撃アセットが取得した目標情報を速やかに共有及び統合するとともに、射撃効果、費用対効果及びリソースを考慮して最適な配分で対処目標を割り当てる」システムと説明しています。
        センサーシステムは地上型のようですが、迎撃対処手段は「現有/将来の対空迎撃アセット」としていますので、迎撃ドローンがコスパ的にも有効となれば導入又は開発されることになるかもしれませんね。

        話は変わりますが、今年度の事前の事業評価は国家防衛戦略をかなり反映したもので、恐らくは再来年度以降も興味深い研究開発事業が具体化していきそうです。

        7
      • 名無しさん
      • 2022年 12月 29日

      ウクライナでは「市民や軍人による目視による警戒・警報」というWW2のような対空警戒網が整備されているんで、「大型機は引き続きレーダー、超低空の小型機は人間」の形で行くんじゃないんですかね?

      尤も、人間の目視による対空警戒網というのはウクライナのような自国本土が戦場になるという悲劇的な戦争であるから通用している面もあるので、機械による対ドローンシステムの整備は急ですが。

      2
    • ブルーピーコック
    • 2022年 12月 29日

    TB2の役割と出撃回数が多すぎて、オペレーターや整備員も大忙しだろうなあ。補給と換装を省力化or無人化する研究はとっくにしているんだろうけど。

      • 2022年 12月 29日

      TB2だとShahed-136と速度がどっこいなので一度抜かれたら食らいつく事ができなそうだが大丈夫なのかな?
      migで迎撃してるのを動画で見たが、近づいてからミサイル発射して撃ち落としてたから、ロングレンジからでは無理なのかもしれない。

      2
        • ブルーピーコック
        • 2022年 12月 29日

        飛行中の機体を発見してルートなどを連絡できれば、後は後方の部隊に任せるのではないでしょうか。もしくは自らはセンサー役となって別のTB2などの機体に撃ってもらうとか。

        2
    • 黒足袋
    • 2022年 12月 30日

    UNITED-24を覗いたら、マーク・ハミルがクラウドファンディングを呼び掛けているのが、このシャハド狩りドローン開発じゃないかと思われます。低速かつ数で攻撃してくる相手には、ドッグファイトが得意で滞空時間の長い、ゼロ戦のようなレシプロ戦闘機が良いかも知れませんね。

    2
    • REM
    • 2022年 12月 30日

    やっぱり戦争でのドローン発展は脅威だ。
    アメリカ一強の技術でなくトルコ、イスラエル、イランに、当事国のウクライナと、これだけ多くの国が関われば戦術面でも凄まじく発展するに決まっている。
    武器の開発は金銭だけで解決しない。
    あらゆる経験が貴重でお金に替え難い。
    自衛隊が対潜哨戒機や攻撃ヘリ切り捨てて、ドローンに振り込むのは先見性があるのではないか?
    武器に関われるリソースは日本も限られてる訳だし。

    2
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