トランプ大統領は国防支出の新基準=5%を拒否したスペインについて「絶対に許さない」と述べていたが、フィンランド大統領と会談後「NATOからスペインを追い出すべきかもしれない」と言及し、国防費増額を支持する野党も「問題はスペインではなくサンチェス首相だ」と主張した。
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野党の国民党は「問題の根源はスペインではなくサンチェスだ」と主張した
オランダで開催されたNATO首脳会談で32ヶ国の首脳は「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野と防衛・安全保障関連に投資することを約束する」と正式に発表、この5%は「直接的な軍事力に結びつく防衛分野への投資3.5%」と「重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤への投資1.5%」で構成されているが、スペインのサンチェス首相だけは「我々は5%という目標にコミットしない」と言及。

出典:NATO
サンチェス首相は首脳会談後の記者会見で「スペインは合意された能力要件を旧基準程度=2.1%の国防支出で達成する」「我々は国防支出に2.1%以上の資金を費やすつもりはない」「今回の首脳会談はスペイン、NATO、全ての人々の安全、そして福祉国家にとって成功だった」と、トランプ大統領が「NATOにとってスペインは問題だ」と述べたことについても「我々は解決策であり問題ではない」と主張。
さらに「スペインの主権を尊重してくれた加盟国全てに感謝する」「スペインの立場は加盟国に理解されている」とアピールしたが、集合写真に映るサンチェス首相と他の首脳の間には不自然な距離が出来ており、スペインメディアのEFEも「トランプ大統領は首脳会議で挨拶や会話を交わす機会すらサンチェス首相に与えなかった」と報じ、トランプ大統領も「スペインは素晴らしい国だが加盟国の中で支払いを拒否した唯一の国だ」「そんな不公平は絶対に許さない」「私はスペインと直接交渉する」と訴えてスペインを凍りつかせた。

出典:NATO
スペインのディフェンスメディア=Infodefensaも「今回のNATO首脳会談は加盟国にとって質的にも量的にも大きな飛躍となったが、スペインにとってはほろ苦いものになった。我が国は5%の投資を拒否した唯一の国として批判の嵐の中心に立たされた」と述べ、首脳会談の取材中に感じた疎外感や自国の態度について以下のように書いている。
“世界中からNATO首脳会談が開催されたハーグに数千人のジャーナリストが集まり、2日間という濃密で慌ただしい時間を共有した。我々もプレスセンターでドイツ人ジャーナリストと同じテーブルに座ることになり、交わした言葉は少なかったものの同じ業界で働くもの同士として親近感が生まれた。全ての取材が終わってドイツ人ジャーナリストと形式的な別れの挨拶を交わし、テーブルから立ち去ろうとする間際、彼らは皮肉めいた表情で「スペインの幸運を祈る」と言った”
España está firmemente comprometida con los objetivos de capacidad y los cumplirá en tiempo y forma.
Hoy, alcanzamos un acuerdo satisfactorio para todos y que defiende el multilateralismo.
Nuestro país seguirá siendo una pieza clave de la arquitectura de la seguridad europea. pic.twitter.com/gMChPm32XO
— Pedro Sánchez (@sanchezcastejon) June 25, 2025
“この言葉は今回の首脳会談がスペイン人に何をもたらしたのか最も的確に要約しているかもしれない。NATO加盟国にとって会談結果は質的にも量的にも大きな飛躍となったが、スペインにとってはほろ苦いものになった。我が国は5%の投資を拒否した唯一の国として批判の嵐の中心に立たされた。スペインを含む全加盟国が最終宣言に署名したにも関わらず、サンチェス首相は署名から数分後に「我々は合意内容に従うつもりはない」と世界に宣言したのだから”
“スペインはサンチェス首相の発言にも関わらず他の加盟国と同じ内容の文書に署名したことを知っている。彼が合意内容の履行を拒否したことも、この発言がトランプ大統領の怒りを買ったことも知っている。トランプ大統領はスペインに対して激しい言葉を浴びせ、もし合意を履行しないなら関税を引き上げると脅している。さらにトランプ大統領や欧州諸国の首脳が気に入らなかったのは「サンチェス首相が明かした5%の国防支出が必要ない理由」だった”

出典:Sgt Marc-André Gaudreault, JFC Brunssum Imagery
“サンチェス首相は「合意された能力要件を2.1%以下の国防支出で達成できる理由」について「この支出割合はスペイン軍が算出して達成を保証した」と全ての責任を軍に押し付けて政治的責任を回避した。さらにサンチェス首相は他の首脳と会談することも殆どなく、トランプ大統領とは挨拶すら交わすこともなく、他の加盟国から暗黙的な批判に晒された。要するに2.1%以下の国防支出で「合意された能力要件」の義務を果たせるのか疑問視しているのだ”
“何れにせよ、ルッテ事務総長はスペインの主張と異なり「5%合意に例外条項は含まれていない」「この合意に参加した加盟国は例外なく国防支出の引き上げに尽力することになる」「この中には間違いなくスペインも含まれる」と主張しており、サンチェス首相の行動は時間稼ぎの試みに過ぎない。彼の発言や行動は国内の政治的問題や立場を反映したものと解釈されるべきで、これはNATOの首脳ではなく連立政権のパートナーに向けられたものだ”

出典:NATO
“サンチェス首相の狙いは国防支出増額に反対するスマルの支持を繋ぎ止め、その間に不安定な議会の支持基盤を固めることだろう。これを実現したのちに国防支出の問題を慎重かつ、左派の反発を招かない形で解決し、2029年に設定された合意内容の見直し時期(これは5%の見直しではなく、NATO首脳会談で合意された各加盟国に課せられる能力要件が『4年後の環境』においても適切かどうかの見直し)の際、2.1%以下の国防支出で能力要件を達成できていなければ「5%への引き上げを模索する」というシナリオだ”
“もう一つの可能性は能力要件の達成を後任者に委ねることであり、その後任政権が社会労働党か国民党の何れであっても、このシナリオにおいてサンチェス首相は権力を維持していないだろう。兎に角、今は外交努力によってトランプ大統領の怒りを鎮め関税引き上げを回避し、NATOとの関係が口先だけでなく行動によって修復されることを願うしかないが、これが可能かどうかは不透明な状況だ。それでも今回の首脳会談全体が「トランプ大統領を喜ばせるためだけに計画されたこと」を忘れてはならない”
トランプ大統領は暫くスペイン問題に触れてこなかったが、フィンランドのストゥブ大統領と会談後「ロシアがフィンランドを攻撃する可能性は限りなく低い」「何故ならフィンランドは強力で規模が大きい軍隊を擁しているからだ」「それでもロシアからの攻撃を受ければ我々はフィンランドを守る」「彼らはNATO加盟国なので守らなければならない」「フィンランドは本当に素晴らしい人々だ」と、スペインについては「正直なところNATOから追い出すべきかもしれない」と言及。
スペインメディアはトランプ大統領の発言について「これまで5%への増額を拒否したスペインを批判してきたが、NATOからの追放を示唆したのは今回が初めてだ」と驚いており、スペイン政府は「米国と同様にNATOの能力要件を達成している」「我々は正式加盟国でNATOの任務に尽力している」と表明したが、野党の国民党は「問題の根源はスペインではなくサンチェスだ」と主張した。
El problema no es España.
España es un socio creíble, orgulloso y comprometido con la OTAN. Y lo seguiremos siendo.El problema es Sánchez.
Él no es de fiar, pero eso no debe arrastrar al país. Nuestra Nación no tiene que pagar por su frivolidad e irresponsabilidad.Sabemos…
— Alberto Núñez Feijóo (@NunezFeijoo) October 9, 2025
“我々はNATOにとって信頼できる献身的なパートナーでこれからもそうあり続ける。問題なのは信頼できないサンチェスで国民は彼の軽薄さと無責任さの代償を支払う必要はない。我々は誰が味方なのかを知っているし、スペインはNATOから離脱しない。モンクロア宮殿(首相官邸)から去るのはサンチェスだ”
社会労働党と二大政党を形成する国民党は「国防費の大幅増額」を支持しているものの、サンチェス首相は反米・反NATOを掲げる統一左翼との連立維持のため身動きが取れない状況で、要するに国民党は「サンチェス首相が辞任して我々が政権を獲得すれば問題が解決する」と言いたいのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:NATO





















結局スペインは、NATOから離脱しても問題ないくらいに、強気に考えているのでしょうかね?
スペインは金融・不動産に脆弱な面があったわけで、アメリカから報復されるとすれば、サンタンデール銀行のような銀行大手が狙われるのか注目しています。
(2024年2月5日 サンタンデールとロイズの株下落、イランが制裁逃れで口座利用と報道 ロイター)
スペイン、そもそものNATO加入が1982年なぐらいには周辺に脅威がないので、国防支出5%に引き上げた場合メリットよりデメリットが遥かに大きいのよね
スペインの加入が遅れたのはフランシスコ・フランコ独裁政権のせいであって別に脅威が無かった訳じゃないんです。ジブラルタル海峡っていう大西洋と地中海をつなぐ超重要な土地を持ってるので
現代では脅威が低いってのは確かですけどね
イギリスが、先っちょだけ抑えている形にはなっていますが…
スペインの後背地もあることで、円滑に進んでいる面があるでしょうね。
アフリカ側に目を向ければ、『セウタ・メリリャ』に領土を持っているわけですから、スペインは貴重な拠点ですよね。
自分も同意する面があります。
『NATO加盟国としての義務』という側面について、御指摘を受けたことがあるのですが…
国民感情としては、あまりにも遠い地域・国防上の脅威がないと感じれば、なかなか理解が得られないのではないかなと推察しています。
>結局スペインは、NATOから離脱しても問題ないくらいに、強気に考えているのでしょうかね?
ある意味、真面目に考えすぎですよ
日本の左派をみればわかりますが左派の政策は、「己の理想が先に来て、現実は後」です
左派あるあるの感情論からくる、反米、(反米に対して邪魔になる)軍事への反発が全てで有って、ロシアだの、EUだの問題がどうこうは関係ないのです
信じられないかもしれませんが、一度その手の左派の人たちと話させば、感情論がすべてなのだなとわかると思います…
あちらの方々の思考は私には到底理解できませんし、私の周りには(幸い?)左側の人たちが居ないので、分からないのですが、
「本気で国のためと考えた結果それに至った人」
「現実見ずの感情論な人」
「そのように言ってる人がいるから、それでいいのだと流されてる人」
どんな割合なんでしょう?
あちらの人は割と全部セットだと思いますが…
というか、それくらいキまってる人でないと、(政治的信条を実際に実現しようと)実際に行動に移したりまではしないので…
日本の左翼は、ファクトよりも、思い込みが行動原理なのかなと感じる面があります。
家族や友人にいなくて、幸いだなと感じたことがありました…
スペインには「面従腹背」という概念がないのでしょうかw。
NATO諸国で本当に5%を達成する国がどれだけあるものなのか。
日本が5%達成を要求されたらどのような「面従腹背」が可能でしょうか
特に日本は役所が決めた計画は何が何でも達成する慣性が働く国ですから一度約束しちゃったら自動的に物事が進むため、無理なものは入り口で拒否するしかないと思うのですが
なんども挙げられていますが、予算の付け替えとか海保の名目上の軍事組織化とかね。
しかし、制服組の次官が「海保予算は軍事費に入れない」とか言っちゃう政治センス…。
左派からすると、反米と(己の権力確保を妨害する)軍事力増強妨害は、己のアイデンティティの根幹をなすものなので・・・
それを曲げる事は出来ないのだと思います
地理的に脅威が少ない故のスペインの反応ですがもう少し友好国の面子のためにやり様はありましたよねぇ
後方国だから直接軍備ではなくて支援のための設備投資インフラ投資比率高めにしての5%と取り繕うとか
追い出すと言ってもジブラルタル海峡抑えてんのに地中海の防衛どうするんだよ
イギリス領ジブラルタルとか言う猫の額みたいな土地に防衛施設置くのか?
というかNATO追い出したらイギリス領ジブラルタル自体がスペインとイギリスで領有権争うことになるでしょ
いやほんとそれでこの問題突き詰めると領土問題に火がつくので…挙句の果てはスペイン解体か欧州内の戦争かなんですよね。
まあ後者はNATO誰もやりたいと思ってないでしょうが、前者は各国首脳が望まなくてもかなりあり得る話なので…
少なくともファン・カルロス1世用のF-35Bは買って欲しい。
この緊迫した世界でNATOの空母戦力を減らすのは、無責任だ。
…別に追放されてもよくね?
NATO軍がスペインに進行するリスクがあるけど
スペインにとってもNATOにとっても別にスペインを追放しても対して影響ないと思うから、別にどっちでもって感じでしょうか。
地中海の覇権はイタリアと米第6艦隊が抑えてるし、対岸のアフリカ諸国がなにか出来る訳でもないし、ウクライナ戦争でも大損害受けて消滅寸前のロシア黒海艦隊は論外。
あるとしたら政治的な影響ぐらいで軍事的には無風でしょうね。
スペイン国民にとって大した脅威もないのに、国防費増額からの増税の可能性のほうが脅威でしょう。
ロシアや中国の脅威って言ったところで、どうやってその2国がスペインに脅威を与える方法って何よ、嫌がらせ以上のこと出来ないでしょって終わりだし。
むしろ、スペインをNATOから追い出した結果、スペインが代わりにロシアと軍事的に連携を深めて、あの位置にロシア軍の基地が出来ると、NATO的には非常にマズいのでは?(もちろん、本当にやらなくても、えっと、本当に俺たちをNATOから追い出すんだっけ?もう一回言ってみて?チラッ的なやつ。)
まあNATOでない欧州でいるならもうBRICKSに近づく以外の選択肢はないですね。
ただまあそれよりはクーデタ起きそうに思いますが。
明日の日本かもしれんのよな
同じ様な質問きたら政府は、議会はどうするのか?
どこぞのヒステリー婦人部政党がフィリバスターしそう
ガザ情勢をめぐって反イスラエル姿勢を強めるサンチェス政権に、トランプが搦め手で圧力をかけている側面もあるのではないでしょうか?
>サンチェス首相の行動は時間稼ぎの試みに過ぎない
全く逆でできると言ってるほうがトランプ大統領の任期切れまで時間稼ぎしてるように見えるけどね
フランスはもはや言うまでもないけどアメリカと最も近いイギリスですら冬場の暖房費の補助をどうするかだけで揉めてんのに今の政治情勢で福祉を大幅削減して国防費を5%にするなんてできるわけがないし
欧州の政治情勢を眺めれば5%達成が不可能なのは誰だってわかる
そもそも、国防費5%って要求自体が本当に純粋な物なのかな?って言う。
昔の話だけれど、経済と両立可能な防衛費に付いて議論されていた頃、ギリギリ5%台って話だった。これは幻の防衛道路に乗っている話。今は当時と違って出費が多いからもっと低いだろう。
アメリカさん、EUが環境規制を名目に色々と経済障壁を設けている事への反撃として、国防を名目にEUの足を引っ張ろうとしてませんか?と。
まあ、明確な根拠が有るわけじゃ無い素人の思いつきですが。
欧州の増えた国防費が米防衛産業界に流れないと見るやまたブチギレて後出しジャンケンかましてくるのは火を見るより明らかなんですよね、トランプさん
その時に追加される新ルールが「5%に上げようとそのカネで米国産兵器を買わないならば関税を引き上げる」、なのか「GDP比6%に更に引き上げろ」なのかは現時点では分かりませんが
「問題の根源はアメリカではなくトランプだ」
隣国である小国ポルトガルもがんばっただけに経済規模の違うスペインが5%を拒否だと目立ちますよね
NATOから追い出すのはハンガリーの方が先では?