欧州関連

トルコ、MQ-9に匹敵する新型無人航空機「バイラクタル Akinci」の実戦配備を開始

バイラクタルTB2で有名なBaykar社が開発を進めていた新型の双発無人航空機「バイラクタル Akinci」の量産機がトルコ軍に引き渡されたと報じられている。

参考:Security forces get Akıncı, Turkey’s most advanced drone to date

トルコ軍が最も期待している無人機航空機「バイラクタル Akinci」の量産機が遂に実戦配備に入る

新型の双発無人航空機「バイラクタル Akinci/アキンジ(オスマン帝国時代に偵察や先遣部隊として用いられた軽騎兵を指す語句)」は米国のMQ-9を上回る最大離陸重量を誇りペイロードはTB2の10倍に達する大型機でトルコ軍が最も期待している無人機航空機だ。

これまでプロトタイプを使用したテストを繰り返してきたが8月29日にエルドアン大統領を招待した量産機引き渡し式典が行われ正式にトルコ軍の戦力として追加されたと現地メディアのDaily Sabah(デイリーサバ)紙が報じている。

バイラクタル Akinci
全長12.2m
全幅20.0m
エンジン450馬力×2基もしくは750馬力×2基
重量1,350kg
最大離陸重量6,000kg
ペイロード1,500kg
巡航速度240km/h
最高速度361km/h
航続距離7,500km
滞空時間24時間+
最大高度12,192m
運用高度9,100m
ハードポイント8ヶ所

AkinciはEO/IRセンサーに加えAESAレーダーが標準で搭載されており、バイラクタルTB2が運用していたUAV専用の精密誘導兵器MAMシリーズに加え国産対戦車ミサイルL-UMTAS、国産精密誘導キッドを装着したMk.81/Mk.82/Mk.83、国産バンカーバスターのSARB-83とNEB-84、国産巡航ミサイルSOM-A(射程250km)、国産短距離空対空ミサイルMerlin(推定射程65km)、国産中距離空対空ミサイルPeregrine(射程不明/AIM-120D相当と言われている)、国産対レーダーミサイルAKBABAなどを運用をすることが可能で、どちらかと言うと情報収集・監視・偵察(ISR)任務よりも直接戦闘に特化した無人機と言った方が良いだろう。

出典:Baykar

勿論、有人の戦闘機と比較すると飛行性能は劣るが有人機に不可能な滞空時間と射程の長い兵器を活かして地上攻撃を行ったり、有人機ではリスクの高い任務に投入することを想定している可能性が高いがTB2(500万ドル以下)と比較すると相当高性能なので価格の方も高価になっていると思われる。

但し同等の性能を備えた無人航空機(恐らくMQ-9を指しているものと思われる)と比較してAkinciの調達コストは安価だという主張もあるため5,000万ドル以下(2,000万ドル~3,000万ドル)位ではないかと管理人は予想しているが「Akinciの海外輸出には数年の準備期間が必要だ」と言われているので答え合わせは当分先のことになりそうだ。

MQ-9の調達コストは4,940万ドル(米空軍が2021年に16機発注した際の機体単価で地上管制装置などは含まれていない)、台湾がMQ-9を導入した際の1機あたりの調達コストは1.5億ドル(地上管制装置や保守サービスなど関連費用を含む)と非常に高価なので、もし関連費用込みでAkinciの調達コストが5,000万ドルを切ると相当注目を集めるかもしれない。

余談だがロシア国防省もMQ-9を上回る新型の双発無人航空機「ALTIUS/アルティウス(最大離陸重量8トン/航続距離10,000km/ペイロード1,000kg/プロトタイプの数値)」の量産機引き渡しが始まったとバイラクタル Akinciの引き渡し式典と同タイミングで明かしているのでトルコを意識しているのかもしれない。

どちらしても今後MQ-9クラスの無人機は双発化にともなう機体の大型化が流行り、巡航ミサイルなど射程の長いミサイルで武装されると今以上に厄介な存在になるだろう。

関連記事:トルコ、UAV専用の精密誘導兵器MAMシリーズに滑空爆弾「MAM-T」を追加
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アイキャッチ画像の出典:Baykar

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    この種の無人攻撃機カテゴリ、やはり基本的にはスーパーツカノみたいなCOIN専用機の延長だよなぁ。対テロ戦争中の米国や、国内に分離主義勢力を抱えるトルコやロシア、あるいはロシアの分断工作で内戦に陥るリスクを抱えてるバルト諸国やポーランド等々、潜在的な非対称戦リスクを抱えてる国には重宝だろうけど。日本や米国や西欧諸国がこれから構築していく無人機戦ドクトリンとはまた別の存在だよな

    14
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      負け惜しみ乙

      18
        • 匿名
        • 2021年 9月 02日

        負け惜しみではな

        2
        • 匿名
        • 2021年 9月 02日

        まだ進化の過程の多様化の段階だから、勝ち負けを論じるには早いだろ。
        先にお試しやってる国の成果を観察するのも悪くない

        12
          • 匿名
          • 2021年 9月 02日

          厳しい法律の壁が普及を阻み、需要が生まれず、メーカーの投資ややる気を削ぐ

          この図式に陥ると、そうおいそれとは挽回出来るとは思えませんが?

          5
            • 匿名
            • 2021年 9月 02日

            まだ運用理論すら確定してないのに焦ってはダメよ、むしろ先走る敵の姿を参考にして利用したほうが合理的
            少なくとも、当面の標的は台湾であり日本はその次なんだから

            5
              • 匿名
              • 2021年 9月 02日

              MQ-1の運用開始は1995年、MQ-9の運用開始は2007年、もう大型無人機は20年以上も運用されているのに何を言ってんの?

              >運用理論すら確定してないのに焦ってダメよ、むしろ先走る敵の姿を参考にして利用したほうが合理的

              単に日本が遅れていることを正当化するための方便でしょ?

              6
                • 匿名
                • 2021年 9月 02日

                今の日本としてどういう性能が必要で、それは輸入で済むのか新規開発すべきかという話なんだが?
                あわてすぎるなよ、ガラパゴスにも一定の必然性はあるんだから

                10
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      攻撃機としてはともかく広域監視機や中継機として欲しいけどな。
      航空機発射型の小型UAVの母機としても使えるし。

      11
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      ツカノとは全然違うカテゴリーでしょ
      場合によっては使い捨て特攻できて、大量に用意してセンサーノートとして運用するのが基本思想なんだから

      3
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      >>日本や米国や西欧諸国がこれから構築していく無人機戦ドクトリンとはまた別の存在だよな

      いや、米国はもちろん西側諸国はこの手の装備の開発調達はしているし、今後も続けていきますよ
      残念ながらそこに日本は含まれてませんけどね

      2
        • 匿名
        • 2021年 9月 02日

        そりゃ陸上戦闘を想定している国はともかく、日本はまだ敵地攻撃能力を得ようとしている最中だからね
        かといって日本国内でこういうのを運用する金があるならその分海と空に回してまず上陸させないようにする方針だし

        10
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    ここまで出来て何故か対艦攻撃がすっぽり抜けてるな
    トルコにとってあまり重要な任務ではないのかな?

    4
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      基本的に陸軍優位の大陸国家だし、海で揉めそうな相手がギリシャ程度ならば優先順位は低めだろう
      無人機無しでもギリシャ相手には敗ける要素が見つからないほどの国力、軍事力の格差がある

      15
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      プラットフォームでしかありませんから、その辺りの能力は顧客のご要望次第ってところでしょう

      6
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      SOMミサイルの対艦バージョンはあるようだから、必要なら積めるのでは。

      2
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    正規の軍には効果がないかもしれないけどリスクの高い情報を集める際の道具、センサーとしてはメッチャ使えそうだけどなぁ
    人が4ぬことがないって政治的にも人的資源的にも良さげ
    パイロットなんてポコポコ生える訳じゃないんだし

    5
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    テラ・ドルフィンだ、テラ・ドルフィンを大型化した武装版を作るんだ!

    1
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      てかテラドルフィン8000の最高高度20000m滞空20時間は実現できて実際に高度12000〜16000mくらいでアンチアイスとか含めて安定運用できるなら別に大型化しなくても即戦力じゃないかな。
      心配なのは大学発のベンチャーで防衛産業に手を出す気があるかどうかだけど。海保枠でもいいか?

      1
        • 匿名
        • 2021年 9月 02日

        へぇ、フジインバックの無人機以外にもいいのがあるじゃないの
        見てきたけど普通にこれ便利だと思った

        3
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    将来的に調達費用が下がって、この性能の機体に自律飛行とスウォーム攻撃されたら相当厄介だな。その頃には無人機対策が進んでるかもしれないが

    1
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    トルコのやってることは基本的には隙間戦略ですからね、今はうまいとこを突いてるけど各国が対応を整えたらどうなるのか、無人機がどう収束しあるいは進化して、さらに終息はどうなるのか、とにかく面白い

    8
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    プロペラのドローンはそれなりに落とされるの前提
    むしろ落とすためのミサイルのが高くて割が合わない
    って方向性じゃないとダメだと思うんだけどな…
    消耗品が消耗品で無くなってしまう高級化にならなきゃ良いけど

    6
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      耐久製品が消耗品に転落したり、ご指摘のように、逆に消耗品が高級化するのが製造産業すべからくに発生する不思議
      今も魚雷は高価だけど、昔は不発魚雷をわざわざ探して回収し再利用してたって、笑い話になる
      無人機も再使用を前提とした高級タイプと、使い捨て御免の安価なタイプに二極分化していくと予想します

      9
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      ただステルス性が低くても、平時であれば、そういきなり攻撃もされず
      もしされたら相手を非難出来、しかも無人機であれば人的被害も無いので
      使い捨ても上等

      平時かグレーゾーンな事態の時、有人機ではリスクを取れなかった事が
      無人機なら出来るメリットは大きいでしょう
      しかも有人機よりは確実に安価でしょうから

      1
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      割りに合わん、っつったって放っとけば自国の車両や施設が人員ごとボコボコにされる、となりゃ反撃出来るならしてくるからね。
      「相手のミサイルの方が高くつく」ったって別にそれが自国の利益になる訳じゃないし。
      高度9000mとそれによる爆弾類(特に滑空爆弾)の射程延伸で、パーンツィリS1とかしか対空迎撃手段がない相手なら完封できる、となれば
      安いとは言えTB2をポロポロ落とされるながら運用するよりは、そっちを選ぶ顧客はあると思うよ。

      2
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    こうやってみるとやっぱでけえなあ
    いずれより大型化、高速化、ステルス化した機体が登場してくるんだろうな
    ステルス化は無人機ならそこまで重要ではないかもしれないけど

    3
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    性能関係ないけどこいつのデザインはめっちゃ好き

    14
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      戦前のHe111や96式陸攻あたりを連想させるデザインですね。

      4
        • 匿名
        • 2021年 9月 02日

        主翼をもうちょっと鳥っぽくすれば、押井守のアニメにでも出て来そう

        4
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    ざっと映像を見ましたが、トルコの、着陸シーンはありましたか?
    ロシアはありましたね。

    1
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    何で離陸映像カットしてるんだろう。何か弱点があるとか?

      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      離着陸装置にトルコ独自の工夫があるのかも、パクられたくないような

      3
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    有人機や米国製よりは割安でも、数十億円単位となると消耗前提の運用は出来ないよね。

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      その数十億で相応の自軍の兵士や兵器を守ったり、数倍の価値がある相手の戦力をつぶせるならそういう運用する価値はありえるんじゃないかな

      5
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    一応Oryxなんかでは、現在トルコが運用している240機程のF-16が担っている対地攻撃任務を代替させる事で
    F-16を空対空戦闘に専念させる事が出来るため、ギリシャの導入するF-35との軍事ギャップを解消させる目的があるのではないかと書かれていた
    多分本命はこっちなのでは?

    5
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    しかし、なんで日本は無人機の開発は遅れているんだろう?

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      対水上、対空が主戦場だからってのも大きい
      対地だと相手がゲリラといった不正規相手も多く、対ECM対策よりも、より安く、より簡便にという能力も優先され、安価な無人機の需要があるけれど、
      対水上、対空となると、相手はまず正規軍。
      中継所の設置も難しく、対ECM対策も重要で、そうなると無人機にはできない現場での判断力が求められる。
      そうなるとどうしても有人機じゃないとできないから、開発優先順位は無人機よりも有人機を優先となってしまうのは至極当然

      13
        • 匿名
        • 2021年 9月 02日

        ついでに長距離運用となると操縦中継用の専用軍事衛星を用意したり機体性能の高性能化といったように一式を準備・開発・製造するだけでも下手な有人機以上に金も時間もかかるからなぁ

        大量生産して製造・運用コストを安くできる目途が立たないうちは少数を買ってきて実験的に運用するぐらいしかできない

        7
          • 匿名
          • 2021年 9月 02日

          まぁあれだよね、諸々の無人機の初期の頃の要素の中の主要因(人的被害の多い対地攻撃任務の置き換え)が本邦で必要な要求と噛み合わなかったのと、2015年頃から正面装備の大量更新の必要性が一気に増したせいで無人機関連の取得が後回しにされたのとかが影響出てると思う

          個人的にもう一つの無人機の要素である観測や偵察に関しては、FFRSがせっかくかなり早く導入したのにそこから予算など諸々の都合で無人機の普及が加速しなかったのは勿体ない感じはするけど

          5
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      トルコは国が滅びると閣僚がメディア前でこぼすぐらい軍事力に注力してるだけで、日本を含む他の国は元々の軍事力通り開発ペースでは?日本は無人機だけが遅れてるわけではないような。

      4
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    対空レーダーを積むと、安く仕上げるってのはやっぱ無理

    5
    • 匿名
    • 2021年 9月 02日

    5000万ドルぐらいだと有人機+人のお値段より格安だけど手軽に使い潰せるかといえば微妙じゃない?

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 02日

      そこは対象によるとしか

    • 匿名
    • 2021年 9月 03日

    時速240㎞はヘリコプターの速度域っでしかないけど、これは実践で使えるの?1000㎞先の安全な飛行場からえっちらおっちら4時間かけて来て作戦になるのか相当疑問だけど。

      • 匿名
      • 2021年 9月 04日

      24時間飛べるんだから偵察目的も兼ねて実際の作戦行動が予想される時間よりも数時間早く展開させとけばいいのでは?
      あるいはローテーション組ませて哨戒させながら戦闘が発生したらそこに向けて搭載した火器をぶち込みに行くのでもいいだろうし

      それに速度遅いけどそれ使えるの?って言い出したらじゃあ同じ速度域のヘリは使えるの?って言う話にもなりかねんし(ヘリは匍匐飛行やら出来るとはいえ)

      2
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