欧州関連

トルコ、垂直離着陸が可能なステルスUAV「バイラクタDİHA」が登場

トルコのBaykar社で最高技術責任者を務めるセルチュク・バイラクタル氏が公開した動画に垂直離着陸が可能なUAV「Bayraktar DİHA」が映り込んでいると、複数の海外メディアが報じている。

参考:Bayraktar Vertical Take-Off UAV revealed in Company Video
参考:Bayraktar dikey iniş kalkışlı insansız hava aracının prototipleri üretiliyor

Baykar社が開発したステルスタイプで垂直離着陸が可能なUAV「Bayraktar DİHA」が登場

バイラクタルTB2を開発したことで有名なBaykar社の最高技術責任者(CTO)セルチュク・バイラクタル氏は18日、自社施設の内部を映した動画を公開したが量産プロセスに入った大型UAV「AKINCI」、垂直離着陸が可能なUAV「DİHA」、衛星通信に対応した「TB2SİHA」、空飛ぶ車「CEZERİ」が映り込んでいると注目を集めている。

大型UAV「Bayraktar AKINCI」はMQ-9リーパーよりも大きい無人攻撃機で国産のEO/IRセンサーやAESAレーダーを搭載しており、さらにエンジンの双発化によって小型のUAV専用兵器以外にもフルサイズの中距離空対空ミサイル、対戦車ミサイル、各種精密誘導兵器、射程距離200kmの国産巡航ミサイル「SOM」まで携行することが可能だ。

※最近公開されたBayraktar AKINCIのプロトタイプ3号機の様子

極めつけは電子妨害ポッドまで統合されているのでBayraktar AKINCIは戦闘機や攻撃機が担当するミッションを代行することができると言われており、2021年に量産型がトルコ軍に引き渡される予定らしい。

垂直離着陸が可能なUAV「Bayraktar DİHA」は偵察・監視用途の小型UAVで機体の前後4ヶ所に取り付けられた電機モーターで垂直離着陸を制御、水平飛行に切り替わるとメインエンジンが作動して巡航モードに入り自律的な自動制御によって最大12時間ほど空中に留まることができる上、UAV専用のレーザー誘導兵器「MAM-C」を搭載して地上の目標を攻撃したり自爆攻撃を行うことも可能だ。

出典:Baykar Bayraktar DİHA

さらに同機はステルスに有利な全翼機なのでレーダー反射断面積(RCS)が非常に小さく障害物がなく隠れる場所のない海上での使用に適しており、実際に艦艇への自動着艦モードまで備えているので海軍の艦艇に配備して運用することを視野に入れているのは確実だ。

トルコメディアはF-35Bの運用を想定して建造した強襲揚陸艦「アナドル」に搭載するのではないかと予想しているが、流石に1発5kgのMAM-Cしか搭載できないBayraktar DİHAでは海上の目標=つまり艦艇を攻撃するには威力不足だと思うのだが、偵察のついでに地上の目標を攻撃する分には十分だろう。

出典:Bayhaluk / CC BY-SA 4.0 バイラクタルTB2

衛星通信に対応した「Bayraktar TB2SİHA」は見通し線の通信に頼っていたBayraktar TB2の欠点を解消するモデルとして国産の走行追尾型衛星端末(SATCOM On-The-Move:SOTM)を採用しており、トルコが保有する通信衛星(欧州~中東をカバー)と組わせればBayraktar TB2の展開が容易(地上管制システムを運搬する必要がなくなる)になるが、恐らく調達性は悪化しているはずだ。

空飛ぶ車「CEZERİ」はBaykar社が軍事分野で培った無人航空機の技術を応用して開発に取り組んでいるクアッドタイプの有人ドローンだ。昨年プロトタイプの初飛行に成功したが郊外の農村部で使用できるようになるまで3年~4年、人口が密集した都市部で使用できるようになるまで10年~15年はかかるとBaykar社は説明している。

ただトルコは無人航空機に関する技術力の強みを生かして陸上移動の革命と目されている「空飛ぶ車」の開発に注力しており、もしかすると日本の自動車産業にとって強力なライバルとなるかもしれない。

関連記事:トルコ、衛星通信に対応した無人航空機「バイラクタルTB2S」公開
関連記事:発展し続けるトルコ防衛産業、UAV「バイラクタルTB3」を開発中

 

※アイキャッチ画像の出典:Canbay34 / CC BY-SA 4.0

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    垂直離陸タイプなら、あちこちに展開しやすいから、ギリシャと揉めた場合の、ギリシャ側小型舟艇によるアドリア海諸島争奪戦に使えますよ

    5
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    トルコはあれか?AC7のアーセナルバードでも作ろうとしてんのか?まあやる気さえあればマジで作りそうだけど

    8
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    アナドル、政治的な事情でF-35Bが買えなくなった
    キャンベラ級、今の所F-35Bを導入する予定無し(クロスデッキはするかも)
    ファン・カルロス、お金の事情でF-35Bが買えない

    この一族はF-35Bから呪われてるのかな

    9
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    TFXやアルタイこそ前途多難だけどUAVは順調に開発と運用データを蓄積出来て正直羨ましく思う。ギリシャも航空戦力の拡張してるからここからが踏ん張りどころ、ナゴルノ・カラバフ戦争のUAVの活躍はアルメニアの航空戦力の不足が招いた事だから、仮に衝突するなら他国から見たら貴重な戦闘データサンプルとなるでしょうね、欧州からしたら難民も流れ込んで来るだろうからたまったものじゃないだろうけど。

    7
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    このデザインは好みだ。無人機はデザインの自由度が上がってるように思う

    8
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    無人機もいいんだけど、強力な電子戦機から攻撃を受けて殺虫剤を浴びた蚊柱のように瞬時に全滅したら笑える。

    11
      • 匿名
      • 2021年 1月 25日

      対電子戦機用ミサイルもセットでお買い上げ

    • 新・にわかミリオタ
    • 2021年 1月 22日

    バイラクタDİHAのデザインは好みだな

    2
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    もう少し様子を見たいのだけれど、トルコは小さなパラダイムシフトを起こしている?

    4
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    最近のトルコはイケイケだな…
    無人航空機分野で遅れを取ってる我が国としては注視しなくてはならん

    場合によってはアメリカ製よりこっちを…

    12
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    Bayraktar DİHAってコレこのままだとステルスもへったくれもなさそうだけど
    水平モードでは垂直用モーター格納するんだよね?

    1
      • 匿名
      • 2021年 1月 22日

      少なくとも最先端のレーダー技術ならば、回転するローターやプロペラが露出した構造ではステルス性なんて無い状態ですしね。周期的な変動を捉えて抽出すれば良いのですから

      3
        • 匿名
        • 2021年 1月 23日

        回転だけなら「水平飛行時は垂直ローターを直線位置で止める」って手もあると思いますけどね。
        それでも曲面のペラやらステーやらシャフトやらそれらによる構造やらを剥き出しで
        「全翼機だからステルスに有利」と言われても説得力感じないですね…

    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    無人機でステルスで垂直離着陸ってもうこんなん欲張りセットじゃん

    14
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    こういうのは先進国も作れるんだけど、
    重要なのは実用性がありながら安上がりに大量生産できるように纏めてきたってところにあるんだよね
    AK47並の作品を作ってるようなもので、本当に大したものだと思う

    13
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    空対空ミサイル乗っけれるUAVってロマンあるなあ。他にあったっけ?

    1
    • 野嘗
    • 2021年 1月 22日

    陸上自衛隊の次期戦闘ヘリはこれで確定だな!

    2
    • 匿名
    • 2021年 1月 22日

    無知ですまんのだが、プロペラでステルスなんてできるものなのか?
    ジェットすらわざわざs字ダクトにしてるんだろ?

    4
      • 匿名
      • 2021年 1月 22日

      コマンチみたく実用化されたプロペラステルス機はあるみたいだけど、確かにプロペラでステルス形状は無理だよな。
      ということは素材頼り?極秘で実戦投入されたブラックホークのステルス型の墜落現場からは分厚くコーティングされた布状の部品がたくさん見つかったって話だけど…

      5
      • 匿名
      • 2021年 1月 22日

      実際どう工夫してもプロペラのレーダー反射をごまかせないからヘリのステルスは気休め程度にしかならないって話だからなあ

      3
      • 匿名
      • 2021年 1月 22日

      同じツッコミを入れてる人がいて安心した。
      コレがステルスなら、コマンチ首になってないわいな。と
      誰だってそー思う おれもそー思う

      3
      • 匿名
      • 2021年 1月 22日

      この手のヤツは、そもそも機体が小型なのでRCSの値が小さいからレーダーに検知され難い。それをステルスに有利な全翼機タイプにしたことでRCSの値が更にに小さくなっただけ。

      これをB-2やコマンチなんかと比較するのは間違いで、同サイズのUAVに比べてステルスだという意味だよ。

      3
        • 匿名
        • 2021年 1月 23日

        それにしたって、ローターや推進ペラ周りの処理が雑すぎる様に見えるがな

        2
          • 匿名
          • 2021年 1月 25日

          あの小さなモーター一つでカブトムシ以上のRCSになる、本物のステルス機は20mの大きさだがそのモーターひとつ分程度のRCS。
          だから密なレーダー網を持っている先進国相手にはUAVは通用しない。
          日本ならRCSの大きさと速度でそれが何なのかを簡単に判断できるし、それに合わせた対処をする。

          1
        • 匿名
        • 2021年 1月 23日

        「機体が小さいからRCSも小さい」って発想から離れた方がいいよ。
        今時のステルス意識した固定翼機に「前方から見て垂直な面」なんてほぼないので機体の大きさが前方RCSに与える影響は極めて小さい。
        でなきゃアメリカが「全幅50m超のステルス爆撃機」のB-2を作り更にその後継のB-21を作る訳がない。
        逆にミサイル外装がステルス機としてあり得ないのも母機の何百分の1でしかないミサイルの前方投影面積よりもミサイル自体やパイロンと母機とが構成する構造によるRCS悪化がはるかに深刻だからだ。

        1
    • ゆう
    • 2021年 1月 23日

    爆弾は外部吊下になると思うが、それでもステルス機能を保持できるのか。

    2
    • 匿名
    • 2021年 1月 23日

    まあ、調子に乗っちゃって「作ってみました」ってとこなんだろうなぁ。

    デカくなればなるほど利点が減るのがUAV、ドローンと言うもの。
    垂直離着陸? オスプレイの劣化版にどれだけの価値があるのやら。
    それなら小型無線ヘリの方が使いでがあろうに。

    • 匿名
    • 2021年 1月 23日

    流石に空飛ぶ車と日本含む自動車業界がバッティングするかも知れないというのは飛躍しすぎでは?

    空飛ぶ車というと聞こえがいいけど、要は自走と併用可能な航空機だから、現状は車の自動運転どころじゃない壁があるんだよなぁ…。

    • 匿名
    • 2021年 1月 24日

    技術力といっても寄せ集めのキメラみたいなもんだよね。イスラエルがライバルかな。

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 31日

    各国最近進み早いなぁ。F-35もSu-57もじっくり開発した感があるけど

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