欧州関連

トルコ、武器輸出を通じた2ヶ国関係の強化は利益の数字よりも価値がある

トルコ国防省調達部門のトップを務めるイスマイル・デミール氏は「国産兵器の輸出は防衛産業に利益をもたらすだけでなく重要な外交手段の一つだ」と語り注目を集めている。

参考:Turkey sees defense industry as important ‘diplomatic’ instrument

遠くない将来、幾つかのアフリカ諸国はトルコ防衛産業の裏庭になっているかもしれない

トルコ外務省が主催した外交フォーラムに参加した国防省調達部門トップのイスマイル・デミール氏は自国の防衛産業について「閉鎖的な産業で時には他国との関係に影響を及ぼすこともあるが逆に閉まっていた扉が開いたりテーブルの上での交渉で重要な力を発揮することもある、我々は防衛産業の利益のためだけに兵器を輸出するのではなく購入してくれる国々と深い関係を築くことがより重要だと考えており、強い絆で結ばれた2ヶ国関係は利益の数字よりも価値がある」と強調した。

出典:Katmerciler 4×4装甲車輌「Hızır」

トルコの防衛産業と言えば無人航空機の輸出で稼いでいると想像するかもしれないが、トルコの装備品輸出はコルベット艦(パキスタン向けに4隻建造中)から陸上装備(電子妨害装置、ロケット砲、装甲車など)まで多岐に渡り特にトルコ製の装甲車輌はアフリカ諸国に人気が高く、数週間前にも国産の4×4装甲車輌「Hızır」をケニアに118輌供給する契約を締結したばりだ。

参考:Turkey lands new deal to provide 118 armored combat vehicles to Kenya

このHızırはNATO基準の防弾性能や耐地雷性能を満たした装甲車輌で乗員2名の他に兵士を6人まで収容することができケニア軍が実施した入札で米国と南米の企業を抑えて契約を勝ち取ったと報じられており、さらに4×4と6×6のバージョンを選べる装甲車輌「Nurol Ejder」はRWSを搭載することできトルコ軍以外にもハンガリー、ウズベキスタン、カタール、セネガル、ジョージア、チュニジアから2,000輌近い受注を獲得、現在モロッコが導入を検討中で一部の西側諸国から制裁を受けているジンバブエもトルコとの防衛協力を求めて接近しているらしい。

出典:NurolMakina 装甲車輌「Nurol Ejder」

参考:Morocco looks to buy Ejder Yalçın armored vehicle, sources say
参考:Zimbabwe looks to enhance defense cooperation with Turkey

国産兵器の輸出には利益を上げるという表面的な目的以外に防衛産業のエコシステムを維持して自国の国防強化に役立てるという側面と、装備品の輸出を通じて他国の安全保障に影響力を行使できるようになるという外交的な側面があり、つまりトルコは国産兵器の海外輸出で防衛産業に短期的な金銭的利益をもたらすよりも欧米と比較して制約の少ない国産兵器を武器にアフリカや中東諸国の囲い込みに力を入れている=外交的な成果を重視しているのだろう。

因みにトルコの防衛産業は「1日1件のペースで新しい契約を結んでいる」とデミール氏が明かしており、国産兵器をテコにしたトルコ外交はポーランドへのバイラクタルTB2輸出のような目立つ案件の影で着々と成果を挙げているので、そう遠くない将来に幾つかのアフリカ諸国はトルコ防衛産業の裏庭になっていても不思議ではない。

関連記事:ポーランド国防相、実戦で能力が証明された「バイラクタルTB2」24機購入を正式発表
関連記事:バイラクタルTB2導入理由を語るポーランド国防相、実戦での実力を疑問視する声にも反論

告知:軍事関係や安全保障に関するニュースが急増して記事化できないものはTwitterの方で情報を発信します。興味のある方は@grandfleet_infoをフォローしてチェックしてみてください。

 

※アイキャッチ画像の出典:NurolMakina 装甲車輌「Nurol Ejder」

中国、開発を進めている039C型潜水艦はセイルデザインの変更で静粛性が向上か前のページ

米諜報機関、米軍撤退から6ヶ月後にアフガニスタンのガニー政権崩壊を予測次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ポーランド国防相、国内の修理拠点がウクライナ軍のレオパルト2受け入れを開始

    独メディアは「ポーランドにレオパルト2の修理拠点を開設する話は条件面で…

  2. 欧州関連

    ウクライナ政府高官、TIME誌の記事内容を否定し情報提供者の排除を示唆

    ウクライナ国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は31日、TIME誌の記…

  3. 欧州関連

    西側標準の地位を手に入れたイスラエル、米独に続き英国も主力戦車のAPSに「トロフィー」を選択

    英国防省は24日、アップグレードされた主力戦車「チャレンジャー3」に搭…

  4. 欧州関連

    ウクライナ外相、外交努力によってロシアの侵略を回避することができた

    ロシアが「軍の一部を後方にさげる」と発表したことを受け、ウクライナのク…

  5. 欧州関連

    英空軍、アニメやSF映画で登場するような戦場認識力の実現に近づく

    英空軍参謀総長を務めるマイク・ウィグストン大将は「独自に開発を進めてき…

  6. 欧州関連

    空母の守りは? 英国、統合電気推進を採用した45型駆逐艦の早期退役を計画

    英国防省は最近、64億6,000万ポンド(約9,100億円)を投じて調…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    アフリカは地域大国の狩場だなぁ
    欧州が比較的意欲を下げてる傍ら、中国ロシアが鎬を削りトルコまで参戦とは

    11
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    これね、武器でつながる友達の輪
    ガラパゴスなんて気取らなくていいから、もっと世界との絆を増やそうよ
    それも立派な国防の策

    11
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      中古兵器の無償供与から始めないと。

      2
      • 匿名
      • 2021年 6月 25日

      どこに?
      欧米もトルコもアフリカの政治とか治安とかどうでも良いっていう焼き畑農業みたいな事が出来るからアフリカで平気売りまくれるけど、日本はどこでそんな焼き畑農業するの?

        • 匿名
        • 2021年 6月 27日

        言いたいことは判るけど、そもそも焼き畑農法を判ってないのが痛い
        本来は安定した永続可能な農業なのに、最近環境破壊の選手みたく批判されてるのは、実は資本主義の論理が入ったからなんだよ、収奪な。
        途上国の見下すなよ、原因はたいてい先進国のほうにあるから

        1
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    良くも悪くも相手の国に影響あたえられるのはそらそうでしょうな
    トルコだってF-35捨ててまで自由度上げたかったわけだし

    14
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    兵器輸出でその国に影響力を持つ事ができるようになるというのはその通りだろうけど、同時に既に影響力を持っている国との間で摩擦を生むことにもなる。

    10
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    日本語が苦手な事はよく分かった。

    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    日韓でも地政学的に共通の利益があったんだから、兵器の共同開発でも出来たらメリットも大きかったんだけど

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      結局のところ、海洋国と大陸国では相容れえぬところが大きいんだろうね。

      15
        • 匿名
        • 2021年 6月 24日

        韓国は大陸と北朝鮮で阻まれてるので事実上の島国だとする意見もあるけどね。

        2
          • 匿名
          • 2021年 6月 24日

          それは軍事的な話で?
          歩兵・砲兵大国の北朝鮮が目の前にあってその後ろに軍事大国が控えていてなお「実質島国」ってそんな呑気なこという奴おるんかいな

          11
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      竹島問題を主にする多くの問題で対立している以上、共同開発した武器が国民に向けられる可能性があり、それを推し進めるのは、国民の同意を得づらいだろう
      それにお互いがプライドの強い国だから、船頭多くして山を登る状態になる事この上ない。

      14
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      韓国はまず北朝鮮との統一が先では?

      5
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      韓国を草刈場にして日本の兵器実験場にする方が日本にとっては有益
      米国兵器との比較検討が容易にできる

      4
        • 匿名
        • 2021年 6月 25日

        米国が日本を兵器実験場にする事も心配した方がいいと思うけどね。

        4
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    防衛省にも国内メーカー(自動車やバイクなど)OBを入れないとだめなんじゃない?
    それか、ある程度の規模のメーカー(トヨタやホンダとか)には強制的に防衛装備品を開発する義務を負わせるとか。
    そうすれば、無駄な開発費を嫌って、良い装備品ができるかも。

    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    武器の共同開発…ユーロファイター…インドネシアが支払い拒否…当然リスクもあるんだよなぁ

    2
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      最近のトルコの動きを見ると、目を向けるべきはリスクではなくメリットだという事がよく分かる
      リスクに目を向けてもそこに将来性は無いからだ

      11
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    リスクのない仕事が向こうからやってくるうまい話があるはずもなく
    がんばろうよ

    6
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    日本が本気で武器輸出をやるのなら、潜水艦関係の様な大物狙いはやめてまずは
    レーダー関連等で地道にやるのが一番だと思う。

    18
      • 匿名
      • 2021年 6月 25日

      レーダー素子やレーダー特性は解析され
      有効なジャミングを用意される と

    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    イ○ドネシア「あーあー、きこえない」

    5
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    どの国も政権次第で何処に寄るかはコロコロ変わるものだし
    兵器の性能知れ渡るよりは売らん方がいいんじゃないかな
    わざわざモンキーモデル造り上げるのも手間だし

    3
      • 匿名
      • 2021年 6月 24日

      兵器の性能なんて
      どれだけ懸命に隠したところで簡単に推測されてしまう情報化の時代になってしまったんだと
      いい加減に悟ろうよ
      日本の兵器のスペックだって、金の流れと企業の情報の確認するだけで
      おおよそもうとっくにバレてるんだよ

      しかも数年間隠している間にその上を行く技術と戦術があっという間に世代交代していく時代になっているんだよ

      5
        • 匿名
        • 2021年 6月 24日

        その情報とやらで推測出来るなら、日本の潜水艦の正確な限界深度や中SAM改の射程、問題となった住友製の機関銃の命中率はどんな物なのか教えてくれないかな。

        5
          • 匿名
          • 2021年 6月 24日

          清谷先生が教えてくれるんだよ

          いい加減に悟ろうよ

          3
            • 匿名
            • 2021年 6月 24日

            おおよその能力を推定できてしまうという話を
            正確な能力ってすり替えてる時点でどっちの認知が歪んでるかバレバレだもんな

            文盲ってこういう事なんだよな

            4
          • 匿名
          • 2021年 6月 24日

          逆に性能を正確に厳密に推測できないと推定する意味が無いと思える理由を説明してごらんw
          説明できないから議論を混ぜ返すしかできないんだろうけどw

          • 匿名
          • 2021年 6月 24日

          つまり日本どころかアメリカその他も中国やロシアの兵器の性能を推定する能力が無いし
          推定する事自体に意味が無いと

          凄い新説を始めて聞いたな

          3
        • 匿名
        • 2021年 6月 24日

        やべっ 付いていけね
        どっちがどのレスだかも分かんね

        1
    • 匿名
    • 2021年 6月 24日

    将来第三世界の武器庫、兵器廠になってそうだなトルコは

    4
    • 匿名
    • 2021年 6月 26日

    情報管制の行きどといていたはずの冷戦下にも、漏れ出ていた未確認情報な軍事情報、
    後になって判明したのはかなり正確に当たっていたということ
    ソ連はピースキーパーICBMの問題点を知ってたし、欧米はT72等の砲に長距離射撃での精度が無いことも調べていた
    各国のインテリジェンスをなめてはいけない、隠してることこそ余計に探られてると気がつけ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP